(表紙:2011 年-冬号)

(表紙:2011 年-冬号)
春
目次
新着情報
法令・通知・基準改正(2011 年 12 月-2012 年 3 月) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2 頁
論文・文献その他の情報(2011 年 12 月-2012 年 3 月) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6 頁
講演録
講演録「イギリス公私年金制度の最新動向」
Dr. Harald Conrad (University of Sheffield)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10 頁
論文・書籍紹介
論文紹介「私的年金制度の設計評価:リスク分担の費用と便益」
Hans Blommensteiin, Pascal Janssen, Niels Kortleve, Juan Yermo
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 22 頁
書籍紹介 「アクチュアリー数学シリーズ 3 年金数理」田中周二,小野正昭,斧田浩二著
2011 年, 日本評論者 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
46 頁
論文募集について ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 49 頁
ご意見・ご要望について ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 50 頁
©2012 社団法人日本年金数理人会
本資料は日本年金数理人会会員の能力向上のためのものに作成されたものであり、当該目的にのみ使用す
ることが認められます。本資料の記載内容は、当団体が信頼できると判断した各種データに基づき作成されて
おりますが、その正確性、確実性を保証するものではありません。法令変更、金融情勢の変化などにより、本
資料に記載された内容は予告なしに変更されることがあります。本資料に関する権利は、社団法人日本年金
数理人会に帰属し、本資料の一部または全部の無断複写複製を禁じます。
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新着情報
法令・通知・基準改正(
法令・通知・基準改正(2011 年 12 月-2012 年 3 月)
法令・通知
法令・通知改正
・通知改正
財政運営基準等の見直し(確定拠出年金への一部移行に
財政運営基準等の見直し(確定拠出年金への一部移行に伴う一括拠出金
伴う一括拠出金の緩和
及び制度終了時における残余財産の優先分配の追加)
及び制度終了時における残余財産の優先分配の追加)
関係法令
厚生年金基金令の一部を改正する政令(厚生労働省:政令第417号)
(平成23年12月26日公布、即日実施)
確定給付企業年金法施行令の一部を改正する政令(厚生労働省:政令第418号)
(平成23年12月26日公布、即日実施)
主な内容
確定拠出年金への一部移行に伴う一括拠出金の緩和(厚生年金基金、確定給付企
業年金(以下「DB」と言う))。制度の一部をDCに移行する場合、フルファンディングの
必要があったが、移行部分の最低積立基準額に対する不足分を一括拠出すればよ
いこととなった。
制度終了時における残余財産の優先分配の追加(DB)。制度終了する場合、受給権
者等に優先的に分配されることとなっているが、加入者負担がある場合には、この部
分についても優先的に分配することが認められることとなった。
厚生年金基金の設立要件・財政運営の扱いに関する一部改正・特例的扱い
関係通知
厚生年金基金の設立要件について等の一部改正について(年企発0131第1号)
(平成24年1月31日)
厚生年金基金の財政運営について等の一部改正及び特例的扱いについて(年発0131第
2号)
(平成24年1月31日)
主な内容
弾力化措置(時限措置)に関するもの
・指定基金を除き、猶予明け後の掛金を規約に明記する条件のもと、掛金引上げ猶予
の期間を平成 25 年 3 月末日まで延長された。
・平成 25 年 4 月 1 日までに予定利率引下げに伴い給付減額する場合、当該規約変
更基準日時点の不足金について掛金引上げを留保することができることとされた。
継続基準の財政検証に関するもの
2
・貸借対照表に計上する債務(大分類)が責任準備金へ変更された(従前の未償却過
去勤務債務残高と数理債務は欄外に記載)。
・貸借対照表上および継続基準の判定において、資産評価調整額が廃止された。
・責任準備金の下限を最低責任準備金(継続基準)とするルール(丈比べ)が廃止され
た。
・最低責任準備金調整額が以下の算式に変更された。
最低責任準備金調整額 = 当年度末最低責任準備金
× {(1+前年度の厚年本体利回り)^(9/12)
× (1+当年度の厚年本体利回り)/1.0723-1}
非継続基準の財政検証に関するもの
・最低積立基準額に対する積立要件の経過措置(90%)について、平成 24 年度から段
階的に 2%ずつ引上げ、5 年間で経過措置が廃止されることとなった。ただし、引上げ
のスケジュールは今後の経済情勢や環境等を踏まえ、必要な場合、所要の検討を加
え措置を講ずることとされた。
・基準に抵触した場合の対応のうち、「回復計画を作成する方法」は廃止とされ「積立
比率に応じて必要掛金を設定する方法」のみとされた。ただし、「回復計画を作成す
る方法」は、計画に用いる前提を一部見直し、平成 28 年度までの経過措置とされた
・回復計画を作成する前提のうち、最低責任準備金付利率は、「厚年本体の直近 5 年
の運用実績平均」または「厚生年金の直近の財政見通しに用いられている予定運用
利回り」とされていたが、前者は廃止され後者のみとされた。
・回復計画を作成する前提のうち、年金資産運用利回りは、「予定利率以下」とされて
いたが、「基金運用実績の直近 5 年平均」、「計画作成時の最低積立基準額の算定
利率」および「厚生年金の直近の財政見通しに用いられている予定運用利回り」のう
ちいずれか大きい率を上回らないこととされた。
・非継続基準に抵触し追加掛金を算定する場合の資産は純資産額のみとされた。
その他
・基礎率を全て見直して行う財政計算を財政再計算と定義し、次回財政再計算は当
該財政再計算の 5 年後とされた。
・特別掛金率の算定にあたっては、加入員数の動向や将来の給与水準の変化を織り
込むことができることとなった。
・過去勤務債務の償却において、掛金率の段階的引上げの要件であった、「選択一
時金の休止」、「許容繰越不足金の制限」が撤廃された。
・選択一時金の上限を算定する割引率が、「支給開始要件を満たしたときの下限予定
利率」または、「一時金受給時の直前の財政計算以降の最も低い下限予定利率」の
いずれか低い率とされた。
・キャッシュバランスプランの再評価の指標として、一定の上下限(下限は単年度で0
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以上)を付した市場インデックスが使用できるようになった。
・業務報告書等の簡素化が図られた。
財政運営基準の見直しに係る省令・通知の変更
関係法令
確定給付企業年金法施行規則の一部を改正する省令(厚生労働省:省令第13号)
(平成24年1月31日)
関係通知
「確定給付企業年金制度について」及び「確定給付企業年金の財政計算等に係る特例的
扱いについて」の一部改正について(年発0131第1号)
(平成24年1月31日)
「確定給付企業年金の規約の承認及び認可の基準等について」及び「厚生年金基金か
ら確定給付企業年金に移行(代行返上)する際の手続及び物納に係る要件・手続等につ
いて」の一部改正について(年企発0131第2号)
(平成24年1月31日)
主な内容
弾力化措置(時限措置)に関するもの
・猶予明け後の掛金を規約に明記する条件のもと、掛金引上げ猶予の期間を平成 25
年 3 月末日まで延長された。
継続基準の財政検証に関するもの
・貸借対照表に計上する債務(大分類)が責任準備金へ変更された(従前の未償却過
去勤務債務残高と数理債務は欄外に記載可能)。
・貸借対照表上および継続基準の判定において、資産評価調整額が廃止された。
非継続基準の財政検証に関するもの
・最低積立基準額に対する積立要件の経過措置(90%)について、平成 24 年度から段
階的に 2%ずつ引上げ、5 年間で経過措置が廃止されることとなった。ただし、引上げ
のスケジュールは今後の経済情勢や環境等を踏まえ、必要なら所要の検討を加え必
要な措置を講ずることとされた。
・基準に抵触した場合の対応のうち、「回復計画を作成する方法」は廃止とされ「積立
比率に応じて必要掛金を設定する方法」のみとされた。ただし、「回復計画を作成す
る方法」は、計画に用いる前提を一部見直し、平成 28 年度までの経過措置とされた。
・回復計画を作成する前提のうち、年金資産運用利回りは、「予定利率以下」とされて
いたが、「運用実績の直近 5 年平均」、「当該事業年度末の最低積立基準額の算定
利率」および「翌事業年度末の最低積立基準額の算定利率」のうちいずれか大きい
率を上回らないこととされた。
・非継続基準に抵触し追加掛金を算定する場合の資産は、純資産額のみとされた。
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その他
・特別掛金率の算定にあたっては、加入者数の動向や将来の給与水準の変化を織り
込むことができることとなった。
・過去勤務債務の償却における掛金率の設定において、段階的引上げが可能となっ
た。
・老齢給付金支給開始要件以外の要件を満たすものに支給する脱退一時金の上限
額を算定する割引率が、「直前の財政計算以降の最も低い下限予定利率」と「給付
額算定に用いる据置利率」のいずれか低い率となった。
・選択一時金の上限を算定する割引率が、「老齢給付金支給要件を満たしたときの下
限予定利率」と「一時金受給時の直前の財政計算以降の最も低い下限予定利率」の
いずれか低い率とされた。
・キャッシュバランスプランの再評価の指標として、一定の上下限(下限は単年度で0
以上)を付した市場インデックスが使用できるようになった。
・申請書類及び業務報告書の簡素化等が図られた。
平成24
平成24年
24年1月以降最低責任準備金に付す利率について
関係告示
厚生労働省告示第455号(平成23年12月20日)
主な内容
最低責任準備金を算定する場合の平成24年1月以降の付利率が「△0.26%」と決定され
た。
平成24
平成24年度に適用する下限予定利率等について
24年度に適用する下限予定利率等について
関係告示
厚生労働省告示第 153 号(平成 24 年 3 月 26 日)
厚生労働省告示第 154 号(平成 24 年 3 月 26 日)
厚生労働省告示第 155 号(平成 24 年 3 月 26 日)
関係通知
「厚生年金基金の予定利率の下限等について」の一部改正について(年企発 0326 第 1 号)
(平成 24 年 3 月 26 日)
主な内容
平成24年度に適用する掛金計算に用いる下限予定利率は「1.1%」、最低積立基準額の
計算に用いる予定利率は「2.24%」と決定された。
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論文・文献その他の情報(2011
論文・文献その他の情報(2011 年 12 月-2012 年 3 月)
政府関係
厚生労働省 平成 22 年(2010 年) 人口動態統計(
人口動態統計(確定数)
確定数)の概況(2011 年 12 月 1
日)
主な内容
2010 年の出生数は 107 万 1304 人で、前年の 107 万 35 人より 1269 人増加し、出生率(人
口千対)は 8.5 で前年と同率となった。合計特殊出生率は 1.39 で前年の 1.37 を上回った。
死亡数は 119 万 7012 人で、前年の 114 万 1865 人より 5 万 5147 人増加し、死亡率(人口
千対)は 9.5 で前年の 9.1 を上回った。
(参照サイト
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/kakutei10/dl/01_tyousa.pdf
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/kakutei10/dl/02_kekka.pdf)
厚生労働省 平成 23 年(2011 年)12 月末現在 国民年金保険料の納付率(
国民年金保険料の納付率(2012
2012
年 2 月 29 日)
主な内容
現年度分の納付率は、56.9% (対前年同期比△0.6%) 、 過年度分(21 年度分)の納付率
は、64.8% 、(21 年度末から 4.8 ポイントの伸び) 過年度分(22 年度分)の納付率は、61.6%
(22 年度末から 2.3 ポイントの伸び)
(参照サイト
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000021ght-att/2r98520000021glp.pdf)
社会保障・税一体改革 5 大臣会合(2011
大臣会合(2011 年 12 月 30 日)資料
社会保障・税一体改革大綱について(
改革大綱について(2012
社会保障・税一体
改革大綱について(
2012 年 2 月 17 日閣議決定)
主な内容
改革の方向性は次の通り。
未来への投資(子ども・子育て支援)の強化
医療・介護サービス保障の強化/社会保険制度のセーフティネット機能の強化
貧困・格差対策の 強化(重層的セーフティネットの構築)
多様な働き方を支える社会保障制度(年金・医療)へ
全員参加型社会、ディーセント・ワークの実現
社会保障制度の安定財源確保
(参照サイト
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001zh0k-att/2r9852000001zh21.pdf
6
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001zh0k-att/2r9852000001zh2z.pdf
http://www.kantei.go.jp/jp/kakugikettei/2012/240217kettei.pdf)
国立社会保障・人口問題研究所 日本の将来推計人口(平成 24 年 1 月推計)
(2012
年 1 月 30 日)
主な内容
総人口は、2010 年現在(同年国勢調査)の 1 億 2,806 万人から、2030 年には 1 億 1,662 万人、
2060 年には 9,913 万人へと減少する。生産年齢人口に対する年少人口と老年人口の相対的
な大きさを比較し、生産年齢人口の扶養負担の程度を大まかに表すための指標である従属人
口指数は、2010 年現在の 36.1 から、2022 年に 50.2、2060 年には 78.4 へと上昇するものと推
計される。
(参照サイト
http://www.ipss.go.jp/syoushika/tohkei/newest04/sh2401top.html)
その他
年金積立金管理運用独立行政法人 平成 23 年度第 2 四半期運用状況(2011
四半期運用状況(2011 年
四半期運用状況(201
2012
12 月 2 日)・平成 23 年度第 3 四半期運用状況(
201
2 年 3 月 2 日)
主な内容
第 2 四半期では、収益率(期間率)は国内外の下落等により、マイナス 3.32%、収益額はマイ
ナス 3 兆 7,326 憶円、運用資産額は 108 兆 8,537 億円。
第 3 四半期では、収益率(期間率)は外国株式の上昇等により、プラス 0.58%、収益額はプラ
ス 6,187 憶円、運用資産額は 108 兆 1,297 億円。
(参照サイト
http://www.gpif.go.jp/operation/state/pdf/h23_q2.pdf
http://www.gpif.go.jp/operation/state/pdf/h23_q3.pdf)
論文
“Potential outcomes of private pension developments in China(
(中国における私
的年金制度の発展の行く末)
的年金制度の発展の行く末
)”, Javier Alonso, Miguel Angel Caballero, Li Hui,
María Claudia Llanes, David Tuesta, Yuwei Hu, Yun Cao, BBVA Research
Working papers 11/33
主な内容
本ペーペーの主な目的は、中国の年金制度の将来性について、この社会問題を避けて通れ
ない政府の役割と、民間部門による積極的な関与の可能性を考慮に入れながら、予備的議論
7
を展開することである。本調査レポートは、中国の年金を取り巻く歴史的背景を解説し、今後発
展が予想されるさまざまな領域を理解するために、中国の現在の年金制度について検討し、拠
出型年金スキームの潜在市場を分析し、社会保険制度に関して 2020 年までに起こり得る結果
を予測するためのモデルの開発を試みる。
(参照サイト:
http://www.bbvaresearch.com/KETD/fbin/mult/WP_1133_tcm348-280307.pdf?ts=2311201
1)
“Corporate Defined Benefit Pension Plans and the Financial Crisis: Impacts,
and Sponsor and Government Reactions(確定給付型企業年金と金融危機:影響、
(確定給付型企業年金と金融危機:影響、
およびスポンサーと政府の反応)
およびスポンサーと政府の反応)”,
ンサーと政府の反応) Mark J. Warshawsky, WP2011-14
主な内容
2008 年から 2009 年にかけての世界的な金融危機は、2006 年年金保護法における新たな積
み立てならびにその他の規定が適用されていたこともあり、確定給付型企業年金に打撃を与
えた。スポンサー企業および連邦政府は双方とも大きく膨らんだ積立不足に対応した。本ペー
ペーは、その影響および対応についてまとめるとともに、その意味合いを考察したものである。
特に、年金積立状況が著しく落ち込んだため、スポンサー企業は投資リスクを引き下げ、拠出
金を増やし、年金設計を変更したが、その一方で年金給付保証公社(PBGC)に支払う保険料
がほぼ倍増したことから、連邦政府は、規制と法律を通じ、暫定的および/または条件付き積
立軽減措置を講じた。軽減措置は暫定的であり、また、割引率は低い水準に据え置かれる見
通しであるため、今後の金融市場の動向次第では積立不足の大部分がそのまま残ることにな
る。長期的に見れば、リスクが高まったことで、確定給付および確定拠出年金が共に影響を受
けたことから、フレキシブル構造年金と呼ばれるより柔軟性のある新型の確定給付型に似た年
金の提案や政府によるその他の政策変更につながったといえる。
“ Social Interaction Effects and Individual Portfolio Choice: Evidence from
401(k) Pension Plan Investor(社会的相互作用の影響と個人のポートフォリオ選
(社会的相互作用の影響と個人のポートフォリオ選
択:確定拠出年金(401
401k)の投資家を対象にした検証)
k)の投資家を対象にした検証)”, Timothy (Jun) Lu, PRC
択:確定拠出年金(
401
k)の投資家を対象にした検証)
Wharton WP2011-19
主な内容
本ペーパーは、確定拠出型退職年金貯蓄口座を対象に、社会的相互作用が投資家の株式
保有およびポートフォリオ配分の決定に影響を及ぼすかどうかを調査したものである。401k年
金制度の豊富なデータセットを用いて、加入者が株式投資の決定を行う際、同僚の影響を受
けるという経験則を実証する。具体的に言うと、加入者は、同僚が過去に株式投資で平均リタ
ーンよりも高いリターンを獲得していた場合、リスクのある株式を増やす一方、株式リターンが極
めて悪い場合、リスクのある株式を減らす傾向がある。こうした実証結果は、人は際立った成果
8
に注意を払う傾向があるという限定注意仮説と一致するものである。
(参照サイト:
http://www.pensionresearchcouncil.org/publications/document.php?file=984)
“Crisis and pension system design in the EU: Intergenerational redistribution
and international spillover effects via factor mobility(
(EU における危機と年金制
度 設 計 : 世 代 間 再 分 配 と 生 産 要 素 の 移 動 を 通 じ た 国 際 的 波 及 効 果 ) ”, Igor
Fedotenkov, Lex Meijdam (2011), Netspar
主な内容
EU 諸国の多くは、最近の経済危機に対応して年金給付額の調整、もしくは年金制度の改革
を実施したが、一方、その他の加盟国はこの種の調整を見送った。本ペーパーは、経済同盟
下における危機に対して、こうした異なる対応を取ったことによる福利厚生効果を分析したもの
である。柔軟性のある年金スキームにより、危機による負担が各世代にわたりより公平に分散さ
れることを示していく。生産要素は経済同盟国内で移動するため、年金調整の違いは、国際的
な波及効果へとつながっていく。特に、危機に対して迅速に対応した国は、対応に手間取る他
国の影響を受ける可能性がある。これが当てはまる度合いは、短期的には労働移動によって異
なる。
(参照サイト:
http://arno.uvt.nl/show.cgi?fid=120862)
9
講演録
講演録 イギリス公私年金制度の最新動向
2011 年 11 月 16 日
ハラルト・コンラット(シェフィールド大学)
(調査研究委員会 中田正訳)
(本稿は、2011 年 11 月 16 日、東京の三田 NN ビル・ホールにて日本年金数理人会により
開催されたシェフィールド大学のハラルト・コンラット博士の講演録です。
)
[司会:大山国際委員長]:社団法人 日本年金数理人会 [The Japanese Society of Certified
Pension Actuaries] 国際委員長の大山義広と申します。本日は講演会にようこそお越しくだ
さいました。ハラルト・コンラット博士 [Dr. Harald Conrad]の講演を拝聴する素晴らしい機
会を設けることができました。コンラット博士は以前、長い間東京に住んでいらっしゃい
ましたが、現在のお住まいはイギリスです。また、イギリスのシェフィールド大学東アジ
ア学科の日本経済・経営研究所に笹川財団任命の准教授として勤務されています。本日は、
イギリスの公的年金および職域年金制度の最近の改正全般についてお話しいただきます。
[ハラルト・コンラット]:大山さん、ご紹介ありがとうございました。まずは、私の調査研
究をいつもサポートしてくださる日本年金数理人会の皆さんに改めてお礼申し上げます。
私はここにいらっしゃる多くの方のお顔を存じあげておりますし、その中には今回も私の
研究を積極的にサポートしてくださった方もおられます。私は 2 年前、日本の企業年金制
度に関する研究のために来日しました。その研究成果として 2 つの論文を発表しておりま
す。1 つは『International Journal of Human Resource Management』
、もう 1 つは『Journal of Social
Policy』に掲載されています。これらの論文は英文にてご覧いただけます。ここで、中田さ
んと大山さんには特に感謝を申し上げなければなりません。お二人が日本語への翻訳を引
き受けてくださったため、私の論文の 1 つには実質的な日本語版があります。この日本語
版を実際に皆さんにお読みいただけるよう、著作権を登録しいずれかで発表したいと思っ
ております。このたび私が来日しましたのは、「企業の福利厚生制度」およびこれに対する
日本の労働組合の対応について研究するためです。
本日は、イギリスの年金に関する講演のご依頼をいただきました。イギリスの年金につ
いて調べるようになったのは、イギリスに住み始めたからであり、私自身の年金がどうな
るのか知りたかったことがそもそもの理由です。様々な資料に目を通し、その本質をつか
もうと努力しました。本日のスライドにはたくさんのテキストが含まれていますが、一部
の方にとってはこの形式の方が理解しやすいかと思います。つまり、この種の話の通常の
10
スライド以上に多くのテキストを掲載しています。
本日の講演の概要をお伝えするため、まずイギリスの年金制度について大まかに説明し
ます。もちろん、イギリスの年金制度がどのようなものか皆さんが知らないことを前提に
説明します。次に、ここ 10 年の政府の年金政策、企業年金措置における最近のトレンドに
ついてお話しした後、ごく新しい情報になりますが、現在審議中の「2011 年 年金法案
(Pensions Bill 2011)
」を紹介し、最後に簡単なまとめをします。非常にたくさんのスライ
ドを用意しています。質問がある方はスライドとスライドの間にご質問ください。 できる
限りお答えいたします。
まずは引用から始めたいと思います。これはごく最近、財政研究所(Institute of Fiscal
Studies)から発表されたものです。同研究所は、イギリスの年金制度全体についてどのよう
な意見を表明しているでしょうか。イギリスの――ここに私は「公的年金制度の」を加え
ます――歴史は、大体が保険料を上げられなかった歴史の物語であり、周期的に社会保険
制度の所得代替率を高める必要に迫られながらも、その費用が明らかになると必ず怖気づ
いてきた、というのが研究所の見方です。これはイギリスの年金制度の状況を非常にうま
く表現しています。イギリスの年金制度は、まさに保険料据置の制度です。これについて
は後ほど詳しくお話しします。同制度は、最低水準の所得代替率のみを提供することを目
指すものです。最近の改革により、制度は定額給付に一層近いものにされたため、『べバレ
ッジ報告(Beverage Report)』―― 当然、名前はご存じかと思います――にまで遡る社会保
険制度は徐々に廃止されることになります。さて、現在のイギリスの公的年金制度を見る
と、非常にシンプルという印象を持たれると思いますが、詳しく調べるほど複雑であるこ
とが分かります。講演の直前までそれらを理解しようと努力しました。イギリスの年金は
非常に複雑です。全体として、イギリスには基礎年金(BSP;Basic State Pension)があり、報
酬比例年金があり、そして資力調査付きの給付があります。
国の年金は、基本的に、基礎年金と報酬比例型の付加年金からなる 2 階建てになってい
ます。年金に対する需要は各人で異なります。国の年金の受給額は、いわゆる国民保険の
有資格年数によって決まります。つまり国民は国民保険料を支払い、基本的にこれが年金
支出および医療費などすべての財源となっており、区別はありません。基礎国家年金が拠
出制と呼ばれるのは、年金の資格を得るため、各人は国民保険の拠出実績について一定条
件を満たさなければならないからです。しかし、実際に詳しく見てみると、受給されてい
る年金給付は次第に個人の保険料支払年数に依存しなくなっていき、最終的には実際の支
払額には依存しなくなってしまいます。つまり基本的に、給付はその受給者の有資格年数
によって決まるのです。所得に応じて支払った保険料の額とは実質的に無関係となります。
加入者は、国民保険料を支払うことで有資格年数を充足していきますが、労働市場から離
11
脱している、例えば育児などの期間に対して年金クレジットが適用されることもあるため、
保険料を拠出していない期間も有資格年数に加算されることがあります。
基礎年金について少し説明しましょう。基礎国家年金の満額を受け取るためには、ほと
んどの人は 30 年の有資格期間を満たさなければなりません。有資格期間が 30 年に満たな
ければ、場合によっては追納することができます。実際、基礎年金ではいくら支給される
のでしょうか。2010 年から 2011 年には、1 人あたり週に――すべて週ごとに計算――97 ポ
ンドで、単身世帯の場合は約 12,000 円、夫婦世帯では約 19,300 円が支給されます。ここで、
基礎年金と資力調査付きの公的扶助給付を比べると、後者の方が高いことがすぐに分かり
ます。つまり基礎年金は実質的に、社会扶助として提供される最低水準の金額さえも保証
していないのです。ゆえに低所得の年金受給者の年金は引き上げられなければなりません。
後でお話ししますが、制度を改革しなければ、これは将来もっと大きな弊害を生むことに
なるでしょう。国家年金は、平均所得の 16~17%に相当する金額を給付します。つまり、
所得代替率が極めて低いのです。実を言うと欧州で最低のレベルです。ギリシャの年金の
所得代替率はイギリスよりも高いのですが、これにどのような問題があるかはご存じのと
おりです。EU 加盟国の平均所得代替率は 57%です。イギリスはこれをはるかに下回ってい
ます。
さて、2000 年代に政府はどのような取組みをしてきたでしょうか。日本と同様、イギリ
スでもいくつかの年金委員会が設置されてきました。まず、2002 年に設立された年金委員
会から始めましょう。同委員会の結論は、現行のイギリスの年金水準は平均してこれまで
の水準より高いが、既存の私的積立年金制度と現行の国家年金制度の組合せでは、不十分
かつ不満足な結末が待っているだろうというものでした。例えば、雇用年金省(Department
of Work and Pensions)の試算によると、十分な額を積み立てられない退職者の数は、人口の
約 11%に相当する、700 万人にのぼると予想されています。2002 年に同委員会は、所得代
替率の最低水準を 45%にすべきであると提言しました。後から説明しますが、これは目標
です。年金委員会の結論について政府が超党派で合意したにも関わらず、この 45%という
数字は実現からほど遠いもので、すでに断念されています。
2002 年年金委員会は、所得代替率 45%という目標を実現するため、新たな年金制度、す
なわち国民年金貯蓄制度(national pension savings scheme)を導入すべきであると提言して
います。後述しますが最近の改革で、ある種の新しい貯蓄制度について示唆されており、
別の名称が付けられています。つまり、この 2002 年に提言された国民年金貯蓄制度はまだ
実施されていませんが、これに近い制度の実施に向けて準備が進められています。十分な
年金制度で保障されていない被用者――これについては後ほど説明します――は多く、こ
れらのすべての人々が新制度に自動登録されることになっており、被用者個人の拠出に合
12
わせて、事業主も拠出義務を負います。これも先ほどと同様に、実際に実施されるかどう
か不透明です。ただ全体的な方向性としては、2002 年に計画されたとおり、具現化しつつ
あります。
次に、様々な制度改革が盛り込まれた 2007 年年金法までに起こったことをお話しします。
図 1.をご覧ください。これは 50 歳の加入者の所得に対する年金給付割合、すなわち所得
代替水準を予測したものです。この青色部分が基礎年金、赤色部分が 2 階の報酬比例年金、
緑色部分が資力調査付きの年金クレジットです。つまり、給付が徐々に低下してきたため
にできる穴を社会福祉が補填していると言えます。この問題は 2010 年初頭から、時間を追
うごとに大きくなっていることが分かります。
次に、2 階部分の年金はいくつかの制度から構成されており、長い年月の間に複数の制度
が新たに導入されてきました。旧制度は段階的に廃止されますが、この点を深く追求する
と非常に複雑になります。ただここで強調しておきたいのは、実際には社会扶助の水準に
近づきつつある年金の所得代替率のレベルをおおよそ維持するという点で言うと、この制
度には問題があるということです。
2005 年に別の年金委員会が設置され、
『ターナー報告書(Turner Report)
』と称する重要な
報告書が発表されました。この報告書はイギリスの年金事情に大きな影響を及ぼしたもの
ですので、委員会の提言について少しお話ししてから、実際に採用された提言と、合意が
得られたものの採用されなかった提言について説明します。はじめに、同報告書では、公
的年金の支給開始年齢は男女ともに 66、67、そして 68 歳へと段階的に引き上げるべきだと
13
提言しています。支給開始年齢の引上げは、平均余命の伸びと関連させるべきです。この
提言は採用されました。後述するように、実施のタイミングは変わると思われますが、全
体的な方向性については合意されています。現在の年金は平均余命に何らかの形で自動的
に比例するものではなく、近い将来にどうなるかも実際は分かりません。公的年金の給付
額は 2010 年から物価ではなく平均賃金に比例して増加し、より寛大になるでしょう。この
改正は実施されています。公的年金制度は、可能な限り資力調査のないものにするべきで
す。年を重ねるごとに、公的年金は積立金に依存することが難しくなってきていることか
ら、これも実施にむけて準備が行われています。基礎年金は益々拠出額に関係しなくなっ
ていますが、この事態は基礎年金に限ったことではなく、2 階部分についても言えます。2
階部分もそのうちに定額給付になってしまいます。女性の年金生活者の状況を改善するた
め、基礎年金の受給資格は、国民保険料の拠出ではなく、居住を基準として付与されるべ
きです。ゆえに長期的には、主な基準を居住とし、保険料支払期間にはある程度比例する
が、保険料支払額にはあまり強く関連性を持たないような制度になるでしょう。
現行の国家第二年金(報酬比例部分)は定額支払に移行しています。基本的にこれも実
施されています。個人年金制度の加入者を対象に認められていた国家第二年金の適用除外
のオプションも廃止されるべきです。適用除外は日本の代行制度と類似するものです。イ
ギリスの適用除外制度は無効となりつつあります。しかしこれは、イギリスの年金制度に
おいて極めて優位な地位を占めていた制度で、廃止される場合、現段階では廃止に向けて
どのような措置が取られるか、明確には分かりません。このテーマについてはまた後ほど
お話しします。2010 年までに、新しい国民年金貯蓄制度が設立されることになっていまし
た。先述のとおり、これはまだ実現していません。企業年金に加入していない人はこの新
制度に自動登録されることになります。2012 年に実施される予定です。これも後でお話し
しましょう。 事業主はこの制度への拠出を義務付けられるはずであり、そうした内容の措
置が現在計画されています。
この新制度のもとで、被雇用者は給与の 4%、事業主は 3%、政府は 1%を拠出します。
事業主は、適用除外で機能する年金制度を提供しているならば、被用者を MPSS の加入か
ら除外することができますが、その拠出水準は MPSS のものと一致させなければなりませ
ん。これもある種の適用除外制度であり、報告書を読むといくらか矛盾があることが分か
ります。自営業者にもこの新制度への加入が認められるはずですが、これも実現するかど
うか不透明です。給与からの拠出額を増加させたい被雇用者については、自由に増加でき
るようにすべきですが、この措置も計画段階です。投資機会に関しては、加入者が多様な
ファンドから選択できるようにする必要があります。私の知る限り、これもまた不透明と
言わざるを得ません。この新制度に積み立てられたお金は相続可能にすべきであり、政府
は、公的年金の受給時期を延期できる既存のオプションについてももっと周知に励む必要
14
があります。公的年金の受給時期を遅らせれば、受給額は増額されます。
2005 年のターナー報告書の提言は、当時の政府によって概ね合意され――これは重要な
点ですが――幅広い政治的コンセンサスを得ました。2005 年の労働党政権下で(現在は自
由党保守党との連立政権ですが)
、政府は年金委員会の結論を政府の政策とすべきとの考え
で合意しました。そして 2006 年以降、雇用年金省がこの政策を具体的に実行するため取り
組んできました。この取組みは 2012 年までに完了することになっていましたが、最近の選
挙で新政府が誕生したことを背景に、そこまでには至っていません。したがって 2011 年の
年金法案では、すでに合意されているものの、政策として確定していない一部改正の段取
りが定められています。
さて、ターナー報告書には多くの提言がありますが、実際に初めて実施に至ったのは有
資格年数を男女ともに 30 年に短縮したことです。それ以前は、もっと多くの年数を充足す
る必要がありました。また基礎年金における年間生活費は物価でなく賃金と関連付けられ
ました。これにより、全体的な給付水準が高まり、先ほどお話ししたような問題は克服さ
れ、緑色部分に示した資力調査付き給付が重要になっています。2010 年以降、育児や介護
を担う人々に国民保険クレジット制度が導入され、保険料拠出によらず公的年金を追加す
ることが可能です。この制度は基本的に育児や介護の従事者に対し、クレジットを付与す
るものです。ターナー報告書の提言どおり、これは基礎年金に付加される、定額の公的年
金となる予定です。2012 年以降、ステークホルダー年金または確定拠出企業年金の加入を
条件に付加年金の適用除外を認めていたオプションが撤廃され、基本的に、その時点で適
用除外の積立制度に加入している人々が公的年金制度に戻されることになります。国家年
金の女性の支給開始年齢は 2020 年までに段階的に 65 歳に引き上げられ、その後男女とも
に開始年齢が段階的に 68 歳にまで引き上げられることになっています。これはすでに実施
されていますが、最新の年金法によって引上げ時期は早まるでしょう。これについて少し
お話しします。
先述の財政問題研究所(Institute of Fiscal Studies)は、思うに、信頼できる予測を提供し
ている機関です。私の知る限り政界との結びつきが強くなく、数値を出すうえで政治的圧
力を受けることもありません。ご覧のとおりこの緑色の部分は段階的に廃止されています。
しかし、ターナー報告書が提言した所得代替率 45%を話題にしている人は誰もいません。
2007 年の年金法以後話題に上がっているのはこの 35%です。
15
[コンラッド博士]: そうです。それでは、これらの改革はどのような影響をもたらすので
しょうか。これを読み取るのは非常に難しいのですが、何を示しているかご説明しましょ
う。それぞれの色は先ほどのスライドの項目と同じです。青色部分が基礎年金です。赤色
部分は報酬比例型の付加年金で、実際のところ非常に少なくなっています。これについて
細部に踏み込むことは控えます。この赤色部分には報酬比例年金制度や国家第二年金など、
異なる様々な制度があります。過去には、 報酬に比例して給付する差等年金(graduated
retirement benefit)があり、一部の人々はまだ加入しています。様々に異なる制度があり、
これらは一部の人々に対しては制度として機能する一方、他の人々にはもはや開かれてい
ない場合があります。いずれにせよ、これらすべてが赤色部分に含まれ、さらに社会扶助
給付があり、他の給付として例えば、75 歳以上を対象とした「テレビ受信許可料の無償化」
があります。これがこの部分の数字に反映されています。ですから、国民所得に対する公
的年金支出の割合は 5%程度から 6%程度に増加するでしょう。それほど大きな増加ではな
いかもしれませんが、理由については後ほどお話しします。さて、イギリスにとって救い
となる 1 つの要素は人口動態です。高齢化は進んでいるものの、ご覧のとおり、日本ほど
劇的には進行していません。2007~2008 年に、65 歳以上の割合は全体の約 27%でした。改
正実施後の公的年金の支給開始年齢(SPA)が 68 歳となることを考えると、なおさら、イ
ギリスはいくらかましな状況であると言えます。イギリスの出生率はより高く、海外から
の人口移動もより多くなっています。この意味では、イギリスの人口動態は年金問題に関
して日本やドイツほど悲惨な状況ではありません。
次に、2008 年の年金法についてですが、これは 2005 年のターナー委員会の結論を実現す
るため制定されたもう 1 つの年金法です。まず自動加入、つまり事業主は、22 歳から国家
16
年金の支給開始年齢までの適格被用者を適格企業年金制度に自動加入させる義務を負いま
す。現時点で、この改正は 2012 年から導入される予定です。発表されたのは 2008 年でし
た。先にもお話ししたように、やや中途半端な状態にあり、私の知る限りでは 100%実施さ
れるとは言えません。年金法により、改正が確実に導入されるようにするうえで年金監督
庁の役割が強化されることになっています。この改正もまた実施されるかどうか問題です。
次に、全英雇用貯蓄信託(national employment savings trust)制度が設立されます。ターナー
報告書で提言されたとおり、これは本質的に国民年金保険の考え方に基づくものです。現
在は名称が変わり、NEST と呼ばれています。これは明らかに、nest(巣)
、子供を育てたり
するような場所を築くという意味を含ませたものです。2012 年以降、NEST は新しく、シ
ンプルで、低コストの積立手段として導入される予定です。特に企業年金制度へのアクセ
スを持たない低中所得の労働者をターゲットにしています。その数を見ていきましょう。
イギリスでは企業年金制度の加入機会に恵まれない人が多いため、この新制度の潜在的な
対象グループは非常に大きなものです。事業主はこれらの対象者を自動加入させる義務を
負い、最低限の制度要件(minimum quality requirements)を満たさなければなりません。こ
れは信託に基づいた企業年金制度で、年金提供にこの制度を利用したいと考えるすべての
事業主を受け入れることが義務付けられています。総じて低い基礎年金と 2 階部分の年金
について、より保障を手厚くするための措置と言えます。
ここで、企業年金に実際にどれほどの人が加入しているかを見れば、この新しい NEST
制度がいかに重要となるか分かるでしょう。これは、イギリスの公共および民間部門の企
業年金の有効加入者数を百万人単位で示したものです。ご覧のように、民間部門の制度加
入者数は 2000 年代に著しく低下し、現在は 350 万人程度です。興味深いのは、公共部門の
年金制度の普及率も低下している点です。これは、ブリティッシュ・テレコムなどの大企
業がいくらか関係しており、おそらくこの数字に反映されていると思います。必ずしも、
多くの人が制度によって一挙に保障されるということではありません。これらの数値をさ
らに詳しく見る必要があります。なぜこうなったか理解するのは、いささか難しいことで
すが、民間部門の企業年金は減少しており、このことはより重要だと思います。ここで公
務員の年金について少しお話ししましょう。
17
イギリスの民間部門の確定給付(DB)企業年金制度の加入者数を見ると、同様に著しく
低下していることが分かります。現在、確定給付年金に加入しているのはわずか 100 万人
です。また興味深いことに、米国や日本と比べると、確定拠出(DC)年金への加入は非常
に安定しているものの増加傾向にはありません。
米国、イギリス、日本における加入者数の推移をみますと、米国では DC 年金が増加して
DB 年金が減少し、日本では DB 年金が減少し、同時に数は少ないですが、DC 年金は増加
しています。一方、イギリスを見ると、DB 年金は減少していますが、DC 年金は極めて安
18
定しています。これで、大体の傾向がお分かりいただけたかと思います。
もう 1 つ、グラフをご覧ください。事業主提供型の年金制度の加入状況を表したもので、
灰色のバーは年金を提供されていない人の数を示しています。つまり、イギリスでは被用
者の約 65%が付加的な職域年金に加入していません。これらの人々はどの程度の年金を得
られるでしょうか。基礎年金に、新たな定額給付の第二年金を合わせると、所得代替率は
35%となります。それだけです。言い換えれば、この部分が新制度である NEST のターゲ
ットとなるグループであり、その数は極めて膨大です。
次に、最近の状況を見ていきましょう。2010 年に新しく誕生した自由民主党―保守党の
連立政権は、年金に関する 4 つの分野を見直しました。1 つは公的年金の支給開始年齢を
66 歳に引き上げる時期です。政府は引上げ時期を前倒ししたいと考えており、すでに合意
に至りました。次に、この企業年金制度、すなわち NEST への自動加入はまもなく実施さ
れる予定です。あとはインフレ率に関する改正と、公的部門の年金の改正です。これらの 4
つすべてについて簡単にお話しします。
1995 年年金法により、年金支給開始年齢の男女平等化が導入されました。支給開始年齢
は 2020 年までに、60 歳から 65 歳へと段階的に引き上げられます。先に示したとおり、2007
年年金法に基づき、さらに支給開始年齢は男女ともに 2026 年までに 66 歳、その後段階的
に 67 歳、68 歳と引き上げられていきます。そしてこの新年金法案は、66 歳への引上げを 6
年後に完了するとしています。本質的にはそれだけです。この措置は、2020 年までに男女
とも、支給開始年齢が 66 歳となることを意味します。
19
次に、企業年金制度への自動加入です。すでに 2008 年年金法によって、個人が老後に向
けて資金を積み立てられるようにするため、またそれを促進するための私的年金改革が導
入されていました。その後、いわゆる 2010 年企業年金改革規則(Workplace Pension Reform
Regulations of 2010)が準備されています。これは、事業主が被雇用者を企業年金に自動加
入させる受け皿として NEST を利用できるように定めたものです。ただこれに関しても情
報を探そうと努めましたが、現時点では不透明のようです。まだ議会を通過していません。
スライドに使用するインフレ率についてですが、今後は小売物価指数(RPI)ではなく、
消費者物価指数(CPI)を用いる方法へと移行するでしょう。民間部門では、同種の指数も
インフレ尺度として利用されると思います。
CPI は RPI よりも適切なインフレの尺度であり、
EU の算定方式に従って算出され、イングランド銀行でも使用されています。
ゆえに、今後は CPI の利用が増えるでしょう。
公共部門の年金について提言したものとして、2011 年のハットン報告書があります。
この報告書は、現行の最終給与から新たにキャリアアベレージに基づく年金制度へと、
政府が切り替えるべきであると提言しています。公共部門の年金を対象とするものでした
が、明らかに、この提言を検討した当局は、これは(私自身も加入している)大学の退職
年金にも適用できると考えたのでしょう。公共部門の年金を短期で積み立てる最も効率的
な方法は、加入者の拠出額を引き上げることです。これは珍しい方法ではありません。予
想どおり政府はこれらの提言を受け入れ、すでに公共部門の年金の拠出額引上げ、つまり
当事者に年金提供にかかる費用を負担させることを要求しています。しかし、公共部門の
企業組合はこれに反対しているため、じきにイギリスでストライキが起こるでしょう。こ
の措置が撤回されることはないと考えられますが、最終的にどうなるかは様子を見ましょ
う。
以上はシェフィールドのタクシー運転手から聞いた話です。この話題について彼らと話
してみれば教えてくれるでしょう。実際のところ公共部門の被雇用者はイギリスのなかで
も比較的手厚い年金制度に加入しています。所得が非常に低い人の場合ですと、所得より
も高い年金を受け取ることができます。ですが、これでは生活できないことは予想がつき
ます。資力調査付きの給付を含めなければなりません。しかしそれでも、我々大学職員の
所得代替率は 70%を超えることが分かります。他の人々と比べればこれは明らかに手厚い
ものですので、ストライキに対する反応は厳しいでしょう。多くの国民は自分たちに比べ
公共部門の労働者が裕福であることを知っているため、彼らのストライキには共感しない
と思います。
20
公共部門の見積り年金支出は安定すると考えられています。これも同様に、ハットン報告
書の提言する一連の改革が実施されるという想定に基づいた結果です。
それでは、結論に参りましょう。すべて理解するのは容易ではありません。思うに、1 つ
明らかな点として、政府はより多い退職貯蓄の必要性を認識しています。それは誰もが同
意することですが、これを実現するための政策措置はまだ確定していません。また政府は
NEST 制度を策定しましたが、これが実際に実現可能か、あるいは実現するのかは疑わしい
ところです。イギリスの制度に対する私の全体的な感覚として――3 年半住んでいただけで
すが――イギリスでは脱税が極めてよく起こるように感じます。例えばドイツで暮らし始
めたとすれば、通常は 1 ヵ月のうちに税務当局から確定申告を求める通知が届きます。私
はイギリスに 3 年半暮らしていましたが、一度も税務当局から連絡を受けたことはありま
せん。確かに私はきちんと保険料を支払っており、給与からの天引きで税金を支払ってい
ましたが、天引きでなく自主的に所得を申告することもなかったなら、おそらく放置され
ていた可能性が高いでしょう。実際に、これらの問題をフォローするための十分なリソー
スがないとも思われるため、政府がこれを予定通りに実施できるかどうかは疑問です。こ
れはちょっとうがった見方かもしれません。もっと詳しい情報をご存じの方の意見をうか
がいたいと思います。最近の改革により、もっと手厚い定額給付制度へ移行しますが、所
得代替のかなりの部分は個人からの資金に委ねられます。したがって長期的には、公的年
金制度は 2 階部分も定額のみの給付になっていくでしょう。
現在の経済情勢を踏まえると、
人々が個人または企業の付加年金の十分な保険料を支払えるかどうか不透明です。もちろ
ん、比較的好ましい人口動態と国家年金の低い所得代替率は、イギリス財政の年金支出の
管理に有利にはたらくでしょう。よって見方によれば、イギリスは年金に関して比較的よ
い状況にあります。この他に、これらの改革により廃止されることになる、資力調査付き
給付に伴う問題がありますが、これはまだ少し先の問題です。私はそのように理解してい
ます。さて、以上で話を終わります。ご意見やご指摘がありましたら、ありがたくお受け
いたします。ありがとうございました。
[拍手]
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論文・書籍
論文・書籍紹介
・書籍紹介
論文紹介 「私的年金制度の設計評価:リスク分担
私的年金制度の設計評価:リスク分担の費用と便益」
分担の費用と便益」
2009 年 3 月, 保険および私的年金に関する OECD ワーキングペーパー 第 34 号
Hans Blommensteiin, Pascal Janssen, Niels Kortleve, Juan Yermo1
(調査研究委員会 共同訳)
要約
私的年金制度の設計評価:リスク分担の費用と便益
本書の主な目的は、一方にある拠出金の不確実性と、他方にある様々な年金制度に内蔵さ
れた便益との間にある二律背反(trade-off)を分析することです。本書では、年金加入者の
視点から私的年金制度のリスク分担特性を評価する主な基準として、積立比率(負債に対
する資産の割合)と所得代替率(給与に対する給付金の割合)を使用しています。実施し
た確率的シミュレーションは、ハイブリッド制度(伝統的な DB/確定給付と個人 DC/確定拠
出の中間)がその一方よりも効率的かつ持続可能なリスク分担形式となることを示してい
ると考えられます。分析を行った 3 つの主要なハイブリッド制度のうち、条件付物価スラ
イド制(Conditional Indexing)が、持続可能なリスク分担形式として最も大きな可能性を有
しているようです。
キーワード:確定給付(DB)、確定拠出(DC)、資金拠出、ハイブリッド制度、年金給付金、
年金基金、リスク分担
1.
序章
私的年金の成長および退職所得制度におけるその役割の拡大を背景に、私的年金がさら
されているリスクに対するより深い理解と管理が必要となっています。なかでも投資リス
クの増大は最も顕著であり、2008 年 1 月から 10 月までの間に OECD の私的年金資産は平均
で 20 パーセント下落しました(OECD2009 年)
。
加入者の立場から見れば私的年金は一種の長期貯蓄であり、今日の拠出金は明日の給付
金のための投資にほかなりません。加入者は一般的に確定給付(DB)制度のような保証付
き給付を好みますが、拠出金の変動コストのような代償についても考慮する必要がありま
1
この報告書は、OECD の Hans Blommestein、PGGM の Pacal Janssen、PGGM の Niel Kortleve および OECD
の Juan Yermo が作成しました。本書で述べられている見解はこれら筆者のものであり、必ずしも IOPS や
そのメンバーの見解を反映したものではありません。誤りについてはすべて、これら筆者に責任がありま
す。
連絡先:経済協力開発機構(OECD)
、2 rue Andre Pacal, Paris, F-75775, France, E メール:[email protected]
22
す。2しかしながら被用者は、拠出率は固定されているが退職所得のリスクを被用者がすべ
て負う(集団運用型)確定拠出(DC)制度にますます関心を寄せています。
本書の主な目的は、拠出金の(不)確実性と様々な年金制度に組み込まれている給付と
の間にある二律背反を分析することです。本書では、加入者の視点から年金制度やスキー
ムのリスク分担特性を評価する主な基準として、積立比率(資産の負債に対する割合)お
よび所得代替率(給与に対する給付金の割合)を使用しています。資金拠出者が事業主、
被用者またはその両者であるかにかかわらず、様々な年金スキーム内におけるリスク分担
に注目しています。
年金制度に関する主なリスクには、投資リスク(具体的には資産と負債のミスマッチ)、
インフレリスク、生物学的リスク(特に、年金制度において最も重要なのは長寿リスク)
および破産/債務不履行リスクがあります。市場を通じた世代間リスク分担の限界に関す
る考察のため長寿リスクを紹介していますが、本書では特に投資リスクとインフレリスク
に焦点を当てています。
年金受給者としての給付の確実性が高まれば、必然的に労働者としての拠出額の変動が
大きくなります。言い換えれば、給付を投資リスクとインフレリスクから保護するほどに、
拠出率の変動を通じて積立比率を操作する必要性がますます高くなり、結果として現在の
労働者の収入に影響を与えることになります。リスクが完全にまたは一部プールされてい
る年金制度(DB およびハイブリッド制度)からプールなしの制度(個人 DC)に至るまで、
本書では様々な年金スキームにわたってこの基本的な二律背反を幅広く分析しました。す
べての年金契約は全加入者に単一の資産配分を行うものと仮定しています。この研究をさ
らに進めれば、世代間で投資方針を差別化することができるため、年金受給者に対してよ
り安全な投資ポートフォリオを提供することが可能です。
実施した確率論的シミュレーションにより、ハイブリッド制度(伝統的な DB と個人 DC
の中間)が、いずれか一方の制度よりも効率的かつ持続可能なリスク分担形式になると考
えられることが分かりました。分析した 3 つの主なハイブリッド制度のうちでは条件付き
物価スライド制が、持続可能なリスク分担形式として最も可能性が高いと思われます。
第 2 章では、企業年金制度におけるリスク分担を紹介します。第 3 章では市場を通じたリ
スク分担の限界を例示し、企業年金制度の真価に焦点を当てます。第 4 章では異なる種類
の年金制度の積立比率と所得代替率の結果を評価し、最終章では結論を述べていきます。
2.
年金制度
年金制度における
制度におけるリスク分担
におけるリスク分担に関する
リスク分担に関する 2 つの主な見方
集団運用型または企業年金制度の主要な真価は、潜在的に管理費用が低いことと、市場
では活用できないか活用できても費用がかさむ異なる種類のリスク分担を取り込む能力に
2
DB 制度に対する選好は通常、ポータビリティの欠如や、給付金を保証する年金制度スポンサーが債務不
履行に陥った場合に受けられる保護がないなどの潜在的な不都合を受けて発生します。また、McCarthy
(2003 年)が主張するように、若年労働者にとっては金融資本に対する人的資本の割合が大きいため、最
終給与 DB 制度が最適でない場合があります。
23
あります。2 つの視点からリスク分担を分析することが可能です。第 1 にリスクは、一方で
被用者と年金受給者が、他方で資金を拠出する事業主が分担しています。こうしたリスク
分担については最近の OECD による研究でも取り上げられています3。このような形式のリ
スク分担を分析するには、全般的な給与決定体系についての議論が必要です。なぜなら、
年金拠出は通常、賃上げ交渉の一環として交渉されているからです。理論的には事業主と
被用者の拠出バランスは中立(または無関係)ですが、これは両者の拠出が共に報酬全体
の一部分であり、したがって事業主の拠出額が大きくなれば最終的に給与(またはその他
給付)が少なくなるためです。
リスク分担に関する第 2 の見解は、加入者と受益者(年金受給者)の観点から、様々な
年金制度に組み込まれているリスク分担の便益と費用に注目するものです。これは、様々
なスキーム内に異なるリスクがいかに(うまく)プールされているかを評価することで実
施できます。こうした視点からみると、誰が負担するかにかかわらず、拠出金の変動は現
在の被用者にとってリスクとなります。本書は、スキーム内のリスク分担に注目すること
により、平均的または代表的な制度加入者と受給者にとっての拠出リスク(積立比率に注
目)と給付リスク(所得代替率を使用)間の二律背反を評価します。この分析は、異なる
年齢層の被用者や年金受給者にわたる、異なる形式の年金設計の純経済価値の分配に加え、
異なる集団間で時間の経過に伴いそれがどう進化するか計算することによってさらに深め
ることができます。この展開については別途の研究により分析する予定です。
2a.
リスク分担対再
対再分配
リスク分担
対再
分配
リスク分担特性の提供に加え、企業年金制度は、異なる種類の被用者間において一方的
または非互恵的な再分配を伴います。例えばオランダなど一部の国々のように、企業年金
制度内においてすべての年代の被用者が均一拠出率を負担するということは、一定の給付
水準では、年金受給権を獲得するのに高齢労働者が「過小支払」で済むのに対し、若年労
働者は「過大支払」が必要であるということを意味しています。このような富の移転は、
同年齢の若年労働者に比べ高齢労働者の平均寿命が短いことにより一部相殺されますが、
これまで平均寿命が延びていることを考えると、富の純移転は高齢者に有利に働くようで
す。若年層と高齢者層のこの種の「連帯」については、オランダで議論となりました(例
えば 2007 年 Boeijen 他、2007 年 Aarssen および Kuipers 他を参照)。こうした富の移転によ
り、若年層が確定給付契約から個人特性を重視した契約へ乗り換えている可能性があると
いう議論がなされています(2007 年 Boeijen 他)
。
興味深いことに、こうした懸念は他の国では聞かれないようです。おそらく被用者の拠
出金の分担がかなり低いかほとんどゼロであるためと思われます4。被用者の拠出金-大半
3
Pugh および Yermo を参照(2008 年)
しかしながら報酬総額は決まっているので、事業主の拠出金が増加するということは、
(その他)被用者
に対する給付額が減少するという代償を被用者は暗黙の内に支払うということになります。
4
24
の国では実際に、給与の一定割合であることが多い-と異なり、確定給付年金制度に対す
る事業主の拠出金は、被用者の年齢に比例し給与の一定割合として拠出額が増加する、年
金数理的手法に従って計算される傾向があります。このような計算法の例としては、現在
最も一般的な年金数理的手法であり国際会計基準を担当する組織によって採択されている、
予測単位積増方式などが該当します5。
より一般的には、以下のような意図的または意図せざる再分配が、被用者の拠出金や基
礎率が年齢によって変動しない確定給付型企業年金制度において生じます。
若年層から高齢者層へ
生存期間における早期の加入者から後期の加入者へ
早期の制度脱退者から後期の脱退者へ
収入が一定の人から、キャリア後半に向かって収入が増加する人へ
被用者の拠出率や基礎率が年齢に伴い変動する場合でも、確定給付型制度において生じ
うる他の種類の再分配として、以下のようなものがあります。
繰延給付金が累積給付金のように再評価されない場合、早期脱退者のために制度に
残る加入者の費用負担で損失が計上される
最終給与比例制度では、キャリア後半に収入が増加する被用者が、給与が変わらな
い被用者の費用負担で利益を享受する
配偶者のある加入者は遺族年金を受け取るため、独身加入者の費用負担で利益を享
受する
女性の平均寿命は男性よりも長いことから、同額の拠出金でより多くの給付を得る
ことができる6
2b .
様々な年金制度
制度における
におけるリスク分担
リスク分担の主な特性
様々な年金
制度
における
リスク分担
の主な特性
企業年金制度には、様々なリスク分担形式があります。本章では実務上見られる、主な 6
種類のリスク分担契約の主要特性を簡単に説明します。初めに取り上げる 4 つについては
第 4 章で評価を行います。
(i)
伝統的な(最終給与または全期間給与方式による)DB 制度
これらの制度では、給付金を給与ならびに雇用期間の長さにリンクさせた算定式を採用
しています。所得代替率は、被用者の最終給与または全期間平均給与の割合として固定さ
れます。給付金がインフレ連動年金として支払われる範囲において、受給者には給付金の
5
この方式に対する批判の一つは、給付金(負債)には給与増加が織り込まれているのにもかかわらず、
貸借対照表の資産の部に計上される将来の拠出金の相殺勘定が含まれないということです。これにより、
資産と負債の評価方法の間に不整合が生じることになります。
6
また、低い社会(所得)階級からより所得の高い階級への再分配や、移民から居留住民に対する再分配
も大きいと見られます。
(CPB 研究の例を参照:http://www.cpb.nl/nl/pub/cpbreeksen/discyssie/81/disc81.pdf)
25
リスクがありません。したがってこのような制度では給付金の積立てに関するリスクがす
べてスポンサーである事業主、ひいては現在および将来の被用者に転嫁されています。
(ii)
条件付物価スライド DB 制度
この年金契約では、給付金は伝統的な DB 制度と同様に計算されますが、年金支払が物価
スライド制であるという点と、場合によっては累積給付金が年金制度の積立状況に左右さ
れるという点が異なります。積立比率が高いほど、物価スライドの程度が上昇します。
(iii) キャッシュバランスプラン
キャッシュバランスプランでは、退職まで一定の投資リターンで充当された個人口座に
基づき給付金が計算されます。退職時に給付金は一時金または年金として支払われること
になります。キャッシュバランスプランは、前述の再分配がまったく生じないリスク分担
年金制度の一種です。この制度は投資リスクからは保護されますが、退職前の長寿リスク
からは保護されません。また投資リターンに対する保証の程度が非常に低い場合(または
名目的な水準のみの場合)には、インフレリスクからも保護されない可能性があります。
(iv) 集団運用型 DC 年金制度
集団運用型 DC 年金制度では、拠出率が一定です。給付額は伝統的な DB 制度と同様に計
算されますが、物価スライドの程度と名目給付額は年金制度の積立状況に応じて変動しま
す。積立比率が一定水準を下回ると、名目未払給付や名目年金の支払額までも削減される
ことがあります。したがって受給者は、従来の年金契約よりも大きな給付リスクを負うこ
ととなります。
(v)
育成制度(nursery plans)
一定の年齢に達するまで純粋な(個人)DC 制度を基礎として給付金が計算され、以後は
DB 制度となる制度です。この制度では実質的に早期脱退者(退職年齢前に離職する者)に
ついて、長期在職者と異なる扱いをしています。後者は伝統的な DB 制度によってカバーさ
れますが、前者は完全に給付リスクにさらされています。したがって、育成制度は上記で
説明したような異なる形式のリスク分担を伴いません。
(vi)
最低給付制度または基礎制度
給付額は、DC と DB の算式の結果のいずれか高い方になります。例えば、年金制度が最
低リターン率を保証している場合でも、実際の市場リターン率の方が高い場合はこちらが
支払われます。また、年金制度が最低給付額を保証している場合でも、DC 算式の算定額の
方が高ければこちらの額が支払われます。こうした年金取引には条件付物価スライド制や
集団運用型 DC 制度との類似点が多くありますが、積立比率の操作は行われません。このよ
うな年金制度では、実際の市場リターンが保証水準よりも高い場合必ず給付金として計上
しなければならないことから、積立ての余剰や超過は発生しません。
26
3.
市場を通じた世代間リスク分担
市場を通じた世代間リスク分担の限界
リスク分担の限界
企業年金制度を通じたリスク分担を評価する前に、特に世代間リスクを伴う場合、こう
した契約が常に市場によってうまく何度も繰り返されうるものか疑問を感じる方もいるか
もしれません。世代間リスク分担に対する一般的なアプローチまたは解決策は、原則とし
て 2 つに分けることができます。第 1 のアプローチは、年金基金が世代間リスクを集団的
に負担するという原則に基づくものです。より正確に言えば、年金基金が将来世代も含め
様々な利害関係者間でリスクを再分配することにより、リスク分担を集団的に組織化する
というものです。これはつまり、リスクが最終的に、これらの利害関係者によって負担さ
れるということになります(年金基金は(組織化する)代理人としてのみ機能し、主体と
しては機能しません。すなわち、保険会社のように資金や積立金を保有しません)。(将来
の)利害関係者の母集団が大きいことから、年金基金を通じて組織化を行えば世代間リス
ク分担の費用が低下します。第 1 の解決策は、年金基金が市場をより完全にすることを示
唆しており、これは年金基金が社会福祉を向上させるということを意味します(効率的な
市場に基づくヘッジ機会はないという前提。以下および補足 1 を参照)。
第 2 のアプローチは、金融市場を通じたヘッジ・ソリューションに基づくものです(例
えば、市場でヘッジを購入するまたはこうしたリスクに再保険をかける)
。この章では以降、
市場を通じた世代間リスク分担の限界について論じます。重要な問題や政策決定を説明す
るうえで、年金基金が年金契約に取り込む際の大きな課題となっている世代間リスクの明
らかな事例として、長寿リスクに言及します。
固有リスク(非市場リスク)やミクロ的長寿リスク(生存リスク)は原則として、年金市場
を通じた効率的なリスク分担の方法により対処することができます7。残念なことに、個人
年金市場は逆選択によって影響を受けます。政府による措置(たとえば参加を強制する規
則の形態をとって)によれば原則として、こうした市場の失敗に対処することが可能です。
全体的なリスクまたはマクロの長寿リスクは、現在の集団にほぼ等しく影響を与えます。
個人間で正の相関関係があるということは、民間市場の解決策でこのリスクを効率的に分
担できないということになります8。こうしたマクロ的リスクへのエクスポージャーを最小
限に抑える一般的手段(集団間の分散、国境をまたぐ投資による国際的分散、年金受給者
とのリスク分担、年金および生命保険の販売による保険会社のヘッジ)では、完全にこの
リスクを排除することはできません。
7
第 1 の柱にとってこれは必要ではありません。なぜなら、政府(社会)は依然としてマクロ的な長寿リ
スクを抱えていますが、リスク分担は既に盛り込まれているからです(第 1 の柱の年金は年金受給額とし
て支払われているため)
。
(以下参照)
8
Bohn(2005 年)
27
金融市場(保険を含む)は(かなり生存期間が重なる)集団間における短期リスクの分
担に対しては効果的に機能しますが、例えば、広く知られているように、若年層が高齢に
達した時の高齢者層の長寿リスクに対してあまりうまく機能しません。したがって、民間
市場を通じ事前に世代間リスクを効率的に共有することは、将来世代を含むことができな
いため不可能です9。一方、政府は世代間にまたがるリスクを分散させる手段として財政政
策(税金、社会保障、移転および公的債務)を活用することができるため、
(理論的には)
社会厚生を改善させることができます。別の言い方をすれば、政府は将来世代によって支
えられた長寿保険を提供することにより、市場をより完全にする機能を原則として保有し
ています10。最適な世代間リスク分担の調整を達成するため世代が重複する経済に社会保障
制度を導入することで、この結論を一般化することができます11。
しかしながら、政府介入に関しては以下の検討事項を考慮する必要があります12。第 1 に、
政府による政策には、総寿命リスクの重要な一般均衡効果が含まれる必要があります。(永
続的な)マクロ的長寿ショックは、寿命の伸びだけでなく、要素価格と資本-労働比率の
変化を通じたマクロ経済効果も伴います13。したがって長寿ショックは(将来の)労働供給
を増加させ、(将来の)賃金を減少させる可能性があります14。
第 2 の検討事項は、将来(「新」)世代が現在の(「旧」
)世代と同じ長寿ショックにさら
されているという点です。しかしながら影響度という点における主な違いは、新世代が生
存期間全体にわたって労働供給や消費、貯蓄を長寿化に対し調整できる一方、旧世代はこ
れができないということです15。この見方は、旧世代が被る長寿ショックの金融リスクが将
9
しかしながら、将来世代が含まれているとしても、潜在的な相反を排除することはできません。例えば、
将来世代 t=T を含むすべての世代に対して事前に公正な年金契約を用意できると仮定します。しかし、将
来世代が実際に t=T+1 で年金基金に加入するまでに、
「公正な年金取引」
(時間の経過のためこれは一部事
後的になる)は年金基金に加入している世代にとってプラスまたはマイナスのいずれかになる可能性があ
ります。この事後のマイナス値が大きすぎると見なされる場合、将来世代が年金基金に t=T+1 で加入しな
い可能性があります(これが(t=T で)事前に公正な年金取引であると見なされたとしても)
。予想される
事後的な再分配が大きいほど将来世代が加入を見送る可能性が高くなるため、こうした再分配は将来世代
から見て「大きすぎ」てはならないということになります。
10
前述の Brown および Orszag(2006 年)
11
前述の Ball と Mankiw(2007 年)を参照
12
前述の Bohn (2005 年)
13
退職年齢が不変であれば、資本-労働比率は直接の影響を受けません。退職年齢が決まっていれば、寿
命が延びても直ちに労働市場に影響を与えることはありません。しかしながら、退職段階中における財務
的な圧力(予算に関するものを含む)と永続的なマクロ的長寿ショックが金融市場価格と生産活動の両者
に与える(と予想される)影響の程度により、退職年齢が変化する可能性があります。また、消費(貯蓄)
と価格に直接影響があると見られます。さらには流通市場への影響もあります。退職年齢が不変であるこ
とと寿命の長期化により、年金給付額が低下、または年金拠出金がより高額になると考えられます(年金
支払額を同水準とする場合)
。後者は拠出額の増加を意味し、労働価格に影響を与える可能性があります。
14
Brown および Orszag 他(2006 年)
。こうした一般的な均衡効果を通じて、将来世代は既に長寿リスクを
(一部)分担しています。
15
Brown および Orszag 他(2006 年)
28
来世代と共有されることで、福祉利益を創出できるという可能性につながります。そして、
政府のみが世代間の契約を強化する権限を有しているのです16。
第 3 の検討事項は、政府には原則として、世代間にわたり効率的にリスクを分散する手
段があるにもかかわらず、これが実際に行われていないことがあるという点です。最適な
世代間リスク分担は、税金17や社会保障制度18などにより歪められる場合があります。これ
は、最適な程度の世代間のリスク分担が、適切な世代に移っていないということを意味し
ています。政府は既に公的年金やその他社会保障制度を通じて世代間のリスク分担に大き
く関与しています19。実証するのは困難ですが、「政治」のもたらす歪んだ影響によりそれ
らの制度がもたらすものが最適なリスク分担量ではなくなっている可能性があります。同
様の理由により、現在の世代間調整は、将来世代の犠牲の下に、現在の(有権者)世代に
有利に働いている可能性があります20。
4.
様々な年金制度における結果の評価
様々な年金制度の魅力を評価するため、積立比率と所得代替率という 2 つの重要な性能
変数に注目します。積立比率(年金資産の負債に対する比率)は年金制度の支払能力を示
す指標であり、
規制当局と投資家の両者に利用されています。
この比率が 100%を下回ると、
年金制度は積立不足の状態であり、追加拠出や給付の削減、またはその両方により赤字額
を減らすことが求められます。一方、積立比率が 100%を超えると、年金基金は資産超過と
いうことになり、時間をかけてこうした超過資産を配分する戦略が求められます。一定の
超過積立水準を超えると、年金制度は拠出金を減らす、給付額を増やす、またはその両方
の対策をとる可能性があります。積立比率が変動すると拠出金スケジュールの予測可能性
が低下し、拠出者(事業主および被用者)の負担が増加します。拠出金と給付額の調整以
外の手段としては、負債と非常に近い変動の仕方をする資産に投資することによって、年
金制度が積立比率の変動を抑えられる可能性があります。
積立比率は名目および実質で表示することができます。名目積立比率は、発生給付や支
払給付金に対する物価スライドを考慮していません。発生給付は現在の給与を基礎として
計算されますが、支払年金額は長期にわたり一定であると仮定されています。一方で実質
積立比率は、原則として公約または目標とされた物価スライドを完全に考慮する必要があ
16
必然的に(将来の)政治家がこうした契約を反故にする可能性が常にあります。年金改革は世代間契約
を反故にするということとかなりの程度同義です。ただし希望としては、こうした改革が既存の世代間リ
スク分担における現時点での不十分さを改善するものであると考えます。
17
Bohn 他(2005 年)
18
Brown および Orszag 他(2006 年)
19
社会保障制度を通じた世代間にわたるリスクの分配に政府が与える影響を示した重複世代モデルの活
用については、Ball および Mankiw 他(2007 年)を参照。
20
Heller(2003 年)
。この状況は高齢化が進むと悪化する可能性があります。退職者数が増えれば、その投
票力を用いて次世代(少数世代)に対してさらに圧力をかけることができるようになるためです。
29
ります。大半の OECD 諸国では物価スライド制は任意であり、規制当局は通常名目積立比
率を政策変数として使用しています(Pugh および Yermo(2008 年)を参照)
。また、年金基
金に完全積立額以上のソルベンシー・マージンの維持を求める国もあります。これにはデ
ンマーク、フィンランドおよびオランダが該当します。年金基金自体、スポンサーである
事業主および被用者にとって実質積立比率は積立目標とより関連性が高いため、少なくと
も生活費(価格インフレ)と、できれば生活水準(賃金インフレ)を維持できる給付額を
履行することを目標としています。
分析を行った年金制度の第 2 の重要な性能変数は所得代替率であり、これは退職時の受
給者の給付額に対する退職前の最終賃金の割合と定義されます。退職後も生活水準を維持
したい人にとって、妥当な目標所得代替率は 70%です。この水準は、受給者は通常年金制
度に拠出する必要がない、消費の必要性が低下する、特に大半の OECD 諸国において退職
年齢(または一定年齢)に到達した被用者は持ち家を所有しており可処分所得のわずかな
割合しか住居費に支出する必要がない、という事実を考慮しています。所得代替率が変動
すれば退職時に目標収入を獲得する可能性が低くなるため、被用者の福利が低下します。
前述の様々な年金制度は、共通の仮定を用いた簡潔な予想シナリオを用いて、以上の 2
つの基準に基づき評価することができます。
同じ拠出率(給与の 14%)とその他基本的な年金制度上のルール(例:年金形式に
よる支払い)
同じ年金数理的および経済的な仮定(補足資料を参照)
同じ投資方針(60-40 と 30-70 の割合で株と債券に配分)
同じ規制(例:最低および最高積立規則)
具体的には以下の年金制度をモデル化しました。
無条件物価スライド制の全期間平均確定給付型制度:この制度は、全期間平均給与
の一定割合を給付額として支払うもので、過去の給与と支払われる給付金の両方が
年金制度加入者の平均給与伸び率にスライドします。事実上、所得代替率は実質ベ
ースで完全に保証されます。
条件付物価スライド制の全期間平均確定給付型制度:上記と同じですが、発生給付
の計算と支払年金額の物価スライドを目的としたインデックス化が、制度の積立状
況によって異なるという点が違います。積立中か、据置中か、受給者か否かにかか
わらず、こうした条件はすべての加入者に等しく影響します。この公式、すなわち
インデックスの範囲の計算に使用されるインデックス・ラダーは、現在オランダで
30
2 番目に大きい年金基金である Pensionfonds Zorg &Welzijn(PFZW)で活用されてい
ます。インデックス・ラダーについてはボックス 1 で説明しています。
キャッシュバランス制度:この制度は、発生給付、繰延給付金および現在支払われ
ている給付金に適用されている、名目ベースで 3.2%の固定インデックス率に基づい
ています。この率は予想賃金インフレと等しくなります。
集団運用型 DC 制度:給付金は全期間平均確定給付制度と同様に計算されますが、
名目積立比率が 95%を下回ると名目給付額が削減され、105%を超えると削減された
給付額が補填され、180%を超えると追加給付額が支払われます。
「個人」DC 制度:給付金は個人口座と市場利回りを元に計算されますが、確定給
付状況における年金数理上の拠出金の比重を反映するために、長期にわたり拠出率
が上昇します。拠出率上昇のスケジュールにより、この制度をその他の年金制度と
比較することが可能となります。
PFZW のインデックス・ラダーに関する説明
インデックス・ラダーは、年金基金の名目と実質の両積立比率によって決定されます。一定のインデック
スが、医療と社会福祉セクターの賃金インフレ率にリンクします。名目積立比率が 105%を下回ると、物価
スライド制は適用されません。130%を超えると、完全に物価スライド制に移行するためインデックスは賃
金インフレ率と等しくなります。積立比率が 105%から 130%の間の場合、物価スライド制の一部が有効に
なります。例えば積立比率が 117.5%の場合(まさしく 105%と 130%の中間)
、賃金インフレ率の半分が適
用されます。
実質的な積立比率が 100%を超えると追加インデックスが適用されます。この追加インデックスは、過去に
インデックスが適用されなかった場合にのみ適用されるもので、適用されなかったインデックスと全く同
じものが適用されます。例えば、1 年間の名目積立比率が 104%で賃金インフレ率が 3%の場合、インデック
スは適用されません(積立比率が 105%を下回るため)
。仮に 1 年経ち実質積立比率が 100%を超えれば、そ
の年に完全な物価スライド制が適用されるうえ、昨年適用されなかった 3%の追加インデックスが適用され
ます。図 1 はインデックス・ラダーを示したものです。
図 1.
.PFZW のインデックス・ラダー
物価スライド(賃金インフレの割合
物価スライド(賃金インフレの割合%)
)
インデックス・ラダー
150%
140%
130%
120%
110%
100%
90%
80%
70%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
-10%
105%
130%
100%
実質
31
積立比率と給付額予想は、モンテカルロ・シミュレーションに基づいて算出されます。
積立比率は、名目と実質の両ベースで計算されます。実質積立比率は、将来の年金給付額
を割り引くために実質金利を用いて計算される21ことから、年金基金が(価格インフレ率で
はなく)賃金物価スライド制で支払いを行う場合は実質積立比率を過大評価します。近似
値を用いる理由は、賃金調整後の割引率が市場で入手できないためです。しかしながら、
賃金インフレ率は価格インフレ率を平均で 1%上回るという前提に基づくため、賃金ベース
の実質積立比率は、価格ベースの実質割引率を使用して計算した水準を 20%程度下回る可
能性があります。
予測開始時点の実質積立比率は 100%で設定されています。シミュレーションは 500 件の
シナリオを計算し、40 年の予測期間にわたり積立比率と所得代替率の様々な値のアウトプ
ットを生成します22。500 件のシナリオは現実社会におけるシナリオです。すなわちこれは、
将来を見た場合の値であり市場価格の計算には使用できないということになります。
モデルのインプットは、将来 60 年間にわたる、500 個の異なる経済変数シナリオで構成
されています。標準偏差や相関係数などの経済変数の値は過去のデータに基づくものであ
り、リターンは PGGM の推定に基づいています。図 1 は、最も重要な変数値の一部を示し
たものです。
表 1.モデルで使用されている主な金融および経済的変数の統計値
.モデルで使用されている主な金融および経済的変数の統計値
平均(算術平均)
平均(幾何平均)
標準偏差
賃金インフレ率
3.3%
3.2%
3.2%
価格インフレ率
2.0%
2.0%
1.9%
株式リターン
8.7%
7.8%
14.8%
債券リターン
4.4%
4.4%
4.0%
短期金利
(3ヶ月名目金利)
3.8%
3.8%
1.5%
長期金利
(30年名目金利)
5.2%
5.2%
1.2%
短期金利
(3ヶ月実質金利)
1.8%
1.8%
1.1%
長期金利
(30年実質金利)
2.7%
2.7%
0.5%
21
実質積立比率の計算に関する議論は、補足文書 2 に記載されています。
(補足文書 2 は削除されている
ため、この脚注は本文書においては不要です。
)
22
25 歳から 65 歳までが前提としている退職年齢です。退職後期間を 20 年とするため、60 年のシナリオ
を用いています。
32
このモデルでは様々な投資方針が採用されています。1 つはよりリスクの高い、株式 60%
-債券 40%のポートフォリオであり、もう 1 つはより安全な、株式 30%-債券 70%のポー
トフォリオです。また長期名目債とインデックス連動債に対しても、別の予測も行なわれ
ています23。
図 1(a および b)は、60%を株式、40%を名目債に配分した伝統的な DB 制度(無条件物
価スライド制)の名目および実質積立比率の推移を示したものです。積立比率の水準は、
中央値に加えて、1%、5%、10%、90%、95%、99%のパーセンタイルで示しています。考
えられる積立比率水準のレンジ幅が時間とともに拡大しているのは、拠出率(および物価
スライド)が固定されているからであり、そのため基礎変数のボラティリティは積立比率
に累積的な影響を与えます。予測期間の最終時点において、最良と最悪のシナリオ間には
非常に大きな差が生じています(最良シナリオでは 500%超、最悪シナリオでは 0%近辺)
。
図 1.伝統的な
.伝統的な DB 年金制度における名目および実質積立比率(60-
年金制度における名目および実質積立比率( -40 の資産配分)
実質積立比率
名目積立比率
500
450
400
350
300
250
200
150
100
50
0
2008
2013
2018
2023
2028
2033
2038
2043
500
450
400
350
300
250
200
150
100
50
0
2008
2013
2018
2023
2028
2033
2038
2043
年
年
以下の図 2(a および b)と 3(a および b)は、同じ資産配分に対する予測期間(40 年)
終了時の積立比率と所得代替率の結果を示したものです。変数の水準は+/-5% の信頼区
間に示されており、これは 40 年後に変数の水準が図に示された帯の範囲に入る確率が 90%
であることを意味しています。×印がついた中央の点は、予測期間終了時の変数の中央値で
す。
図 2a は名目積立比率を、図 2b は実質積立比率を示しています。実質積立比率はどの年金
制度をとってみても、名目積立比率と類似のパターンを示していますが、そのレンジはず
っと狭まっています。図 3a は、様々な年金制度において、実現する確実度を変えてみた場
合の所得代替率のレンジを示しています。最後に図 3b は、加入者が所得代替率 70%に到達
23
これらのシミュレーションは著者からの要請で行われたものです。これによれば、あらゆるリスク水
準においてより高い積立比率と所得代替率が示されています。
33
すると予想される年齢を様々な確率で表しています。この図は、より長く(より短く)就
労する、すなわち退職が遅くなる(早くなる)場合における目標値である 70%と比べて、
それよりも低い(高い)所得代替率の価値を定量化したものです。
図 2a.
.t=40 における様々な年金制度に対する名目積立比率の予想値
無条件
インデックス
条件付き
インデックス
キャッシュ
バランス
集団運用型 DC
個人 DC
図 2b.
.t=40 における様々な年金制度に対する実質積立比率の予想値
無条件
インデックス
条件付き
インデックス
キャッシュ
バランス
集団運用型 DC
個人 DC
34
図 3a.
.t=40 における様々な年金制度に対する所得代替率
における様々な年金制度に対する所得代替率の予想値
所得代替率の予想値
無条件
インデックス
条件付き
インデックス
キャッシュ
バランス
集団運用型 DC
個人 DC
図 3b.様々な年金制度において
.様々な年金制度において 70%の
%の所得代替率
%の所得代替率に達するのに必要な年齢
所得代替率に達するのに必要な年齢
無条件
インデックス
条件付き
インデックス
キャッシュ
バランス
集団運用型 DC
個人 DC
図 2a および 2b と図 3a および 3b を対比すると、積立比率または所得代替率のどちらかの
リスクが顕在化します。この予想では拠出率が一定であると仮定しているため、所得代替
率に高い安定性を求めれば(起こりうる結果のレンジを狭くする)、積立比率の変動幅は大
きくなります。起こりうる積立比率と所得代替率のレンジは非常に大きくなります。極端
な場合、無条件物価スライド制(両図の一番左)では、すべてのシナリオで所得代替率は
35
約 70%になりますが、これに相応する積立比率は 20%から約 340%の間になります(この水
準以下または水準以上の積立比率になる確率はそれぞれ 5%です)。もう一方の極端な場合、
純粋な DC 制度は常に完全に積み立てられていますが、起こりうる所得代替率のレンジは
50%から 112%になります。図 3b からは、純粋な DC 制度における最低の値である 5%のシ
ナリオでは(所得代替率は 50%以下)、目標値である 70%の所得代替率を達成するために、
少なくとも 3 年間は追加で就労しなければならないということが分かります。
両制度の間に位置する年金制度は、積立比率と所得代替率の両方の変動を伴う様々な形
式のリスク共同負担契約となりますが、上記 2 つの極端な場合よりはレンジが狭くなりま
す。特に、条件付物価スライド制では積立不足のリスクは低下しますが、無条件物価スラ
イド制のシナリオよりも所得代替率が低下する(またある程度上昇することもある)リス
クがあります。
キャッシュバランス制度では、所得代替率が改善する可能性がありますが、積立超過リ
スクが低下し、条件付物価スライド制と比べ積立不足に陥るリスクが高まります。同じく
集団運用型 DC では積立比率に対する安定性は高まりますが、これは所得代替率の変動が大
きくなるという犠牲を伴います。実のところ、この制度により支給される給付額は、純粋
な DC 制度とあまり変わりません。
5.
「最適な」年金制度の選択方法
上記で説明した様々な年金制度の中から、事業主や被用者はどのように選択を行うべき
でしょうか?リスク回避的な労働者の立場から見れば、無条件スライド制の全期間平均給
与方式が自然な選択肢になると見られます。この制度による所得代替率(約 70%)は、そ
の他年金制度における平均的シナリオとほぼ等しい数値となります。しかし、その他すべ
ての年金制度では、労働者はこの平均水準よりも給付額が低くなる、または高くなる可能
性があります。
しかしながら、一定の所得代替率を確約するには、積立比率のリスクが管理されなけれ
ばなりません。規制当局がソルベンシーリスクと税制乱用をそれぞれ制限するために、積
立不足と積立超過の両方に制約を置くと、拠出方針を変更して積立比率を変更できるよう
に修正する必要があります。ひいては、これは労働者が純賃金額の変動に最終的にさらさ
れるということを意味します。受給者所得の安定性は、最終的に労働者収入の不安定性を
引き起こします24。
24
高齢化社会では、こうした不安定性がさらに拡大します。増加しつつある、多数の年金受給者のリスク
を、少数の、減少しつつある労働者が負担しているのです。
36
退職後に所得代替率が変動することを許容すれば、事業主と労働者は積立比率の変動に
よる影響を低下させることができます。事業主、労働者および年金受給者はそれぞれの関
心事を満たすように、積立金と給付金の変動の間で適切な妥協点を決定する必要がありま
す。積立比率が変動するということは、現役世代の加入者の消費が変動するということで
あり(年金基金は拠出方針を活用して積立比率を持続可能な水準に操作する)、所得代替率
が変動するということは、引退年齢付近の消費パターンが変動するということです。人は
生涯にわたり消費パターンを平坦にするよう模索するため、政策手段として拠出率と給付
(所得代替率)の両方を活用するハイブリッド年金制度は、2 つの手段のいずれかのみを使
用した制度より優れているように思われます。
しかし、こうしたリスク分担型の年金制度はすべて、異なる利害関係者がそれぞれ責任
を果たすという確約が必要です。これらの確約は長期にわたり守られるでしょうか?リス
ク分担制度において、これまでよりも高い拠出率にさらされる世代は、最終的に、退職時
において過去の世代よりも所得代替率が低くなる可能性があります。そのため、給付額の
ばらつきが大きくなれば、労働者が拠出額の増加を通じて現在の受益者を支える意欲が低
下するという議論がなされるかもしれません。
この問題を一般化するのは難しいことですが、キャッシュバランス制度においてはこう
した世代間の利益相反が生じる危険性が最も高まると思われます。条件付スライド制と集
団運用型 DC 制度は共に、積立不足のリスクを、拠出率を変える必要性がほぼ無くなる程度
にまで低減することができます。実質の積立比率が 65%を下回るのは 5%の最悪シナリオ
のみである一方、名目積立比率は 5%の最悪シナリオでは 94%(条件付き物価スライド制)
および 91%(集団運用型 DC 制度)をわずかに下回ります。一方、キャッシュバランス制
度では、実質および名目積立比率は、5%の最悪シナリオでは、それぞれ 46%および 63%
を下回ると予想されています。少なくともスライド制が保証されず、キャッシュバランス
制度の拠出方針が著しくぶれやすい場合、年金規制当局は主に名目積立比率を重視します。
条件付スライド制には異なる種類の問題があります。巨額な積立剰余金または積立超過
を蓄積する可能性です25。このような状況は給付金の増額を要求するばかりでなく、実際に
は年金基金による税制乱用を懸念する多くの国々の税務当局によって禁止されています26。
非常に高水準の積立超過という状況に対する実際の対処法としては、伝統的な確定給付制
度の場合と同様、保険料払込の休止(contribution holidays)を採択するという手段があります。
しかしながら、現在の年金受給者からは給付金の増額を求められるかもしれません。した
25
インフレ率が低いと物価スライド制による誘導効果があまり見られなくなるということが、もう一つの
問題点です。
26
しかしながら、欧州諸国の中には規制当局の要求により、年金制度が負うリスクに対して何らかのバッ
ファーが必要となる場合があります。
37
がって条件付スライド制には、巨額の積立超過の配分方法に関して透明性の高い、各世代
を納得させる政策が求められます。
積立不足および積立超過を巡る世代間の対立は、前章でモデル化した集団運用型 DC で実
証されたような年金制度に有利に働きます。積立不足が給付額の低下につながる一方、明
確な方針規則に従えば、積立超過は給付額を増加させます。しかしながら、こうした制度
の下方リスクと上方リスクは純粋な DC 制度と非常に類似しているため、労働者と年金受給
者は集団運用型 DC 制度におけるリスク分担の価値に疑問を抱くかもしれません。集団運用
型 DC 制度におけるリスク分担の程度は、年金基金が給付金を削減および増加させる水準に
依存しています27。
こうした様々な年金制度の持続可能性を評価するために、リスク分担に関する 3 つの異
なる次元[所得代替率の予測可能性、拠出率の上昇リスク、高い積立比率のリスク(巨額
な剰余金の積み上がり)
]に沿って、表 2 にこれらの議論を要約しました。このスコアは+
/-に基づいており、「+」は加入者の視点から見たプラスの結果を、「-」はマイナスの
結果を示します。プラスとマイナスの数は効果の重要度を示しています。純粋な DC 制度は
3 つすべての指標がゼロのスコアであることから、その他制度のスコアに対する参照値とし
て利用されています。
給付額の予測可能性と安定性が高まれば、制度加入者にとって年金契約の価値が高まり
ます。一方、拠出率が上昇するリスクが高まれば、契約価値が低下します。最後に、巨額
の剰余金が積み上がると、特別支出や拠出金の引下げが求められる可能性があるため、当
該年金契約の実現可能性が損なわれます。しかしながら、前述のように、巨額の剰余金を
世代間が納得するルールにより配分することが可能です。通常、これらが認識されている
年金契約価値に与える脅威は、拠出率の増加ほど大きくありません。
27
集団運用型 DC 制度では、名目積立比率が 95%を下回ると給付金が削減され、180%を超えると増加する
と仮定しています(29 段落を参照)
。この幅が広がれば(給付金を削減および増加することなく)
、給付金
はさらに安定しますが、積立比率のばらつきは拡大します。ここで様々な年金制度を最適化しようとはし
ていません。
38
表 2.様々な年金制度の
.様々な年金制度のリスク分担
.様々な年金制度のリスク分担側面
リスク分担側面
年金制度
所得代替率の水準と
拠出水準上昇のリスク
積立比率上昇のリスク
++++
----
----
++
-
----
+++
---
---
集団運用型DC
+
-
-
純粋なDC
0
0
0
予測可能性
DB、無条件
スライド制
DB、条件付
スライド制
キャッシュ
バランス
結論
この研究では、一方で拠出金の不確実性と、他方で様々な年金契約に組み込まれている
給付金との間の二律背反性を分析することにより、様々な年金制度の魅力を加入者の視点
から評価しています。本文では、加入者の視点から見た様々な私的年金制度やスキームの
リスク分担特性を評価する主な基準として、積立比率(負債に対する資産の割合)と所得
代替率(給与に対する給付金の割合)を使用しました。拠出金を支払うのが事業主、被用
者またはその両者の組み合わせであるかどうかにかかわらず、こうした二律背反性は様々
なスキーム内におけるリスク分担特性によって異なります。本書で検討した年金制度は、
所得代替率が実質ベースで保証されている伝統的な DB 制度(給付リスクなし)から、個人
の加入者が 3 つの主なリスク源泉(投資リスク、インフレリスク、長寿リスク)から端を
発する給付水準の不確実性を完全に負う純粋な DC 制度または個人 DC 制度にまで及びます。
このシミュレーション(インフレリスクと投資リスクに焦点をあてています)によれば、
ハイブリッド制度(伝統的な DB と個人 DC の間に位置づけられるもの)は、より効率的で
持続可能なリスク分担をもたらすことがわかります。条件付スライド制では、所得代替率
の予測可能性が高まり、積立不足を修正するために高い拠出率が必要になるリスクが低下
し、巨額の積立剰余金が積み上がる危険性のみが上昇しました。しかし、最後の特性は、
疎ましいというよりは最終的には望ましい特性であるということも分かっています。対照
的に、集団運用型 DC 制度は積立超過に陥るリスクはありませんが、年金受給者は大きな所
得代替率リスクにさらされるため、個人 DC 制度とさほど変わらない給付レンジとなります。
モデル化したキャッシュバランス制度は、これら 2 つのいずれの制度よりも所得代替率に
対する下方リスクは低くなりますが、積立不足のリスクは重大であり、したがって拠出率
が上昇する可能性があります。しかしこうした積立不足リスクは、拠出金に関する固定さ
39
れた予定利率の前提に基づくということにも注意が必要です。実際には、キャッシュバラ
ンス制度では、国債利回りなどの市場利回りにリターン(および給付)をリンクさせてい
ることから、積立不足はさほど問題にならず、給付水準に対するリスクが高まるものと見
られます。
要するに、今日の規制や社会・経済的な環境においては条件付スライド制が、拠出費用
をある程度一定に維持しつつ予測可能性の高い年金を提供する上で、もっとも可能性が高
い制度であると考えられるため、ここではこれを持続可能なリスク分担形式として提案し
ています。ここで検討したものより改良された条件付スライド制であれば、現役世代の加
入者に対する給付金(積立剰余金を活用)の増加と引替えに、受給者に対してスライド制
よりも優れた保障を提供できる可能性があります。しかしながら、具体的な年金制度の選
択は最終的に被用者と受給者の選好によっており、特に世代間リスク分担契約への責任に
対するリスク回避的な度合いと、それを許容できるまたは受け入れる程度によって決定さ
れます。
追加研究では、シミュレーションに長寿リスクも取り込み、異なる年齢の被用者や受給
者に至るまで様々な年金制度が持つ純経済価値の分布を計算することにより、この研究を
さらに拡大することにしています。
40
参考文献
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41
補足文書 1:リスク移転手段
:リスク移転手段
この補足文書では、リスク移転についてのいくつかの提案を検討しています。本文で述
べたとおり、具体例として長寿リスクを取り上げます。年金基金(または年金提供業者)
が効率的に長寿リスクを吸収および管理できない場合、リスク移転が必要か、またはそれ
を検討しなければなりません28。年金基金と年金提供業者の抱える長寿リスクの移転29は、
主に 4 つの手段を通じて実施することができます30。
•
保障を求める者が再保険会社に保険契約を結ぶ
•
大量の「バイアウト」を通じ、DB 給付金を年金に転換する
•
年金提供業者がバランス型保険商品を引き受ける31
•
資本市場によるソリューション
再保険会社は、かなり限られた引受能力しか保有していません。長寿リスクが相対的に
低い水準に抑えられる一方、原則として再保険会社は、既存顧客およびリスク・パッケー
ジ全体の一部のためでなければこのリスクを取ることはありません32。こうした状況は長寿
リスクに対する正確な知識が広まり、リスク移転に対する需要が増加すれば改善するかも
しれません。しかし結果として現段階では、長寿リスク取引に対する再保険会社の意欲は
どちらかといえば小さいようです。
また、バイアウト市場の引受能力もかなり限定的なものです。DB 給付金を年金に転換す
るのは非常に費用がかかる一方、保険引受能力は著しく限られています。当初、英国のバ
イアウト市場の規模は小さく、2 社の主要再保険会社が活動しているだけでした33。しかし
28
年金基金の重要な仲介機能は、長寿リスクを吸収し管理することだと言えます。すなわち原則として、
現役世代の加入者は年金受給者からリスクを引き受けています。年金基金はしたがって、受給者にこうし
たリスク管理機能を提供することにより、市場をより完全にするのです。本来、こうしたリスクは適切に
価格に織り込まれるべきであり、年金基金(特に大規模な年金基金)は長寿リスクを管理するのに必要な
専門知識と比較優位性を持つべきです。この意味において、現役世代の加入者(およびこうしたリスクを
引き受けるその他利害関係者)は、適切な見返りを得ています(実際見返りを得ることができるのです)。
29
年金基金が直面する長寿リスクはまた、将来的な拠出方針(例:将来の負債に寿命の伸びを含める、マ
ージンを含める)により管理することもできます。また、将来的な拠出方針はある程度ヘッジとしても機
能します。
30
「長寿債市場を加速させる主要な要因は何か」ワシントン DC で 2005 年 5 月 23 日~24 日にかけて行わ
れた「第 7 回年次 OECD 世界銀行グローバル債券市場フォーラム」において Thomas Schroeder および David
Clark が行ったプレゼンテーションにおける資料(2004 年)。
「長寿リスクの金融的側面」2005 年 10 月 26
日にロンドン Staple Inn Actuarial Society に対して行ったプレゼンテーションにおける資料。
「市場の発展に
対する課題」モルガンスタンレー主催 2005 年 2 月 18 日にロンドンにて行われた長寿リスクと資本市場の
ソリューションに関する第 1 回国際会議におけるプレゼンテーション。
31
(一般的な) 下方リスクに対する保障を購入した年金基金もあります(例:赤字に対する保障のため
のプット・オプション)
。
32
Stephen Richards および Gavin Jones 他(2004 年)
33
Alistair Byrne および Debbie Harrison 「長寿リスクは片道市場か?」2005 年 2 月 18 日にロンドンで開
催された長寿リスクと資本市場のソリューションに関する第 1 回国際会議に関する報告
42
ながら、最近では(ここ 1~2 年の間)、英国バイアウト市場は大幅に拡大しています。
長寿リスクを移転する 3 番目の方法は、バランス型商品を通じたヘッジに基づく方法で
す。長寿リスクの保有者が定期保険ポートフォリオ付きの契約を締結する場合が明らかな
事例であり、この契約により一般的な水準の年金と終身年金が共に年金費用の価値を構成
します。その結果生じる原リスク同士の組み合わせ(死亡リスクと長寿リスク)により、
将来の寿命の延びに対する保険会社のエクスポージャーを減らすことができるため、この
リスクに関して保有すべき所要資本も減ることになります。
最初の 3 つの長寿リスク移転手段には非常に限られた機能しかないため、資本市場によ
るソリューションが模索されました。最後の長寿リスク移転手段は、保障を求める者が長
寿債を購入できるというものです34。この資本市場による手段については以後本章で議論し
ます。
年金基金と年金提供業者の抱える長寿リスクに対するエクスポージャーを減らすための
解決策は、概念としては単純で、こうした基金などが信頼できる長寿インデックスに連動
する資本市場商品の構築を求めるというものです。予想を超えて寿命が延びた場合、イン
デックスが適切であれば、クーポンか元本(またはその両方)が債務不履行に陥る危険性
のある長寿債を構築することができます35。こうした商品を活用して、死亡リスクと長寿リ
スクをヘッジすることが可能です36。しかしながら、現在開発または販売されている長寿関
連商品の大半は、現在の長寿リスクに対するヘッジとして販売されているものです。年金
基金はまた、将来の長寿リスクのヘッジにも関心があります(現在 25 歳の人が 5 年長生き
する可能性は、既に 80 歳である人よりも大幅に高まります)
。
生命保険会社と年金基金の負債構造は似ていますが、両者の視点は異なります37。保険会
社は潜在的なカタストロフィーロスに懸念を持ちますが、年金基金の目的は、損失増加か
34
別の資本市場商品は、主に(部分)ヘッジを提供できます。例えば、長く生きる人は長く消費活動をし
ます。その結果、多くの企業、とりわけ医薬品セクターとその他高齢者関連企業の収益がさらに増加しま
す。これは、株式市場もまた(少なくともある程度は)長寿リスクに対するヘッジとなることを示唆する
ものです。
35
Stephen Richards および Gavin Jones 他(2004 年)
36
これは部分ヘッジになり得るということです。なぜならば実務上大きなベーシス・リスクが発生するか
らです。すなわち、年金受給者や年金基金の加入者のポートフォリオまたは保険スキームは、債券にとっ
ての原インデックスと比較すると寿命の改善傾向が非常に異なる可能性があり、こうしたベーシス・リス
クがポートフォリオや年金、保険スキームに残るからです。例えば、Francis Fernandes(2005 年)は、ほぼ
20%程度であると主張しています。年金基金の加入者の寿命は通常一般国民よりも長いため、より一般的
には、一般国民に連動するインデックスは年金基金にとってベーシス・リスクが内包されることを意味し
ます。
[一般国民のうち労働層は、一般国民全体よりも寿命が長いということに注意(一般国民全体には「病
人」も含まれているため)
]
。
37
Phillip Roberts(2005 年)
「長寿リスク移転を促進するための実務的枠組み」2005 年 2 月 18 日ロンドン
で開催され長寿リスクと資本市場のソリューションに関する第 1 回国際会議でのプレゼンテーション
43
ら企業のキャッシュフローを守ることです。
しかしながら、実務上、短期的に民間セクターがこうした商品において大きな役割を果
たす可能性は低いとみられます。研究によれば、長寿リスク商品において近い将来民間セ
クター主導の市場が大々的に発展する見込みのない理由を説明する、多くの主要な障害が
挙げられています38。これらの理由により、公共政策が長寿インデックス債を発行すること
で資本市場の中心的な役割を果たすべきと多くのアナリストが提唱しています。しかしな
がらこの公共政策の役割は、バランスシートから見ると、政府自身が既に大きな長寿リス
クにさらされているという事実(上述の通り)により阻害されます。つまり、長寿連動国
債(LIB)を発行すれば、政府が抱える現在のエクスポージャーがさらに拡大する可能性が
あるということです。先に、筆者の一人は現段階で大規模な LIB 市場が成功する見通しが
明るくないと結論づけました39。また、民間セクターによる大規模な資本市場ソリューショ
ンにとって、政府による少額発行の LIB が十分なベンチマークとなりうるかどうかには疑
問が残ります。
しかし、おそらく政府は、指標やスライドの種類など、市場の実務や慣習に関する多く
の重大な難題を克服する上で大きな役割を果たすことができます40。LIB に組み込むことが
できるようなインデックスの開発が必要です。またこうした指標は、将来の死亡率を測定
するベンチマークとなるため、確固としたデータや統計的な信頼性、偏見のない方法に基
づき計算された簡潔かつ透明性の高いものである必要があります41。政府当局により算出さ
れた統計は、政府が独立した専門機関として機能する限り(日常的な政治的圧力から解放
される必要がある)
、この基準を満たすことができます。また別の実務的な問題点は、将来
の死亡率を予想するための確率死亡率モデルを巡り、市場が懐疑的な見方を取ることです。
こうした問題を克服できれば、民間機関による資本市場のソリューション(新しい商品な
ど)を見出すことができるでしょう。
38
Hans J.Blommenstein(2006 年)「長寿連動国債(LIB)が市場で成功する要件(公的債務管理の視点から)
」
Pension Management 第 11 巻、2 号 Palgrave Macmillan 社発行
39
Blommenstein 他(2006 年)
40
政府は利害関係者の一人なので、独立した政府当局が市場基準の設定に関与することが望ましいと思わ
れます(以下に提案したとおり)
。また専門性を有し認知度の高い組織も関与させることができます。例え
ば、オランダでは、Actuarial Society(Actuarieel Genootschap)が死亡率表(予想傾向を含む)を作成してい
ます。
41
Phil Roberts 他(2005 年)
44
本文の原文は OECD で
Blommestein, H. et al. (2009), "Evaluating the Design of Private Pension Plans: Costs and Benefits of Risk-Sharing",
OECD Working Papers on Insurance and Private Pensions, No. 34.
doi:10.1787/225162646207
として出版されたものであり、著作権のすべては OECD が保有する。
©2009 OECD
©2012 Japanese Society of Certified Pension Actuaries for this Japanese edition
本日本語訳は社団法人日本年金数理人会が OECD,Paris の許可を得て出版するものである。
日本語訳の質と原文との一致については社団法人日本年金数理人会の責任である。
45
書籍紹介
書籍紹介「アクチュアリー数学シリーズ 3 年金数理」田中周二
年金数理」田中周二,
田中周二 小野正昭,
小野正昭 斧田浩二著
2011 年 日本評論社
(調査研究委員会 濱田圭三)
本書は、アクチュアリー数学シリーズの「年金数
理」のテキストであり、アクチュアリー試験の受験
を目指す学生や社会人のほか、年金全般に興味があ
り、その中で年金数理について知識を得ようと考え
ている人も読者対象としている。
アクチュアリーには「保険」と「年金」の 2 つの
分野があり、
「年金」に携わるアクチュアリーである
年金アクチュアリーは、年金数理という専門的知識
を通じて様々な企業の企業年金の設立・運営に専門
的なアドバイスを行うことを主な仕事としている。
また、年金基金担当者、企業の人事・財務の役員、
及び、担当者と接する機会も多くなってきているこ
とから、このような年金関係者に対して、わかりや
すく説明できるコミュニケーション能力も要求されるため、年金数理のみならず、年金に
関わる会計学、経営学、及び、資産運用に関する一定以上の知識、さらには国内外の年金
をめぐる情報を通じてアドバイスができることも必要とされている。本書は、年金数理を
単に学ぶ教科書の位置づけにとどまらず、経済社会にとって重要な年金の制度運営のあり
方を読者に意識させ幅広い視野で学習させるといった実務書的な内容が盛り込まれている。
さらに、年金に関する話題として「BOX」というコラムが設けられており、著者の実務上、
見聞きしたこと、経験したことに基づいた興味深い内容が記載されており、読者を飽きさ
せない構成になっている点も特徴的である。
本書は第8章からなり、大きくは第Ⅰ部:年金制度の概観(第1章)
、第Ⅱ部:年金数理
の基礎(第2章~第6章)
、第Ⅲ部:年金数理の展開(第 7 章~第8章)の 3 部構成となっ
ている。
第Ⅰ部では、年金制度の概要が説明されており、第 1 章で、各種の年金制度、特に日本
の公的年金、企業年金の概要説明を通じて、年金数理の対象となる年金制度を理解させる
ことを主眼としている。特に、各種年金制度の誕生について過去の歴史を紐解きながら説
明しているため、知識の習得にスムーズな構成となっている。本章の「BOX」には日本
の公的年金が社会保険の仕組みと採用している理由を歴史の教訓を通じて、生活保護との
違いを交えて説明をしている。
第Ⅱ部では、年金数理の基礎的事項を取り上げ、第2章で、年金数理の前提となる生命
46
保険数理について解説している。年金数理に関する通常の書籍よりも平易に解説されてお
り、とかく式の羅列に終始しまいがちな箇所についても文章による補足がなされており、
初学者にかぎらず生保数理をすでに学んだ者にとっても知識の再整理に有益な内容となっ
ている。第3章は、生保数理の根幹である財政方式に関する解説章で、給付現価、給与現
価、及び、各種の財政方式について第2章同様、文章による解説を豊富に盛り込みながら
展開式の意味するところを丁寧に解説し、初学者目線で記載されているのが興味深い。第
4章では、年金制度の理想の状態である定常状態を取り上げ、第3章で解説した財政方式
の分析を通じて積立レベルに応じた財政方式の分類を行っている。ややもすれば単調な解
説になりがちな内容を、年金制度の数理的健全性の概念として、事前積立方式の採用、合
理的な計算基礎、積立不足の計画的解消(スポンサー企業の保険料支払い能力に応じた計
画的解消)が重要であることを伝え、後のエリサ法の年金受給権保護の基礎固めに寄与し
た米国アクチュアリーDorance C.Bronson 氏の紹介を「BOX」に掲載し、各種財政方式の
特徴と数理的健全性を関連づけながら解説をしている。第5章で、年金制度の財政運営(決
算と再計算)を年金数理の観点から解説しており、具体的には設立時、設立時以降の各決
算時点における数理債務の算定、掛金率の算定方法、及び、数理損益の発生メカニズムに
ついて記載している。また、昨今、年金数理に携わる者が企業年金の掛金引上げを要する
具体的な事例に直面することが少なくないことから、日頃から企業年金関係者と信頼関係
を築き上げ何でもいえる雰囲気をつくっておくことが年金数理を裏づけとした対応策を理
解させるために肝要であることを「BOX」に掲載している。理論だけでなく日頃の心構
えが、実務では重要であることを記載している点も、一般的な教則本とは違った書籍であ
ることに注目したい。第6章では、退職給付会計基準の基礎について具体的な数字を事例
に解説がなされ、実践的な問題として数理計算上の差異の分析にも触れられており、実務
上有益な内容となっている。
第Ⅲ部では、年金数理の展開として、第7章公的年金の数理、第8章年金数理の革新を
取り上げ、公的年金制度の基礎となる「人口理論」を説明し、グローバル金融危機による
給付建ての年金基金のダメージを通じて年金会計、年金数理の問題提起をしている。第7
章では、公的年金制度に関して、基礎となる「人口理論」の説明を通じて、賦課方式の公
的年金における財政モデルの一例を解説している。後半で平成 16 年改正のマクロ経済スラ
イドの具体的説明をし、
「スウェーデン方式」よりも利点があることを説明している。第8
章では、年金数理の革新を取り上げ、2000 年~2003 年の世界同時株安や 2008 年のリーマ
ンショックにより世界中の確定給付建ての年金基金が壊滅的なダメージを受けたことが金
融資本市場の問題のみならず、従来の年金会計や年金数理の考え方に問題がなかったどう
か疑問を投げかけ、新しい年金数理の行方を考察している。
とかくこの手の書籍は内容が単調な構成になっていて初学者の理解が深まらないことが多
いが、本書は、平易な表現でわかりやすく解説している一方で、アクチュアリー試験及び
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日本年金数理人会の年金数理の試験対策用の教科書としても対応できるよう難易度の高い
内容も掲載し解説しているため、メリハリのある構成になっている。また、
「BOX」をはじ
めとして、実務に携わる人にとっても知識の再整理に役立つ内容が盛り込まれているため、
仕事上の新たな発見契機にも繋がる有益な書籍といえるであろう。
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論文募集について
論文募集について
本誌では、下記要領にて論文を募集いたします。
1. 応募テーマ
企業年金の制度、財政、会計、税制、投資理論、ファイナンス等に関する内容をはじめ、公的
年金、社会保障等も含めた広く年金に関る内容を対象とします。
例:
・ 人口減少・高齢社会における公私年金の役割と運営のあり方
・ 退職給付の債務・費用の測定のあり方
・ 企業年金の本質と今後の企業年金のあるべき姿
・ 終身年金の効用と普及のための課題
2. 応募資格
企業年金に関心のある方ならどなたでも結構です。年齢、国籍を問いません。また、団体等共
同執筆による応募も可とします。
3. 応募方法概要
(1) 論文は、次の書式等とします。
・ A4 判横書き 5~10 頁程度、1 頁 40 字×36 行、日本語
・ 表やグラフは最小限
・ 他から引用した部分や統計は出所を明示
・ 氏名、住所、電話番号、FAX、メールアドレスを記載
(2) 未発表の論文又は既発表の論文としますが、既発表の論文の場合には、発表先の了解を予
め得てください。
(3) 提出された論文は返却しません。
(4) 日本年金数理人会調査研究委員会にて、掲載の可否を決定いたします。
4. 企業年金研究賞論文について
日本年金数理人会では、JSCPA 調査報掲載の論文の中から、優秀な作品について企業年金
研究賞を授与します。
詳細が決まりましたら、別途お知らせをいたします。
5. 論文送付先
お問合せ・応募先
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社団法人 日本年金数理人会 調査研究委員会
〒108-0014 東京都港区芝 4-1-23 三田NNビルB1 階
電 話 03-5442-0208 FAX 03-5442-0700
ホームページ http://www.jscpa.or.jp/
電子メール
mitann#[email protected]
ご意見・ご要望について
ご意見・ご要望について
日本年金数理人会調査研究委員会では、会員の皆様からの本調査報への、ご意見、ご
要望を受け付けています。
調査報の内容、今後取り上げてほしいテーマなど、ぜひお寄せください。
ご意見・ご要望の送付先
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2012 年 5 月 発 行
発行者 社団法人日本年金数理人会
〒108-0014 東京都港区芝 4-1-23 三田NNビルB1 階
電 話 03-5442-0208 FAX 03-5442-0700
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編 集 社団法人日本年金数理人会 調査研究委員会
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