2007 年 5 月 17 日 報告者 橋本日吉 『職業奉仕の一考察 中小企業の社会的責任について』 本日は前回より少々本質的な部分へ、掘り下げてロータリーのもっとも根幹とも言う べき 職業奉仕の視点から、中小企業の社会的責任について 考察してみたいと思い ます。 先ず初めに我々中小企業の位置づけと現状そしてこれからの役割について少々お 話してから入っていきたいと思います。 日本の企業総数約 500 万社の中、中小企業数( SOHO も含む)は全体の 87 % 中小企業で働いている人々は、全体の 80 %を占めている事は、ご承知のとおりで あります。 平成 13 年中小企業実態調査では 4,347,000 社 平成 18 年同調査では 3,718,000 社(内法人 1,389,000 社 個人 2,329,000 社)この 5 年間で 63 万社 (▲ 3.1 %増)が廃業・倒産等で退めていってしまいました。平成 18 年度には、どう やら二極分化が明確になり現象傾向に歯止めが少しづつ見られ、一企業当たりの売 上げ及び経営利益は増加しており、経営環境に少し好転が見ら れ経営状態が悪い 企業が廃業や退めていった中、経営がしっかりした企業が生き残っている為ではない か…(中小企業庁の分析結果) 平成 18 年中小企業の売上高 519 兆円(前年比 ▲ 2.8 %増) 経常利益 18 兆円(前年比 ▲ 0.1 %増) ↓ 一企業当たりの売上高 一企業当たり経常利益 1 億 4000 万円(前年比 0.3 %増) 500 万円(前年比 3.1 %増) 皆様の会社は、この指標に比べて如何でしょうか…。 次に中小企業の社会的役割について少々前回に続き少し確認してみたいと思います。 21 世紀に入った今、私達中小企業の存在意義(企業の経営目的)として次の2つの 機能的役割があると思います。 1. 企業の本来的機能役割 地域社会への製品・商品・サービス・技術等の提供 プラス 2. 働く人々への人間的発達機能の役割 働く社員の仕事を通しての人間的成長、自己実現・豊かな生活の創造 以上、二つの社会的役割の遂行によって 幸せの見える地域づくりと世の中に喜ばれ る人財づくり の実現が可能となってきます。 資生堂名誉会長の福原義春氏が、 2 月 1 日日経夕刊の紙上で次のように語って います。 ―社会に喜びを与える― 「社会に喜びを与えられない企業は淘汰されていく。若い人たちも、本能的にそう いう会社の寿命は、短いと気づいているのでは、ないでしょうか」 CSR (企業の 社会的責任)の一環として、新たな段階に入ったと語っている。 又 かんてんぱぱ で有名な伊邦食品工業㈱ 代表取締役会長 塚越寛氏は会社の 存在意義を次のように語っています。 ―会社の目的は、社員の幸福・理想郷づくり― どう働くのか、いかに経営するのか、どんな会社を目指すのか? 利益も成長も会社の目的ではない。 より良い世の中にするための 手段 である。 年輪のように確かな安定成長による永続こそ、会社をとりまくすべての人々を幸 せにする。 本日の本題であります、ロータリーの職業奉仕の新方針と職業宣言の視点から少し 紐解いてみますと、「職業奉仕は、クラブと会員両方の責務である」として各々のクラ ブ内に小委員会を設ける事を推奨しています。 1. 青少年の就職に力を貸し、雇用促進及び再教育をつとめる。(就職相談) 2. 地域社会内に雇用の機会を増やし「四つのテスト」の通用・推進をはかる。(職 業指導)等々。 「職業宣言」においては⑥で「自己の職業上の手腕を捧げて、青少年に機会を開き、 他人からの格別の要請にも応え、地域社会の生活の質を高めよ。」…と規定審議会 にて宣言しています。 最 近の新聞紙上で 高校卒業職安通い 地方の就職厳しい現実 …好景気の実感 なし「なんとか正社員に」…都会に出てもワーキングプアー急増…と掲載されてい ま した。また、ニート・フリーターそして「 3 年 3 割問題」など若者の早期流出、フリータ ー・ニートからの正社員の移行は非常に社会的に困難であります。これらの諸問題を 解決するのは我々中小企業の果たす 役割でないでしょうか。 ここ数年、我社では新卒者採用(共同求人)及び中途採用等、若者の雇用や若者へ の中小企業で働くことの意義及び雇用機会の創出等、インターンシップや大学内での 企業実践報告等を行っています。 2005 年度の神奈川大学経済学部のインターンシップ生・半田浩章君のレポートより 感想を抜粋いたしましたのでご参照下さい。 社 長のお話の中に、「経営者や実際に企業で働いている人が、企業の中では 日々の経営活動がどのように行われているか、仕事の何が難しく、何に喜びを感 じるの か、どのような努力が必要なのかを教育の場で教えることがこれからは 必要だ。」、「中小企業はこれからの世を担う若者に対して雇用の機会を積極的 に作って いかなければならない。」というものがあったのですが、御社がインター ンシップ生を受け入れている背景にはこのようなお考えがあるということを知り、 感服 いたしました。わたしは大学で学問を学んでいるわけですが、学生生活の 中では難しい専門知識は得られても、働くことに関しては全くといっていいほど教 えて もらえていません。自分の親にしても、朝出かけて、夜帰ってくる姿しか見る ことができないので、働くということに関して学び取ることはできませんでした。 そのような環境で育ってきた学生は多くいると思います。実際わたしの友人の中 にも社会に出て働くことをアルバイ トの延長上くらいにしか考えない者もいます。 人生の多くの時間は働くことで費やされるわけですし、また働くことで社会貢献を することが人生の大きな課題で あるわけですから、やはりこれからの教育の場 では働くことに関してもっと教えていくべきだと考えます。 又、一昨年に続き昨年と 2 回行っている産学官連携事業の一環として、横浜国大で の講演を実施致しました。学生の感想をアンケートから抜粋致しましたのでご参照下 さい。 私 は本日の講義を聞いて、今までの自分が持っていた就職に対する考 えが変わりました。私は今まで企業に就職するという事はその企業に自 分の一生を捧げるつも りでずっとその企業で働き続けることだと思ってい ました。しかし東邦通信システムズは中途採用なども行っており、また社 長が社員一人一人を大切にし、彼ら の更なる将来の目標を応援してい る事を知りました。東邦通信システムズで働く人々はきっと楽しく、そして 目標を大切に働いているのだろうと思いました。 大企業に入って働くことも素晴らしいことだけど、中小企業に入って自分 が成長できる機会を得ることも大切だと思いました。 中小企業には普段あまり目を向けていないが、細かい部分を支えている のは中小企業だと改めて気づいた。これからは大企業だけでなく中小企 業のこともより知りたいと思った。 やはり中途採用では大企業に入社するのは難しいんだなと思いました。 中小企業ならではの社員の接し方などを見て、社長が会社を大切に思 い、社員を大切にしているんだと実感しました。 以 上のような視点から、まさに『職業奉仕はクラブと会員両方の責務である。』と言え るゆえんであるかと思います。先ずは、本業できちんと社会的役割を果たす 事が大 前提として実践してゆくならば、中小企業経営者としてまたロータリアンとして、地域 から喜ばれる人財づくりと幸せの思える豊かな地域づくりの形成は 21 世紀に入った 今日、中小企業経営者にとって地域社会から強く求められたあるべき姿ではないだろ うか。
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