4 せんせい変身してね

事例4
ア イ キ ャ ン VOCA-Type Ⅱを 使用した指 導
せんせい変身してね
−児童が選んだスイッチに応じて、教員が変身する遊び−
Ⅰ
子どもの状態
Bくん(小学部1年)は、肢体不自由と知的障害がある。筋緊張が強く側湾が進行しており、
自力で座位を保持することはできない。臥位や座位保持椅子で姿勢を安定すれば、目的の物に
腕を伸ばして触れることができる。いくつかの身近なことばにあった絵を理解し、「オチャ」
「はい」などの発語もある。ビッグスイッチを押して扇風機を回したり、ビックマックを繰り
返し押して歌やお話を聴いたりすることを楽しむようになった。ビックマックに録音した歌を
聴きながらいくつかの言葉を真似するように声を出していることもある。ある時、「スイッ
チ」と聞こえるような言葉を発してスイッチ遊びを要求したこともあった。
スイッチを押すことが遊びとなっていて、単純なスイッチ遊びでは、操作により起きた変化
をじっくり 聴いたり見たりできないことがある。そこで、アイキャン VOCA-Type Ⅰに「おむ
すびころりん」を分割して録音したところ、1回ごとに出てくる音をよく聴いている。
Ⅱ
期待した活動
絵と音声が対応するような VOCA を使って、自己選択を含む遊びを楽しむことは、 VOCA
を生活の道具として使うようになるためばかりでなく、発声できる言葉を増やすためにも意味
のある活動ではないかと考える。小学部の1年生という生活年齢を考えて、まずは選んだスイ
ッチを押すと対応した変化が起こることを遊びながら身につけて欲しいと考えた。
Ⅲ
使用した教材・教具
1
教材・教具の構成
アイキャン VOCA-Type Ⅱに、絵付きスイッチ(フロッピーケーススイッチ)をつなぐ。
2
教材・教具の機能
「変身ゲーム」(使用スイッチは2個から始め、次第に増やす。)
Ⅳ
1
スイッチの絵
母親
バス
録 音 す る 音
○○ちゃん、ママよー(母親の声)
バス、プップー
(教員の声)
マッサージ器
×印
マッサージ、ブルブル (教員の声)
おしまい
(教員の声)
担 任 の 変 身
「チュッ」と額に投げキス
プップーと言っておでこを
クラクションのように触る
お腹や足などをくすぐる
活動をやめる
指導の実際
指導の場面
「変身ゲーム」でスイッチを選んで押し、担任とやりとり遊びをする。
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事例4
ア イ キ ャ ン VOCA-Type Ⅱを 使用した指 導
2
指導者のかかわり
○ Bくんが選んだものを自分で押せるように、スイッチの置く位置を工夫する。
○ スイッチの位置は遊ぶたびに入れ替え、絵をよく見てスイッチを押せるようにする。
○ 教員は、Bくんの楽しい遊び相手となる。
3
子どもの活動
最初は、ビックマックに録音した好みの歌を聴くことから始めた。しばらくの間は、スイッ
チを自分で押して録音された歌を聴きながら時々歌詞をまねたような声を出して遊んでいた。
単純な一つの歌の繰り返しだったためか、しだいにガチャガチャとスイッチを押すして遊ぶよ
うになってしまった。
そこで、VOCA-Type Ⅰを使い、スイッチを押すと逐次違った録音が再生するようにすると、
スイッチを押すたびに起こる変化が異なるのでガチャガチャとやたらに押すことがなくなり、
録音されたお話をよく聴いて再度スイッチを押すようになった。絵カードによる言葉の学習も
同時にしていたので 、絵付きのスイッチを見て押すことも期待できた。 VOCA-Type Ⅰも慣れ
てくると、時にはやたらとスイッチを押して遊ぶことがでてきた。
アイキャン VOCA-Type Ⅱを導
入したとき、先ずBくんの母親に
お 願いして「Bちゃん、ママ
よ !」と録音してもらった 。「母
親の写真を貼ったスイッチ 」を押
すと、母親の声が聞こえるのがわ
かると、Bくんは母親のスイッチ
を頻繁に押して喜んでいた。
次に 、「バスの絵 を貼ったスイ
ッチ」を加えた。バスのクラクシ
ョンの音が好きなBくんであった
写真1 アイキャン VOCA-Type Ⅱと
が、初めは母親のスイッチ を多く
4個の絵付きスイッチ
選んで押していた。しかし、しだ
いにバスのスイッチも押すようになり、ほぼ同じような割合で選ぶ様子が見えてきた。そこで、
「マッサージのスイッチ」を加えた。マッサージ遊びは導入当初から気に入り、何度も繰り返
して押して遊びを楽しんだ。
「おしまいの スイッチ」を最近加えた。Bくんは、変身遊びが楽しく、おしまいにしたくな
いようで、自分からおしまいのスイッチを押したことはまだない。教員が「おしまいにしよう
か」と誘うと、おしまいのスイッチを押すことがある。
アイキャン VOCA-Type Ⅱで変身ゲームをするときには、VOCA-Type Ⅰを使用していたとき
のようにやたらと押すことはなく、スイッチの絵を見て活動を選ぶことができている。また、
「チュ」や「プップー」など変身ゲームで使われる音を真似て発音するようにもなってきてい
る。
Ⅴ
今後の指導
○ Bくんの腕の可動域や動き易さを考えると、現在のフロッピーケーススイッチでは3
個が限界のようである。今後は、フロッピーケースよりやや小さいMDケースを使ってス
イッチの数を増やしていきたい。
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事例4
ア イ キ ャ ン VOCA-Type Ⅱを 使用した指 導
○ おしまいを含めて現在は4個のスイッチを選択できつつある。さらに、Bくんの好き
な遊びを選択肢として追加し、次第に生活支援 ツールとして使用するための選択肢(「お
茶が飲みたい 」「お話遊びがしたい 」「歌が聴きたい」等)に切り替えていきたい。
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