インターネット上の違法・有害情報に関する集中対策

インターネット上の違法・有害情報に関する集中対策
平成 19 年 10 月 15 日
I T 安 心 会 議
本集中対策は、出会い系サイト関連犯罪の被害児童が年間 1,000 人を超えるなどイン
ターネット上の違法・有害情報が深刻な状況にあることを背景に、「IT 新改革戦略政策
パッケージ」(平成 19 年 4 月 5 日、IT 戦略本部決定)において、2010 年までにインタ
ーネット上の違法・有害情報に起因する被害児童等を大幅に縮小することを目指した集
中対策をとりまとめることを決めたことを受けて、策定したものである。
政府はこれまでも様々な違法・有害情報対策を講じてきたところであるが、被害児童
等を大幅に縮小するためには更に一歩踏み込んだ対策が必要であると考え、内閣官房が
青少年団体、電気通信事業者団体、相談窓口等の外部関係者から行ったヒアリング結果
等を踏まえて、内閣官房と関係府省との間で議論を行い、「関係者の問題意識」と「考
え得る対応策」で構成される本集中対策を策定した。なお、「関係者の問題意識」はヒ
アリング等を行った関係者の問題意識であり、政府の見解を示したものではないが、こう
した問題意識を有する関係者がいることを踏まえて、関係府省において問題点・課題の
整理・検討を行った上で対策を実施することが重要であると考える。
本集中対策に掲載した施策の進捗状況については、IT 安心会議において今後確認を
行った上で IT 戦略本部に対して報告を行い、実施している施策が効果をあげているの
か、新たなインターネット上の違法・有害情報に対して的確に対応できているのかといっ
た視点からの検討をするとともに、関係府省の検討会等の検討状況を踏まえ、必要に応
じて新たな施策を講じるなど、政府が一丸となって取り組んでいく予定である。
1
(1)
法令改正に向けた検討
出会い系サイトに関する規制の見直し等(警察庁)
ⅰ)
関係者の問題意識
憲法で保障されている通信の秘密や表現の自由といった法益を守る必要があ
ることは言うまでもないが、出会い系サイトに関連する犯罪の被害者が毎年 1,000
人以上いる現状を踏まえると、出会い系サイトに関する規制のあり方について見
直す必要性について指摘する向きがある。また、出会い系サイト規制法附則には、
施行後の見直し規定が置かれている。さらに、数多くの被害者を生み出している
出会い系サイトにおいて健全な運営が行われるためには、法令に基づく規制に加
えて、出会い系サイト自身による自主的な取組みの必要性が指摘されている。
1
ⅱ)
考え得る対応策
出会い系サイトに起因する被害を減少するために、出会い系サイト利用の際の
年齢確認方法等の出会い系サイト事業者に対する規制に関する法令の施行の状
況について検討を行い、平成 19 年度中に当該規制のあり方の方向性について結
論を得る。また、この結論を踏まえつつ、出会い系サイト事業者自身による自主
的な取組みを推進するための仕組みについて平成 20 年度以降に検討する。
(2)
迷惑メールに関する法令の見直し等(総務省及び経済産業省)
ⅰ)
関係者の問題意識
迷惑メールについては、迷惑メールの 9 割以上が有害サイトの宣伝であるとい
った調査結果があり、ネット上の違法・有害情報への不当な誘導を防ぐ必要があ
るが、その送信手法・内容が悪質化・巧妙化しており、また、海外発の迷惑メ
ールが増加するなど、大きな問題であることから、引き続き制度・仕組みを検討
していく必要性が指摘されている。
ⅱ)
考え得る対応策
上記を踏まえ、現行のオプトアウト方式の見直し等法制度の在り方についての
検討を行い、平成 19 年中に結論を得る。また、こうした検討結果を踏まえて、
平成 20 年通常国会に所要の改正法案を提出できるよう準備する。
ア 特定電子メール法(総務省令を含む。)
イ 特定商取引法(政令及び経済産業省令を含む。)
2
(1)
インターネット上の違法・有害情報対策を構成する4方策の強化
プロバイダ等による自主規制の支援等
ア
中小の ISP 等における違法・有害情報の削除等に伴う対応の支援(総務省)
ⅰ)
関係者の問題意識
ネット上に書き込まれた違法・有害情報について、契約約款等に基づく情報
の削除やプロバイダ責任制限法に基づく発信者情報の開示を行った場合、法的
に適切な対応であっても、情報発信者から損害賠償を請求されたり、場合によ
っては訴訟を起こされる可能性もあることから、中小の ISP 等の中にはその対
応により業務に支障が生ずることを懸念し、こうした行為を躊躇する可能性があ
ることが指摘されている。
ⅱ)
考え得る対応策
中小の ISP 等によるネット上の違法・有害情報の削除等に伴う対応の負担を
2
軽減するため、ネット上の違法・有害情報の削除に起因する問題の現状を把握
した上で、業界団体等による対応相談窓口の周知・明確化や各種ガイドライン
等に関する研修の実施等について、支援の必要性とあわせ、業界団体等と連携
して平成 19 年度中の実施に向けた検討を推進する。
イ
サイバーパトロールの民間委託(警察庁)
ⅰ)
関係者の問題意識
インターネット上に違法・有害情報が掲載されていないかどうかを調査するた
め、都道府県警察等によってサイバーパトロールが行われているところである
が、警察職員は増加するサイバー犯罪の事件処理や相談業務に追われており、
サイバーパトロールの体制強化が求められている。
ⅱ)
考え得る対応策
インターネット上での情報収集にノウハウを持った民間に対する、会員制有料
サイト、出会い系サイト及び数多くの違法情報、有害情報が掲載されているサイ
トについてのサイバーパトロール業務の委託の平成 20 年度からの実施を目指
す。
(2)
情報モラル教育の充実
ア 情報モラル教育、メディアの安全・安心利用に関する取組みを含む有害情報
対策強化(文部科学省及び関係府省)
ⅰ)
関係者の問題意識
情報モラル教育等については、以下に掲げるような指摘がある。
ネット上の違法・有害情報は、出会い系サイト関連犯罪の被害者となる児童
が年間 1,000 人を超えるなど深刻な状況であり、国民が安心してネット利用を
行う上で喫緊に対応を強化すべき課題である。
情報モラルなどを指導する能力を有すると回答した教員の割合が約6 割との
調査結果を踏まえ、情報モラル教育の推進強化の観点から、情報モラル指導の
一層の普及促進が必要である。
また、有害情報対策の強化の観点から、情報メディアにかかわる関係団体と
青少年の健全育成のために活動している団体等関係者のネットワークを構築
し、青少年の健全育成を妨げる恐れのあるコンテンツの作成・発信に係る共通
ルールづくりや、作成・発信者側と受信者側が協同した啓発活動等を実施すべ
きである。
さらに、メディアの安全・安心利用に関する取組強化の観点から、出会い系
サイトに関連する犯罪については、被害者の多くを占める児童生徒の保護者及
び教職員を対象にした啓発活動を強化すべきである。
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上記の取組強化を集中的に推進し、これら取組みの関係機関・団体等が情
報共有や意見交換等を可能とする場などを活用することにより、関係機関・団
体等の連携を図ることが重要である。
ⅱ)
考え得る対応策
① 情報モラル教育の推進
出会い系サイトなどの違法・有害情報に適切に対応する能力の育成を含む
情報モラル教育を推進するため、情報モラル指導の実践事例等を紹介する
Web サイトの作成や、市区町村教育委員会の指導主事等を対象としたセミナ
ーを開催し、情報モラル指導について一層の普及を図る。
②
学習指導要領の改訂
学校教育における情報モラル教育を積極的に推進するため、中央教育審
議会での議論を踏まえて平成 19 年度以降に学習指導要領の改訂を行う。
③
非行防止教室による教育の強化
学校における非行防止教室において、インターネット上の違法・有害情報
の持つ危険性などをテーマの一つとして取り上げるよう、各都道府県教育委
員会等を促していく。
④ 青少年を取り巻く有害環境対策
有害情報対策としての啓発活動を全国的に実施するために、関係機関・団
体の連携を図るため、全国規模の関係機関から構成される「ネット安全・安
心全国協議会(仮称)」を設置し、インターネット上の有害情報対策に係る
地域の取組事例の収集、全国フォーラムの実施などを通じて、地域の取組事
例を全国に普及するとともに、メディアの安全・安心利用のための意識醸成
を図る。
⑤
「e-ネットキャラバン」の実施
主に保護者及び教職員を対象とした、出会い系サイトなどについての注意
やフィルタリングについての説明を含むインターネットの安全・安心利用に向
けた啓発のための講座を、通信関係団体等と連携しながら、実施する。
なお、全国規模での実施にあたり、教育委員会や保護者などへ一層の周
知を図る。
⑥
家庭教育手帳の作成
携帯電話やパソコンを子どもに使わせる際の留意事項なども盛り込んだ子
育てのヒント集としての「家庭教育手帳」を引き続き作成し、配布する。
上記①∼⑥の取組強化を集中的に推進するとともに、これら取組みの進捗等
を踏まえ、平成 19 年度中に一層の推進方策について検討する。
また、関係機関・団体等が情報共有や意見交換の場として、IT 安心会議、
「ネット安全・安心全国協議会(仮称)」等を活用することにより、関係機関・
団体等の連携を図るとともに、一層の効果的な取組強化を推進する。
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イ
IT の安全・安心に係る啓発施策の拡充(総務省、文部科学省及び経済産業省)
ⅰ)
関係者の問題意識
ネット上の違法・有害情報に起因する被害が依然深刻な状況であることから、
業界による自主規制、相談窓口の充実等の様々な供給者側での施策や事後対
策が講じられているところであるが、利用者自身が犯罪に巻き込まれないよう
にする取組みも重要であり、被害者の大半を占めている児童生徒やその保護者
及び教職員等を対象にした啓発活動を強化していく必要性について指摘されて
いる。
ⅱ)
考え得る対応策
平成 19 年度のインターネット安全教室及び e-ネットキャラバンの啓発講座の
実施数について、官民が連携して前年度比大幅増をめざすとともに、児童生徒
やその保護者及び教職員等を対象とした一層の啓発について、関係府省が連
携して平成 19 年度中に検討する。
また、上記の啓発施策の児童生徒やその保護者及び教職員への浸透度を高
めるため、教育委員会等に当該啓発施策の周知を図り参加を推進する。
(3)
相談窓口等の充実
ア
インターネット・ホットラインセンターに関する検討(警察庁)
ⅰ)
関係者の問題意識
大量の通報が寄せられているインターネット・ホットラインセンターは、担当
者を増員して対応を行っているが、依然として通報処理終了までにある程度の
時間を要する状況にある。通報件数の増加を正確に予想することが困難である
ことに加え、ガイドライン改訂によっては、体制強化が必要になる可能性を指
摘する声がある。また、民間企業等が有するノウハウの活用が必要ではないか
といった指摘もある。
ⅱ)
考え得る対応策
警察庁の委託により行われているインターネット・ホットラインセンターの業務
をより効果的に推進するため、平成 19 年秋からインターネット・ホットラインセ
ンターの運用ガイドラインの見直しの検討を開始するとともに、平成2 0 年度に
インターネット・ホットラインセンターの体制強化を図る。
イ
いわゆる「闇サイト」への対応(警察庁及び関係府省)
ⅰ)
関係者の問題意識
5
いわゆる「闇サイト」に関連した凶悪事件の発生を受け、「闇サイト」への
対策を求める声がある。
ⅱ)
考え得る対応策
「闇サイト」上には、求人情報のようにその記載内容からは違法情報とも有
害情報とも言えないものもあるが、警察では、違法情報・有害情報については、
サイバーパトロールやインターネット・ホットラインセンターの体制強化を平成 20
年度に図り、違法情報、有害情報に対する取組みのより一層の推進に努める。
ウ
いわゆる「学校裏サイト」等への対応(関係府省)
ⅰ)
関係者の問題意識
最近のいじめの形態として、いわゆる「学校裏サイト」(学校の公式サイト
とは別に、学校の在校生や卒業生等関係者以外のアクセスが困難なサイト)の
掲示板への誹謗中傷の書き込み等が大きな社会問題となりつつあることから、
対策が必要との指摘がある。
ⅱ)
考え得る対応策
いわゆる「学校裏サイト」の掲示板への誹謗中傷の書き込み等については、
その実態の早期把握に努め、必要に応じて、相談体制の充実を含め関係府省
が連携を図りつつ必要な対応策を検討する。
(4)
フィルタリング導入の促進
ア 携帯電話等におけるフィルタリング導入促進等の支援(総務省、内閣府、警
察庁、文部科学省及び経済産業省)
ⅰ)
関係者の問題意識
出会い系サイトの被害者の 96%以上が携帯電話からサイトにアクセスしてい
るとの統計がある中、民間事業者等による導入促進に加えて、フィルタリング
等に関する情報提供の努力義務を設ける条例が定められるなど、官民における
取組みが行われている。こうした中、携帯電話等におけるフィルタリング認知率
が7 割近くまで向上した一方、導入率は 1 割以下といった調査結果があるなど、
実際の利用につながっていないとして、以下のような課題を挙げて、様々な関
係者が参画する民民の連携不足、関係府省が一丸となった民間への支援不足
について指摘されている。さらに、フィルタリング導入促進については民間事業
者等の自主性を尊重しつつも、政府が目標を定めて所要の支援を行うことの必
要性を唱え、官民が責任を持って取り組むことを求める向きがある。
①
②
携帯電話等のフィルタリングにおけるユーザニーズの反映が必要
携帯電話端末等の販売店におけるフィルタリング導入促進が必要
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③
④
ⅱ)
フィルタリング導入促進に関する一層の活動が必要
フィルタリング導入促進の効果の把握が必要
等
考え得る対応策
携帯電話等における更なるフィルタリングの普及促進に向け、関係府省が連
携して保護者等に対する啓発や民間主体の取組みの支援などの検討を行う必
要がある。そのため、更なるフィルタリング導入促進、保護者等への啓発に関
する具体的な方策を IT 安心会議の下、総務省が中心となって平成 19 年度末ま
でに取りまとめる。
また、関係府省は、関係事業者等と連携しつつ、メールマガジンの送付やセ
ミナーの開催・出席等を通じて、フィルタリングの導入促進を平成 19 年度に一
層推進することとする。
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