e ラーニング市場動向及び技術動向等の調査

1. e ラーニング市場動向及び技術動向等の調査
1.1 目的
我が国およびアジア(AEN 参加国)を中心とした海外の e ラーニングの市場動向や技術
動向を調査して報告書として集約し、我が国の e ラーニング事業の発展に寄与することを
目的とする。
1.2 概要
e ラーニングの現状および今後の取り組みに関して、1)e ラーニングビジネス推進企業・
団体(ベンダ)、2)企業・団体の人事・教育担当者、および3)企業内従業員に対してアン
ケートを実施した。そのアンケートを分析し、e ラーニングビジネスの現状と今後の動向を
調査報告書としてまとめた。
また、e ラーニングを実際に運用している企業・団体,高等教育機関に対して、事例イン
タビューを行い、e ラーニングの効果的な活用状況や成功のポイント等ついてまとめた。
なお、従来から継続的に調査している項目については極力それらを踏襲したが、本年度
の調査は、e ラーニングビジネス市場の大半を占める企業・高等教育分野に力点を置いた。
1.3 調査内容
1.3.1 アンケート
1) e ラーニングユーザ調査: 企業の人事・教育担当者向け
調査は、導入目的、導入時の重視項目、導入時の費用、導入効果、導入に際しての
障害となるものなど、28 項目について 2000 社に対し郵送アンケートを実施した。
2) e ラーニングユーザ調査:
企業内で教育を受ける立場の個人(従業員)向け
調査は、e ラーニングのイメージ、導入の有無、導入のメリット・デメリット、導入
後の変化、導入分野(コンテンツ)、費用負担、学習効果、満足度、受講時間、受講場
所など、26 項目について Web アンケートを実施した。
3) e ラーニングビジネス調査:
e ラーニング関連の各種事業を推進しているベン
ダ向け
調査は、対応している e ラーニングの事業領域、システム等の概要、開発規模、
対象とするユーザ、売り上げ実績・見込み、販売時のセールスポイントなど、84 項
目について詳細な Web アンケートを実施した。
1.3.2 事例インタビュー
後述の編集委員や eLC 会員企業の協力を得て、事例として取り上げる候補を抽出した
後、詳細なインタビューを表 1-1 に示す 27 事例について実施した(1 件あたり、1.5 時
間~2 時間)。
1
表 1-1 事例インタビュー実施対象
インタビュー実施対
◆企業(ユーザとして) 【計 15 件】
象
大日本印刷、ニチレイ、四国電力、キヤノン、ソニーコミュニ
ケーションネットワーク、電通テック、メイテック、沖電気、
富士通(ユニバーシティ)、NEC、トレンドマイクロ、ダイキン工業、
日産自動車、鹿島建設、松下電器産業
◆企業(ユニークなサービス提供、新規事業の一環)
【計 2 件】
ヤマハ(音楽教育)、デジタルハリウッド(IT 教育)
◆大学 等 【計 10 件】
早稲田大学、東北大学、青山学院大学、八洲学園大学、玉川大
学、東京工業大学、大阪大学、阪南大学、東京海洋大学
中小企業大学校(東京校)
1.4 調査方法
1.4.1 アンケート
アンケートの調査方法は以下のとおりである。
1) e ラーニングユーザ調査
-企業内の人事・教育担当者-
・
調査期間:2004 年 11 月~12 月(但し、実際には 2005 年 1 月中旬まで延長)
・
調査対象:東京商工リサーチの企業データベースに登録されている全国の法人企
業等を中心に実施。
・
配布数:2000 社
・
回収数:267 社(回収率 13.4%)
※うち、導入企業 95 社、未導入企業 162 社、無回答 10 社
・
調査方法:郵送調査
e ラーニングユーザ調査
2)
-個人-
・
調査期間:2004 年 12 月
・
調査対象:株式会社インフォプラント
・
回収数:800 人
登録モニタ 800 名
※うち、会社での e ラーニング経験者 611 人、未経験者 189 人が回答。
・
3)
調査方法:Web アンケート
e ラーニングビジネス調査
–ベンダ-
・ 調査期間:2004 年 12 月(実際には 2005 年 1 月上旬まで延長)
・ 調査対象:eLC で調査対象を選定
(e-Learning WORLD 2004 出展企業、特定非営利活動法人 日本イーラーニングコ
ンソシアム正会員企業、先進学習基盤協議会の e ラーニング部門統括担当者有効等)
・ 回収数:47 社
・ 調査方法:Web アンケート
2
1.4.2 事例インタビュー
事例インタビューは、以下の点を考慮して対象を選択した。
・ 選択方法については、「編集委員からの推薦・業種の分散・新規性・事例として質
的な価値が高い」、などの視点を基準に選定した。
・ 各事例については、
「e ラーニング活用の効果」についてもインタビューを実施した。
多くの組織ではカークパトリックのレベル 1 程度しかやっていないところが多い
が、一部興味深い取組みもある。
・ 大学活用事例についての情報提供では、編集委員のメディア教育開発センター
(NIME)の苑先生・田口先生に大学の選定で御協力いただいた。
1.5 実施体制
本調査は、以下の体制で行った。
1) 編集委員会
メディア教育開発センター
清水康敬理事長を委員長とし、13 名の編集委員か
らなる編集委員会で報告書の方向性を決定した。また、各委員には報告書原稿の
査読を依頼した。
2) 調査実施
調査担当会社(株式会社 UFJ 総合研究所)では、主任研究員の大嶋淳俊氏をプロ
ジェクトリーダとした体制で行った。
1.6 調査結果(概要)
1.6.1
e ラーニングユーザ調査
-企業内の人事・教育担当者-
1) 企業の e ラーニング導入率
今回の調査によれば、企業の e ラーニング導入率は、図 1-1 に示すように、
「導入済」
が 37.0%、「検討中」が 12.5%、「未導入」は 50.6%である。これを従業員規模でみ
ると、企業規模が大きくなる程、導入率が高くなるという相関関係がある。また、
経営者の e ラーニングに対する関心・積極性の度合いをキーに比較すると、当然な
がら経営者の関心が高いほど、eラーニングの導入率が高まる傾向にある。eラー
ニングの導入に「経営者が関心がある」と答えた企業は、導入済企業(n=95)では 31.6%
なのに対し、未導入企業 (n=162)ではわずか 3.1%にとどまるという興味深いデータ
となっている。
3
導入済
37.0%
未導入
50.6%
検討中
12.5%
図 1-1 企業の e ラーニング導入率(n=267)(無回答を除く)(SA)
2,000人~(n=57)
66.7
1,000~2,000人(n=31)
29.0
300~1,000人(n=76)
26.3
~300人(n=97)
26.8
0%
14.0
29.0
0.0
59.2
3.1
導入している
1.8
41.9
11.8
20%
17.5
2.6
62.9
40%
導入を検討している
60%
導入していない
7.2
80%
100%
無回答
図 1-2 従業員規模別の e ラーニング導入率詳細(SA)
業種別の e ラーニング導入状況については、図 1-2 に示すとおり、
「情報サービス
等情報通信業」が、65.6%と高く、
「卸・小売業」の 36.2%、
「製造業」の 35.2%、
「サ
ービス業」の 24.1%と続く。
2) e ラーニングの導入分野
e ラーニングが導入されている分野は、
「IT、コンピュータ」が 55.8%ともっとも多く、
次いで「社会通念(ビジネスマナー、セクハラ等)」が 47.4%、「ビジネス(経理、法
律、金融等)
」の 33.7%となっている。
4
3)e ラーニング導入時の重視項目については、「研修目的に合ったコンテンツが選べ
る」が 40.0%、
「高い学習効果が期待できる」が 33.7%、
「管理者による学習管理等が
容易」が 33.7%といった項目が重視されている(e ラーニング導入済企業)。
一方、e ラーニング導入時の障害(阻害要因)については、
「導入の意思決定・判断に苦
労」が 45.1%、「意義・必要性に対する理解が不足」が 40.1%、「初期導入費が高価」
が 37.7%となっている(eラーニング未導入企業)。
4)e ラーニングの評価と効果
e ラーニングの評価については、「研修の効率化(期間短縮等)
」が 38.9%、
「受講率
の向上、学習機会の増大」が 36.8%となっている。また、e ラーニングの評価の実施状
況については、
「実施している」が 85.3%と高率ではあるが、その評価手法についてみ
ると、「理解度テスト」、
「学習者への研修直後のアンケート」という旧来からの手法に
頼っているのが現状である。
1.6.2
e ラーニングユーザ調査
-個人-
1) e ラーニングのイメージとメリット
e ラーニングのイメージについては、
「インターネット」、
「24 時間いつでもどこでも」、
「便利」等のキーワードが挙げられている。また、e ラーニングを用いた研修のメリッ
トとしては、「時間が自由」、「場所が自由」など、時間と場所にとらわれない点が評価
されている。一方、デメリットとしては、
「受講継続のモチベーションの維持が困難」
、
「講師や他の受講生とのインタラクティブ性の欠如」等の割合が高くなっている。
2) 学習効果
e ラーニングによる学習効果については、「ある程度効果がある」が 51.2%と、半数
以上がその効果を認めている。
3) 受講時間
e ラーニングによる学習時間については、1 回あたり、「30 分~1 時間」が 28.2%と
もっとも多く、半数以上が 1 時間以内となっている。
1.6.3
e ラーニングビジネス調査
-ベンダ-
バンダアンケート(Web 調査)の結果からは、以下のような状況が明らかになった。
1)
ベンダの事業領域
システム、コンテンツ、サービスの専業ベンダは合計しても 14.9%にとどまり、兼業化
へのシフトが進んでいる。(図 1-3 参照)
5
0%
一 昨 年 度 調 査 (n=34)
昨 年 度 調 査 (n=77)
20%
8.8
3.9
本 年 度 調 査 (n=47) 2.1
サービス
コンテンツ
40%
11.8
13.0
10.6
26.5
10.4
2.1
システム
60%
5.2 3.9
23.4
5.9
0.0
80%
20.6
26.5
11.7
2.1
サービス+コンテンツ
100%
51.9
17.0
42.6
コンテンツ+システム
サービス+システム
全て
図 1-3 ベンダの兼業状況(3年間の比較)
2)
システムベンダ
システムベンダが開発している製品種類についていえば、LMS(Learning management
System:学習管理システム)が 82.8%を占め、続いてテスティングシステム(55.2%)、オー
サリングツール(48.3%)、e ラーニング統合システム(44.8%)となっている。(図 1-4 参照)
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
1 00 (%)
(n =2 9: M A )
8 2 .8
LM Sシ ス テ ム
55 .2
テス ティング シ ス テム
4 8 .3
オー サ リング ツー ル
4 4.8
eラ ー ニ ン グ 統 合 シ ス テ ム 製 品
3 1 .0
SCO RM エ ン ジ ン 等 、 eラ ー ニ ン グ エ ン ジ ン
20 .7
ERP/ KM/ HRM/ 教 育 ポ ー タル 等 関 連 製 品
特 殊 入 出 力 デ バ イス等 ハ ー ドウ エア
3.4
図 1-4 システム製品のジャンル(n=29 社
MA)
システム製品ユーザは、企業内教育の比率が 93.1%と最も多く、高等教育(大学、大
学院、高等専門学校、短期大学)が 58.8%とそれに続く。高齢化社会の到来が言われて
久しいが、生涯教育への e ラーニング適用はまだ 10%程度に過ぎない。(図 1-5 参照)
6
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
100
(n=29:MA)
(%)
幼児教育 0.0
初等中等教育(小学校、中学校、高校)
17.2
初等中等教育支援(塾、予備校)
17.2
58.6
高等教育(大学、大学院、高等専門学校、短期大学)
専修学校
34.5
各種学校、その他学校(語学学校、資格取得学校)
31.0
企業内教育
93.1
34.5
公務員・公的機関の教育研修
生涯教育(趣味的学習・習い事)
その他
10.3
6.9
図 1-5 システム製品が利用される教育現場(n=29 社
3)
MA)
コンテンツベンダ
コンテンツベンダが提供しているコンテンツをオーダーメイドとレディメイドに分けて
比較すると、オーダメイドコンテンツが 72.2%を占め、レディメイドコンテンツの 26.6%
を大きく上回っている。
さらに、コンテンツの種類まで詳細にみると、IT・コンピュータ、ビジネス基礎、語学、
社会通念、経営管理といったコンテンツが多いが、コンテンツ種類も多様化する傾向に
ある。コンテンツのユーザについてみると、企業内教育が多くを占める(オーダーメイド
コンテンツ:25%、レディーメイドコンテンツ:30%)。
4)サービスベンダ
サービスベンダがユーザに提供するサービスの種類についていえば、IT・コンピュータ、
ビジネス基礎、社会通念等が多いが、今後注力する分野を見ると、IT・コンピュータの
比率が低下し、多様化する傾向にある。対象ユーザはシステム、コンテンツと同様に、
企業内教育がもっとも多い(29%)。
5)コンサルティングベンダ
コンサルティング業務の対象分野についていえば、IT・コンピュータ、社会通念、自
社製品の比率が高い。コンサルティング事業者がユーザに提供するサービスの種類に
ついては、教育コーディネート(42.9%)、教材作成コンサルティング(31.4%)、システム
構築(14.3%)が主力である。対象ユーザ(クライアント)は、情報サービス、製造業(IT
及びそれ以外)、学校教育の比率が高い。
6)ベンダからみたビジネス展開
ベンダからみた e ラーニングビジネス展開上の障害項目(複数回答)としては、
・
e ラーニング利用についてのコンセンサスが得られない(55.3%)
7
・
提供するサービスの教育効果が不明確である(40.4%)
等があげられている。(図 1-6 参照)
0
10
20
30
eラーニング利用についてのコンセンサスが得られない
6.7
教育コンテンツを作成する時間・コストがユーザにとって負担
6.7
インフラ(高速回線)が充分に整っていない
教育コンテンツを購入するコストが高い
25.5
優良な教育コンテンツが確保できない
6.7
6.7
23.4
23.4
23.4
0.0
顧客の行っている教育・研修がeラーニングになじまない
21.3
4.4
21.3
2.2
19.1
0.0
受講者がeラーニングを利用するための操作が煩雑である
14.9
2.2
14.9
0.0
コンピュータの操作能力をもった管理者がいない
2.2
営業担当者のスキルが不足している
2.2
セキュリティに問題がある(クライアントの意識が低い)
0.0
セキュリティに問題がある(クライアントの要求が高い)
0.0
最も重大な
障害となっ
ていること
(1つのみ
選択)
27.7
4.4
eラーニングシステムの導入・運用コストが高い
その他
34.0
29.8
2.2
スキルマネジメントシステムができないため、研修計画が立たない
障害となっ
ていること
(複数選
択)
38.3
2.2
学校や企業における管理者・講師のスキルが不足している
HRシステム等、他の業務システムとの連携が十分ではない
40.4
38.3
6.7
教育コンテンツをデジタル化するコストが高い
(%)
60
55.3
11.1
ユーザにとってのeラーニングに関する情報が不足している
受講者が利用に必要なコンピュータの操作能力を持っていない
50
28.9
提供するサービスの教育効果が不明確である
インフラ(LANやPC)が充分に整っていない
40
12.8
10.6
6.4
4.3
4.4
8.5
図 1-6 現在のビジネス展開において障害となっていると思われる事項
一方、ベンダ側が販売する際のセールスポイント(複数回答可)としているのは、
・
学習者の時間的・空間的な制約を削減できる(72.3%)
・
従来の研修(集合研修など)と組み合せることができる(70.2%)
等があげられている。(図 1-7 参照)
(n=47)
0
10
20
30
40
50
60
70
学習者の時間的・空間的な制約を削減できる
72.3
53.2
マルチメディア・シミュレーションにより理解度向上が期待できる
44.7
個々の学習者のニーズやレベルに応じたカリキュラムが提供できる
61.7
個々の学習者の学習ペースに合わせた教育が実施できる
期間を短縮して学習することができる
38.3
44.7
既存の研修手段に比してコストパフォーマンスが高い
21.3
初期導入費が安価である
42.6
最新の学習プログラムを提供できる
多くの学習プログラムを提供できる
31.9
55.3
受講者の理解度を個別に確認できる
38.3
既存のインフラ(LAN、PC)を有効活用できる
学習と他の業務システムとを連携させることができる
31.9
従来の研修(集合研修など)と組み合わせることができる
70.2
セキュリティやプライバシーが万全である
10.6
42.6
人材開発スタッフの物理的な負荷を減らすことができる
受講者個人あるいは組織全体の業績を向上させることができる
34.0
企業業績に寄与する人材育成を戦略的に展開することができる
38.3
標準規格に対応している
34.0
31.9
サポート体制が充実している
その他
該当する項目なし
80 (%)
12.8
2.1
図 1-7 e ラーニング販売の際のセールスポイント
8
また、ベンダが今後のビジネス展開において重要と考えている項目(複数回答可)は、
・
コンテンツの質を向上させる(68.1%)
・
e ラーニング導入効果の高かった導入事例を収集・提示する(59.6%)
・
クライアントの業務内容を把握する(55.3%)
等があげられている。
e ラーニング市場の主要領域である企業内教育の市場規模を、以下の推計方法で算
出したのが、図 1-8 である。
[算出条件]
2010 年までのeラーニング導入率は、昨年までと同様、ロジスティック回帰モデル
を用いて算出する。ロジスティック回帰モデルは、上限値Lを定めた上で、百分率
pと説明変数tとの間に、
p
L
=
/(1+exp(-(b+at))
という関係式を想定し、回帰分析を行
うものである。このモデルを用いて、企業内教育におけるeラーニング普及曲線は
以下を元に算出する。
・
2004 年時点でのeラーニング導入率(アンケート値)
・ e ラーニング普及上限値(現在研修を行っている企業は最終的には何らかの
形で e ラーニングが導入されると仮定)
・
2005 年の e ラーニング導入推計値(現在の導入率+現在導入検討中×0.2)
(億円)
企業内教育 eラーニング市場規模予測
1,600
1,400
1,200
1,000
800
600
400
200
0
2004
2005
2006
2007
2008
2005/2006推計結果
2009
2010
2004/2005推計結果
図 1-8 企業内教育におけるeラーニング市場規模予測
9
1.6.4 事例インタビュー
事例インタビューをとおして、e ラーニング活用の促進(成功)要因をまとめた。特徴的
なものを挙げると、以下のとおりである。
1) ユーザ企業
・
人材育成を重視する社長からのトップダウンで教育研修体制を見直し、特に
ビジネスリーダ、マネージャークラスの育成に注力
・
全社あるいは更に拡大して、全世界の関連各社の従業員に対して、コンプラ
イアンス等の全社一斉教育に活用
2) 新ビジネス展開企業
・
音楽教育に e ラーニングを適用し、ビデオを使ったオンデマンド講座やオン
ライン通信添削付きのネットレッスンを 24 時間フルタイムで提供(業界初)
・
デザイン教育に e ラーニングを適用し、作製した製品を Web 上に公開して掲
示板やチャット等のコミュニケーションツールを活用しながら共に学ぶという、
一種の協調学習を実施
3) 大学
・
少子化や独立行政法人化という荒波の中で、各大学は生き残りをかけて差別
化や、魅力的な大学作りに向けて努力しており、eラーニングはその一つの解決
手段として浸透
・
まず学部単位での導入で e ラーニングの効果を検証した後、全学に適用
・ e ラーニングを提供する機関を大学の外に設立し、大学の e ラーニング講座を
一般企業等に提供する新しいビジネスモデルを創出
・
既存の大学の業務システムと e ラーニングをシームレスに連携させ、総合的
な大学の IT 化を実現
1.7 まとめ
我が国における e ラーニングは、以下のようなことを背景に、着実に社会に浸透してい
るが、以前に予測された(注 )ような急激な普及・浸透には至っていないのが実状である。
1)全体的には、e ラーニング市場は着実に伸展しており、認知度も高く、定着してきて
いる。また、新分野への参入や新サービスが増えている。
2)企業では、コンプライアンス、セキュリティ、ビジネスマナー、セクハラ対応といっ
たキーワードに代表される全社員への一斉教育実施を行う企業が増大している。また、
人事情報システムと e ラーニングシステムとのシームレスな連携構築など、総合的な
導入・活用が徐々に増加している。業務支援システム(EPSS)的な導入、SCM・CRM
など多様な業務分野への応用的・戦略的な活用など、研修と業務の垣根を取り払った
利用方法により、成果をあげる例も増大している。
3)大学では、独立行政法人化や、少子化に伴う競争の激化などの環境変化に対応するた
10
めに、学内にとどまらず、社会人を対象として遠隔教育を推進する教育機関が増大し
ている。
e ラーニングの活用方法については、遠隔教育的活用よりは、集合教育の支援シス
テム、補完的教育等のブレンディングが主流である。一方で、ほとんどの単位をeラ
ーニングで取得できるインターネット大学が誕生している。一般的傾向としては、実
験的活用から学部単位・全学単位での e ラーニング導入が進んでいるが、運用の推進
体制は、まだ拡充が必要である。しかし、既存の事務系システムと e ラーニングシス
テムとの連携により、全学的に効率的な運用を図る先進的な大学も増えている。
今回の調査から予測すると、2005 年に 500 億円の e ラーニング市場規模は、2010 年には約
2 倍の 110 億円へと着実に拡大する(年間平均伸長率:20%)見通しである。
注.
1)2010 年には 1 兆円市場へ(NTT データ経営研究所試算:2000.3)
2)2006 年のデジタルコンテンツ市場は 943 億円へ(野村総研:2001.12)
3)2005 年の企業向け研修サービス市場は 6,400 億円へ(矢野経済研究所:2002.7)
4)2006 年の国内 e ラーニング市場は 1,491 億円へ(IDC ジャパン:2002.10)
以上
11