竹炭(木炭)の電気的特性 2014-11-01 NPO法人22世紀八幡ルネッサンス協会 理事 武 田 守 治 竹炭や木炭の炭化度を知る基準として電気抵抗(直流抵抗)が用いられており、品質を示す数値と して「高温炭化の竹炭ほど、電気抵抗値は限りなくゼロに近くなり、50Ω以下の竹炭は最高級品」 と紹介され、品質(炭化度)を示す基準とされている。 竹炭や木炭の電気抵抗を測定する場合にあっては、電気抵抗を測定する2点間の距離を「1cm」と されており、その理由が「式1」に示す「比抵抗」 (電気抵抗率とも呼ばれ、電気抵抗の値は導体の長 さに比例し断面積に反比例する)であるならば、電気抵抗を測定する2点間の距離を「1cm」に限定 したことに疑問が生じる。 [式1] R=ρL/A R:電気抵抗 ρ:電気抵抗率 L;導体の長さ A:導体の断面積 竹炭や木炭において、測定する任意な2点間の電気抵抗は、距離(導体の長さ)や形状(断面積) に関係なく、ほぼ同じ値を示すことを実測によって発見した。 ▲竹炭の電気抵抗 左(距離が短い)より、右(距離が長い)が小さい抵抗値を示している。 ▲木炭の電気抵抗 ほぼ同じ抵抗値を示していて、抵抗値は2点間の距離に影響されていない。 炭化温度に対する電気抵抗 200 400 600 800 1000 炭化温度(℃) 10000M 10000M 100K 100 10 電気抵抗(Ω/cm) 炭化温度の異なる竹炭の物性と効能 鹿児島県林業技術研究成果集【経営】より このような現象は竹炭や木炭の多孔質が起因しており、多孔質が炭化された結果において、微細孔 で構成される電気抵抗の直列接続や並列接続の膨大な回路網により、測定する任意の2点間における 合成抵抗は、下記の理由により同じ電気抵抗を示すものと考える。 [左図] R0 R1 R3 R2 R4 R1=R2=R3=R4 R1=R2=R3=R4=R0 [式2] [式3] [左図] [右図] [竹炭] R0 [右図] R1 R4 R7 R2 R5 R8 R3 R6 R9 直列抵抗:Ra+Rb 並列抵抗:1/(1/Ra)+(1/Rb) 直列抵抗:R+R=2R 並列抵抗:1/(1/R)+(1/R)=1/(2/R)=R/2 R0=R1=R2=R3=R4 R0=R1=R2=R3=R4=R5=R6=R7=R8=R9 R0=R1= ・ ・ ・ ・ ・ =Rn(多孔質) 合成抵抗は[式2]によって求められるが、抵抗値が全て同じ場合の合成抵抗は[式3]のように、 直列接続は「抵抗値に接続した抵抗の数を掛けた値」 、並列接続は「抵抗値を接続した抵抗の数で割っ た値」になるため、 「左図」示すようにR1~R4の抵抗値が同じである場合、直列および並列に接続 されたR1~R4の合意抵抗R0は、R1~R4の抵抗値と同じになり、さらに直列と並列に接続さ れる回路数が増え、 「右図」のようにR1~R9になった場合においても、R1~R9の合成抵抗R0 は前記R1~R4の合成抵抗R0と同じになる。 但し、この場合は「炭化度が均一な場合」であって、竹炭や木炭の炭化過程において「焼きムラ」 が生じた場合には、2点間の電気抵抗は炭化度の違いによって増減が生じるため、2点間の距離を長 くして広範囲な合成抵抗を測定することによって、 「焼きムラ」の状況を把握することができる。 合成抵抗が同じ抵抗値となるには、 [式3]から「直列および並列の接続数が同じ数」が条件とされ るが、竹炭や木炭の多孔質は「μ・Åレベル」の微細孔であって、炭化された多孔質は膨大な直列と 並列の回路網において、任意の2点間に構成される直列および並列の接続数の違いによる合成抵抗値 への影響は極めて少なく、2点間の距離や形状に関係することなく同じ抵抗値を示すと考えることか ら、あえて2点間の距離を「1cm」に限定する必要性はないと思われる。 竹炭や木炭の交流抵抗(リアクタンス・インピーダンス)については、9KHz~2.2GHzの 高周波信号を竹炭に通過させて傾向を確認したが、周波数全域において比較的均一なインピーダンス を示すと推測される。尚、スペクトラムアナライザーの画面表示で、周波数が高くなるにつれて減衰 量が増大しているのは、竹炭の測定に分布常数的要因(竹炭に接触するプローブのリアクタンス等) が介在するためであって、竹炭の電気的特性を表示しているものではない。 ふとした疑問から多孔質の電気的特性について考えてみましたが、今後は分布常数的に竹炭や木炭 の電気的特性(特に高周波特性)を模索したく思いますので、竹炭関連技術のアドバイスを賜りたく よろしくお願い申し上げます。
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