平成26年9月28日(日) 下関学術集会 清掃・リネンの管理 国立病院機構 関門医療センター 感染管理認定看護師 三村由佳 療養環境を清潔にすることは・・・ 良質な医療の提供 良好な職場環境の保 障 ファシリティマネジメントの推進 空気・水質管理、清掃、廃棄物の管理、リネンの管理 1.清掃の基本 清掃とは 「きれいにすること、汚れを払いのけること」 ¾ 汚れや埃は、水分を吸着し、結露・湿潤して 細菌やカビの温床となる ¾ 細菌やカビは埃にのって浮遊する ¾ 施設設備の老朽化を防ぐ 清掃の基本は、 目に見える汚れや埃を除去すること 清掃と環境の消毒 ・病院環境中には多種多様な細菌が存在する ・環境を消毒し、一時的に細菌数が減少しても 人が存在する限りすぐに戻る 環境を無菌にすることは困難 環境を消毒する意義は殆どない 血液や吐物に汚染された場合、 感染性病原体を保有する患者がいる 領域のみ適切な消毒薬を用いる 清掃を効率的に 行うために!! 清掃に関わる人 清掃は外部委託業者に委ねる施設が多い。 それぞれの業務範囲を整理し、教育が必要。 清掃時の服装 • マスク • 手袋 • エプロン (汚染の程度より判断) 環境表面の分類 医療機器表面 ハウスキーピング表面(環境表面) 高頻度接触表面 低頻度接触表面 医療従事者や患者が 直接接触することの 人工呼吸器やX線装置 少ない部位 歯科ユニット等 医療従事者や患者が ・水平表面 頻繁に接触する部位 床や窓のサッシ ・水平表面 壁、ブラインド カーテン等 高頻度接触表面 高頻度接触表面 高頻度に接触する表面(たとえばドアの取っ手、ベッド レール、電灯スイッチ、患者病室内のトイレ内および 周りの表面など)は、あまり触れないハウスキーピング 表面より頻繁に清掃し、消毒する(カテゴリーⅡ) 医療保健施設における環境感染制御のためのCDCガイドライン(2003) ¾ 少なくとも1回/日以上の湿式清拭 ¾ 洗浄剤による清掃で可能。 洗浄作用のある低水準消毒薬を洗浄剤として 使用することもある。 低水準消毒薬含有の洗浄剤 第四級アンモニウム塩(塩化ベンザルコニウム)や 両性界面活性剤(塩酸アルキルジアミノエチルグリシン) などの低水準消毒薬含有の洗浄剤では、 洗浄と一般細菌の除菌を同時に行うことができる。 水回り 湿潤環境は細菌が繁殖しやすく、緑膿菌やセラチアなどの 温床とならないよう注意が必要である。 シンク、流し台 ¾ 1日1回は洗浄剤を用いて清掃する。 ¾ スポンジは細菌の温床となりやすいため取り扱いに 注意が必要。使用後は、洗浄乾燥させて保管する。 使用期限を決め、定期的に破棄するなど工夫する。 ¾ 日頃からペーパータオルなどでこまめに拭き取り、 乾燥を心がけることが大切。 水回りは整理整頓と乾燥に注意 トイレ ¾ トイレは複数の人が使用し、排泄物で汚染する可能性が 高い場所であり、手指を介した感染の拡大に注意が必要。 ¾ 少なくとも1日1回以上、洗浄剤を用いて便器内や、 便座、水洗レバー、ドアノブなどを清掃する。 ¾ ノロウイルスやクロストリジウム・ディフィシル患者が 使用した場合は、0.1%次亜塩素酸ナトリウムを用いて 便座等の拭き取りを行う。 ※ ノロウイルス流行期には、トイレの清掃を次亜塩素酸 ナトリウム使用に切り替えるのも一案。 医療用塩素系洗浄剤 スプレータイプ 市販の塩素系漂白剤と 違い、洗浄成分を配合 しているため、血液等 の汚れが落ちやすい ワイプタイプ 消毒効果やコスト、使いやすさを踏まえて より良い物の検討を! 市販されている消毒薬 成分に「次亜塩素酸ナトリウム」と 記載があることを確認してください 成分が 違うので注 意 塩素系消毒薬の濃度 原液 濃度 必要な濃度 希釈倍数 原液量 (水1Lの場合) 200ppm 250倍 4ml 1000ppm 50倍 20ml 200ppm 500倍 2ml 1000ppm 100倍 10ml 5% 10% 目に見える汚染がなければ、200ppmの濃度で 消毒を行う。(ハイターは原液濃度約5%) 2.リネンの管理の基本 医療施設で洗濯を必要とする物 ¾ ¾ ¾ ¾ ¾ ¾ ¾ ¾ ¾ シーツ 掛布団、ブランケット ベットパット 毛布 枕、枕カバー 病衣 清拭タオル 白衣 体位変換用枕 汚染リネンとは 使用済みのリネンのこと。使用済みのリネンには 多くの病原微生物が付着している可能性がある。 ¾感染性リネン ・ 血液や体液、分泌物、排泄物が付着もの ・ 感染経路別予防策を必要とする患者に 使用したもの リネン交換時の防護具 リネンの汚染や微生物による曝露を防止する ・ 手袋 ・ エプロン (必要時ガウン) ・ マスク リネン交換時の注意点 ¾ リネン交換時は、窓を開けるなど換気を行う。 ¾ 汚染エアゾルの発生を少なくするため、 できるだけ静かに取り扱う。 ¾ 感染性リネンは、その場でビニール袋等で 密閉し、周囲への汚染を防ぐ。 ¾ 汚染リネンを床に置かない。 感染性リネンの表示 他のスタッフ、委託業者等が感染性リネンと 分かるように院内で取り決めをしておく。 リネンの保管(清潔リネン) ¾ 清潔リネン専用の扉付保管庫に保管する。 ¾ 埃等に汚染されないよう、床上30cm以上の場所へ 保管する。 ¾ 段ボールや木材の上に保管しない。 ( 虫やカビに汚染される原因となる ) ¾ 清潔リネンと医療用具、ケア用品などを一緒に保管 することは避ける。(未使用のおむつ等) ※やむを得ない場合は、ゾーニングを適切に行う。 清潔リネンの保管(例) リネンの保管(汚染リネン) ¾ 汚染リネン専用の鍵付き保管庫で保管する。 ¾ 保管庫がない場合は、患者や面会者の立ち入らない 場所で保管する。 ¾ 清潔リネンや衛生材料、医療器具等と一緒に保管しない。 ¾ 院内での取り決めに従い、分別を行う。 汚染リネンの保管(例) リネンの洗濯 ¾ 熱水洗濯 専用の洗濯機を使用することで、血液や体液が付着したまま洗濯可能 温度 時間 日本 80℃ 10分間 米国 71℃ 25分間 65℃ 10分間 71℃ 3分間 英国 (小林寛伊ほか:消毒薬テキスト エビデンスに基づいた感染対策の立場から 第四版) リネンの洗濯 ¾ 消毒薬を使用する場合 消毒薬 適応リネン 次亜塩素酸 ナトリウム 血液・体液汚染時 漂白作用の 1000ppm(0.1%) 影響を受けない 上記以外 200ppm(0.02%) その他消毒薬 漂白作用の 影響を受ける 具体的方法 30分浸漬 5分以上浸漬 いずれかに30分浸漬 ・0.1%塩化ベンザルコニウム塩化物 ・0.1%塩化ベンゼトニウム塩化物 ・0.1%塩化アルキルジアミノエチル グリシン塩酸塩 (大久保憲 編:インフェクションコントロール2009年秋季増刊) ベッドマットの洗濯 ¾ 院内に熱水洗濯設備があれば使用する。 ¾ 清拭できる素材、カバーリングされた 製品を使用する。 ¾ 専門の外部委託業者へ依頼。 血液・体液等による汚染がある場合は、 大型のビニール袋等で密閉しておく 清拭タオルの取り扱い 清拭タオルは適切な取り扱いがなされなければ 院内感染の原因となる。 2013年6月17日~8月21日までにセレウス菌による 感染症が13例発生した。セレウス菌感染症との因果関係 は不明であるが、うち2名の患者が死亡した。 外部に委託している未使用の清拭タオルやシーツ、枕カ バーを細菌培養したところ、清拭タオルを中心にセレウス 菌が検出された。 清拭タオル・清拭車の管理 ¾ 清拭タオルを濡れたまま作り置きしない。 ¾ 清拭タオルを準備する際は、手指衛生を行い必要以上 に触らない。 ¾ 使用後は清拭車の水を全て破棄し、十分乾燥させる。 使用後はしっかり乾燥を! ディスポタオルの検討 感染対策は一人一人の心がけ 一人が抱いた小さな気の緩みが、 大きな感染拡大へと繋がります。 患者さん・同僚そして自身を守るため 適切な感染対策を行いましょう。 ご静聴ありがとうございました!
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