3次元グラフィックス応用ソフトウェアに関する研究 ―形と動きを創るためのソフトウェア技術と直感的(感性)インタフェース― 九州大学感性融合デザインセンター コンテンツ創成科学部門 九州大学大学院芸術工学研究院准教授 岡田 義広 ■研究内容とこれまでの業績 図1に示すように,本研究室では,3次元グラフィックス応 用ソフトウェアに関する研究開発を行っており,その内容 は多岐に渡る.本稿では,各項目について研究内容とこれ までの業績を紹介する. 図2:インテリジェントボックスの画面イメージ 「ソフトウェアアーキテクチャー」 1995 年に北海道大学の田中譲教授とともにインテリジ する.各ボックスは3次元形状のほか固有の機能を持 つ. ェントボックス(IntelligentBox)とよぶ3次元グラフィックス応 図2右に示すように,このボックスを画面上で互いに親 用ソフトウェア開発支援システムを提案した.著者はその 子関係を与え組み合わせ機能合成することにより,合成さ カーネルプログラムの開発を行った.インテリジェントボッ れた機能を持つ合成ボックスを構築できる.この構築過程 クスは MagicCube+という名称で2001 年に製品化されてい が3次元グラフィックス応用ソフトウェアの開発過程となる. る.図2左に示すように,インテリジェントボックスは,ボックス 3次元グラフィックス応用ソフトウェアを開発する上で有用 とよぶ多面体の形状を持つ3次元オブジェクトを提供 となる種々の機能部品が現在までに多数開発されている. 2002 年 11 月∼2006 年3月には, インテリジェントボックスを発展させ た動的プログラミング環境の研究を 科学技術振興機構・戦略的創造研 究推進事業・さきがけ研究「協調と 制御」領域において「実世界指向の 具象化プログラミング」というテーマ で実施した.高度に没入感のあるイ ンタラクションを目指した仮想世界実世界間プログラミング環境の研究 である.現在は,インテリジェントボッ クスを基盤として用いた種々の応用 研究を行っている. 図1:3次元グラフィックス応用ソフトウェアに関する研究開発 「コンピュータアニメーション」 の希望がありプログラム提供を行っている. 計算機の高性能化により,PCでも実時間で3次元CG表 示が可能である.しかし,依然として3次元CGアニメーショ 「ヒューマンインタフェース」 ン作成は簡単ではない.専門知識のない人でも3次元CG ソフトウェアアーキテクチャーの側面から,3次元グラフ アニメーション作成が行えるための作成基盤技術の研究 ィックス応用ソフトウェアの音声入出力インタフェースやビ 開発を行っている.ポリゴンモデルの単純化処理と細分割 デオ画像に基づく動作入力インタフェース等の研究開発 処理アルゴリズムの研究開発や3次元シーン自動生成シ を行っている.図5に示すのは,本研究室で開発した3次元 ステムの研究開発を行っている.また,静止・動画像デー グラフィックスアプリケーションを直感的に操作するため タ・3次元形状データ・モーションデータ等を含む3次元 のビデオ画像ベースのモーショントラッキングシステム マルチメディアコンテンツの検索技術や可視化技術の研 (DeMoCa:DeskTop Motion Capture system)である.また,力 究も行っている.Web2.0 に向けた3次元情報可視化フレ 覚が得られるデバイス(Phantom)を用いた応用システムの ームワークについて企業と共同研究を行っている. 研究開発を行っている.図6に示すのは,本研究室で開発 図3に示すのは,2004 年に提案した TimeTunnel とよぶ3 次元グラフィックスを用いた時系列および多次元データ した服飾デザインシステム(左図)と手術トレーニングシス テム(右図)の画面イメージである. の動的可視化解析ツールである.Webサービスツールとし ての商用化を目指し企業と共同研究を実施している.また, 「ネットワークコラボレーション」 図4 に 示す の は , 階層情報の 可視化ツ ー ル で あ る インターネット上で3次元CG表現される仮想空間のな Treemap を3次元拡張した Treecube とよぶ3次元マルチメ かで複数の人が協調して,計算機により支援される種々の ディアデータのブラウジングツールである.平成18 年には, 知的活動が行える環境を即座に,容易に創れるための技 米国の研究所(National Center for Microscopy and Imaging 術について研究開発を行っている.図7に示すように,イン Research(http://www.ncmir.ucsd.edu))から Treecube 利用 テリジェントボックス上のネットワークを介した分散協調作 業環境構築フレームワークを提案している.図に示されるよう 図3:TimeTunnel とよぶ時系列および多次元データの動的可視化解 析ツール 図4:Treecube とよぶ3次元マルチメディアデータのブラウジング ツール 図5:ビデオ画像ベースのモーショントラッキングシステム DeMoCa 図6:服飾デザインシステム(左)と手術トレーニングシステム(右) の画面イメージ に,3次元オブジェクトに対する操作イベントをすべて RoomBox と呼ぶ独立な部品に管理させ,この RoomBox を分 散共有することにより異なる計算機で行われる3次元オブジ ェクトに対する操作イベントをすべて共有するという枠組み ■著者紹介 1964 年生まれ.最終学歴:1993 年 3 月北海道大学大学院 工学研究学科電気工学専攻博士後期課程修了.学位:博 士(工学)北海道大学.職歴:1993 年4 月北海道大学工学部 電気工学科助手,1997 年4 月同大学大学院工学研究科電 である.この内容を発表した論文は,1997 年の Computer 子情報工学専攻助手(改組),1999 年 1 月九州大学大型計 Animation 国際会議のベストペーパとなり,内容をエクステンド 算機センター助教授,2000 年 4 月より同大大学院システム した論文が 1998 年の The Visual Computer 誌に採録されて 情報科学研究院情報理学部門助教授,2009 年 4 月より同 いる.また,本研究室は,日本学術振興会・拠点大学方式「日韓 研究院情報学部門准教授(改組).2002 年 11 月∼2006 年 3 月科学技術振興機構さきがけ研究「協調と制御」領域研 次世代インターネット技術のための研究開発と実証実験」に 究員(兼任).情報処理学会・電子情報通信学会・ヒューマン 参画し,韓国のバーチャルリアリティ研究者と共同研究を行っ インタフェース学会・ACM・IEEE Computer Society 各会員 ている. 図7:RoomBox による分散協調作業環境構築フレームワーク 「エンターティンメント分野応用ソフトウェア開発」 ゲーム開発環境等の研究を行っており,平成 21 年度に 九大が福岡市から委託を受けたシリアスゲームプロジェク トに参画をしている.また,知的クラスター創成事業(第Ⅱ 期)のプロジェクトに参画し,デジタルTV放送コンテンツ の開発技術や開発手法の研究を行っている.
© Copyright 2024 Paperzz