システムダイナミクス 第3回 送り駆動機構の動特性 1.機械システムの動特性 動特性=周期的振動に対する耐性(動剛性) +運動加減速に対する安定性(サーボ特性) 動剛性(=1/コンプライアンス)=負荷した力/振動振幅 各周波数ごとの剛性を求め、弱い所を避ける 入力⇒加振力 出力⇒変位 2.送り駆動機構の構造 サーボモータ テーブル 減速ギヤ M ボールねじ ベアリング(固定側) モータ接続方式 (1)減速(トルクUP) (2)直結 (カップリング) ねじ取付け方式 (1)固定-自由 (2)固定-支持 (3)固定-固定 ボールナット ベアリング(支持側) 取付け方向 (1)水平 (2)垂直 (ブレーキ、ウェイト) 3.動特性に影響する因子 (1)ねじの長さ: ストローク+ナット長+惰走量 (製作限界) (2)ねじの径: 軸強さ、ねじり剛性、(DN値) d=3 16kT π τa d ≒ 0.73 4 T T:ねじりトルク τa:許容せん断応力 k :安全係数 (3)ねじの回転数:早送り速度、リード、減速比 リード=ねじ1回転で進む距離 早送り=位置決め時の最高移動速度 (4)軸方向荷重:想定の加工最大負荷、座屈荷重 座屈=シャフトが強い圧縮力で折れ曲がること 4.送り駆動機構に作用する力 軸方向にかかる最大荷重を推定すると、 P=Fmax+μgM+Fr ここで、 Fmax:最大切削力(N)・・・・フェイスミル、ドリル Mmax:最大移動体質量(kg)・・テーブル+ワーク Fr:その他の抵抗力(N)・・・案内、カバー *最大切削力 X,Y軸=フェイスミルを想定。主分力の被削抵抗×切削断面積 Z軸=ツイストドリルを想定。NATOCOの式(実験式) F=570xKxDxf0.85 D:ドリル径(mm)、f:送り(mm/rev) K:材料係数(軟鋼2.22、アルミ1.01) 5.送り機構各部に生じる変位 (1)ねじの引張・圧縮による伸縮量 PL δ1 = (L:固定ベアリング~ナットの距離) 2 Eπd (2)ねじのねじりによる軸方向変位量 32TL l :ねじのリード) δ2 = × ( l Gπd 4 2π (3)ナットの軸方向弾性変位量 0 .0026 δ3 = sin α ⎛ Q2 ⎜ ⎜ 10 d B ⎝ ⎞ ⎟ ⎟ ⎠ 1 3 (Q:ボール1個当りの荷重) (dB:ボールの直径) (α:リード角) 5.送り機構各部に生じる変位(続き) (4)支持ベアリングの軸方向変位量 P δ4 = k1 (k1:ベアリングのバネ定数) (5)ナット取付け部ボルトの伸び量 δ5 = P Nk 2 (k2:ボルトのバネ定数、N:本数) 送り系の総合剛性(=力/変位) Σδ i = δ 1 + δ 2 + δ 3 + δ 4 + δ 5 ∴ K S = P Σδ i 4 一般の工作機械では、 K S = (2~20 ) × 10 kg / mm 6.送り駆動系の固有振動数 送り駆動機構の軸方向の固有振動数ωSは、固定ベアリングと ナットの間のバネ剛性と共振 ωS = KS M ここで、Mは移動体質量(テーブル+ワーク) また、ねじり固有振動数ωGはモータとナットの間のねじり振動 で共振 ωG = KG J 2 ⎛ l ⎞ R KG = K S ⎜ ⎟ ⎝ 2π ⎠ η ただし、J:回転体の慣性モーメント、R:減速比、η:減速効率 7.軸方向共振とねじり共振 ωs:送りねじの軸方向共振角周波数 ωG:送りねじのねじり共振角周波数 ωG = ωS KG J KS = M とすると、 KG M × KS J ここで、ねじ軸を硬鋼の丸棒とすると、 K G ⎛ π d 4G = ⎜⎜ KS ⎝ 32 L ⎛ 2π ⎞ M =⎜ ⎟ J ⎝ l ⎠ π d 2 E ⎞⎟ 0 .5 4 L ⎟⎠ 2 また、 より、 = d 2 2 ⎛E⎞ ⎜ ⎟ ⎝G⎠ 0 .5 = 0 .22 d M 2π = J l よって、 ω G = 0 . 22 d × 2π = 1 . 38 × d ≒ 3~7 ωS l l (一般的には5倍ぐらいが安定的と言われる) 8.危険速度 たわみが遠心力で振動誘発(ふれまわり運動) 原因=形状の非対称、材料の不均質、加工誤差 回転シャフトの自重(水平取付けの場合) ふれまわり運動周期と回転軸の曲げ振動の固有 振動数とが「共振」したとき、軸を折損するような非 常に大きな振動を生じる 1次固有振動数が最もエネルギ的に大きいので、 通常この回転速度をいう 9.共振を避けるための工夫 ⇒通常使用領域から3倍程度はなすように事前検討 軸方向共振・・・・断続切削周波数の3倍以上 ねじり共振・・・・・サーボ位置ループゲイン(rad/s) の3倍以上 使用領域 ωn 共振周波数 軸固有周波数の向上策=太く、短く、両持ち、粘性摺動
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