42 地デジ開始10年とテレビ視聴行動の変化 ∼データ放送・EPG・マルチスクリーン利用∼ 地上デジタル放送は、2003年12月の開始から間もなく10周年を迎 えようとしている。10年が経過するなかで、初期のころに地デジに 抱いた視聴イメージが大きく変わってきたことにあらためて気づくこ ともある。今回は、地デジの番組視聴から派生する「関連行動」の 広がりについて、最近の調査データからトピックを紹介したい。 文●美和 晃 Miwa Akira 電通総研 メディアイノベーション研究部 研究主幹 その後10年持ち続けている人も多い。 番組の拡大版を放送していた日である。 大きく利用者層を広げてきた データ放送 〔図表1〕は、電通総研が実施した調査 これを見ると、どの時間帯でも、テレビ から「普段よく利用するテレビの機能」に を視聴していた人の16 ~ 20%の人がデ ついて尋ねたものである。地デジのデー ータ放送を利用したと回答している。詳し 地デジ放送開始当初に筆者の周囲で タ放送の利用が44%に上り、かなり浸透 く紹介する紙幅はないが、20時台平均で 地デジテレビを購入した、いわゆる「高関 してきていることがうかがえる。 見ると、視聴していた放送局によらずお 心層」の方々から多く聞かれた声は「売り また、 〔図表2〕は、調査対象日時であ よそ16~17%の人がデータ放送を利用し 文句とは違い、dボタンを押しても番組の る3月6日の20時台のデータ放送利用率 ていた。 関連情報は出てこない」とか、「たまに大 について、EPG (電子番組表)の利用と 各局の視聴者の間でデータ放送の利用 型の企画番組でdボタンから投票に誘導 合わせて15分ごとに尋ねた結果である。 率が大きく異ならないことを考え合わせる する視聴者参加番組があるけれど、テレ なお、調査対象日は、TBS系列でワール と、いまやデータ放送がごく日常的・習慣 ビをネットにつないでいないので肝心な投 ド・ベースボール・クラッシックの第1ラ 的に、視聴番組にかかわらず幅広く利用さ 票はできない」……などであった。実は、 ウンド (日本対キューバ戦) を生中継して れていることをうかがわせる結果となった。 高関心層の方々の間では、このイメージを いたほかは、通常の番組編成ないし通常 このように、地デジがアナログ停波を 図表 1 図表 普段よく利用するテレビの機能 2 データ放送・EPGの利用 (%) 25 (%) 0 20 40 60 20.7 BS・CSのテレビ番組を 視聴できる機能 53.1 20 20.3 テレビ番組を録画する機能 46.2 16.8 17.8 17.6 15 地デジのデータ放送機能 18.6 18.2 16.2 13.1 43.9 9.9 27.4 5.9 インターネットに接続する 機能(IPTV以外) 10.5 10-2013 EPG (テレビ視聴者全体) 5.5 5 15.6 n=2,417(テレビ保有者) 設問文の中での「データ放送機能」 リモコンのdボタンを押すと文字や画像情報を表示する機能を指します。 2 データ放送 (テレビ視聴者全体) 10 家庭用ゲーム機の モニターとしての機能 ひかりTVやアクトビラ等の IPTVを視聴できる機能 データ放送 (NHK総合+民放5キー局視聴者ベース) 0 20時00分∼ 20時14分 (n=1,184) 20時15分∼ 20時29分 (n=1,132) 20時30分∼ 20時44分 (n=1,106) n数は各時間帯のテレビ視聴者全体の場合 20時45分∼ 20時59分 (n=1,072) 果たし、間もなく放送開始10年を迎えよ 施した調査から、テレビ視聴と同時に利 うとするなかで、進化したテレビの見方を 用される端末の特徴について紹介したい。 さらに、❷のうち、テレビの視聴と関連 受け入れる人々が、ゆっくりとだが着実に 〔図表3〕は、3月6日の20時台にインタ する目的でネットを利用した人(❸)を見 増えてきた、と言えるだろう。 ーネットを利用していた人を取り上げ、利 ると、スマートフォンやタブレット端末の 用端末の割合の大きさを示したものであ 利用がさらに高まり、デスクトップPCの る。分析対象者は、PC (デスクトップ型 利用を逆転している。テレビ視聴と関連 ないしノート型) に加え、スマートフォン、 するネット利用行動にとってスマートフォ 双方向のネット利用は スマホ・タブレットへ PC) よりも高いと言える。 タブレット端末を含む3種類の端末の全 ンやタブレット端末はPCよりも高い親和 他方、 〔図表1〕にもう一度注目してみ てを保有する先進利用者層である。 性を示していることがうかがえる。 ると、テレビのインターネットへの接続率 図表では20時台のネット利用者を以下 このデータは、スマートフォンやタブレ (IPTV除く) はネットユーザーの間でさえ の3種類に分類した。❶ネット利用者全 ット端末が今後さらに普及を遂げると、テ 15%程度に留まっている。データ放送利 体、❷そのうち、同時刻にテレビも視聴 レビ視聴中のネット利用、とりわけテレビ 用者の多くは、テレビそのものを経由して した人、❸さらに、そのうちテレビの視聴 視聴と関連するネット行動が促進される 双方向でやり取りするよりは、番組視聴 と関連する目的でネットを利用した人、の 可能性があることも示唆している。 を補完する情報を受動的に受け取ること 3種類である。 を好んでいると思われる。 まず、❶ネット利用者全体を見ると、 そして、双方向性の今後の受け皿は、 デスクトップPCが34.5%、ノートPCが 10年単位で進化を見据える 必要性 テレビ本体よりは視聴者の手元の各種ネ 36.2%を占める一方、スマートフォンやタ ット端末が主軸になると考えられる。ここ ブレット端末の利用はかなり少ない (それ 地デジ開始後10年目をかけてデータ放 ではスマートフォンやタブレット端末を利 ぞれ19.0%、16.8%) 。 送の利用が幅広く定着したことからもわ 用する「マルチスクリーン」型視聴につい 続いて、そのうち、同時刻にテレビも かる通り、テレビ視聴と関連した派生行 て触れてみたい。 視聴した人(❷)を見ると、デスクトップ 動が進化するためには、目安として10年 実は、 本誌2013年3月号の当コラム「マ PCの利用は26.1%に下がり、代わりにス 程度の長期の視点が求められることがわ ルチスクリーン時代に向けて再び考える マートフォンの利用が24.4%、タブレット かる。現在、注目されている「セカンドス “ながら視聴”」においても、テレビ視聴 端末の利用が20.9%と大きい。つまり、 クリーン」「マルチスクリーン」サービスに 者がネット端末を利用して番組やCMに スマートフォンやタブレット端末を用いた ついても、視聴行動の長期進化に立脚し 関連するネット利用行動を起こしている実 ネット利用は、テレビ視聴との共存を許 た地道な育成の観点が不可欠になってく 態を報告した。今回は、その半年後に実 容する度合いがPC (特にデスクトップ るように思われる。 図表 3 ネット利用端末(20時台平均) ネット利用者全体(n=平均634) ┗うちテレビ視聴とネットの同時利用者(n=平均246) ┗うちテレビ視聴と関連するネット利用者(n=平均79) 0 10 20 30 40 50 34.5 デスクトップPC 26.1 23.1 電通総研 第2回マルチースクリーン調査概要 36.2 36.8 ノートPC 40.0 スマートフォン タブレット端末 (%) 19.0 24.4 26.9 16.8 20.9 24.2 調査手法 ウェブ調査 対象者条件 ・分析対象 スマートフォン・タブレット端末両方の保有者2,485人 ・年齢 15歳(中学生を除く)∼ 49歳男女 ・居住地 一都三県 (直近の質問紙調査の結果から上記条件で性・年齢構成に応じて割付) 日時 2013年3月6日( . 水) 時刻 20 : 00∼21 : 00(左記時刻に常時在宅であった人) 10-2013 3
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