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−トルコ・ルーマニア調査団−
トルコ市場調査報告書
2008 年 1 月
日本繊維輸出組合
−目 次-
市場調査団メンバー表 .............................................................. 1
市場調査団日程表 ................................................................... 2
本文
1.日本からトルコ向け繊維品輸出の現状...............................................3
(A) トルコ向け主要ワタの輸出..........................................................3
(B) トルコ向け主要糸の輸出............................................................4
(C) トルコ向け主要織物の輸出 ........................................................4
2.トルコの繊維品貿易概況 .................................................................5
(A) トルコの繊維品品目別貿易概況..................................................5
(B) トルコの繊維品国別貿易概況 .....................................................6
(C) 日本の主要繊維品のトルコでの競合国 ........................................7
3.日本からトルコ向け繊維品輸出増大の可能性 .....................................12
(A) トルコ国内市場をターゲットとする ................................................12
(B) EU を始めとする周辺市場をターゲットとする..................................13
本市場調査団が現地訪問の折、ご多忙の最中、温かいご支援及び意義深い現
地情報を頂きましたジェトロ・イスタンブール事務所の中島敏博部長及び伊藤
忠商事㈱の山根伸介繊維部長をはじめとする現地の方々にお礼申し上げます。
トルコ・ルーマニア市場調査団メンバー表
○伊藤忠商事㈱
清水
源也
テキスタイル貿易
ジーンズ課課長
○三菱商事㈱
柳川
勝彦
繊維原料部部長
○瀧定大阪㈱
藤井
孝
貿易部次長
○豊田通商㈱
土井
拓雄
繊維製品部部長職
○日本繊維輸出組合事務局
内海
博基
専務理事
鬼頭
和男
総務部長
1
トルコ・ルーマニア市場調査団日程表
2007 年 11 月 10 日(土)
23:30
関西国際空港出発
2007 年 11 月 11 日(日)
05:45
イスタンブール着
2007 年 11 月 12 日(月)
現地企業訪問
2007 年 11 月 13 日(火)
現地企業訪問
2007 年 11 月 14 日(水)
調査団員個別調査
2007 年 11 月 15 日(木)
2007 年 11 月 16 日(金)
2007 年 11 月 17 日(土)
17:05
イスタンフール発
18:25
ブカレスト着
19:25
ブカレスト発
20:45
イスタンブール着
23:45
イスタンブール発
17:45
関西国際空港着
2
(TK047)
(TK1445)
(TK1446)
(TK046)
1.日本からのトルコ向け繊維品輸出の現状
日本からトルコ向けの繊維品輸出は、過去 3 年間少しづつではあるが伸びてきており、
2006 年で前年比 8.3%増の 4、689 万ドル。しかし日本の全繊維品輸出から見ると、シェア
0.6%を占めるに過ぎず、過去 3 年間の推移を見ても、2005 年 0.5%、2004 年 0.5%と大きな
変化は見られない。
趨勢としては、ワタ、糸、織物の輸出が中心で、二次製品は製品資材関係が伸びている
ものの、全体の数字から見れば、僅かなものである。
トルコ向け繊維品輸出推移
単位:千ドル
2004 年
2005 年
2006 年
42,332
43,283
46,886
ワタ
10,360
8,276
14,834
糸
21,523
21,895
20,034
織物
8,418
10,783
9,379
繊維製品
1,947
2,212
2,554
85
116
85
繊維品合計
その他
(注) ①糸には特殊糸を含む
②織物には、不織布、タイヤコード織物、コーテッド織物、
特殊織物、ニット生地を含む
(出所) 「日本貿易月表」
−主要繊維品の輸出概況―
日本からトルコ向け繊維輸出の中で、主要品目となっている、ワタ、合繊長繊維糸、合
繊長繊維織物の過去 3 年間の輸出動向は次の通り。
(A) トルコ向け主要ワタの輸出
トルコ向けのワタ輸出は、2006 年においてスフ綿が前年比 169.9%増と大幅な伸びを見
たことで、全体としては前年比 77.2%増の 6,059 キログラムとなった。合繊ワタについて
は、過去ある程度まとまった量が出ていたアクリル・ワタがジリ貧傾向にあるが、一方ポ
リエステル・ワタが量はいまだ僅かであるが年々輸出を増やしており今後が注目される商
品である。
3
トルコ向け主要ワタの輸出
単位:キログラム、%
2004 年
数量
2005 年
前年比
数量
2006 年
前年比
数量
前年比
ワタ合計
5,489
178.9
3,420
62.3
6,059
177.2
スフ綿
1,354
682.0
1,530
113.0
4,130
269.9
合繊ワタ
4,105
153.6
1,889
46.0
1,929
102.1
3,737
161.1
1,109
29.7
760
68.6
352
101.3
777
220.8
1,139
146.5
アクリル
ポリエステル
(出所) 日本貿易月表
(B) トルコ向け主要糸の輸出
トルコ向け輸出で、最大の金額を占めている糸輸出であるが、そのほとんどが合繊長繊
維糸である。その中でも着実な伸びを見せているポリエステル長繊維糸が大半を占めてい
る。絶対量が少ない、ナイロン長繊維糸はスポット的に 2004 年、2005 年と急増したものの、
2006 年には大きく落ち込んだ。ポリウレタンは 2005 年に落ち込んだものの 2006 年には回
復した。
単位:キログラム、%
2004 年
数量
2005 年
前年比
数量
2006 年
前年比
数量
前年比
2,316
134.9
2,907
125.5
2,346
80.7
2,292
134.3
2,887
125.9
2,305
79.8
426
6129.4
857
201.2
76
8.8
ポリエステル
1,416
114.3
1,713
121.0
1,749
102.1
ポリウレタン
400
95.5
239
59.6
444
185.9
糸合計
合繊(長)糸
ナイロン
(出所) 日本貿易月表
(C) トルコ向け主要織物の輸出
織物の輸出は、2005 年にポリエステル長繊維織物の不振から落ち込んだものの、2006 年
には回復の兆しを見せた。綿織物が若干の輸出を見ているものの、そのほとんどがポリエ
ステル長繊維織物である。それ以外には、ここでは織物合計に含まれないが、資材用不織
布がある程度の量の輸出を見た。
4
単位:千平方メータ、%
2004 年
数量
2005 年
前年比
数量
2006 年
前年比
数量
前年比
織物合計
1,923
132.6
1,638
97.9
2.242
136.9
綿織物
282
102.1
300
106.2
226
75.4
1,567
163.8
1,273
81.2
1,880
147.7
1,441
153.9
1,254
87.0
1,674
133.5
737
79.5
1,818
246.6
1,230
67.6
合繊(長)織物
ポリエステル
不織布
(出所) 日本貿易月表
2.トルコの繊維品貿易概況
WTO の報告によると、2006 年におけるトルコの繊維品貿易は、輸出については、テキス
タイルが 75 億 9,000 万ドルで世界第 5 位、クロージングが 119 億ドルで世界第 3 位、輸入
についてはテキスタイル 46 億 9,000 万ドルで第 7 位、クロージングが 24 億ドルで第 12 位
となっており、いずれも黒字となっている。
※なお、以下の詳細な統計は、アトラスの統計を使用しており、
WTO の数字と異なっていることに留意願いたい。
(A) トルコの繊維品 品目別貿易概況
2006 年のトルコの繊維品貿易は、下記の表に見られるごとく、輸出はアパレルとその他
で 87.3%を占めており川下が圧倒的に多く、反対に輸入は川上、川中で 84.2%のシェアを
占めるといった典型的な加工貿易型となっている。綿花の生産は世界第 6 位、化合繊の生
産も世界第 8 位の生産量であるが、国内繊維産業の需要をまかないきれず、原材料の輸入
依存度が拡大しているのが現状である。
2006 年の金額ベースで、トルコの最大の輸出品目はニット製衣料でシェア 44%、次いで
布帛製衣料品同 28%と、衣料品で 72%を占めている。
同じく 2006 年の金額ベースで最大の輸入品目はシェア 11%の綿織物で、次いでポリエス
テル長繊維糸 7%、布帛製衣料 6%、スフ綿 5%、綿糸 4%となっている。
2006 年の繊維品輸出は前年比 28%減の 136 億 7,618 万ドル、輸入は同 25%減の 50 億
5,672 万ドルと輸出入とも不振であった。
5
2006 年 トルコの商品別繊維品貿易
単位:百万ドル、%
輸
出
金額
輸
シェア
金額
入
シェア
13,676
100.0
5,057
100.0
86
0.6
1,534
30.3
455
3.3
1,299
25.7
織物
1,184
8.7
1,427
28.2
アパレル
9,823
71.8
436
8.6
その他
2,128
15.6
361
7.1
繊維品合計
ワタ
糸
(出所〕アトラス
(注) ①糸には特殊糸を含む
②織物には、不織布、タイヤコード織物、コーテッド織物、
特殊織物、ニット生地を含む
(B) トルコの繊維品 国別貿易概況
トルコの 2006 年における繊維品輸出は EU 向けがシェア 74.8%とそのほとんどを占め
ている。下記の表からも明らかな通り上位 10 カ国で 77.8%のシェア占めているが、第 3 位
の米国、第 8 位のロシアをのぞいて全て EU 諸国で占められている。
一方、2006 年の繊維品輸入は、EU からの輸入が 29.5%と最大のシェアを占めているが、
国別単位で見るとトップの中国を始めとして、シェア 72.6%を占める 10 カ国にインド、韓
国、パキスタン、インドネシア、マレーシアと東アジア諸国が 6 カ国を締めている。なお、
中国については、近年の輸入の激増振りから、2005 年からトルコ側でセーフガードを発動、
42 カテゴリー品目について、2006 年には 2 カテゴリーを追加して、44 カテゴリーについ
て現在輸入制限を行っている。
2006 年 トルコの主要国別繊維品貿易動向
単位:百万ドル、%
輸出
金額
輸
シェア
金額
繊維品合計
13,676
100.0
ドイツ
3,352
24.5
英国
2,221
16.2
930
6.8
イタリア
6
入
シェア
5,057
100.0
中国
825
16.3
イタリア
597
11.8
米国
547
10.8
繊維品合計
フランス
876
6.4
インド
311
6.1
米国
819
6.0
ドイツ
298
5.9
オランダ
792
5.8
インドネシア
267
5.3
スペイン
585
4.3
パキスタン
239
4.7
ロシア
441
3.2
ギリシャ
219
4.3
デンマーク
359
2.6
韓国
215
4.3
ルーマニア
280
2.0
マレーシア
155
3.1
(出所〕アトラス
(C) 日本の主要繊維品のトルコでの競合国
日本の全体から見ればごく僅かでしかないトルコ向け繊維品輸出であるが、その中で主
要商品であるスフ綿、アクリル綿、ポリエステル綿、ポリエステル長繊維糸、ポリエステ
ル長繊維織物について、2006 年ベースでのトルコの輸入国は次の通りである。
〔スフ綿〕
トルコにおけるスフ綿の輸入については、2006 年ベースでオーストリアが 25,411 トン、
シェア 18.7%でトップの位置にあり、次いで中国、インドネシア、台湾、タイランドとアジ
ア勢が続いている。日本は 13 位で 428 トン、シェアはないに等しい。なお価格的には、第
10 位の英国がキロ当たり 3.93 ドルと飛び抜けて高いが、その他はキロ当たり 2 ドル前後で
あり、日本のキロ当たり 1.91 ドルから見て、日本品と同クラスのものと思われ、価格的に
太刀打ちできず今後期待薄である。
トルコにおけるスフ綿の輸入状況
単位 : トン、ドル/トン
2005 年実績
国
数
合計
オーストリア
中国
インドネシア
台湾
2006 年実績
名
量
単
価
数
量
単
価
120,979
1.98
135,711
1.88
25,226
2.06
25,411
2.20
5,794
1.77
24,606
1.75
14,532
1.69
16,364
1.76
7,937
1.66
15,424
1.75
7
タイランド
8,936
1.60
14,232
1.74
ドイツ
13,564
2.43
10,994
1.92
ロシア
14,681
1.67
10,951
1.68
フィンランド
11,680
1.74
10,044
1.81
インド
3,087
1.78
3,744
1.93
英国
3,044
3.85
1,641
3.93
988
2.78
816
1.91
日本(13 位)
(出所) : アトラス
〔ポリエステル綿〕
トルコの 2006 年の輸入は前年比 27.7%減の 43,732 トン。内、中国からが同 37.4%増の
30,944 トン、シェア 70.8%と飛び抜けている。続いて意外であるが前年比 51.3%減のサウ
ジアラビアが続き、あとパキスタン、台湾、日本の順序となっている。価格的にはキロ当
たり 1.5 ドル前後から 2 ドルまでにあり、日本品がシェアを拡大するのは難しい状況にある。
なお、日本に次いで 6 位のドイツの単価がキロ当たり 3.32 ドルとなっているのか注目され
る。
トルコにおけるポリエステル綿の輸入状況
単位 : トン、ドル/トン
2005 年実績
国
2006 年実績
名
数
量
単
価
数
量
単
価
合計
60,447
1.43
43,732
1.49
中国
22,557
1.35
30,994
1.43
9,183
1.37
4,469
1.43
10,283
1.33
3,011
1.33
台湾
1,764
1.53
2,457
1.67
日本
856
1.69
857
1.92
1,001
2.91
815
3.32
サウジアラビア
パキスタン
ドイツ
8
アイルランド
1,485
1.74
485
1.95
インド
2,770
1.40
404
1.51
130
1.63
172
1.66
0
-
101
1.64
韓国
ルーマニア
(出所) : アトラス
〔アクリル綿〕
トルコの 2006 年アクリル綿の全輸入量は前年比 8.8%減の 95,525 トン。内、ドイツか
らがシェア 43.9%でトップ、次いでイタリア、ベラルーシ、ロシア、ポルトガルと続き、
上位にある国は量を伸ばしているが、下位の国の減少が目立った。日本は前年比 91.2%減
の激減で 129 トン、シェアは 0.1%で前年の 9 位から 12 位にまで落ち込んだ。当該商品は、
先進国からの輸入が多く、価格的には 2 ドルから 3 ドルとなっている。日本品も一次はそ
れなりの量を見たが、商品に特に目立った特長もないことから、ジリ貧傾向を辿った。
トルコにおけるアクリル綿の輸入状況
単位 : トン、ドル/トン
2005 年実績
国
2006 年実績
名
数
合計
量
単
価
数
量
単
価
104,746
1.94
95,525
2.17
ドイツ
38,673
2.04
41,911
2.29
イタリア
32,299
1.89
33,857
2.15
ベラルーシ
5,319
1.79
6,127
1.92
ロシア
6,622
1.71
5,708
1.93
ポルトガル
8,013
1.92
4,212
2.10
ペルー
2,080
1.88
1,668
2.07
ハンガリー
1,010
0.55
785
2.97
英国
1,908
2.81
597
1.96
9
ウズベキスタン
146
1.64
191
2.22
タイランド
0
-
179
1.88
日本(12 位)
1,463
2.11
129
2.36
(出所) : アトラス
〔ポリエステル長繊維糸〕
トルコの 2006 年におけるポリエステル長繊維糸の輸入は、前年比 4.3%減の 17 万 1,759
トンと糸の輸入では最大の輸入量となっている。その中で前年比で 116.4%増の中国がシェ
ア 25.0%、マレーシアがシェア 24.9%と両国で半分を占めている。中国が前年比激増、マレ
ーシアが 3.5%減と 2005 年と 2006 年で立場が完全に逆転している。日本からの輸入は、前
年比 2.0%増と伸びており、単価もキロ当たり 9.55 ドルと、中国の同 1.79 ドル、マレーシ
アの同 1.78 ドルと大きく異なっており、商品が全く異なっていることは明らかである。
上位 10 カ国は、スイスとドイツを除いては、全て東アジア諸国で占められている。
トルコにおけるポリエステル長繊維糸の輸入状況
単位 : トン、ドル/トン
2005 年実績
国
2006 年実績
名
数
量
単
価
数
量
単
価
合計
179,445
2.17
171,759
2.12
中国
19,871
1.88
42,996
1.79
マレーシア
44,271
1.73
42,715
1.78
韓国
31,912
2.21
19,973
2.66
インドネシア
13,990
1.75
16,827
1.90
タイランド
13,360
1.92
14,052
2.07
スイス
16,667
2.44
12,391
2.58
インド
6,478
1.91
10,643
1.78
13,457
1.74
5,407
2.12
5,363
2.97
3,306
2.86
台湾
ドイツ
10
日本
1,631
10.65
1,663
9.55
(出所) : アトラス
〔ポリエステル長繊維織物〕
ポリエステル長繊維織物は、織物輸入の中で綿織物に次いで大きなシェアを持っている。
2006 年の輸入量は、対前年比 12.1%減の 3 億 1,405 万平方メーターで、内マレーシアから
の輸入量が 62.7%のシェアを有して他を圧しており、以下韓国、インドネシアと続いている。
中国からの輸出は前年比 29.7%減と大きくおちこんだが、これは中国からの商品に対してダ
ンピングの疑いがもたれたことが影響したものと思われ、いずれ復活してくるものと思わ
れる。日本からの輸入は、全体の 12 番目で、前年比 83.6%減の 11 万平方メーターに過ぎな
かった。単価的には、マレーシア平方メーター当り 24 セント、日本品同 4.52 ドルと、全
く品質の異なったものであり、日本の競争品としては、イタリアや英国品が考えられる。。
トルコにおけるポリエステル長繊維織物の輸入状況
単位 :1000SM、ドル/SM
2005 年実績
国
2006 年実績
名
数
量
単
価
数
量
単
価
合計
357,380
0.74
314,053
0.54
マレーシア
185,099
0.29
197,070
0.24
韓国
64,898
1.47
40,979
1.32
インドネシア
21,992
0.95
26,875
0.94
チェコ
24,329
0.45
23,033
0.38
中国
28,706
1.36
20,174
1.14
ドイツ
3,096
1.67
2,052
1.41
台湾
2,388
1.25
1,060
1.45
イタリア
3,729
1.64
898
3.89
フィリピン
7,149
0.77
755
1.30
英国
3,803
1.41
350
2.75
11
日本(11 位)
657
3.79
108
4.52
(出所) : アトラス
3.日本からトルコ向け繊維品輸出の増大の可能性
このような状況下にあって、今後日本からのトルコ向け繊維品輸出増加の可能性を探る
にあたって、トルコ国内市場そのものを目標とすること、トルコを加工基地として EU を
始めとする周辺市場向け輸出原材料の提供を目標とする二つの道が考えられる。
(A)トルコ国内市場をターゲットとする
常にトルコの安定的・持続的経済成長を阻んできた政治的要因については、現在もイス
ラム系与党と世俗主義派の対立、北イラクに拠点を置くクルド武装勢力との対立などが危
惧されるが、総選挙や大統領選挙も無事終了し、トルコ国内市場については、今後の経済
の潜在的成長を期待を持って眺めることが出来る。消費市場として眺めた場合、
①人口 7206 万人(2005 年推計) 、層の厚い若年人口を有しており(24 歳までの人口
が全体の 55.0%、29 歳以下になると同 63.5%を占める)、中長期的に購買力を有し
た消費者の出現が期待できること
②23 四半期連続のプラス成長を続けているマクロ経済の安定。また、ゴールトマン・
サックスが人口規模と潜在的な成長性によって選出した NEXT11 の一員であるこ
と
③比較的高級品の取扱いが多いショッピング・モールの建設ラッシュ
④国内ブランド品が近代的なショッピング・センターやモールなどでかなり高い値
段で販売されていること
〔国内有名ブランド〕
○紳士・婦人服:キール、ベイメン、ネットワーク、ダマト、サラル、
ヤルグジュなど
○カジュアル:オクソ、FBI、ムド、トゥイーンなど
⑤国内のアパレルメーカーの中には、中国品を始めとする定番品の取扱から高級品へ
の転換を図っているところが見られる
などから見て、いまだ認識の低い日本の差別化、高付加価値商品に対するプレゼンテー
ションをトルコ国内で開催されている展示会への出品や個別の展示会等を通じて行い、日
本品への需要を掘り起こしていけば商機が芽生える可能性は高く、いったん商売が出来れ
ば、親日的な国民性から息の長い取引に結びつく可能性がある。
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(B)EU を始めとする周辺市場をターゲットとする
トルコを加工基地として、EU を始めとする周辺地域への輸出に対して、輸出原材料を提
供する道が、トルコ向け輸出を考える場合、一番オーソドックスな方法である。
①EU や潤沢な外貨の保有で富裕層が広がりつつあるするロシア、中東地域など、高級
品が売れる市場に近いこと。
またこれら地域へのクイック・レスポンスが可能なこと。
②中国品などの定番品との競争に脅威を抱くメーカーの中には、国内市場から離れて、
高級品を周辺諸国への販売の中心にすえ、それに集中しようとしていること
③周辺地域に比べて賃金は割高であるが、勤勉で器用であり、教育水準も高い
④世界で有名なブランド品がトルコ国内で OEM 生産されていること
⑤過去の実績から、これら地域向け輸出については、広範囲な販売ネットワークを抱
えていること
⑥1996 年に発効したトルコの EU との関税同盟、さらに周辺地域との FTA(自由貿易協
定)の締結
※トルコの FTA 締結国:ルーマニア、ブルガリア、クロアチア、マケドニア、ボスニア、
ヘルツェゴヴィナ、EFTA、イスラエル、パレスチナ、チュニジア、モロッコ、につ
いては既に発効、シリア、エジプトとは締結済み
などから、今後、海外向け高級品を取り扱いたいと考えているメーカーに日本の差別化・
高付加価値商品に対する需要が見込まれる。
そのためには、日本品についての認識が低いトルコの繊維産業に、トルコ国内で開催さ
れる展示会や国際的な展示会あるいは個別の展示会でのプレゼンテーションなどを通じて
日本品の良さを息長くアピールしていくことが必要である。ただし国民性として、目先の
利益を追うことに熱心で、長期的な展望を持たないので、日本側で長期的な展望について、
地図を描いて両者で協力して取引を進めていくことが必要である。
そうすることによって高付加価値で、品質の良い商品展開を考えているトルコの繊維業
界と協力体制を築くことが出来、輸出促進に繋がっていくものと思われる。
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