電波観測の勘所 電波メディア講座 現代社会は,通信や放送などの人工電波,電気・機械製品などからの電磁ノイズ,さらに宇宙起源 や大気起源の自然ノイズなど,多くの電磁波で溢れています.このため,地震に関連した電磁現象の観 測においては,これら観測対象以外の電磁ノイズの影響をいかに避けるか,識別するかが重要になりま す.そのため,観測周波数帯には,これら電磁ノイズの影響を受けにくい周波数帯を選定するとともに, 観測データに現れた変化が観測対象の電磁波か,それともそれ以外の電磁波かを識別できる観測法の 確立が求められます. 電波観測の勘所 人工の電波 レベル変動 (1)観測周波数:どの周波数帯で観測するか? ・ 現代社会,通信や放送の電波が一杯 ・ さらに電気・機械製品からノイズが一杯 でも高周波になるに従い徐々に人工ノイズが減少. (2)観測場所:どこに観測系を置くか? ・ 人工ノイズの少ない場所 → 何度も現地に出向き,周辺のノイズ環境や 電波伝搬環境を確認 ・ 昼夜連続観測に電源,通信回線を確保 (3)観測方法:どうやって観測対象を検出するか? ・ 観測系・観測地周辺のノイズを徹底的に除去 人工の電波やノイズを ていねいに除いていくと 「銀河ノイズ」が見えてくる 人工ノイズ これでやっと正確な 観測ができるぞ! 銀河ノイズ 時 間 人工ノイズの影響を除くと,VHF帯では「銀河ノイズ」が見えてくる.(図1参照) → 銀河ノイズが見えてきたら完成 (図2は広島市立大学観測系で検出した事例) ・ 観測対象とそれ以外を識別する手法の確立 → 二周波法 ・ FM放送波帯の観測では,fr 波が受信された場合,どこの放送局からかの識別が不可欠. そのために私たちは復調音からどのFM局から届いたものかを確認するようにしています. ・ 観測データの変化がローカルな現象か,それとも太陽フレアのようにグローバルな現象か識別. そのために私たちは全国15ヶ所に観測点を設け,異なる観測点のデータを比較検討しています. 無線の研究開発に従事していた NTT 時代,先輩から,「アンテナ」「電波伝搬」「無線装置」の3要素に 対する見識が不可欠だと,常に指導を受けていました.今,地震電磁現象の観測を行うにあたり,電波 観測にもこの3要素に対する見識が不可欠だと,あらためて感じています.そして,何よりも科学的手法 を実践し,得られたデータを客観的に見ることが求められるように思います. 人工・都市ノイズの大まかな特徴 銀河ノイズの年変化(2002年) 観測点:広島市大 電波伝搬技術ハンドブックより 私達は人工ノイズの影響の少ないVHF帯にて観測 銀河ノイズを検出できれば 正確な電波観測が可能 0 4 8 12 16 20 24 (hour) Jan. April July 銀河ノイズ 周波数(NHz) Oct. VHF帯 dBm -100 -105 -110 -115 -120 (Month) 図1:人工ノイズの特徴 図2:広島市立大学で観測した 81MHz の 1年間の受信レベル変動 (銀河中心の南中に呼応し銀河ノイズが見える)
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