⑳ IiI⑳ - 新潟県農業総合研究所

西片・近藤・梅田:豚のコリネパクテリウム病の予防法
5
3
豚のコリネバクテリウム病の予防法
Staphylococcushyicussubsp・hyicusに起因する豚の関節炎(再録)
西片良樹・近藤新二・梅田雅夫
要約幼若豚の関節炎について病因究明を行ったところ,起因菌はS・hyicusと同定された。菌は噛
乳中に受傷した局所の創傷から侵入したものと考えられ,実質臓器からは有意菌および既知ウイルスは分
離されなかった。高い感受性を示した薬剤としては,カナマイシン,エリスロマイシン,オレアンドマイ
シン,キタサマイシン,テトラサイクリン,オキシテトラサイクリン,クロラムフェニコールおよびノポ
ピオシンなどがあり,ペニシリンの感受性は低かった。主要病変は蹄冠部および四肢の関節部にみられた
が各実質臓器に著変はなく,惨出性表皮炎の症状は潔められなかった。豚の鼻腔および耳翼にはS、hyicus
が高率に付着していることが知られた。
以上のことから,幼若豚に多発した関節は豚の惨出性表皮炎の起因菌であるS・hyicusによるものであ
ることが示唆された。
⑳
養豚経営の規模拡大が進み,省力管理が進むにともな
い飼養環境が低下し,流行性肺炎・萎縮性鼻炎などの慢・
性呼吸器病をはじめ膿鰯性疾患が全国的に多発傾向にあ
作成し,その遠沈上消をESK細胞およびCPK細胞に
接種した後,回転培養を行い,7日間観察した。
る。ながでも,ActinomycesCorynebacterium)pyog
enesluこ起因すると考えられる馳蹄の異常や関節炎は獲
4.病理学的検査:放血殺した発症豚の病理学的検査お
豚
経
営
上
,
大
き
な
障
害
と
な
っ
て
い
る
1
7
,
1
8
,
1
9
,
2
0
,
2
1
)
ま
た
,
学的検査は10%ホルマリン液で固定後,薄切し,ヘマト
キシリン・エオジン(H・E)染色を施し鏡検した。
本病は食肉衛生の面からも重要視され,.と畜場では重症
豚を鰻毒症として廃棄処分にしているので養豚家にとっ
ては経済的損失が大きい。
I
i
I
⑳
3.ウイルス学的検査:Nn1およびNoL7の各臓器乳剤を
よび病理組織学的検査は常法により実施した。病理組織
5.臨床生化学的検査:発症豚から採血し,赤血球数,
白血球数,ヘマトクリット値および白血球百分比の測定
を行い,また,血清を分離し,血清蛋白分画を行い,グ
ルタミン酸オギザロ酢酸(GOT)の測定をユニテスト
そこで,本病の予防技術を検討するために感染抗体
(プロテアーゼ抗体)と病豚の発生調査を行ったところ,
分娩房の床面構造が原因で哨乳豚に関節腫大,歩行障害
などをともなう関節疾患が発生し子豚の生産性阻害要因
6.豚体付着S・hyicusの検査:母豚10頭およびそれぞ
になっていることについては,既に報告した。②これら,
れの子豚96頭,計106頭について,滅菌綿棒で鼻腔および
システム(アコム)により実施した。
子豚の関節疾患について病因究明を行ったところ,豚の
・耳翼の内側面を拭い,Devrieseの培地に接種,37℃,
惨出性表皮炎の原因菌であるStaphylococcushyicus
subsp・hyicus(以下「S・hyicus」という)の感染が
知られたので,その成緬の概要について報告する。
48時間,好気培養して菌分離を行った。
. 成 績
1.発生状況:当場で飼育している子豚(噛乳豚を含む
材料および方法
1.材料:新潟県畜産試験場のけい養豚で,可検材料と
しては蹄冠部,手関節および足関節に腫脹がみられ,破
行を呈している13日から30日令の庸乳豚,4腹の7頭を
供試した。
2.細菌学的検査:発症豚を放血殺し,それぞれの臓器
および関節異常部を直接スタンプ法で,7%羊血液加寒
天培地およびDHL寒天培地に接種し,37℃,18∼48時
間,好気培養および嫌気培謎(スチール・ウール法)を
体重35kgまでの子豚)のうちで患部の腫脹,硬結,熱感,
発赤をともない破行を呈し,手関節炎(写真1),足関
節炎(写真2),肘関節炎,膝関節炎,指骨関節炎,馳
骨関節炎および蹄炎と臨床的に診断されたものは,1982
年。1.9%(21/1,117頭),1983年。3.4%(31/760
頭),1984年。3.4%(48/1,393頭)の発生であった。
このうち,1984年5月から同年10月までの間に発生した
4症例,7頭の発生状況は表1に示すとおりである。症
例1は1腹12頭中の5頭が3日令から手関節および足関
実施し,分離菌ば成書80により同定した。また,薬剤感
節の腫脹を呈したので治療を行い4頭は治癒したが,残
受性検査は一濃度デスク「昭和」(日水)を用いて感受
りの1頭・Nqlは,さらに,廻脹が重度となり破行を呈
性デスク用培地に接種し,37℃,24時間,好気培養後に
した21日令の哨乳豚である。症例2は1腹10頭中の2頭
判定した。
で,Nol2は10日令から左右前肢蹄冠部が腫脹し,破行を
新潟畜試研究報告.第7号(1987)
5
4
呈した。また,Nn3は15日令から右前肢蹄部の睡脹およ
び左足関節が軽度の腫脹を呈した。いずれも17日令の晴
乳豚である。症例3は1腹9頭中の4頭に発生したうち
の3頭で13日令の哨乳豚である。これらは,いずれも7
日令の発生で,NbL4は左右前肢蹄冠部が腫眼し歩行不能,
NOL5は右膝関節が腫脹し破行,また,NOL6は右前肢蹄冠
部が腿眼し破行を呈した。症例4は1腹17頭中の1頭
(NOL7)で,28日令に左足関節が腿脹し破行を呈した29
日令の噛乳豚である.
関節異常部は表1に示したとおりであり,これらの噛
乳豚には診出性表皮炎の症状は認められなかった。
2.細菌学的検査成績
(1)菌分離成績:表2に示すとおり,各実質臓器から
は有意菌は分離されず,各関節病変部からS、hyicusが
有意に分離され,StaphylocOccusaureus,α一溶血性
連鎖球菌も同時に分離された例もあった。
(2)分離菌の生化学的性状:API20Staphを用いて
実施した性状検査では,表3に示すとおり,プロファイ
ルは6516053,6514153,6514151で,いずれも,Shy‐
icusと同定されたが硝酸塩還元,VP,尿素分解の性状
が異っていた。
(8)薬剤感受性検査:NoL7豚の右足関節膿癌,同部位
表 1 発 生 状 況
節
足
蹄冠部
○
肢
膝関節'
○
○
○
○
○
4
の肉芽および右内腸骨リンパ節から分離されたShy‐
icusの3株を用いた,一濃度デスク法による成績は表4
に示すとおりである。感受性の高い薬剤は,アミノグリ
コシド系ではカナマイシン,マクロライド系ではエリス
ロマイシン,オレアンドマイシン,キタサマイシン,テ
トラサイクリン系ではテトラサイクリン,オキシテトラ
サイクリン,クロラムフェニコール系ではクロラムフェ
ニコール,その他,ノポピオシンなどであり,感受性の
低い薬剤はペニシリンであった。
後
関○
節
手
関○
肢
○○○
11
71
71
31
31
32
9
2
3
30
15
1 77782
2
1234567
1
前一瞬
症例Na・個体N、発生日令殺日令
関節異常部位
3.ヴイルス学的検査成織:NoL1豚の脳,心,肺,肝,
牌および腎ならびにNol7豚の腎および糖巣からウイルス
分離を賦みたが表5に示すとおり既知のウイルスは分離
されなかった。
4.病理学的検査成績:関節および四肢蹄部における病
理学的所見は表6に示すとおりである。
(1)病理解剖学的検査成鎖:各検体の実質臓器には著
変は鰹められず,主要病変は蹄冠部および四肢の関節部
にみられ,その断面では周囲結合織の増生および関節の
§=醒垂J繭■…竺耀霊轟堂謹上聖鼎…ー=・‘』蓋壷華蓉
霊
雷
表 2 菌 分 雛
壷
:
当
Nnl
Nu2
.Na3
成 積
Nq4
Nq5
Nn6
Nq7
心
肺
S・hyicus+
S・hyicus+
ー
肝
ー
一
腎
十二指腸
E・coli+
直 腸
E・cOlioo
手 関 節
瀧職e;+
足 関 節
:釧鱒十
股 関 節
●
膝 関 節
●
前肢蹄冠部
●
E・coli。。
E・colioo
E・coli⑥。
E,colioc
E・coIioo
一
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
S・hyiuso◎
●
S,hyicus++bEcoli S・hyicus-H弓E,coli
StaPIwiococc瞳.sp
Bacillus朴
後肢蹄冠部
●
鮫下リンパ節
●
蹴径リンパ節
●
●
腸骨リンパ節
●
●
sta哨溌僻季p α、瀧勝二緋
S,町icus+
●
α・溶血strepoo
S、hyicus舟
S・aureus舟。
.α・溶血strepL舟
α溶血strep・升
S・hyicus÷
S・aureus弁
●
S・hyicuso。
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
S・aureus÷.
1 h
S・hyicus.:Staphylococcushyicussubsphyicus
S・aureus:Staphylococcusaureus・
strep:Streptococcus.
E・coli:E
●
E・Colioo
E、coli+
園ヰ・筒顕・鼓田罷鞠su与染魁遵Ⅷ︾qト灘S蝋罫群
牌
●
S・hyicusc◎
+:接種培地上に形成されたコロニー数く10
什 : ” 1 0 ∼ 3 0
- H + : ” 3 1 ∼ 1 0 0
. . : 〃 1 0 0 <
:nonetr蟹mtm⑧nt
、、
5
6
.
新潟畜試研究報告 第7号(1987)
表 3 分 離 菌 の 生化学的性状
項
グラム染色
カタラーゼ
目
Na2石股関節由来株
グラム隅性球菌
恥4左後肢蹄ラ茜部由来株
グラム隅性球園
NqL7右足関節由来株
グラム隅性球菌
十
十
十
アルギニン加水分解
VP
果 糟
+++
アルカリフオスファターゼ
尿素分解
炭水化物分解
ブドウ糟
マンノース
++
変芽穏
乳 糟 ・
トレハロース.
F一一十十十一十十十一十十一一・一一一十
コアグラーゼ
硝酸塩壁ラ昔
F一一十十十十十十十一十十
OF
F一十十一十十
オキシターゼ
マンニッ.ト
キシリトール.
メリピオース
ラフィノース
ー
キシロース
一
白艇i
a−メチルグリコシド
N−アセチルグリコサミン
APIプロファイル
+
十
十
+
一
、
+
6514151
6514153
6516053
表4分離菌の薬剤感受性検査成積
名
ペニシリン系
薬 剤 名
ペンジルペニシリン
PCG
質
マクロライド系
キタサマイシン
スピラマイシン
タイロシン
ペプタイド系
コリスチン
ボリミキシンB
クロラムフェニコール系
クロラムフェニコール
TC
OTC
CL
PL
計什
ノボピオシン
一
スルファジメトキシン
ニトロフラン系
フラゾリドン
ニトロフラントイン
そ の 他
ナリジキシックアシド
*
123
サルファ剤
:Nn7右足関節腫鰯由来. S
・hyicus
”
:、NOL7右足関節肉芽由来
:NoL7右腸骨リンパ節由来
A〃
FZ
NF
**寺什:きわめて感受性
十:かなり感受性
十:やや感受性ミ
ー:耐性
雑一十一十十一弁
合成抗菌剤
そ の 他
升針群寺井
物
エリスロマイシン
オレアンドマイシン
等帯苓
性
テトラサイクリン
オキシテトラサイクリン
皿皿画却癌
テトラサイクリン系
カナマイシン
フラジオマイシン
帯計器#十
抗
十升十
ジヒドロストレプトマイシン
アミノグリコシド系
︾皿皿
AB−PC
アンピシリン
3’十+一寺斗主帯堂排特帯十十
群
区分
西片・近藤・梅田:豚のコリネパクテリウム病の予防法
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7
表6病理学的検査成積
表5ウイルス分離成積
眼
溺
挫創
肉芽形成
腫
脹
浮
腿
項目
P
2
3
・印:nonetreatment
45
6
節節部節部節部部部節部部節
関関緬関蝿関蝿蝿蝿関蝿蝿関
1
手足恋.股錐手織識識足燕錘足
個 体N、異常部位
2
1
6
3
6
38
(個/鋤)
17,000
0
1
.
7
7
3
.
6
2
2
.
3
6合2
●3
。8
●
i
i
l
0
0
白血球数
8
ヘマトクリット(形)
3
●●●●●。●●●●
赤血球数(万個/nmm)
○○
○○○○
○○
○○○○
○○
○○.
血液性状検査成菰
弱詑
6
4伽00392165
項百一廻竺
○○
○.○
○ ○ ○
○○
○
○○○○
7
表7
○○
2
.
5
4
5
6
7
5
4
0
4
5
3
4
3
6
1,047
34
27.5
30
38
1
1
,
1
0
0
8,700
6,200
25,500
0
0
0
0
0
.
5
0
.
5
0
.
5
2
.
5
7
.
0
1
.
0
5
.
9
4
7
.
0
6
7
.
5
3
1
.
5
6
3
.
8
4
6
.
5
2
2
.
0
6
5
.
0
2
6
.
6
3
.
0
2
.
0
・3.7
3
.
5
0
− .
5.8
6.0
5.6
6
.
1
5
.
7
6.1
5
.
4
36.7
22.7
37.9
4
3
.
5
3
3
.
7
50.0
3
5
.
6
36.3
44.7
32.7
2
5
.
4
3
8
.
6
23.6
4
0
.
7
17.9
20.4
16.4
1
8
.
4
1
7
.
8
16.9
1
7
.
9
9.1
12.1
13.0
1
2
.
7
9
.
9
9
,
5
5
.
7
0
.
5
1
1
.
0
0
0.55
0.58
110
0.29
6
2
0.61
90
0.77
150
8
5
9
0
143
新潟畜試研究報告第7号(1987)
5
8
う,ならびに,関節繊毛の黄色化が認められた。重症例
では黄白色チーズ様物の膿璃形成もみられた。
(2)病理組織学的検査成織:蹄冠部では真皮の増生,
浮腫がみられ,膿鰯形成も散見され,関節部においても
同様の肉芽形成をともなう結合織の増生を認め,膿鰯形
成もみられ,化膿性関節炎の像を示し,重症例では骨髄
汚染に起因する化膿菌感染の発症が主なものとされてい
る。今回の例は外傷からの局所感染によるものと考え,
A
c
t
i
n
o
m
y
c
e
s
p
y
o
g
e
n
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s
,
S
t
r
e
p
t
o
c
O
c
c
u
s
s
p
p
・
の
感
染
を疑い検査したが否定されたので病因検索を行ったとこ
ろ異常部位からS・hyiCusが有意に分離された。
S
・
h
y
i
c
u
s
は
1
9
7
8
年
,
D
e
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r
i
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s
2
O
に
よ
り
豚
の
惨
出
性
表
へ波及している例もみられた。
皮炎の原因菌とみなされて以来,多くの国において発生
5.臨床生化学的検査成績:表7に示すとおり白血球の
増加,ヘモグラムでは好中球の高いものがみられ,血清
がみられ4,①,わが国においても多くの報告がある9,]4,
典また,常在菌として豚の体表,牛の乳房およびニワ
6.s、hyicusの豚体付着状況:表8に示すとおり母豚
トリの体表からも分離されている1‘3.12,15)。しかし,S・
hyicusが分離される疾病で豚の惨出性表皮炎以外の報告
は少ない。Phi11ipsら5)は腐敗性多発性関節炎を呈し
は鼻腔から10頭中8頭(80%),耳翼から10頭中7頭
た豚の大腿股関節および肩関節からS・hyicusを純培養
(70%),また,子豚は鼻腔から96頭中79頭(82.3%),
状に分離しその病原だろうとしている。野田のは生後2
表8健康豚からのShyicus分離状況
∼3日令の新生豚の手関節炎からS、hyicusを分離し,
噛乳時に頻発する手根部の擦過傷から菌の侵入の可能性
蛋白分画においてはα一グロブリンの増加,アルブミン
およびA/G比の低下がみられた。
を指摘している。乾らJODは幼豚の関節は蹄の創傷に化膿
菌の増殖が加わって蹄の内部組織における化膿性炎を生
吐 慢
じ,その後,上行性に炎症が広がる過程で諸関節の化膿
I
j
/
耐
1
'
J
囚/1m
性壊死性炎を発生するとしている。
今回の噛乳豚の関節炎は,早いもので生後3日令から
関節の腫脹が潔められ,破行を呈する感染の初期には蹄
冠部が腫脹し,病理組織学的にも真皮の増生,浮腫がみ
られ,皮膚のひ薄な哨乳豚では豚房の床面と接する表皮
の傷口から菌が侵入したものと考えられ,さらに,日令
が進むにつれて手関節,足関節などの表皮感染から,ま
たは,上行性に多発性関節炎が発生し,ついには,骨髄
炎にまで発展したものと考えられた。
これら,関節炎を呈した子豚は歩行困難のため噛乳不
足により発育不良となった。血液性状検査においても,
アルブミンおよびA/G比の低下など低栄養性の変化が
*印の子豚は,Bordetellabronchiseptica予
防のために,.O日令,7日令,14日令,21日令及
び28日令に硫酸カナマイシンを左右の鼻腔内に
0.85趣(100,W”)をそれぞれ噴霧した。
耳翼から96頭中88頭(91.7%)と,それぞれ高率に分離
された。子豚の生後日令は3日令から29日令までである
が,日令による差はなかった。なお,硫酸カナマイシン
を鼻腔噴霧した4腹の子豚のうち,腹NoL6の子豚から菌
は分離されなかったが他の3腹の子豚からは高率に分離
された。
考 察
家畜の分野における関節炎は外傷性あるいは感染性原
因によるとされている。感染性の関節炎としては,豚で
は豚丹毒,マイコプラズマ,ヘモフィールス,パスツレ
ラ,プラセラなどの細菌感染症,または,幼若豚の厨帯
みられ,このため菌の侵入を群す結果をまねいたものと
考えられた。
S・hyicusの菌体側の病原性を示す物質としては,菌
体が産生するフィプリジン,ゼラチナーゼおよびプロテ
アーゼが注目されており,なかでも,蛋白分解酵素であ
るプロテアーゼ産生の高い株が発見されており,菌の病
原因子として検討されている'31.
関節炎を呈した子豚は噛乳ができなくなるため淘汰の
対象となり経済的損失が大きい。Shyicusは豚舎内に
常在化し,豚体に高率に付著していることが認められた
ことから菌の侵入を防止するためには豚体が受傷しない
ような豚房の配慮が必要である。とくに,子豚が哨乳時
に豚房の床面で表皮に受傷しないように分娩房の床面柵
造を改善するとともに,豚舎伽豚体消毒を励行し,浦潔
な敷料を十分に使用することが感染防止には有効と考え
られる。また,筆者らは関節腫脹を呈した感染初期に有
5
9
西片・近藤・梅田:豚のコリネパクテリウム病の予防法
効な薬剤(表4を参照)の注射と患部へ消炎剤の塗布は
病性の進行を阻止する成果を得ているので本病の治療法
18)原文男:Bun・AzabuUniv・Vet・Med、1
として応用価値のあるものと考えられる。
19)鈴木達郎,金子晋,斉藤調ほか:日獣会誌,26,
稿を終えるにあたり,ご助言,ご指導を賜った農林水
産省家畜衛生試験場北陸支場,竹内正太郎第3研究室長,
ならびに,病因の検索に協力をいただいた新潟県中央家
畜保健衛生所,病性鑑定課の方々に深謝します。
(2)187∼202(1980)
188∼192(1973)
20)東量三:畜産の研究,24,1212∼1216,1300∼1302
(
1
9
7
0
)
21)東通三,竹内正太郎:豚病学,365∼375,近代出
版,東京(1977)
引用文献
1)Devries,L、A、,:Am.』・Vet,Bes.,38,
787∼792(1977)
etal.:1,t.』・Syst・Bacterio1.,28,482∼
490(1W8)
3)DevrieS,L,A、,Oeding,P.,J・appl.
B
a
c
t
.
,
3
9
,
1
9
7
∼
2
0
7
(
1
9
7
5
)
4)Hunter,A,,:Brit・Vet.』.,126,225∼
2
2
9
(
1
9
7
0
)
W,
W、E、,:Am
E、,King,R、E、,Kloos,
J・Vet,Res,41,274∼276
(
1
9
8
0
)
6)Underdah1,N・嵐,Grace,0.,.Twiehaus,
M・』.,Am.』・Vet・Res、026,617∼624
(
1
9
6
5
)
7)野田一臣:家畜衛生研修会妃録(病性鑑定:細菌部
門),第8号,47∼48(1984)
8)坂崎利一(訳):医学細菌同定の手ぴき,第2版,
62∼261,近代出版,東京(1979)
9)田原健,長谷学,手塚博愛ほか:第93回日本獣医学
会講演要旨,115(1982)
10)儲純夫,成田実,石川義春:家畜衛試研究報告,81,
20 28(1981)
11)Reddy,C,A,,C◎mell,C・P.,Fraga,
A,M、,:Int.』・SySt.Bact.,:32−4.
419∼429(1982)
12)竹内正太郎,小林良則,両角徹雄ほか:第99回日本
獣医学会繍演要旨,152(1985)
13)竹内正太郎,小林良則,中川遁夫ほか:第97回日本
獣医学会蔚演要旨,135(1984)
14)中林大,尾田進,本間穂澗ほか:昭和56年度家畜病
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15)Devries,L,A、,Derycke,』.,:ReS・Vet・
Science,26,356∼358(1979)
16)矢口長彦,小林芳次ほか:第23回全国家畜保健衛生
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17)平棟孝志,東量三,柴田璽孝ほか:日獣会誌,15,
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究報告,6,141∼153(1985)
申
2)Devries,1,.A.,Hajek,V,,Oeding,P.,
5)Phllips
22)西片良樹,近藤新二,原島昇笠ほか:新潟県畜試研
6
0
新潟畜試研究報告第7号(1987)
Arthritisofyoungpigscausedby
S
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(recordedanew)
YoshikiNISHIKATA,ShinjiKONDOH,MasaOUMEDA
Summary
Thepresentstudywasundertakentodeterminethecauseofinfantilearthritisin、8wine.
ご
ThecausativeorganismwasidentifiedasStaphylococcushyicussubsp・hyicus,Itwa8
estimatedthattheorganismi、vadesswinebodiesthroughthelocaltraumasreceivedduring
sUckling,forneithersignificantbacterianoralready・knownviruseswereisolatedfrom
theparenchymalorgans、Theorganismshowedhighsensi-tivitytokanamycin,erythromycin,
oleandomycin,kitasamycin,tetracycline,oxytetracycline,chloramphenicol,andnovobiocin
whilelowsensitivitytopenicilin・Lesionswerelocatedmainlyinthecoronetsandappendicularjoints,andnoremark-ableChangewasobservedinanyparenchymalOrgan・Anysignof
exudativegpidermiswasnotrecognized,either・ColonizationofS、hyicuswasobservedin
highdensityinthenasalcavityandauricula・
Fromtheseobservation,itwaSsuggestedthatthearthritisfrequentlyobservedinyounger
pigswascausedbyS・hyicuswhichi8thecausativeoranismofexudativeepidermitis.