定常電流、揺動速度、電気抵抗 目次 §1.電荷移動と電流 §2.電気抵抗,抵抗率、伝導率の定義 §3.ミクロに見たオームの法則ー電気抵抗の古典的モデルー §4.電気回路の電力の散逸ージュール熱 Made by R. Okamoto (Emeritus prof., Kyushu Inst. of Tech.) Filename=Current-driftvelocity-resistence20150721A.ppt 1 §1.電荷移動と電流 ・同種の電荷が運動しているとき、電流が流れている(電流が存在する)という。 ・断面積Sのある面に垂直に通過する電荷の集団を考える: ・電流とは、単位時間にこの面を通って流れる電荷の総量(代数和)である。 ある有限の時間Δt間に、この面を通過する全電荷の総量 (電荷の代数和)がΔQのとき、平均電流Iav I av ≡ ∆Q ∆t ・瞬間的な電流の強さ ∆Q dQ = ∆t →0 ∆t dt I ≡ lim 電流の強さの次元、単位 C [Q ] = C, [t ] =→ s [I ] = ≡ A s A=ampere,アンペア 2 <電流の強さIの定義の拡張(一般化)> 電流は外部から電場をかけられた場合に生じる、荷電粒子集団の正味の流れ により決まる物理量。 荷電粒子としては,電子、半導体の正孔(ホール),正負のイオンなど。 q j : 電荷, v j : 速度,n j : 数密度( j = 1,2,, n ), S : 断面積 n I ≡ ∑ q j ⋅ v j ⋅ n j S (1.1) 電流(ベクトル) j =1 n I i ≡ = ∑ q j ⋅ v j ⋅ n j (1.2) 電流密度(ベクトル) S j =1 荷電粒子の速度ベクトル: vj = v t, j + v d, j , (t ≡ thermal, d ≡ drift) (1.3) 熱運動速度 ドリフト速度(揺動速度) 熱運動は乱雑である=正味の流れは生じない q v ⋅ ∑ j t, j ⋅ n j ≅ 0 (1.4) n j =1 結局,電流はドリフト速度(揺動速度)で決まる n I ≅ ∑ q j ⋅ v d , j ⋅ n j S (1.5) j =1 n i ≅ ∑ q j ⋅ v d, j ⋅ n j (1.6) j =1 3 簡単のため、荷電粒子は同じ種類のものだけで、電荷をqとすると I = q ⋅ vd ⋅ n ⋅ S (1.7) (電流の強さ)=(電荷)×(ドリフト速度)×(数密度)×(断面積) i =q ⋅ vd ⋅ n (1.8) (電流密度の強さ)=(電荷)×(ドリフト速度)×(数密度) ・次元、単位の確認 m 1 C , [n ] = 3 , [ S ] =m 2 → [ I ] = ≡ A (1.9) s m s C A = [i ] ≡ (1.10) s ⋅ m2 m2 [ q] =C, [vd ] = A=ampere,アンペア ・荷電粒子の数密度nの計算: 導体の質量をm、体積をV、密度をρ、グラム原子量をM、アボガドロ数をNAとすると、 荷電粒子の個数Nと数密度n(=単位体積あたりの原子数)は次のように表される。 m N A (1.11) M m N V n ≡ = NA V M N= ρ → n = N A (1.12) M 4 §2.電気抵抗,抵抗率、伝導率の定義 ・一般に、抵抗器など伝導素子(device)にかかる電圧をV、通過する電流の強さ がIの場合、次の式で定義されるRを電気抵抗という。 V R ≡ (2.1) I V → V= RI , = I (2.1') R 式(2.1)、(2.1‘)をオームの法則と説明する単行本が多いが、以下の本には適切 な注意が記されている:D. ハリディ, J. ウォーカ , R. レスニック「物理学の基礎〈3〉電磁 気学」培風館、2002年。特に、pp.105-106. ・多くの場合、抵抗Rは電圧の値に依存して変化する。 R=R(V) しかし、特殊な場合には、Vの値が限られた領域において、Rの値がほぼ一定 になること、すなわちVとIが直線関係になることをオーム(G.S.Ohm,1787-1854) が発見した:オームの(経験的)法則 ・導線の断面積をS,長さをlとしたとき、次の式で抵抗率ρ、伝導率σを定義する RS →ρ ≡ , S 1 →σ ≡ R= ρ ρ 5 §3.ミクロに見たオームの法則ー電気抵抗の古典的モデルー ・自由電子(伝導電子)を含む金属原子の規則的配列を考える。 ・これらの電子は導体中をほぼ自由に運動でき、その総数はほぼ原子数に等しい。 ・この状況は金属に電場をかけると一変する。上に述べたランダムな(乱雑な)運動 に加えて,自由電子はゆっくりと、加えられた電場の向きと逆向きに平均速度Vdでド リフト(漂流)する。 出典:M.M. Sternheim (著), J.W. Kane (著), 石井 千穎 (訳) 「ライフサイエンス物理学 」廣川書店、2000年。P.345. 6 ・一般に,電荷q、質量mの荷電粒子に、電場Eがかかると次の加速度を生じる。 a= qE (3.1) m ・電荷の,1つの衝突から次の衝突までの平均時間(=緩和時間)をτとすると、 ドリフト速度Vd vd = qE τ (3.2) m ・導線にかかる電場Eと電圧Vの関係 V = E (3.3) ・オームの法則を抵抗率、伝導率を用いて表現すると = E ρ= I ρ i S → E= ρ i, i= σ E (3.4) ・一方、電流密度とドリフト速度の関係 オームの法則の意味: nq 2 E 抵抗率ρが電圧によらず一定で、 = i qnv = τ (3.5) d m 式(3.6)で計算できること ・式(3.4)と(3.5)を比較すると 1 m (抵抗率)=(荷電粒子の質量)÷(数密度×電荷 ρ= = (3.6) の2乗×緩和時間) 7 σ nq 2τ ・緩和時間と平均自由行程λの関係 = τ λ v (3.7), v ≡ 3k BT : 熱運動の平均速度 m 8 §4.電気回路の電力の散逸ージュール熱 ・電圧Vのとき、時間dtの間に,移動する電荷dqであれば、電気的ポテンシャル・ エネルギーの減少dUと、ポテンシャルエネルギーを失う時間的割合 dU =dqV =IVdt → P ≡ ∴ P =IV (4.1) dU dt (消費される電力)=(電流の強さ)×(電圧) 電池から伝導素子へのエネルギー移動率で、一般に成立する、すな わちあらゆる種類の電気エネルギーの移動に対して適用される。 ・抵抗器(抵抗R)では、V=RIであるから,式(4.1)は抵抗による熱の散逸を意味し、 次のように書ける V2 P =I R= (4.2) R 2 抵抗Rをもつ伝導素子で、電気的エネルギーが熱エネルギーに移動 するときだけに適用される。 :D. ハリディ, J. ウォーカ , R. レスニック「物理学の基礎〈3〉電磁気 学」培風館、2002年。特に、pp.109-111. 9
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