光−空気2次電池の構成材料の特性改良 横田優治* 馬場大輔* 天城裕子* 佐藤 亨* 石井啓貴* Improvement of Materials of Photo-rechargeable Air Battery Yuji Yokota*, Daisuke Baba*, Yuko Amaki*, Toru Sato*, Hirotaka Ishii* 妙録 光エネルギー充電と酸素をエネルギー源とした放電を組み合わせた光−空気2次電池を試作し、その電 極材料である Ti の処理方法により充放電特性がどのように影響されるかを検討した。 下側が正極(酸素極)、上側が負極(光充電極) 1.諸言 熱,光,放射線など自然界から与えられたエネ ルギーを電気エネルギーに変換して蓄積する電池 を一般に物理電池といい、中でも光エネルギーか である。負極には光反応性放電生成物を用いる。 正極と負極の間には電解液が存在する。 正極では外部から取り込んだ酸素と触媒により ら変換する太陽電池が良く知られている。しかし、 電気化学反応が進行し、放電が起こる。電流が流 太陽電池自身にはエネルギーの蓄積能力がなく、 れ込む負極では酸化が進み、完全放電状態では金 蓄電池と充放電制御回路等を組み合わせて使用し 属酸化物に変化する。このとき負極に光を当てる なくてはならない。そこで蓄電能力を持つ太陽電 と、電子が励起され金属酸化物が金属へと還元さ 池とも言うべき、光エネルギー充電と酸素をエネ れ、充電が行われる。今回は負極に Ti を用いてお ルギー源とした放電を組み合わせた光−空気2次 り、反応式は以下に示す通りである。 電池が提案されてきた。本報告では、電極材料に ・放電 Ti と Pt を用いた光−空気2次電池のモデル電池 負極:Ti+4OH − →TiO 2 +2H 2 O+4e − を試作し、充放電特性を測定するとともに、電極 正極:O 2 +2H 2 O+4e − →4OH − 材料に施すさまざまな処理方法が充放電特性にど のように影響するかを検討した。 ・充電 負極:TiO 2 +2H 2 O+4e − →Ti+4OH − 正極:4OH − +4p + →O 2 +2H 2 O 2.実験 2.1 実験装置 図1に光−空気2次電池の概念図を示す。 図2に今回実際作成したモデル電池の構成図を 示す。 図1.光−空気2次電池概念図 *下越技術支援センター 図2.モデル電池の構成図 今回試作したモデル電池は Ti/KOH/O 2 モデルで ある。正極材料には Pt を用い、一部を空気中に露 出した。負極材料には Ti を用い各種の処理を施し た。電解質溶液には 1mol/l KOH 水溶液を用いた。 光源には Xe アークランプ(照度 76000lx、照射面 積 10cm2 )を用いた。 図3に実際に作成したモデル電池の外観を示 す。 図5.Xe アークランプの分光特性 2.2.2 負極材料の処理 今回は負極材料として純チタン材を用いた。負 極における光充電反応に TiO 2 が関与しているこ とから純チタン材に処理を施し表面に TiO 2 被膜 を形成させ、充放電特性実験を行った。処理条件 は以下に示す通りである。 (1)未処理 図3.モデル電池写真 (2)陽極酸化① 溶液:硫酸15%、リン酸1%混合溶液 2.2 実験条件 2.2.1 Xe アークランプの特性 実験に用いた Xe アークランプの照度特性を図 4に、分光特性を図5に示す。 印加電圧:DC100V 処理時間:2分 (3)陽極酸化② (2)において処理時間を1時間としたもの (4)青色処理 溶液:硫酸15%溶液 印加電圧:DC100V 処理時間:30秒 未処理、陽極酸化ともに Ti 電極を SEM(日本電子 製 JSM-T220A)で観察したところ、陽極酸化処理 品については TiO 2 の多孔質被膜が形成されてい るのが確認できた。図6に SEM 写真を示す。 図4.Xe アークランプの照度特性 TiO 2 が光反応極として作用し、Ti O 2 →Ti への還元 反応がおきる波長は約 380nm 以下の領域であり、 今回用いた Xe アークランプの光の数%が反応に 関わっているものと考えられる。 図6.負極材の SEM 写真 (左が未処理,右が陽極酸化1時間) 2.2.3 充放電特性の測定 上記の負極を用いて光充電、放電を各 3 分ずつ とし、2 サイクル行い、充放電電圧と充放電電流 を測定した。 3.結果と考察 3.1 充放電特性の測定結果 図7に上記の条件にて測定した充放電特性の結 果を示す。(負極は未処理のものを用いている。) 図8.充放電電圧の比較 図7.充放電特性の測定結果 (負極:未処理 Ti) 上段のグラフが充放電電圧の経時変化を示して おり、下段が充放電電流の変化を表している。3 図9.充放電電流の比較 分間 Xe アークランプを点灯させ充電を行い、その 後3分間消灯し放電を行い、それを2サイクル行 った。電圧の経時変化はランプの点灯・消灯に対 処理時間が短くなるにつれて放電電流の値が大 きくなるのが確認できる。 応している。光照射により電圧の立ち上がりが見 られ、充電が行われていることがわかる。また、 放電後の負極への光照射により、電池電圧の回復 3.4 充放電容量の比較 図 10 に充放電容量の比較のグラフを示す。 が確認され、繰り返し充放電可能であることも確 認できた。 3.2 充放電電圧の比較 図8に負極材料の処理を変えたものに対しての 充放電電圧の比較のグラフを示す。 処理時間が短くなるにつれて電圧の立ち上がり の曲線が急激であることが確認できる。 3.3 充放電電流の比較 図9に負極材料の処理を変えたものに対しての 充放電電流の比較のグラフを示す。 図 10.充放電容量の比較 充放電容量は電流の積算値であり、単位時間当 たりにどれぐらい電流が流れたかを示すものであ る。未処理のものが最大の値を示していることが わかる。陽極酸化処理時間が長くなるに従い、TiO 2 被膜の膜厚が増大し、表面部の TiO 2 →Ti 間の励起 電子の移動が困難になることにより電池性能の低 下をまねくものと考えられる。 4.まとめ 光空気2次電池として、チタンと白金を使った、 モデル電池を試作した。電池を構成する各材料、 機器の特性を測定した。実際に充放電を行い、特 性を測定した。負極材料として、使用したチタン に様々な処理を施し、電池性能の違いを比較した。
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