医療行政学講義 萩原 明人 1.講義の目的 近年、わが国では少子高齢化が進行し、国民医療費が増大し続けている。これらの事情 を背景に、医療行政は効率的に行われることが強く求められている。説明責任 (accountability)ということが言われるようになり、行なわれている行政施策に関しては、 それらが合理的かつ効率的であることが国民にきっちり説明出来ることが要請されている。 以上の認識を踏まえ、本講義では、 (1)具体的な事例検討を通じてプログラム評価の考え 方を理解すること、 (2)医療行政の指標を設定することの必要性や困難さを理解すること、 を講義の目的とする。 2.講義計画の概要(2008年度予定) 第1回、 オリエンテーション、課題の概要説明 第2回 プログラム評価の方法(1)(Goal-attainment model, Goal-Free model) 第3回 プログラム評価の方法(2)(Responsive evaluation model, MAUT model) 第4回 行政学の基礎(官僚制度、政策形成と政策立案、行政効率)(1) 第5回 行政学の基礎(官僚制度、政策形成と政策立案、行政効率)(2) 第6回 プログラム評価の方法(3)プログラム評価のケース・スタデイー(事例1,2) 第7回 プログラム評価の方法(4)プログラム評価のケース・スタデイー(事例4) 第8回 医療行政の指標(1)設定の必要性:わが国における臓器移植を例に 第9回 医療行政の指標(2)設定の難しさ:研究の動向 第10回 医療行政の指標(3)設定の難しさ:研究の動向 第11回 医療行政の指標(4)設定の難しさ:研究の動向 第12回 医療行政の指標(5)設定の難しさ:研究の動向 第13回 受講生による課題の発表(1) 第14回 受講生による課題の発表(2) 第15回 受講生による課題の発表(3) <講義の目的> 授業の目的は、(1)プログラム評価に関する問題について深く考えてもらうこと、およ び、(2)行政指標の設定に伴う問題点を理解すること、である。 1 3.医療行政学の課題とヒント ○プログラムを評価する場合に事業目標の果たす役割は何であろうか? →目標達成率はどの程度重要か? 予算消化率はどの程度重要か? 物的および人的資源の消化率はどの程度重要か? ○プログラムを評価する場合、事業目標のみを重視した場合の問題点は何か? →事業の効果を何で評価するか? 当初予期しなかった効果をどう評価したらよいか? 誰の視点から評価したらよいか? ○プログラムを評価する場合、事業目標を無視することは可能か? →その利点は何か? その欠点は何か? 事業評価の目的とは何か? ○今日最も合理的とされているプログラムの評価方法とは何か? →プログラムの利害関係者とは誰か? プログラム目標を達成するうえでの副次的な目標とは? プログラムの利害関係者による目的の重要度に関する評価とは何か? ○医療資源の配分に関する基準は何にすべきか? →民意か?行政責任者か? 医療経済的な視点は必要か? 行政効率の視点のみに立脚した場合の問題点は何か? ○米国オレゴン州における医療保険制度改革の問題点は何か? →長所は何か? 短所は何か? その後、どのようになったか?何故そうなったのか? ○医療行政の目標設定に関連する要因は何か? →医療の効果を測定するのは困難か? 評価するためのデータが得られないのはなぜなのか? 医療の経済的評価がなされれば、誰が得をして、誰が損をするのか? 2
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