―― 実 施 例 ―― 尼崎フロントビルの空調設備 ㈱大林組 本店 設備設計部 藤 井 直 哉 ■キーワード/事務所・空調設備 ンを設けた彫の深い造形としている。また,東西に延び 1.はじめに る幅の広い鉄道敷に南面するため,建物は東西からの強 本建物は,大阪−神戸間の交通の要であるJR尼崎駅 の北西に位置し,大規模工場跡地の遊休地を有効活用す い日射を浴びるが,縦フィンはこれを遮閉する機能も果 たしている。 る現在進行中の再開発事業 「あまがさき緑遊新都心地区」 内に建設された賃貸オフィスビルである。 オフィス棟を屋上緑化し,ヒートアイランド現象低減 に寄与することはもとより,通常無機質な表情になりが 高機能なワークスペースの創出をめざすとともに,新 ちな駐車場棟の壁面,屋上を緑化することにより,沿道 たなスタートを切る街の骨格づくりに貢献することを設 や対面する集合住宅に対する景観に配慮している。なお, 計の大きなテーマとした。 壁面緑化を設けた個別大臣認定駐車場としては当建物が 国内初であり,大臣認定取得に際しては,植栽の燃焼実 2.建築概要 験や火災時の影響を測るシミュレーションを行い,火災 建物名称 尼崎フロントビル への影響について支障がないことを確認した。また,敷 所 在 地 兵庫県尼崎市潮江1丁目 地全長約100mにわたったペデストリアンデッキの先端 用 途 事務所,店舗など,駐車場 に厚さ105㎜の灌水一体型薄型緑化ユニットを設け, 建 主 óあまがさき駅前開発 100mの緑の帯を形成している。 P J M 三菱地所㈱,神鋼不動産㈱ センターコア方式の採用やエレベータ計画の合理化な 設 計 ㈱大林組 どにより,基準階レンタブル比84%と高効率で,高い 設計監修・工事監理 事業性を確保している。 ㈱三菱地所設計 オフィス内は,無柱空間でレイアウトフリーなグリッ 敷地面積 03,975.20fl ドシステム天井や冷暖同時型空調を採用し,多彩なワー 建築面積 03,417.72fl クプレースを実現している。 延 面 積 24,310.81fl 階 数 地上10階,塔屋1階 最高高さ 44.573m 構 造 S造・一部SRC造 基 準 階 床 面 積 2,030.81fl 主スパン 7,200㎜ 階 高 3,900㎜ 施 工 建築 ㈱大林組 空調 同上(協力:ダイダン㈱) 衛生 同上(協力:ダイダン㈱) 電気 同上(協力:㈱きんでん) 設計期間 2007年4月∼2007年10月 施工期間 2007年11月∼2008年10月 3.建築計画 本建物は,低層の駐車場と高層のオフィス棟 に分棟し,かつ街路を隔てた敷地に建つ集合住 宅とオフィスが対面しないように配慮するとと もに,日影の影響を与えない棟配置としている。 オフィス棟のセンター部分は,鉄道騒音に配 慮してPCa製の単窓とし,窓のサイドに縦フィ 写真−1 建物外観 ― 27 ― ヒートポンプとその応用 2009. 3. No.77 ―― 実 施 例 ―― 4.設備計画 4−1 設備概要 4−1−1 電気設備 受 電 方 式 3相3線 6.6kV 60Hz 受 変 電 設 備 屋外キュービクル 電灯用:1,400kVA 動力用:1,900kVA 発 電 機 設 備 屋外パッケージ形 220V 410kVA 中央監視設備 電力・空調・衛生設備監視 テナント課金(大林組BILCON−∑) (写真−5 防災センター) 電 灯 設 備 事務所基準照度:700Lux 写真−2 オフィス内観 コ ン セ ン ト 事務所基準容量:50VA/fl 防 災 設 備 自動火災報知設備,防排煙制御設備, 非常用照明,誘導灯,非常放送 4−1−2 空調設備 空 調 方 式 空気熱源ヒートポンプエアコン(ビルマ ルチ) (オフィス部分−冷暖同時型,エア コンの設定監視は集中リモコンによる。 1・2階店舗はスケルトン) 空調ダクト 室内機は天井埋込ダクト接続形。オフィ ス部分はシステム天井による天井チャン バ方式を採用 換 気 設 備 オ フ ィ ス 部 分:窓上部のガラリを利用 し,天井埋込形加熱・ 写真−3 植栽の燃焼実験 加湿付全熱交換器によ る第1種換気 1 ・ 2 階 店 舗:第1種換気 r=3m B 排 煙 設 備 1.5m Hf=2.26m 2.46m H=2.93m トイレ・湯沸室:第3種換気 A オフィス部分:天井チャンバ方式 そ の 他:在来天井方式 排煙機系統3系統(一般系統×2,非常 用EVホール系統×1) 図−1 車両火災時に壁面緑化が受ける熱流束の検討 写真−4 ペデストリアンデッキの緑化 ヒートポンプとその応用 2009.3.No.77 写真−5 防災センター ― 28 ― ―― 実 施 例 ―― ルチ)による個別空調方式としている。また,冷暖房を 自由に行えるよう,すべて冷暖同時型を採用している。 1フロア最大8分割のテナント区画を想定し,各テナン ト区画ごとに単独の室外機系統を屋上に設置している (図−4 基準階室外機系統,図−5 空調配管系統図, 写真−7 屋上室外機設置状況)。これらにより,テナ ントごとの個別制御,個別運転,明確な計量などを実現 している。 室内機は天井埋込ダクト接続形とし,システム天井に よる天井チャンバ方式としている。システム天井は,大 林組開発の「O−GRID」を採用している。「O−GRID」 は600角のグリッドに省エネルギー照明器具を組み込 写真−6 EVホール み,3.6mモジュールに対応したグリッド天井である。 4−1−3 衛生・消火設備 空調吹出口については,照明との納まりを考慮し,600 給 水 設 備 市水1系統 (引込75φ),加圧給水方式 角グリッドを3分割にした部分に納まるO−GRID用吹 給 湯 設 備 貯湯式電気温水器による局所方式 出口を採用している。吸込口は照明両サイドのスリット からの吸い込みとなる。 (写真−8 O−GRID,図−2 排水通気設備 重力式 O−GRID)。 汚水・雑排水合流方式,雨水分流方式 オフィス部分の南面窓はLow−Eガラス,北面窓はペ 衛生器具設備 大便器:洋風大便器+洗浄便座 小便器:自動洗浄小便器 アガラスとしている。形状は単窓とし,両サイドに縦フ 洗面器:自動水栓 ィンを設置し,日射負荷を軽減して良好なペリメータ環 消 火 設 備 スプリンクラー設備(1・2階(店舗階) ), 屋内消火栓設備(全館),連結送水管(3 境となるよう計画している(写真−9 基準階の窓(ガラ リおよび縦フィン) ) )。 階以上),移動式粉末消火設備(駐車場 棟) ,消火器 輸 送 設 備 乗用兼非常用エレベータ:24人乗 2台 (写真−6 EVホール) 乗 用 エ レ ベ ー タ:24人乗 2台 人荷用エレベータ:17人乗 1台 エ ス カ レ ー タ:600型 02台 4−2 空調・換気設備 4−2−1 1・2階(店舗など) 店舗などの空調はスケルトンとし,換気は第1種換気 としている。 4−2−2 3∼10階(賃貸オフィス) 賃貸オフィスの空調方式は,テナントごとの個別空調 写真−7 屋上室外機設置状況 要求に配慮し,空気熱源ヒートポンプエアコン(ビルマ 空調吸込口 空調吹出口 天井支持材(Tバー) 天井パネル 3,600 非常照明, 非常放送, 感知器 設備パネル 600 照明器具 600 3,600 写真−8 O−GRID 図−2 O−GRID ― 29 ― ヒートポンプとその応用 2009. 3. No.77 ―― 実 施 例 ―― ギー化をはかっている。供給空気は,グリッド天井の吹 給排気ガラリ 給排気 出口に直接接続するため,24時間換気運転が可能であ る。また,将来用喫煙室対応は窓上部のガラリを利用す る。 (図−3 基準階(オフィス)空調方式,写真−9 基 準階の窓 (ガラリおよび縦フィン) )) 4−3 排煙設備 縦フィン 一般系統2系統,非常用EVホール系統1系統の計3 系統の機械排煙方式としている。1・2階の店舗および 共用部は在来天井,3∼10階のオフィス内はシステム 天井による天井チャンバ方式としている。 写真−9 基準階の窓 (ガラリおよび縦フィン) 5.おわりに 本建物の計画から完成まで,三菱地所㈱,神鋼不動産㈱, 換気方式は,各テナントごとの窓上部ガラリを給気口 ㈱三菱地所設計ほか,関係者の皆さまの多大なるご指 として利用した第1種換気方式としている。換気機器は, 導・ご協力をいただき,深く感謝いたしております。当 天井埋込形加熱・加湿付全熱交換器を採用し,省エネル 誌面をお借りして,厚くお礼申しあげます。 加熱・加湿付全熱交換器 窓上部EAガラリに接続 中性能フィルタ 加湿給水 窓上部OAガラリ 図−3 基準階(オフィス) 空調方式 天井埋込ダクト接続形室内機 冷媒配管用PS 室外機系統2 室外機系統3 室外機系統1 室外機系統4 室外機系統8 室外機系統5 室外機系統7 室外機系統6 N 図−4 基準階室外機系統 ヒートポンプとその応用 2009.3.No.77 ― 30 ― 図−5 空調配管系統図 PAC PAC PAC PAC PAC PAC PAC 401∼2 501∼2 601∼2 701∼2 801∼2 901∼2 1001∼2 PAC PAC PAC PAC PAC PAC PAC PAC PAC PAC PAC PAC PAC PAC PAC 104 103 101 102 301 302 307 308 407∼8 507∼8 607∼8 707∼8 807∼8 907∼8 1007∼8 R F ○ F ○ G ○ E ○ J ○ H ○ H ○ J ○ PAC PAC PAC PAC PAC PAC PAC PAC PAC PAC PAC 1003∼6 903∼6 803∼6 703∼6 603∼6 503∼6 403∼6 306 305 304 303 R R R R ×4 ×4 R R R R R R R ×4 ×4 R R R ×4,×4 ×4 ×4 R ×4 R R ×4 ×4 ×4 ×4 H ○ J ○ J ○ H ○ ×4 ※1 F ○ ▽RF R R R ×4 R R R R PAC 1001-4 ※ ▽10F PAC 1001-1∼3 貸室1 PAC 1002-3 PAC 1002-1∼2 貸室2 ※ ※ 50 50 PAC PAC 1007-3 1007-1∼2 貸室7 PAC 1008-4 PAC 1008-1∼3 貸室8 ※ ×4 ※1 50 3,900 R ×4 ※1 PAC 104-3 EV ホール ×4 ※1 50 PAC PAC 1003-3 1003-1∼2 貸室3 PAC PAC 1004-4 1004-1∼3 貸室4 ※ ※ 50 50 PAC PAC 1005-4 1005-1∼3 貸室5 PAC PAC 1006-3 1006-1∼2 貸室6 ※ 50 R C ○ 50 ※ PAC PAC 907-3 907-1∼2 貸室7 PAC 908-3 PAC 908-1∼2 貸室8 ※ ▽8F PAC 801-1∼3 貸室1 PAC 802-3 PAC 802-1∼2 貸室2 D PAC 801-4 D D 3,900 R PAC PAC ※ 807-3 807-1∼2 貸室7 ※ PAC 808-3 PAC 808-1∼2 貸室8 ※ ×4 ※1 3,900 PAC 701-4 ※ PAC 701-1∼3 貸室1 PAC 702-3 PAC 702-1∼2 貸室2 PAC PAC ※ 707-3 707-1∼2 貸室7 ※ PAC 708-3 PAC 708-1∼2 貸室8 ▽6F PAC 601-4 ※ PAC 601-1∼3 貸室1 PAC 602-3 PAC 602-1∼2 貸室2 ※ ※ PAC PAC 607-3 607-1∼2 貸室7 PAC 608-3 PAC 608-1∼2 貸室8 3,900 ※ PAC 501-4 50 PAC 501-1∼3 貸室1 PAC 502-3 PAC 502-1∼2 貸室2 ※ ※ 50 50 PAC PAC 507-3 507-1∼2 貸室7 PAC 508-3 PAC 508-1∼2 貸室8 ※ ※ PAC PAC 407-3 407-1∼2 貸室7 PAC 408-3 PAC 408-1∼2 貸室8 PAC 301-4 ※ PAC 301-1∼3 貸室1 貸室4 PAC 904-1∼3 ※ ※ PAC 905-3 PAC 302-3 PAC 302-1∼2 貸室2 ※ ※ PAC PAC 307-3 307-1∼2 貸室7 PAC 308-3 PAC 308-1∼2 貸室8 ×4 ※1 PAC 103-4 EV ホール ×4 ※1 PAC 803-3 PAC 803-1∼2 貸室3 PAC 804-4 PAC 804-1∼3 貸室4 ※ ※ PAC 805-3 PAC 102-2 ×4 ※1 PAC 103-3 EV ホール ※ 50×4 ※1 店舗 風除室2・店舗 ※ 貸室6 PAC 906-1∼2 ※ PAC 806-1∼2 貸室6 ※ R PAC 703-3 PAC 703-1∼2 貸室3 PAC 704-4 PAC 704-1∼3 貸室4 ※ ※ PAC 705-3 PAC 705-1∼2 貸室5 PAC 706-3 PAC 706-1∼2 貸室6 ※ ※ PAC 603-3 PAC 603-1∼2 貸室3 PAC 604-4 PAC 604-1∼3 貸室4 ※ PAC ※ 605-3 PAC 605-1∼2 貸室5 PAC 606-3 ×4 ※1 PAC 103-2 EV ホール PAC 606-1∼2 貸室6 ※ R ※ PAC 503-3 PAC 503-1∼2 貸室3 PAC 504-4 PAC 504-1∼3 貸室4 ※ ※ 50 50 PAC 505-3 PAC 505-1∼2 貸室5 PAC 506-3 PAC ※ 506-1∼2 50 貸室6 R H○ J○ J○ H ○ ※ PAC 403-3 PAC 403-1∼2 貸室3 PAC 404-4 PAC 404-1∼3 貸室4 ※ PAC ※ 405-3 PAC 405-1∼2 貸室5 PAC 406-3 PAC 406-1∼2 貸室6 PAC 303-3 PAC 303-1∼2 貸室3 PAC 304-4 PAC 304-1∼3 貸室4 ※ PAC ※ 305-3 PAC 305-1∼2 貸室5 PAC 306-3 PAC 306-1∼2 貸室6 ※ ※ PAC 103-1 EV ホール I ○ ※ 50 PAC 102-3 EV ホール K ○ ×2 店舗 店舗 エントランス 防災センター 50 PAC 106 清掃員詰所 ×2 50 PAC 101-3 EVホール 50 風除室1 店舗 50 D PAC 105 D 50 R D PAC 101-1 ×2 R R D 50 ※ D エントランス D D 6,500 PAC 806-3 B ○ ※○ J○ H○ H○ J PAC 102-1 R ▽1F PAC 805-1∼2 貸室5 C ○ R 50 D 5,100 50 PAC 101-2 ×2 PAC 906-3 R D D 50 PAC 905-1∼2 A ○ 50 ▽2F 貸室5 R ※ R ▽3F PAC 904-4 F ○ D PAC 402-1∼2 貸室2 D PAC 402-3 D 3,900 PAC 401-1∼3 貸室1 PAC 903-1∼2 50 店舗 ―― 実 施 例 ―― ヒートポンプとその応用 2009. 3. No.77 3,900 ▽4F PAC 401-4 ※ ※ ×4 ※1 PAC 104-1 EV ホール ×4 ※1 R 貸室3 A ○ ※ R ▽5F PAC 104-2 EV ホール ×4 ※1 R 3,900 ― 31 ― ▽7F PAC 903-3 B ○ ※ R ※ D ※ D PAC 902-1∼2 貸室2 D D PAC 902-3 D D PAC 901-1∼3 貸室1 D PAC 901-4 ※ D ▽9F 150 ※ PAC 104-4 EV ホール D 3,900 R
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