◎ 欧 州 の RoHS 規 制 と無 鉛 クリスタルガラス [日本陶磁器産業振興協会 事務局] EU では、2003 年に RoHS(ローズ)規制が公布され、06 年 7 から施行されました。RoHS は、 日本語では、「電気・電子機器に含まれる特定有害物質の使用制限に関する欧州議会および 理事会指令」と訳されます。 これに関連して EU で 2 万種類以上の化学物質の安全評価を義 務付ける新化学品規制が可決されました。RoHS 規制に基づき、EU 加盟国は、環境負荷が高 い物質について、規制値を超えて含まれた電子・電気製品を販売する事が出来なくなりました。 規制値は以下の通りです。 1) 鉛―1000ppm 以下 2) 水銀―1000ppm 以下 3) カドミウム―100ppm 以下 4) 六価クロム―1000ppm 以下 5) ポリ臭化ビフェニール(PBB)―1000ppm 以下 6) ポリ臭化ジフェニルエーテル(PBDE)―1000ppm 以下 このような環境対応の動きを受けて、欧州では、クリスタルガラスの定義を再検討し、環境負荷の 少ない商品を製造、販売するという動きが加速し、無鉛クリスタルガラスが市場に紹介されまし た。 一般的にクリスタルガラスとは、珪砂、カリウム、ソーダ灰というガラスの主成分に、酸化鉛(PbO) を添加したもので、酸化鉛が、ガラス全体の 24%以上のものを、クリスタル(レッドクリスタル、フル レッドクリスタル)と呼び、それ以下のものをセミクリスタルと呼びます。 酸化鉛を添加する事で、 ガラスの透明度と屈折率が高まり、その輝きから、水晶(クリスタル)のように透明なガラスになる 事からこの呼び名が付けられました。 高級なガラス食器や、置物では、酸化鉛の含有量の高い クリスタルガラスが好まれ、欧州では、ガラスの名門ブランドが多く生まれました。アイルランドのウ ォーターフォード、フランスのバカラ、ラリーク、ドーム、英国のスチュワート、等が世界的にも知ら れたクルスタルガラスのメーカーです。 クリスタルガラスを通常の使用条件で使っている限り、問題になるような、鉛の成分溶出はありま せんが、上記 RoHS 規制の公布により、鉛の使用を抑える動きが出てきました。 製品そのもの ばかりでなく、製造過程や、廃棄後の鉛の散逸が危惧されるのが理由です。 そこで、鉛の代わりに、チタン化合物や、バリウム化合物等を使用して、屈折率や比重をレッドク リスタルに近づけた「無鉛クリスタル」が注目され、欧州の名門も新しい、無鉛クリスタルの製造に 乗り出し、製品が市場に出てきております。 日本国内においても、環境規制物質である鉛などを使うのは、環境を重要視する時代にはそぐ わないとの意見もあり、欧州基準のクリスタルを国内でも定義付けしようという動きも出てきており、 無鉛クリスタルがガラス食器の主流になる日もそう遠くはないようです。 11 JAPPI NL 2009.2 欧州でのクリスタル定義 名称 金属酸化物含有量 クリスタルガラス 酸化鉛・ クリスタリン 酸化バリウム・ 密度 2.45g/cm3 以上 屈折率 1.520 以上 酸化亜鉛・ 酸化カリウムを 単体または合計で 10%以上含む。 ガラスの組成 ライム・クリスタルガラス:Na2O-CaO-SiO2 系 ボヘミヤ・クリスタルガラス:K2O-CaO-SiO2 系 半鉛クリスタルガラス:R2O(アルカリ金属酸化物、Na2O または K2O)-CaO-PbO-SiO2 系 鉛クリスタル:R2O-PbO-SiO2 系。 酸化鉛の含有量は 17~23% 高鉛クリスタルガラス:K2O―PbO-SiO2 系。 酸化鉛の含有量は 30%以上 12 JAPPI NL 2009.2
© Copyright 2024 Paperzz