第 5 章 君と僕とメディア 122 26 「好き好き大好き」であるが ために押しつけてしまう心 君は「村上春樹」に弱い CHECK 村上春樹に弱い人の特徴 □ 謎めいた展開のドラマやアニメが好き □ プチネットストーカー経験がある □ 人を変えようとしてしまいがち 123 ちょっと不思議なことや納得できないことがあると、 「なぜそ うなっているのか」が気になって仕方ないのです。 村上作品の場合はまさにそれで、ほとんどの人にとっては「な にが書いてあるかよくわからない」 。 だからみんな気になり、自分なりの理屈を探すのです。 もはやメインカルチャーの「エヴァ現象」 そういう点では、村上春樹と通ずるところにあるのが『新世紀 エヴァンゲリオン』ではないでしょうか。 『新世紀エヴァンゲリオン』は、1995 年に放映されたテレビア 「隠された謎」のとりこになる あなたは村上春樹さんの作品を読んだことがあるでしょうか? ニメでしたが、熱狂的な人気を集め、映画化までされ、さらに 10 数年たった今も再び「新劇場版」が制作されています。 人によって「最高だった」 「イマイチだった」 「よくわからなか これがただのロボットアニメならそうならなかったのでしょう った」と賛否両論の作家さんなのですが、ある人がこんなことを が、思春期の子どもたちの心の葛藤、キリスト教の世界観をモチ 言っていました。 ーフにした複雑な設定、そして、あまりの「謎」の多さ……ここ 「村上春樹は、『自分だけが彼の世界を理解できる』と思わせる に、子どもからおとなまでとりこになったのです。 ことが最高にうまい作家である」 。 これは言い得て妙で、 「ああ……たしかにそうだなぁ」と思っ てしまいました。 たとえば村上春樹関連の本を探してみると、文学者がこぞって 村上春樹作品の分析をしています。 では、なぜ研究するのかというと「なにが書いてあるかわから ないから」 「すべてが明らかになっていないから」でしょう。 というのも、人の心理には「理解したい」 「知りたい」という 欲求があります。 私(ホッタ)は先日初めて観たのですが、驚きました。 だって、あまりにも不親切なのです。 内容を理解しようと思って観賞しようとすると、 「この単語の 意味ってなに?」「今なんて言った?」 「え、なんで急にそんな話 になってるの?」……と、ちょっとしたフラストレーションすら たまります。 「もっとちゃんと説明してくれよ!」と、一生懸命ネットで調べ たりして、もうその時点ですっかりハマっているのです。 第 5 章 君と僕とメディア 124 人は、好きなもののことはすべて知りたい。理屈をつけて納得 弱さを克 服するための処 方 箋 したいと思ってしまいます。 そのオタク精神が科学技術を発展させ、今の暮らしがあります ……が、しかし、これが対人関係などにまで発展するとちょっと ミステリアスなアニメなどにハマりがちな人は・・・ →→ものすご〜く難しい文学に挑戦してみる(理屈や合 理性ではない世界が描かれています) 危険です。 たとえばストーカーの心理というのは、 「相手のことが好きす ぎて、行動をすべて把握したい」 。最終的には、 「相手のすべてを コントロールしたい(思いどおりにならないのがイヤ)」といっ た気持ちが強くなりすぎ、危ない行動につながるのです。 ある程度精神的におとなになると、知っておいたほうがいいこ と、知らないほうがいいことの線引きができます。 人と他人は違う生き物だということをわかっているからです。 ですが、精神が未熟なままだと、自分と他人を同じフィールド に入れて考えてしまいます。 だから、同調することを求めるし、コントロールしたがるし、 異なる意見を認められません。 人に自分の気持ちを強要するのは、前項のいじめの問題とも似 ています。※ 1 村上春樹が好きでも、エヴァが好きでも、そのこと自体はまっ たく問題ありません。しかし、その趣味嗜好を他人に押しつけて しまってはいないでしょうか? まとめ CASE 1 気持ちや価値観を押しつけるのは マナー違反(伝えるのは OK) ※ 1天声人語に書かれた「love と like の違い」が話題になりました。「love は異質なものを求め、like は同質なもの を求める心の作用」という考え方があるそうです。「押しつけ」や「同調圧力」は、love ではなく like なのです。 CASE 2 プチネットストーカーになりがちな人は・・・ →「知りすぎると興味を失うこともある」と、思いとどめ → てみる CASE 3 人を変えようとしてしまう人は・・・ →「他人は変えられない、自分が変えることができるの → は自分だけ」と自分に言い聞かせる 125
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