美 容 皮 膚 科 診 療 美 容 皮 膚 科 診 療

 平成19年(2007年)2月20日
パート
20
美 容 皮 膚 科 診 療
~レーザー・ピーリング外来~
皮膚科 横 川 真 紀
従来の皮膚科診療では、しみやしわといった美容
う技術です。ニキビの毛穴のつまりを解消したり、
的な皮膚疾患は、治療を希望される患者さんが多い
美白剤の浸透を高めることができるので、しみの治
にも関わらず対象外でした。しかし、しみやしわの
療にも用いています。グリコール酸、サリチル酸マ
発症メカニズムが次第に解明され、皮膚科学に基づ
クロゴールという2種類のピーリング剤を使ってい
いた美容皮膚科学が発展し、患者さんの希望に応え
ます。保険適応はなく自費診療です。
ることができるようになってきました。
当科では平成18年から美容皮膚科診療をはじめま
した。現在行っている主な治療法について説明します。
① レーザー治療
③ ビタミンCイオン導入
ビタミンCには美白作用、活性酸素の除去(若返
、皮脂の分泌を抑え毛穴を引きしめる作用、
り作用)
コラーゲンの合成を促す作用などがあります。しかし、
Qスイッチアレキサンドライトレーザーを治療に
内服や塗布では十分に皮膚に吸収されないので、非
用いています。太田母斑、異所性蒙古斑、外傷性刺
常に弱い電流を皮膚に流してビタミンCを皮膚に吸
青、外傷性色素沈着の場合には保険診療が適応され
収させる手技(イオン導入)を行っています。レー
ます。その他、扁平母斑、老人性色素斑(しみ)、
ザー治療が適応とならない肝斑、炎症後色素沈着、
雀卵斑(そばかす)などは保険適応がないため自費
老人性色素斑などが対象です。保険適応はなく自費
診療で行っています。照射時に多少痛みがあります
診療です。
ので、あらかじめ麻酔テープを貼ることもあります。
照射後1~2週間の軟膏塗布が必要です。
② ケミカルピーリング
化学物質でひとかわむいてきれいな肌にするとい
④ 美白剤
内服;ビタミンC、ビタミンEなどいろいろ処方
しています。保険適応はなく自費診療です。
外用;しみ、炎症後色素沈着、扁平母斑などに、
メラニン合成を抑制する働きのあるハイド
ロキノン軟膏、皮膚の新陳代謝を促進する
レチノイン酸軟膏を組み合わせて治療して
います。またレチノイン酸軟膏は皮脂の分
泌を抑える作用もあり、ニキビ治療にも用
いています。保険適応はなく自費診療です。
スキンケア指導と共に、患者さんの希望や状態に
応じて①~④を適宜組み合わせて治療しています。
平成19年(2007年)2月20日
が、基礎代謝や運動などで消費されるカロリー(消
肥満外来
肥満外来
費カロリー)よりも大きい状態が続くと、余分なカ
ロリーが蓄積され、その結果体重増加が起こるので
す。余分に摂取されたカロリーが中性脂肪となって
体内に蓄積されるしくみは、飢餓時などに対応する
ため、長い人類の歴史の中で獲得されてきた防衛反
第二内科
応のひとつであると考えられています。ここ何十年
西 山 充
かの間に、我々の生活は急速に便利になりました。
平成16年4月より当科では肥満者を対象として減
食べ物はあふれていますし、どこへ行くにも乗り物
量指導を行う「肥満外来」および「肥満教育入院」
で移動できます。肥満者の爆発的な増加は、我々の
を実施しています。肥満は単に見た目だけで決める
体のしくみが社会の急速な変化に対応できていない
ものではなく、きちんとした判定法があります。身
結果と考えられるかもしれません。
長および体重から計算して得られる体格指数(Body
肥満症に対する減量治療において基本となるのは、
Mass Index: BMI = 体重 (kg) ÷ 身長 (m) ÷ 身長
食事および運動に関する生活習慣を改善することで
(m))を用いて肥満かどうかを判定するのです(表:
す。当科で行っている肥満外来および肥満教育入院
日本肥満学会の判定基準)。例えば、身長170cmで
では、医師による全般的な減量指導や、管理栄養士
体重80kgの人は BMI = 80÷1.7÷1.7= 約27.7とな
による食事指導、理学療法士による運動指導などを
るため、肥満1度という判定になります。
通して、患者さんの生活習慣の改善をしていただく
(表) BMI
18.5未満
18.5以上25未満
25以上30未満
30以上35未満
35以上40未満
40以上
判定
や せ
正常体重
肥満1度
肥満2度
肥満3度
肥満4度
ようにしています。体重減量の目標としては、とり
あえず現体重の5~10%の減量(体重100kgの方な
ら5~10kgの減量)とします。入院による減量を
行った場合、2~4週間でこの目標に到達できるこ
とが多いですが、外来のみで減量を行った場合はそ
の度合いに個人差が大きく出ます。消費カロリーよ
りも摂取カロリーを少なくする状態を継続すれば体
肥満にはさまざまな合併症(糖尿病、高脂血症、
重は必ず減少しますが、現実にはなかなかうまくい
高血圧、高尿酸血症、冠動脈疾患、脳血管疾患、睡
かない場合も多いと思われます。患者さんご自身が
眠時無呼吸症、脂肪肝、整形外科的疾患、月経異常
「減量したい、スリムになりたい」という意志をし
など)が起こりやすいことが分かっています。肥満
っかり持ち続けることが成功するポイントです。近
にこれらの合併症を伴う場合には「肥満症」と呼び、
い将来、減量のための新しい内服薬(食欲抑制薬や
医学的にも積極的な減量治療の対象となります。ま
脂肪吸収抑制薬)が使用できるようになる可能性も
た同じように肥満していたとしても、脂肪の蓄積が
ありますが、生活習慣の改善に勝る治療法はありま
皮下よりも内臓周囲に多ければ合併症は起こりやす
せん。肥満治療を希望される方は当科までご相談下
くなります。脂肪蓄積の場所を正確に知るためには
さい。
CT検査が必要ですが、ウエスト周囲を測定するこ
とで見当がつきます。ウエストが男性では85cm、
女性では90cm以上で内臓脂肪型肥満が疑われます。
近年、過食や運動不足などを背景として肥満者お
よび肥満症患者が爆発的に増加しており、社会問題
となっています。肥満が起こる原因としては、特殊
な遺伝性疾患やホルモンの病気などのこともありま
すが稀であり、ほとんどの場合は過食などで生じる
単純性肥満です。なぜ体重が増加するのか?それは
食べ物から得られるカロリー(摂取カロリー)の方
こはすくん
平成19年(2007年)2月20日 海外研修について
海外研修について
~イタリア紀行~
~イタリア紀行~
耳鼻咽喉科 濱田 昌史
私は昨年6ヶ月間イタリアに滞在し、ピア
チェンツァ市にあるカーサ・ディ・クーラ・
ピアチェンツァ(イタリア語でケアハウス、
病院の意味)にて、世界的に高名なマリオ・
サンナ教授のご指導を賜りました。目的は中
耳手術および脳外科・頭頚部外科の境界病変を対象
とする頭蓋底手術の研修です。手術数は耳鼻科のみ
で年間1,000件を超え、その成績も目をみはるもの
があります。
このような高度な専門領域はチーム医療が極めて
大切ですので、下のごとくナース2名にも患者さん
のケアを学んでもらいました。
看護部 西村なぎさ・西峯 清香
私たちは昨年10月末(10/20~10/30)に、中耳
炎から耳にできる腫瘍に至る多種な耳の手術および
頭部と頚部の境界領域にある頭蓋底手術に対する、
介助と術後の患者さんへの看護を学ぶためイタリア
研修の旅に出ました。
私達が訪問したのは、ミラノ南方に位置するピア
チェンツァ市にある私立病院です。ここはイタリア
全域はもとより、他のヨーロッパ・アフリカ諸国か
らも手術を目的に患者さんが訪れる高度専門病院で
す。私たちは、このような病院で行われる一連の看
護を見学し実践させてもらうことによって、自分達
の病院とは異なる環境や設備、国籍も違う患者さん
達が、どのような手術を受け、どのような術後ケア
を必要とし、また提供されているのかを知ることが
できました。
病棟では現地の看護師と一緒に病室を訪問したり
設備の見学をした後、患者さんの血圧測定、筋肉注
射、採血時の介助、吸引、血糖測定などの処置をは
じめとし、日常生活の援助もさせてもらいました。
その際、身振り手振りと片言のイタリア語にもかか
わらず、私たちの看護行為を受け入れて下さったこ
とが大変嬉しかったです。休憩時間には、病院食堂
の見学・試食をしましたが、驚いたことに日本のよ
うにそれぞれの病状に合わせた治療食というものが
なく、パスタかスープが中心でした。現地の看護師
とは、手術後の患者さんの観察点や指示書、看護記
録、薬品管理方法などについても情報交換すること
ができました。研修を通して実感したことは、現地
の看護師の専門知識の深さ、プロ意識の高さであり、
私たちが目指すべき看護師の姿についても考えさせ
られました。
イタリアの人達は皆明るく医師も看護師も気さく
に話しかけてくれ、不安で一杯だった私達を和ませ
てくれたので、出発前から心配していた言葉の壁も、
コミュニケーションをとろうとする者同士の気持ち
の通じ合いでいくらかカバーできたように思います。
おかげで、リラックスして研修を受けることができ
ました。また、最終日には現地のイタリア人医師の
計らいで、少し離れたパルマにある大学病院の集中
治療室(ICU)も見学できました。この病院の規模
の大きさ、最新設備の充実には驚きの連続でした。
研修の合間には、ミラノ、フィレンツェに行き色々
な歴史ある建造物を見学したり、おいしいイタリア
料理を食べたりと、研修以外の時間も楽しく過ごす
ことができました。今思い返しても夢のような11日
間でした。このような機会を与えていただいたのは、
濱田昌史先生をはじめ病院の皆様のおかげですが、
何より大学病院で勤務をしていたからこそ得た機会
であったと改めて感謝しました。研修で学んだ事柄
はスタッフみんなに伝えて、より良い看護を提供し
ていけるよう日々努力していきたいと思います。
平成19年(2007年)2月20日
外
外科
科手
手術
術体
体験
験セ
セミ
ミナ
ナー
ー
外科学(外科1)花 和弘
平成19年1月27日(土)・28日(日)の2日間、
本院で地域社会貢献活動の一環として、地域の中学・
高校生を対象とした「外科手術体験セミナー」を開
催しました。1月27日は13時から17時までの間、
高知小津高校、高知追手前高校、土佐塾高校、土佐
高校より36名、1月28日は9時から13時までの間、
上記4校に土佐中学校、高知学芸高校を加えた各校
から44名、2日間で計80名(男性27名、女性53名)
の参加者があり、両日とも同じプログラムで行って
大変好評でした。全国でも珍しく、四国では初のイ
ベントだったこともあり、当日の模様はNHKテレ
ビで放映されました。
入室し、鶏肉を用いた超音波凝固メスによる模擬手
セミナーの内容は、最初に笹栗志朗教授(外科2)
術体験や最新の内視鏡外科手術シミュレーター装置
より外科の歴史や仕事内容および外科医の魅力につ
による手術手技操作、手術用縫合糸による縫合・切
いてブラック・ジャックやDr.コトーの漫画も使用
開・結紮練習などの工夫された5つのプログラムを
しながら、わかりやすくお話していただきました。
体験してもらいました。体験終了後は参加者全員に
特に「医療は外科から始まった」、「患者さんから信
セミナー受講証明書を手渡すとともに、アンケート
頼されることが外科医として最高の喜びである」
、
「外
調査と参加学校別の記念撮影を行って閉会としまし
科は医療の最後の砦である」、「大学は高知大学、学
た。
部は医学部、科は外科を選択してください」という
外科医不足が言われるなか、何よりも尊い人の命
笹栗教授の熱い思いはきっと参加者にも伝わったは
を救う外科医師の仕事に触れることにより、一人で
ずです。続いて小林道也教授(医療管理学)より高
も多くの子どもたちに外科医の仕事や医療に対する
知大学で現在行われている内視鏡外科手術やロボッ
興味を抱く機会を与えられればという思いで企画し
ト(イソップ)手術、また“外科医がニューヨーク
ましたが、お蔭でセミナー参加者からはとても楽し
にいながらフランスにいる患者さんの手術ができる”
く興味深かったとの感想が多数ありました。セミナ
ロボット(ダ・ビンチ)を用いた遠隔手術等、最新
ー終了後に「高知大学医学部を目指します。」と明
の外科治療についてお話していただきました。
確な意思表示をしてくれた高校生もいて、参加者の
その後、手術着に着替え手袋を着用して手術室に
中から将来の外科医を夢見て高知大学医学部に入学
してくれる方が大勢出てくれることを大いに期待し
ています。
医師の仕事は「人々の健康を守ること」です。厳
しい労働環境とそれに見合う報酬が得られないなど
の理由により日本の外科志願者数は年々減少してい
ます。高知県の外科医療が崩壊しないためにも、今
回のようなセミナーを契機に一人でも多くの外科医
が将来誕生してくれることを切望せずにはいられま
せん。