エネルギーの未来を担う天然ガス

エネルギーの未来を担う天然ガス
2013/06/09
エネルギーの未来を担う天然ガス
メタンハイドレートとシェールガス
学
部:お 笑 い 学 部
学
科:吉 本 学 科
学籍番号:1 1 3 9 9 9 9
氏
要
や ま だ た ろ う
名:山 田 太 郎
約
エネルギーの問題が、複雑化する中で従来とは異なる新しい天然ガス資源の存在が
脚光を集めている。ここではこの新しい資源と注目されているメタンハイドレートとシェー
ルガスについて説明する。これらは現在、取り沙汰されている領土問題(尖閣諸島や北
方領土)とも関連しており、重要な課題となっている。
1. メタンハイドレート
メタンハイドレートとは、メタンを主成分とする化石燃料
のことです。「燃える氷」と表現されることが多く、メタンと
水が混じった氷状で海底に存在します。世界中の海に広
く分布するが、特に日本近海に多く存在することから、日
本のことを「隠れた資源大国」と表現する例が増えてきま
した。一方、採掘に伴って起こり得る環境へのリスクから、
「悪魔の資源」と表現した例もあり、良くも悪くも注目度が
高まっている物質と言えるでしょう。
1.1 メタンハイドレートの歴史
実はメタンハイドレートの存在が世界で初めて確認さ
れたのは 1930 年代のことです。当時シベリアにおいて、
天然ガスの輸送に用いられていたパイプライン内にたび
図 1 燃 える 氷 (メタンハ イドレー ト)
たびある物質が詰まるという事故が起こっていました。こ
の物質を研究者が調べた結果、これがメタンと水の化合物質であることが確認され、資源としての
価値が認められるようになりました。アメリカで話題のシェールガスと共に「非在来型の天然ガス」と
呼ばれています。
1.2 日本におけるメタンハイドレードの現状
日本近海には天然ガスの年間消費量の 100 年分以上のメタンハイドレートが存在すると見積も
られています。1980 年に南海トラフで発見されたのを機に 1990 年代までは主に太平洋側での調
査が行われましたが、2000 年代に入ってからは日本海側での調査も進んでおり、それぞれ異なっ
た評価がなされています。
○ 太平洋側
愛知県〜九州に至るまでの南海トラフ海域を中心に豊富なメタンハイドレードが存在するが、
海底の地下深くに砂と交じり合った状態(砂層型)で存在しており、技術的にもコスト的にも採
掘するのが非常に困難だと言われています。しかし、2013 年 3 月には愛知県沖にて「世界で
初めて海底からのメタンガスの採取に成功」など、開発の進展度合いとしては日本海側よりも
進んでいると言われています。
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○ 日本海側
近年になり民間企業が調査を行いメタンハイドレートの存在を確認しました。しかも太平洋側と
違い、海底の表面に結晶状態で露出しており(表層型)、低コストでの採掘が可能と言われて
います。石油利権などが絡み長らく政府からの予算が下りない状態が続いていましたが、日本
海側の都道府県からの要請を受け、2013 年からようやく政府主導での調査・試掘が開始され
ました。
1.3 メタンハイドレート実用化に向けて
2013 年 4 月、安倍政権は「2018 年度をめどにメタンハイドレートの商業化を目指す」とする海洋
基本計画を閣議決定しました。さらに、メタンハイドレート関連事業をアベノミクスの成長戦略にお
ける柱とする事も併せて発表。いよいよメタンハイドレートの実用化が現実味を帯びてきましたが、
それには以下の様に様々な問題も指摘されています。これらをどう克服するかが今後の課題と言
えそうです。
1.4 コスト
1990 年代、日本で初期に研究が行われたのは太平洋側の南海トラフ(四国南部から愛知県辺
りにかけての海域)でした。この際のメタンハイドレートは泥や砂に混じった状態で存在していて採
取が非常に困難であったため、「コスト的にとても実用化できるとは言えない」と言われていました。
しかし、近年研究が進んでいる日本海側のメタンハイドレートは結晶状で存在しており低コストで採
取できるため、実用化に至れば「LNG(液化天然ガス)の 10 分の 1 程度の価格で販売できるだろ
う」と期待されています。
1.5 地球温暖化への影響
メタンハイドレートの主成分であるメタンは CO2 の 20 倍の温室効果があるとされ、採掘に伴って
大量のメタンガスが大気中に出れば地球温暖化を招くと問題視されています。また、温暖化が進
むことによって海水温が上がり、その結果メタンハイドレートが溶けさらに多くのメタンが放出される
という悪循環が起こるであろうという仮説も発表されています。一方、メタンハイドレートはそのまま
でも少しずつ溶け出し大気中に放出されていることから、「むしろ燃焼させてエネルギー源とした方
が温暖化対策になる」という意見もあります。
コラム :領 土問題
1.6 地震誘発・地盤沈下の可能性
メタンハイドレートは海底の地層の中に存在するた
め、そこから採掘することによって地盤沈下を引き起
こしたり、最悪の場合は巨大地震を誘発する危険性
まで指摘されています。一方、関係者からは「メタンハ
イドレートのある地層は巨大地震の震源となりうる地
点よりも浅いところに存在するため、地震を誘発する
可能性は低い」という反論も上がっています。どちら
にしてもはっきりとした結論に至っておらず、今後の
研究が望まれます。
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近年ニュースなどで取り上げられる事の多
い尖閣諸島や竹島の領土問題ですが、実は
中国や韓国がこれら領土を通じて狙っている
「真の目的」はメタンハイドレートを含む地下
資源だと言われています。尖閣諸島の海域
では 1968 年に豊富な石油や天然ガスの存
在が確認されており、その調査を機に中国か
らの領土主張が始まりました。それら地下資
源の埋蔵量は「イラクの全石油埋蔵量を超え
る」とも言われる程で、その経済的価値は一
説によると 7000 兆円とも言われています。
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図 2 シ ェールガ ス採 掘の 仕組
2. シェールガス
けつがん
シェールガスとは、近年注目されている非在来型の天然ガスのことです。具体的には、頁岩と呼
ばれる堆積岩の層から採取される天然ガスのことです。頁岩は非常に粒子が細かく液体や気体を
通すスキマがほとんどない事から、そこから資源を回収するには高度な採掘技術が必要とされてい
ます。在来型の天然ガスが砂岩に貯留しているのに対して泥岩に貯留することからメタンハイドレ
ートなどと共に「非在来型の天然ガス」と呼ばれています。
2.1 シェールガスとオイルシェールガスの違い
シェールガスは頁岩の層のスキマに存在するガスであり、オイルシェールガス=「油分を含む頁
岩(オイルシェール)を加熱・熱分解することで得られるガス」とは別物です。
2.2 シェールガス革命
シェールガスは 100 年以上も前から生産されていましたが、それは頁岩に自然にできたスキマ
から採取されたもので採算性もあまり高くありませんでした。しかし、2000 年代に採掘技術が確立
したことにより一気に生産量が増え、世界のエネルギー事情に革命を起こすと期待されシェールガ
ス革命と呼ばれるようになったのです。特に北米では、2020 年頃には天然ガス生産量の 50%がシ
ェールガスになると予想されていて、世界最大のガス輸入国から一転、ガス輸出国になると期待さ
れています。
2.3 経済性
シェールガスの採掘には莫大な初期投資が必要と言われています。それでも、実際に採掘に至
れば豊富なガスが採取できるため当初は大きな利益が期待できると思われていました。しかし、ここ
数年のシェールガスブームによりシェールガス生産量が増加するにつれて価格低下を招き、収益
が悪化、破産に至る企業も出てきたため、シェールガスの経済性・採算性については疑問の声も
出始めています。
2.4 環境への負荷
当初シェールガスは、「他の資源に比べて温室効果ガスの排出量が少ない」と言われていました。
しかし、二酸化炭素よりも温室効果の高いメタンを主成分とする天然ガスの性質から、後には「石炭
や石油よりも温室効果が高い」という研究結果が発表されています。また、地下水の汚染や誘発地
震の可能性も指摘されていて、環境破壊への影響が問題視されています。
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2.5 埋蔵量
○ 世界の埋蔵量
世界のシェールガスの全埋蔵量を回収できれば、世界の 200 年〜250 年分以上を賄えると言
われています。
世界のシェールガス推定埋蔵量(単位:兆立方メートル)
36.1
中国 24.4
米国 21.9
アルゼンチン 19.3
メキシコ 国
13.7
南アフリカ 11.2
オーストラリア 11
カナダ 8.2
リビア 0
5
10
15
20
25
30
35
40
埋蔵量(兆立方メートル)
図 3 世 界の シェー ルガ ス推定 埋蔵 量
○ 日本の埋蔵量
日本の地層は地質年代が新しく頁岩層が少ないため、シェールガス埋蔵量は期待できないと
されています。そのため、日本のガス会社などはカナダなど海外のシェールガス事業へ参加し、
日本のエネルギー政策に生かそうという試みが行われています。なお、秋田県の鮎川油ガス
田では 2012 年 10 月にシェールオイルの採掘に成功しています。
3. まとめ
メタンハイドレートやシェールガスなどのような従来型のエネルギー資源を求めるのは、太陽光
発電や風力発電などの CO2 排出の少ないエコロジーを目指す時代の趨勢からは逆行しているよう
に思えるかも知れません。しかしながら現在のエコ発電の現状は政府の意向によって電力会社が
高価で買い取ることで支えられているのです。決して充分なエネルギー源として機能している訳で
はありません。原子力発電も東北大震災以降、電力会社の未熟な設計や原子力を侮った保守体
制によって一般からは許容できないエネルギー資源と見做されていますが、我々の重要なエネル
ギー資源であることに変わりはありません。我々はエネルギー資源を必要としています。電気のな
い昔には戻れないのです。いくつもの選択肢を求めて手を尽くす必要があります。
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