Peptidomics of Urine and Other Biofluids for

Review
Peptidomics of Urine and Other Biofluids for Cancer Diagnostics
Josep Miquel Bauça1, Eduardo Martínez-Morillo2 and Eleftherios P. Diamandis3,4,5,*
+ Author Affiliations
1
Servei d'Anàlisis Clíniques, Hospital Universitari Son Espases, Palma de Mallorca, Spain;
Samuel Lunenfeld Research Institute, Joseph and Wolf Lebovic Health Centre, Mount Sinai Hospital,
Toronto, Ontario, Canada;
3
Department of Laboratory Medicine and Pathobiology, University of Toronto, Toronto, Ontario,
Canada;
4
Department of Clinical Biochemistry, Toronto General Hospital, University Health Network, Toronto,
Ontario, Canada;
5
Department of Pathology and Laboratory Medicine, Mount Sinai Hospital, Toronto, Ontario, Canada.
2
* Address correspondence to this author at: Department of Pathology and Laboratory Medicine, Mount
Sinai Hospital, Suite 6-201, Box 32, 60 Murray St., Toronto, Ontario, M5T 3L9 Canada. Fax 416-6195521; e-mail [email protected].
Clinical Chemistry 2014;60: 1062-1072
癌診断のための尿や他の体液におけるペプチドミクス研究
概要
背景:癌は世界的に主要な死因である。 大部分の現在の癌マーカーは診断感度や特異度が低く、早
期の癌診断に用いるには難点がある。「ペプチドミクス」と知られている生体内でのペプチド、お
よび低分子タンパク質に関する包括的な研究では、既存のバイオマーカーに代わる、広く多様な病
態生理学の診断に有用な可能性を秘めているバイオマーカーを発見するために研究が進められてい
る。このレビューでは、癌診断に適用できるいくつかの体液用、特に尿に焦点をおいて、現在の
「ペプチドミクス」の研究状況を調べた。
内容:いくつかの研究では、異なる体液のペプチド物質について特定するために高処理技術を使用
した。採取方法が非侵襲性であること、また、安定性が高いことから、 尿が癌バイオマーカーの有
用な候補である。様々な解析前の課題としては、試料の採取を行う対象となる患者の選別や、試料
の取り扱い方法を考慮しなければならない。なぜなら、統計的な偏りの発生や、人為現象による誤
差による影響が発生するためである。さらに、分析方法および生物情報学的データ処理の両方を最
適化することが、偽陽性率の割合を最小化するのに不可欠である。
要約:尿および他の体液に関するペプチドミクスに基づいた研究は、特に卵巣、前立腺および膀胱
などの、異なるタイプの癌を分析する可能性を備えた、多くの生体分子およびペプチド・パネルを
得た。 大規模研究は、これらの分子を癌バイオマーカーとして検証するために必要である。
1
癌は世界的に大きな臨床上の問題である。癌は死因の 4 分の 1 を占めており、心疾患に次いで先進
国での死因の第 2 位の原因である。米国では毎年 160 万人を超える患者が、新しく癌と診断されて
いると推測される(1)。癌をとりまく現状は高度に複雑で、また、有効な治療方法はごく少ないため、
医療関係者ならびに政府ともに困難な状況にあるといえる。
治療成績の成功の鍵となる、解剖学的に離れた組織に転移する前の癌の早期診断が、長い間内科医
や研究者に求められていた。例えば、卵巣癌の 5 年の生存率は<40%であるが、初期段階に検知され
る場合、生存率は 90%まで増加する(2)。従って、初期疾患患者を識別することに役立つ、内在性生
体分子のような新しいツールを見つけることは、大変望ましい。1968 年に WHO によって報告され
たように、疾患診断用の理想的なバイオマーカーは、シンプルで、信頼性が高く、簡単な方法によ
って測定可能で、高い感度および特異性があるべきである。バイオマーカーは初期の疾患ステージ
で通常より高濃度であり、その濃度が疾患の範囲や重症度を反映するべきである。またその検査を
だれに適応するか、その目標母集団を決めることも同様に重要である。
残念なことに、日常的な検査に使用される癌バイオマーカーはほとんどない。集団スクリーニング
や集団検診に用いられることが認められたものはさらに少ない (3)。最も頻繁に用いられている癌バ
イオマーカーのうちの 1 つは、前立腺特異抗原(PSA)である(6)。しかし広範囲に測定されてはいる
が、血清 PSA も良性前立腺肥大や他の非悪性の疾病で増加するため、過剰診断と過剰治療に関係の
ある多くの問題が発生した(4)。同様に乳癌のための最良の生化学マーカーと考えられる CA15-3 も、
多くの良性疾患と同様、同膵臓および結腸直腸癌のような他の腫瘍の中でも増加している。この抗
原の血清濃度は、初期の悪性疾患においてわずかに増加するために、診断の感度が不足していると
いう問題がある (5)。より明白に、よりよい性能を備えた新しいバイオマーカーを発見し、検証する
必要が緊急の課題である。
重い多量のデータを解析する高処理技術は、「オーミクス」などの接尾語をつけた「ゲノミクス」
などの遺伝子、および他の DNA 塩基配列(つまりゲノム)に関する包括的な研究で知られるようにな
った。トランスクリプトミクス、プロテオミクス、メタボロミクス、エピゲノミクスやペプチドミ
クスなどあてはまる。バイオマーカーを開発する過程で、3 ステップが不可欠である(3)。:(a)、定
義された患者グループ中での候補分子の発見、(b)疾病診断を助ける能力をもつバイオマーカーの検
証、(c)臨床上の使用、法の設定。
このレビューでは、ペプチドミクスによる癌バイオマーカー発見の現状に注目する。特に尿に焦点
をあてるが、さらに他の体液についても言及する。ペプチドミクスの技術的な面や、異なるタイプ
の癌への適用についてもレビューする。
プロテオミクスとペプチドミクス
ゲノミクスおよびトランスクリプトミクスの研究の時代の夜明け以来、継続して異なる疾病の診断、
予後あるいはモニタリングで支援することができるバイオマーカーの発見に、多くの努力が向けら
れてきた。核酸をベースにしたアプローチでは、遺伝性の疾病の原因となる素因の認識が、それら
が発病する生物学的プロセスやメカニズムを識別するのには、通常不十分であるという問題があっ
た (6)。この問題は、プロテオミクスで部分的に緩和される場合がある。細胞、組織あるいは生物全
体の蛋白質の全分析は、翻訳後の修飾(例えばリン酸化、糖鎖形成)も加えたゲノムと、トランスク
リプトームから集められた情報をすべて含む。プロテオミクスは、構造や物理化学的性質およびそ
れらの機能を含む、生体システム内のすべてのタンパク質に関する大規模研究である。プロテオミ
クス技術は、プロテオームの遺伝的・エピジェネティック的特徴を統合することにより、蛋白質生
2
産の動的変化を検知する可能性を持っている (7)。プロテオームはゲノムやトランスクリプトームよ
りさらに多くの複合体であり、実際の細胞のプロセスについてゲノムやトランスクリプトームより
正確に反映すると思われる。タンパク質は生化学的活動の作動体である(図 1)。病態生理学の視点か
ら見て、遺伝子分析は、疾病にかかるリスクを予言することができる。一方でプロテオミクスのア
プローチは、いつ疾病にかかるかのリスクを明白に示し、かつ治療効果のモニタリングに役立つ可
能性をもっている。タンパク質の濃度およびそれらの翻訳後修飾の両方ともに、疾病進行中に変わ
る可能性がある(8)。
図 1 新しいバイオマーカーを発見するための「オーミクス」技術の適用
ペプチドミクスは、活性酵素によるタンパク質プロセシングによる付加的情報も含む可能性がある。
ペプチドームは、低分子量プロテオームを構成する。ペプチドミクスは 1996 年に造られた用語で、
定義された時に生体サンプルの低分子タンパク質および内在性ペプチドの系統的・包括的な分析を
示す用語であった。ペプチドミクスは明確には決められてはいないが、典型的には 20 kDa 以下のポ
リペプチドを包む。プロテオミクスの方法論で得られた結果では、ペプチドはとてもシンプルであ
り、早期に腎臓で濾過されるため有用でないと考えられていたことは興味深い。ペプチドミクスの
研究効果は、ポジティブな結果を生み出していたため、そうではないことがわかった。
生体システムでのほとんどのペプチドは、それそのものとしては合成されず、特定的または非特異
的経路で内在性ペプチダーゼによるタンパク質切断で生じる、前駆体タンパク質由来である (図 2)。
例えば、血液凝固のカスケードのいくつかの酵素前駆体の活性化や、インシュリンの成熟がそれで
ある。他のペプチド類は生体内のしかるべき部位で産生されるか、それらが血液中に受動的に、も
しくは疾患の状況の際に血管壁を浸潤するほどに小さい場合には、内皮脈管構造を通過する(9、 10)。
3
図 2 コアペプチドから一連のペプチドの生成は、エンドペプチターゼ活性によって生産される
アミノペプチダーゼやカルボキシペプチダーゼは、コアペプチドを切断することで、多くのペプチ
ド切片を生成する。それは質量分析によって識別することができる(12, 66)。
タンパク質プロセシングは、個々や種が外因性刺激によりよく順応するために、代謝的多様性を促
進するのに必要であるという学説がある(11)。実際に、体液中のペプチドは、一方ではプロテアー
ゼ活性と、他方でプロテアーゼインヒビターの作用との間の不均衡に基づくと考えられている。よ
うに、内在性プロテアーゼは、多くの生理学・病理学の現象の構成の中で差動的に制御される(12)。
したがって、プロテアーゼの活性化と阻害の研究により、いくつかの疾病の診断や、分子のメカニ
ズムについての、より深い理解に結びつく場合があると当然仮定できる。
ペプチドはさらに、健常な生理学的プロセスで中心的な役割も果たす(13)。すなわち、前駆体タン
パク質が明らかになっていない多くのサイトカイニン、成長因子およびいくつかの神経ペプチドな
どの場合であり (14)、それらが中枢神経系中でそれそのものとして合成されたのか、前駆体タンパ
ク質から崩壊して得られたものかについて示唆する。大きなタンパク質から処理されたペプチドは
通常、親分子と異なる生体機能や活性を示す(7)。高確率でタンパク質切断が起こったタンパク質は、
前駆体タンパク質よりも情報価値があり、分解生成物の同定、特徴の確認が着目されている (10)。
プロテアーゼ活性の差に関する研究は、医学へのペプチドミクスの適用のための魅惑的なフィール
ドである。例えば腫瘍形成過程は、ある細胞タイプの変形および増殖に関係し、プロテアーゼのよ
うな、特定のタンパク質および酵素の濃度および活性を変更する。したがって、システム(プロテオ
ミクス)でのタンパク質が変わるだけではなく、それらのプロテオームの拡張と見なされるべきであ
る代謝産物(ペプチド)も変わる。
体液のペプチドミクス
4
ペプチドームは、まだほとんど探索されていない未探検の生物学的情報で構成されている。それは
疾病診断に有用なバイオマーカーを供給するかもしれない。体液中のペプチドは、タンパク質合成、
プロセシング、分解の産物である。ヴォルトは、いくつかのペプチド・バイオマーカーがすでに臨
床で使用されているが、それらは現代のペプチドミクスでの研究方法で発見されたものはほとんど
ないことを示した (15)(表 1)。最も広く名が知られているペプチドは、心不全の診断のために血清中
で測定される脳性ナトリウム利尿ペプチドのアミノ N 末端プロペプチド、および、糖尿病患者にお
いて内在性インシュリン生産のモニター用の C ペプチドである。コラーゲン N 末端プロペプチドは
骨代謝回転のバイオマーカーとして、尿中で測定されるコラーゲン(16) 。このように体液は、有益
なタンパク質およびペプチドを採取するための、魅力的なソースであることを表わしている(表 2)。
表 1 臨床診断に使用される 現在のペプチド・バイオマーカーの例
5
表 2 ペプチドミクスでの体液の特性
血液のペプチドミクス
血液(血清または血漿)は、バイオマーカーを解明する最も価値のある試料と見なされている(17)。こ
れは血液が、生体のほとんどの組織から派生した分子の輸送媒体であるためである。 したがって、
この体液は、広範囲の組織および器官の病態生理学の状態を明らかにすることができる。正常細胞
と比較して、組織内の疾病の影響を受けた細胞は差動的にペプチドやタンパク質を蓄え、最終的に
間質液へ、その後血液中にこれらは流入する。血清中で高濃度のタンパク質は、ペプチドミクスに
は魅力的な生体試料である;しかしながら、タンパク質とペプチドは、濃度域が広く、10 桁の範囲
の測定幅を血清中で持つ (7) 。いくつかの有り余るほどの量を含有しているタンパク質(アルブミン、
免疫グロブリン、トランスフェリン、α1 - 反トリプシン、ハプトグロビン)が、バイオマーカー候
補のような低含量の分子の識別を妨げるので、分析的に困難である (18)。血液の構成が全身の代謝
状態を反映するとすれば、実質的にいくつかの組織あるいは器官から分泌された分子が輸送される
ため、任意の単一の器官の病態生理学の変化については容易に見落とされるかもしれない。凝固時
間が血清のポリペプチド成分に影響を与えることがあるため、分析には血清ではなく血漿がしばし
ば代わりに使用される(19)。
しかしながら、ほとんどのこれらの研究は偏りと人為現象の検証しておらず、少数の研究のみが一
連の病状に及ぶ血清ペプチドミクスの適用の可能性を実証した。Shen ら(20)は、乳癌バイオマーカ
ーの探索で血漿ペプチドーム(タンパク質分解産物の全収集)を調査し、細胞外マトリックスコンポ
ーネント、固有の免疫系分子、プロテアーゼおよびプロテアーゼ抑制物質を含む癌関連タンパク質
6
産物の濃度が増加するのを検出した。 ビリャヌエバらの別の研究(13)で、甲状腺癌転移患者のペプ
チドームスを年齢と性別と一致したコントロールと比較して、95%の感度および 95%の特異性のあ
る悪性診断のための 12 のペプチド断片を得た。 これらと同様の研究が、偏りと人為現象の検証を
目的で実施された(21, 22)(http://www.jci.org/eletters/view/26022)。
脳脊髄液のペプチドミクス
脳脊髄液(CSF)は、神経学の疾病用バイオマーカーの顕著なソースと考えらえる。CSF は脳の中の脈
絡叢中で生まれた無色の流体であり、構造的な保護、栄養素供給、廃棄物の除外および代謝物質輸
送を実施する。CSF は、中枢神経系のプロセスの多くを、連続的な相互作用によって反映すること
ができる分子を含んでいる(14)。プロテオミクスの試みでは、神経変性、神経精神病学的な障害、
外傷性脳損傷、脳腫瘍、および老化に関連する潜在的なバイオマーカーを発見するために、CSF ペ
プチドームの特徴を研究することが目標だった(23, 24)。Wijte らは、増強質量分析法をベースにし
たアプローチを遊離ペプチドとタンパク質結合ペプチドの両方について、アルツハイマー病の患者
からの死後の CSF で調べたところ、VGF、神経成長因子および補体 C4 前駆体のような、診断に使
用できる候補となる一連のペプチドを識別した(25)。追加の立証研究はこれから行われる。
Zougman らによる分析(14)で、91 の異なるタンパク質に由来した 391 のペプチド、および、より最
近の研究で 104 のタンパク質に由来した 5 kDa 未満の 626 のユニークなペプチド配列が認められた
(26)。より高分子量のコンポーネントと比較して、低分子ペプチドを伴う CSF の濃縮は、血漿から
のろ過割合が高いためと思われる。
CSF 研究の主な欠点のうちの 1 つは、検体の採取が侵襲性であり、神経病理学上の患者ではないお
そらく健康な個人に対してのスクリーニングでも、不利益を与えてしまうことである。
唾液のペプチドミクス
唾液は、口腔中に分布した大唾液腺(耳下腺の腺、顎下の腺および舌下の腺)および他の腺によって
分泌された多機能の体液である。口腔を円滑にし、消化および感染症を防ぐことに関わる(27)。唾
液はバクテリア、細胞残屑、間質液および血清の成分を含んでおり、採取方法が非侵襲性のため、
代替サンプルとして、有望で独特な特徴がある(28)。タンパク質が口腔に入るとすぐに、タンパク
質分解により濃度低下が生じて、唾液サンプルが採取された後も継続して分解される。この過程は
ペプチドの特徴において大きな変化を起こすため、ペプチドミクス分析の再現性に問題となる。性
別、年齢、食事および概日リズムのような他の分析前にある変動も、唾液のペプチド構成に重要な
影響を与える(29)。これらの欠点にもかかわらず、唾液のペプチドミクスな分析は、シェーグレン
症候群、口内乾燥症および糖尿病を含む様々な病態を診断するために使用された(30)。口腔がん研
究(31, 32)では、扁平上皮癌を持った患者の中で過剰生産される多くのペプチドを識別した。 Hu ら
(31)は、90%の感度および 83%の特異性を備えた口腔がん診断に使用することができた、5 つのタン
パク質の組み合わせを報告した。
涙のペプチドミクス
涙は非侵襲性に評価することができる、複雑な細胞外液である。血漿と同様、涙の中のタンパク質
やペプチドの濃度はいくつかの桁にまたがり (33)、日内変動は低いが個人間変動が著しい(34)。 de
Souza ら(35)では、涙中に 491 のタンパク質および、最近の研究では 1543 のタンパク質を識別した
7
(33)。最も包括的な涙のペプチドミクス研究では、現在まで 30 の内在性ペプチドの特性を明らかに
した。それらの大部分は、プロリンリッチ・タンパク質 4(PRP-4)に由来しており、それらは涙の
腺房細胞で高濃度に産生される、未知の機能のタンパク質である(36)。 涙は体液として、根底には
組織および器官の病態を反映し、ドライアイ、マイボーム腺機能不全およびシェーグレン症候群の
ような、視覚性・全身性の病態を評価するのに役立つと判明した (37, 38)。
バイオマーカーの源としての尿
尿は、生合成された蛋白質の廃棄物を除去するため、血漿の限外濾過によって腎臓中で形成される。
尿は除去に備えて数時間前に膀胱に蓄えられるので、内在性プロテアーゼによる蛋白質分解が大部
分は排泄する時間までに生じていると考えられていた(39)。しかしながら、最近の発見で、尿の中
の広い範囲にプロテアーゼの存在が実証された(40)。それは、尿が膀胱にどれくらいの時間存在す
るかに依存し、異なる内在性ペプチドの様々な組み合わせとなるかもしれない。 午前中の第 2 回目
の排泄尿を使用する場合、尿サンプル内の蛋白質分解による濃度低下は最小化することができる。
なぜなら、第 1 と第 2 の尿が出る間の時間で、尿は標準化されるからである。尿はそのように多様
性があるにもかかわらず、血液と比較して安定な体液とみなされている。なぜなら、血液ではプロ
テアーゼは血流中で活性化されるため、プロテオミクスやペプチドミクスでの研究を行った場合、
相当な数の分解物を生成し、研究結果が影響を受けると知られているからである(39, 41)。
尿は主に大量に、非侵襲的に採取可能であるという理由で、バイオマーカー研究だけでなく、臨床
診断でも長い間魅力的な研究対象の体液である。現在、ルーチンで分析されるいくつかの生体分子
は、高度な識別能をもつマーカーである。例えば、尿カテコールアミンおよびそれらの代謝物質の
測定は、クロム親和性細胞腫を判定し、糸球体の機能のインデックスとして蛋白尿を評価する際に
役立つ。
尿で研究を行う場合、いくつかの影響要因を考えなければならない。尿は日々生物学的変動を高く
受け、多くの内部および外部要因が尿の生産と構成へ影響を与える。食事、運動および水分摂取量
は、尿の質および構成比に影響を及ぼす 3 つの主な要因である。尿は、腎臓と膀胱だけでなく、他
の多くの器官あるいは生物学的プロセスにより放出されるため、振動性の成分に大きな影響を与え
る(42)。心血管の疾病、自己免疫の疾病および感染性の疾病なども、いくつかのタンパク質分子の
存在の有無や濃度に影響される(43)。
尿のペプチドーム
尿中に含まれるタンパク質量は非常に微量だが、健常人でも患者でも、個人からの尿サンプルはプ
ロテオミクスによる疾病の研究には魅力的である。1997 年に、ハイネら(44)は、人間の尿中のタン
パク質の存在に関して 13 の報告をした。 その時以来、他の多くの研究者が、人間の尿プロテオー
ムの評価を行い、異なる方法依存的な結論を出した。最初の研究方法は 2 次元の電気泳動で、1400
のスポットを識別し(45)、液体クロマトグラフィーが導入されたあと、その数は増加した。安達ら
(46)は、健康なドナーからの尿では少なくとも 1543 の異なるタンパク質を含むとし、それらはほと
んど細胞外か膜結合のタンパク質だった。 この発見により、リソソームタンパク質または細胞膜タ
ンパク質が、尿に到達するための特異的輸送経路の存在が示唆された。血漿に対し尿のタンパク質
含有量は少ないため、高濃度のタンパク質が潜在的なバイオマーカーを隠す可能性は少なくなる。
研究により、尿は低分子ペプチドを高度に濃縮することがわかった(47)。;健常者とファンコニー
症候群の患者の尿では、高分子タンパク質と比較して、10kDa 以下の分子を 100 倍以上に濃縮して
いる。なぜなら低分子タンパク質は糸球体を通じ、自由に出入りするからである(48)。 一方で、低
8
含量かつ低分子のペプチドは、体液循環の中でハーベスターとして作用する大きな運搬体タンパク
に結合している(49)。尿のペプチドームの主成分は、特にコラーゲン α1 鎖からのコラーゲン分解物
であるように見え、恐らく組織細胞外マトリックスの生理学的代謝回転を反映する(41)。
ペプチドミクスの技術的な側面
新しいバイオマーカーの発見は、サンプル中のバイオマーカー候補の濃度およびマトリックスの構
成物だけでなく、評価方法および試料調製ステップの分析感度にも依存する。研究およびバイオイ
ンフォマティクス・データの分析の計画デザインは、再現性があり、また不偏性があることが重要
である(50)。どんなペプチドミクスによる分析も、頑強で包括的な手順が必要である。
試料調製
プロテオミクス解析とは異なり、ペプチドミクス解析はサンプル中の低分子量成分を濃縮するため
のステップが必要である (17, 51)。 解析前のプロセスにもっとも検証が必要である。外部・内部要
因により変動は広範囲になり、結果に影響する場合がある(52, 53)。尿でのプロテオームの構成成分
や濃度は相当な安定性があり、室温 6 時間、-20℃では何年保存が可能で、試料の変性はわずかであ
る (39, 54)。フィードラーらは、最終的なペプチドミクスの結果に対する多くの変動影響を調査した
(55)。第 1 と第 2 の間の午前中尿サンプルだけでなく、第 1 尿の流れはじめと途中の尿サンプル間で
も著しい違いが観察された。細菌尿と血尿症は、低濃度であってもペプチドの性質に大きな影響を
与える。外部要因による変動を評価する場合、凍結融解サイクルが影響を及ぼす場合がある;した
がって、再現性は 1 回の凍結融解での検討で改善できる。
潜在的な解析前の変化を最小限にするために、サンプルは標準化されたやり方で集められ、扱われ
ることが必要である。人間の腎臓および尿プロテオームプロジェクト http://www.hkupp.org は、プ
ロテオミクスのための試料収集と操作方法の標準化を行うヒトプロテオーム機構の国際的なイニシ
アチブである。 ヨーロッパでは、欧州ヒト腎臓・尿プロテオーム機構 http://www.eurokup.org は、
尿プロテオミクスを通した腎臓疾患の理解とアセスメントを向上させる目的で、各分野の研究者の
相互効果を促進している。両方の組織は、尿処理ステップ(特にサンプル収集、遠心分離および融解
に重点を置いた)を標準化し、それを推薦した。それは、研究中のバイアスを最小化すると考えられ
ている。
ペプチドミクスでの質量分析の使用
伝統的に、バイオマーカー発見の仮説は、疾病生物学についての理解に由来するものである(56 )。
しかしながら、過去数十年間で、バイオマーカーとして役立つことができる候補分子を発見するた
めに、多くの研究者が質量分析を使用するようになった。複雑な生体サンプル中のペプチドを識別
し、量を計るための質量分析の利点は、癌だけでなく他の疾病にも診断のための新しい生化学のア
プローチの開発を同様に促進した。タンパク質とペプチドに関する研究は異なる方法が用いられた。
2 次元ゲル電気泳動は広範囲に使用された。しかし、10 kDa 未満の分子を分離し識別することがで
きないので、特に低い分子量での分析間再現性は低く、また時間がかかるものであった。キャピラ
リー電気泳動質量分析は、低分子量ペプチド分析で高度な再現性をもち、多くの揮発性のバッファ
ーや分析物と互換性をもつ(19, 24)。; しかしながら、長い処理時間のため、大規模研究に使用す
るには難しい部分がある。尿ペプチドの同定に最もふさわしいプラットフォームのうちの 1 つは、
9
TOF 検出器を備えた質量分析識別を伴った SELDI と MALDI である。この方法は 1-20 kDa のペプチ
ドに焦点をあてる。固定化は全プロセスの重要なステップであり、試料の取り扱いは容易になるが、
情報を大きく損失させる(52)。最後に、タンデム質量分析(LC-MS/MS)と組み合わせた液体クロマト
グラフィーは、高い再現性をもった大規模な情報を供給することができる。キャピラリー電気泳動
と液体クロマトグラフィーだけが、定量化の正確さを高めるような分析精度、測定レンジを備えた
ペプチドミクス研究用のタンデム質量分析道具と直接接続することができる(53). さらに、分析感度
を増加させる方法が開発されている。1 つは選択的反応モニタリングで、LC-MS/MS の装置上で非
走査運転モードを使用する(57)。従来の走査モードと比較して、検知能力が 2~3 桁増加する。
質量分析は、バイオマーカー発見と検証/バリデーションの両方を促進する。質量分析計はタンパク
質やペプチド、それらの修飾の性質を分析することに役立つ。他のプラットフォームに対する最も
明瞭な利点のうちの 1 つは、特定の病態生理学の条件についての存在有無や関連性の事前の知識無
しに、数千の分子を質的にスクリーニングし、解析できることである。以前に発見された候補分子
の数量化には、それらの臨床診断的特徴を評価することが不可欠である。
プロテオミクスを行う場合、一般的に、絶対的・相対的なペプチドの数量化は、内部標準として安
定同位体標識した分子を使用することが必要である。それらを使用することにより、マトリクス効
果、試料調製における変化、機器変動の問題を克服することができる。他に概説されるように、同
位体ラベルは、不正確さを減少させるため、ステップ数が増加する際ワークフローにできるだけ早
く導入されるべきである(58)。しかしながら、この技術はかなり高額でさらに時間がかかる。標識
ラベルを使用しない相対的な定量化では、異なる分析方法において、同一のペプチドからの強度を
比較することで、異なる実験間において同一のペプチドが直接比較することができるという仮説に
基づく(59)。
尿サンプルでは、定量的な絶対量は通常情報価値はなく、分析物の濃度はクレアチニンもしくはタ
ンパク質の排泄量を用いて一般に修正、もしくは、食事と運動の影響による結果の変動を弱めるた
めに 24 時間の採尿を使用する。トランスクリプトミクスとプロテオミクスとは対照的に、ハウスキ
ーピングペプチドは現在まで識別に成功していない(53)。
データ処理とバイオインフォマティクス
ペプチドミクスとプロテオミクスにおいて、統計的に著しく再現性が高いデータを得るためには、
相当な計算能力をもつコンピュータが必要である。ペプチドの同定は、最も難しい検証となる(60)。
オンラインのデータベースは、様々な体液や無数の疾患の状態に対するペプチド配列を含んでおり、
バイオマーカーの候補の同定や検証するための普遍的なプラットフォームとして役立つ(42)。人間
の尿のプロテオームのデータベースにおいて、その割合のほとんどが移植または腎臓病を評価した
研究に由来する。一方で、前立腺、腎臓、膀胱がんに関するデータは、クロム親和性細胞腫と同様
に相対的に少ない。
ペプチドミクスにおける最も厳しい問題は、ペプチド末端の非特異性と関係がある。Holtta ら (26)
が述べたように、酵素分解を特異的に制限できないため、バイオインフォマティクス・データの分
析に適用することができない。 結果として、ペプチドのシーケンスの数は、1000 倍まで巨大に増加
する。この状況は、プロテオミクスにおいてプロテアーゼ消化(通常はトリプシン)が各ペプチド
分子の特定の末端に作用するのに対比的である。このため、ペプチドミクスは偽陽性率が高く、正
確性に欠ける。
10
疾病診断法用の尿ペプチドミクス
腎臓機能の尿ペプチドミクスの文献の多くは、腎機能障害や腎臓移植の予後に取り組むものである
(43, 61) 。膀胱、卵巣、前立腺がんに注目した癌バイオマーカーを探索した研究は、ほとんどない。
泌尿器の悪性腫瘍は、男性の死因で 1/6 が、女性では 1/10 が癌である(1)。
卵巣癌
卵巣癌は最も致命的な婦人科悪性腫瘍である。現在の診断戦略は、血清中での糖鎖抗原 125(CA125)
測定と膣超音波検査に基づく(62)。しかしながら、CA125 の測定は、早期検診用、診断鋭敏度およ
び特異性に欠ける。したがって、診断の有用なバイオマーカーになりうるタンパク質とペプチドの
分子の発見に努力がされてきた。人間の精巣上体分泌タンパク質 4 (63)またオステオポンチン(64)
のようないくつかのタンパク質は、どれも CA125 を越えていないが有用性を示した。 血清を使用
する場合、最初のペプチドミクスのベース研究のうちの 1 つでは、未知のピークを持つ、おそらく
低分子量のポリペプチドの存在で、卵巣癌(ステージ I~IV)の患者と良性疾患について 100%の感度
および 95%の特異性をもって鑑別できると主張した (65)。この報告書に述べられていた結果は、現
在、解析前の生物情報学的な人為的結果が原因で無効にされた(66)。
前立腺癌
前立腺癌(人で最も一般的な悪性腫瘍)は、死亡率の第二位である(1)。より高い感度と特異性を備え
た新しい非侵襲性のマーカーが必要である。PSA 由来のリボ核酸マーカーPCA3(前立腺癌抗原 3)は
ある程度の感度を持つに見えるが、期待されるほどのものではなかった(67)。示唆された他のタン
パク質候補については、大規模な確認試験が必要である。尿プロテオームの最初の比較研究では、
良性前立腺肥大症を持った同一年齢群において、前立腺マッサージ後に排泄された尿サンプルのト
リックス支援レーザー脱離イオン化法質量分析フィンガープリンティングと、二次元ゲル電気泳動
が使用された (68)。カルグラニュリン B/MRP-8 は、検証とバリデーションで注目された。尿サンプ
ルの研究の後、細胞外マトリックス分解酵素(69)や engrailed-2(70)を含む追加の候補分子を得た。し
かしながらどちらも大きなコホート研究はされていない。 第 1 排泄尿に前立腺液を含んでいると仮
定した場合、Theodorescu ら(71)は、20kDa の分子量をカットオフフィルターのあるキャピラリー電
気泳動と質量分析により、12 の尿のペプチドのバイオマーカー・パネルを得た。彼らは、年齢、
free PSA、PSA の組み合わせを使用し、このペプチド・パネルが現在の診療診断に対し、ROC 曲線
が 0.77(free PSA の割合と患者の年齢に基づいたもの)から 0.82 に上昇し、診断が改善することを
提唱した。しかしながら、このペプチド・パネルはまだ検証が必要である。
膀胱癌
膀胱癌は西欧で 5 番目に高い頻度の癌である。現在の診断戦略は、細胞診および尿細胞検査に基づ
く。しかし、これらの方法には観察者間での変動が高く、再現性が低いという問題がある。膀胱が
腎臓で生産される尿と親密な接触中であるとすれば、この体液には膀胱癌を検知するだけでなく、
筋肉の悪性腫瘍において、非浸潤性か侵襲性かの識別でも助けになるタンパク質およびペプチド・
バイオマーカーの両方を多く持つ宝庫となる(72, 73)。浸潤性膀胱癌の患者の尿サンプル中の異なる
濃度の大多数のペプチドが、コントロール群の非浸潤性の癌の患者と比較して存在したが、そのペ
プチドの多くは大量のタンパク質の断片であった。実際、Theodorescu ら(54)は、尿路上皮癌のため
に高い感度と特異性を備えた 22 のポリペプチドのプロテオミクスパターンを提案し、潜在的な診断
11
用生体分子としてフィブリノペプチド A を強調した。 ブライアンら(72)は 8 つのペプチドについて
筋肉侵襲性尿路上皮癌と、癌のない患者の中の著しく異なる濃度となることを確認した。 アルブミ
ン、フィブリノーゲン、ヘモグロビンおよびプレアルブミン(それらは全て著しく濃度が高いもの
である)由来のものとは識別された。
他の癌
解剖学的に離れた部位が、尿構成に影響を及ぼす場合がある。尿ペプチドームに関する研究で、肺
癌(74)また胃腸癌(75)のマーカー研究が行われた。SELDI を使用した Husi(76)らの研究では、無視で
きない数ほどの小さなカルシウム結合タンパク質、S100 タンパク質のファミリーが候補蛋白質とし
て発見され、上部消化管の癌の増殖と関係していた。識別された候補は、全て単一のマーカーとし
ての必要条件を満たさなかったが、タンパク質-ペプチドのパターンはスクリーニングや予測には
役立った。98%の診断感度が報告されたが、ほとんどの候補が他の悪性腫瘍のパターンに対する特
異度は良くなかった。
一段階後に戻ると、全体としてこれらの結果を考慮する場合、人はほとんどのペプチド・パネルが
適切に検証されていないと考えられる。確認研究の不足が、臨床応用にバイオマーカーが達するた
めのペプチドミクスの主な欠点のうちの 1 つであり、癌診断法用のペプチドミクスの有用性が批判
的な目の下におかれる原因でもある。
臨床への応用
集中的な試みにもかかわらず、プロテオミクスやペプチドミクスの研究に述べられていた分子は、
臨床応用になってはいない。候補分子に関する後ろ向き研究および前向き研究では、人為的変動や
方法由来変動による偽陽性結果を回避するために、他の方法論(例えば免疫測定)が好まれる(3, 77)。
初期の人数が少ない研究は時々、患者の選別や他の因子のバイアスのために、後の研究で統計学的
有意性が失われてきた。この経験からの教訓が、将来の戦略の立案を改善する際に役立つ。大規模
人口研究はまれで、多額の費用が必要となる。また、最終的に統計的有意性に達することだけでは、
候補バイオマーカーにとって臨床応用に十分ではない。新しい薬のように、バイオマーカーは現在
使用されているマーカーに対して、より臨床的に改善されることを示さなければならない。そうで
なければ、それらは採用されないだろう。
生物学的プロセスの複雑さにより、単一のバイオマーカーでは恐らく十分な感度および特異性を備
えた病理学プロセスを識別しないことが広く認められた。したがって、多数の独立したバイオマー
カーのコンビネーションが、診断または予防医学的なパネルに編入するためには有用である可能性
があるかもしれない。にもかかわらず、コンビネーションパネルの中で使用される個々のバイオマ
ーカーの各々を独立に検証して、臨床的有用性を保証することが必要である。このために、大規模
な確認研究デザインがさらに困難となる。
最近、古典的なプロテオミクスやペプチドミクスを超越する新しい展望として、個別のあるいは包
括的なプロテアーゼ活性に関する研究が、さらなる疾病の指標あるいは予測因子を生み出すかもし
れないことが示唆された(78-80)。この新しいアプローチは「functional peptidomics」と名付けられた。
腫瘍増殖や侵襲性がエキソプロテアーゼの生産や分泌の差異に繋がることは事実である;したがっ
て、それらの機能に関する研究は生体の生物学的/病的状態に反映されないだけではなく、解析前の
変動による再現性の問題も解決する。 しかしながら、このアプローチはまだ始まったばかりであり、
その適用能力に関する結論は出ていない。
12
将来的な挑戦
生物試料高処理解析の印象的な成長は、主として最近の十年間の新技術の開発によるものであった。
プロテオミクスにおける相当数の試みは、多くのヒト病理学における感度も特異度も高い診断用バ
イオマーカーの発見と検証に着目されてきた。深い生化学的・病態生理学的の知識は、臨床の問題
を解決するために重大な意味を持ち、分析法のあらゆる段階で注意深く計画されて実行されなけれ
ばならない。試料の取り扱いを標準化することが、臨床的に有用で再生可能なデータの生成を非常
に助けると考えられている。
ペプチドミクスは比較的新規の分野であり、調査し、評価を行った研究はほとんど存在しない。ペ
プチドミクスがプロテオミクスよりよい結果を生み出すという強い証拠はない。しかし、生物学
的・化学的理論としては、その方向は間違っていないと考えられている。プロテオミクスは確実に
ポストゲノミクス時代を担う技術であり、ペプチドミクスにより未探索の部分が大きく前進するの
である。
(訳者:柳田小百合)
Footnotes
6
Nonstandard abbreviations:
PSA,
prostate-specific antigen;
CSF,
cerebrospinal fluid;
LC-MS/MS,
liquid chromatography–tandem mass spectrometry;
CA125,
carbohydrate antigen 125.
Author Contributions: All authors confirmed they have contributed to the intellectual content of this
paper and have met the following 3 requirements: (a) significant contributions to the conception and
design, acquisition of data, or analysis and interpretation of data; (b) drafting or revising the article for
intellectual content; and (c) final approval of the published article.
Authors' Disclosures or Potential Conflicts of Interest: Upon manuscript submission, all authors
completed the author disclosure form. Disclosures and/or potential conflicts of interest:
Employment or Leadership: E.P. Diamandis, Clinical Chemistry, AACC.
Consultant or Advisory Role: None declared.
Stock Ownership: None declared.
13
Honoraria: None declared.
Research Funding: None declared.
Expert Testimony: None declared.
Patents: None declared.
Received for publication June 21, 2013.
Accepted for publication October 22, 2013.
© 2013 American Association for Clinical Chemistry
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