IT サービスマネジメントフォーラム - ITIL

創刊号 2004.01
IT サービスマネジメントフォーラム
2
目次
ニ ュ ー ス レ タ ー 2004.01 創刊にあたって it SMF Japan 理事長 富田 修二
4
創刊によせて it SMF インターナショナル CEO Aidan Lawes
5
ITIL の実装へ向けて 株式会社アイ・ティ・アール 金谷 敏尊
6
新会員紹介 東京海上コンピュータサービス殿、ファイザー殿
8
英国での BS15000 の認定ステップ it SMF Certification Committee 副議長 Ian Whyte
10
ITIL とビジネス・プロセス・リエンジニアリング Fortis, Inc. Shared Services Buff Scott
12
it SMF 国際役員会報告 it SMF Japan 副理事長 西野 弘
14
イベント
15
分科会
15
書籍
16
3
創刊にあたって
2003 年 5 月に it SMF International より正式に
it SMF Japan が認可されてから、カンファレンス,
会員セミナー,Web サイト構築,翻訳出版等の活
動を一歩一歩進めてまいりました。そしてここに、
it SMF Japan の会報誌『ニュースレター』を創刊でき、
会員の皆様をはじめ関係各位には、ご支援・ご協力
を心より感謝致します。
欧米では IT をサービスとして捉え、より良いサ
ービスを提供する考え方に長い歴史があります。し
かもサービスをライフサイクルで管理し IT の運用
効率化を促進する検討がたいへん盛んです。これは
出版を通じて広く会員共有の財産となるようフィ
まさに、企業・産業・システムの競争力の源泉であ
ードバックされます。ベストプラクティスの共有化
り、かつ IT サービスマネジメントの真髄でありま
は、it SMF Japan が特定企業や団体に属さず非営利
す。これまでの日本の IT 産業の強化策はハードウ
で、会員のボランティアにより運営されていること
ェア、ソフトウェア拡充に重点が置かれてきました
で、全会員にオープンで公平であることを保証され
が、これからは IT サービスマネジメントによって
ます。昨年末から、事例研究、サービスデスク、セ
基盤強化される時代です。
キュリティの3分科会が活動を開始したところです
が、ここでの成果も財産の一つとなるわけです。会
システムや技術が進歩する一方で、IT サービス
員の皆様が積極的に活動・議論へ参加いただくこと
運用管理の人材やプロセスは、過去の慣習に囚われ、
が、it SMF Japan の活力の大きな源泉になると考え
変革には時間を要するものです。そのため、IT サ
ております。
ービス運用管理プロセスを規定した 「ITIL®」 フレー
ムワークの適用はビジネスプロセスの改革に有効な
今後とも、皆様からの it SMF Japan へのご理解
手段となります。
『IT はビジネスであり、ビジネス
とご支援の程よろしくお願い申し上げます。
は IT である』という言葉がありますが、ビジネス
要求とシステム要件を連携させ、ITIL を用いて IT
サービスの高品質化・コスト効率化を継続的に進め
ること、ひいては、経営効率改善を実現することが、
it SMF Japan 理事長 この競争市場で極めて重要な要素となります。
富田 修二
it SMF は IT サービスマネジメントを ITIL 普及の
観点から促進することを目的にしており、その活動
は我々会員によるベストプラクティスの集積と実践
が基盤となります。ベストプラクティスは専門委員
会による審議を経てデータベース化され、セミナー、
4
創刊によせて
it SMF Japan ニュースレターの創刊おめでとうご
ざいます。私企業であると公共部門であるとを問わ
ず、全世界の事業組織にとって、サービスマネジメ
ントは最優先課題になっております。ITIL で定義さ
れているベストプラクティスに基づいた手法は、正
式な規格である BS15000 とあいまって、多くの事
業組織がサービスマネジメント・ソリューションを
構築する際の基盤となるものです。そして全世界の
it SMF 会員が中心となって、これらの成果物の開発
にとどまらず、継続的な執筆・改訂を続けてきまし
た。したがいまして、ITIL は学術的な理論にとどま
るものではなく、まさに実践的な経験を反映したも
ィスならびに規格の継続的な開発に寄与するととも
のなのです。
に、会員の皆様にさらに多様なサービスを提供する
ことができるようになるでしょう。
it SMF の主たる目的は、ベストプラクティス成
他の国での経験からわかったことは、委員会業
果物の普及・開発、およびそれに基づいてソリュー
務・記事の執筆・発表といった活動にメンバーが積
ションを開発・展開しようとする組織を支援するこ
極的に参加してはじめて大きな成功が得られるとい
とです。この目的のために、it SMF では知識・経験
うことです。it SMF は会員組織です。言い換えれば
の共有を中心としたさまざまなサービスを会員の皆
それは「あなたの」組織なのです。貢献すればする
様に提供しています。このサービスを利用すれば、
ほど多くのものを得ることができるでしょう。
他の会員から学ぶことができ、最初からやり直した
り同じ間違いを犯したりすることはなくなるでしょ
そして、幸運にも今これをお読みになったあな
う。共有のための場は、公式なセミナーやコンファ
たがまだ会員になっておられないのでしたら、全世
レンスから Web ベースの情報やこのニュースレタ
界の何万というサービスマネジメント・プロフェッ
ーのようなものまで、多岐にわたっています。
ショナルの仲間にぜひ入って、多くのメリットを享
受してください。
わたしたちは 2003 年 5 月に it SMF Japan を 15
番目の国としてコミュニティーにお迎えしました。
皆様のご成功をお祈り申し上げます。
その後新たに 2 つの国が参加しましたし、さらに多
くの国々が 2004 年から参加する予定です。2004
年末までに参画する国の数は 30 近くに上る見込み
it SMF インターナショナル CEO
です。
Aidan Lawes
it SMF はキー・プレイヤーとして地球規模で認
知され受け入れられつつあり、他の多くの組織と戦
略的なパートナーシップや提携関係を構築しようと
しています。このことによって、ベストプラクテ
5
「ITIL の実装へ向けて」
∼ 効果を見据えた IT 組織のあり方 ∼
ITIL(IT Infrastructure Library)への期待や評価が高ま
実際、日々の運用やインフラ管理に携わるコンサルタント
るなか、国内でもこれを運用評価や自己診断のプログラム
や外部委託先をより適切に選定することで、ITIL が 10%
に取り入れる機運が高まりつつある。しかし、ITIL は導入
程度の人件費を削減する例は見られる。しかし ITIL 導入の
企業のすべてに等しく最高規範となり得るフレームワーク
本質的な価値はコスト削減の実現ではなく、サービス品質
ではなく、導入することで完結する認証規格の類でもない。
と対応の改善にある。このため、企業はコスト削減を副次
導入する企業は ITIL を段階的な改善を図るためのツールと
効果と捉え、以下の ITIL の機能に着目して実装戦略進める
して認識し、自社に適合するようにカスタマイズすること
ことが推奨される。
が不可欠である。このため、導入が進む海外企業において
もすでに幾つかの課題が指摘され始めているが、とりわけ
■サービスレベル管理プロセスと関連する活動(サービ IT 組織のあり方が問われる傾向が高い。ここでは、ITIL 導
スカタログや SLA [ サービスレベル・アグリーメント ]))
入企業が期待する効果を享受するために取り組むべき組織
■予期せぬシステム停止を減らすための変更管理プロセス
編成上の幾つかのポイントを整理してみよう。
■問題解決を促進するための問題/インシデント管理プ ロセス
世界主要 2000 社における IT 管理フレームワーク
これらの機能を満たし、ITIL の成果を引き出すには IT
(ITIL 等)の導入状況
組織が以下の役職を任命することが効果的である。新たに
スタッフを配置することは一見コスト増に見えるが、長い
計画なし
目で見れば安定的かつ継続的なプロセス改善が期待でき、
40%
能率的な IT 運営が可能となる。
導入済み・
世界主要 2000 社の IT 組織はコストやサービスレベル
計画あり
とリスクのバランスを鑑みて、ユーザ部門と IT 組織の協調
60%
性を高めるために BRM( 顧客関係マネージャ ) を起用する
出典 META グループ
と見られる。これにより IT 環境の複雑性をユーザ部門に認
識させ、効果的な SLA の交渉を行うことが可能となる。IT
組織は BRM の SLA に関する活動状況を見据えて ITIL 実装
ITIL 導入の目的は企業によって様々であろう。META グ
戦略を進める必要がある。
ループの調査によれば、世界主要企業 2000 社の 60% の IT
組織はエンドツーエンドの IT サービス提供プロセスの確保
2004 年にかけて、世界主要 2000 社の 60% は統合的
へ向けて、2003 年中に ITIL やそれに類するフレームワー
な問題管理プロセスを具備し、エスカレーション・マネー
クを導入し、そのうち 50% の IT 組織では 30% 以内のサポ
ジャによるサービス品質改善へ向けたルール作成を実施す
ート・コストの削減を目的にしていると見られる(図参照)。
ると見られる。これにより、アプリケーションとインフラ
役職
役割
顧客関係マネージャ(BRM)
ユーザー部門と協調し、サービスへの期待
サービスレベル・マネージャ
や要求について管理する。
サービスレベル実績を管理し、エスカレー
変更管理チーム
ションの管理や BRM への報告を行う。
アプリケーション/インフラストラクチャ
インシデント / 問題マネージャ
の変更管理プロセスを適切に実行する。
問題発生によるユーザー部門への影響を把
握し、SLA に基づく問題解決を管理する。
6
− SLA の未達成が現業部門に影響を与える場合、適切
ストラクチャの問題解決を SLA にて約束することができる。
な時間での連絡、解決を確約する
エスカレーション・マネージャは問題解決の時間を縮小す
− SLA の達成に直接関与しない技術者による問題の修
ると同時に、サービスデスクへのコール量の低減に寄与す
正の開発/テスト、迂回策/実装計画の準備、プロ
る。
グラム導入の承認などの適切な実行を確約する
2005 年までに、世界主要 2000 社の 60% は、広範囲の
− SLA の月単位のレポートを全ての関与者(ユーザ サービスに対する SLA の適用を促進する SLA コーディネー
部門、IT グループ)に配布する
タの役職を確立すると見られる(中には 300 種の SLA を
−ユーザから操作性、パフォーマンス、信頼性などに
運用する企業もある)
。これによって BRM 機能を補い、IT
組織が SLA の実績を効果的に管理することが可能になる。
関するフィードバックを得ることで、SLA の評価シ
ITIL 実装戦略は多大に要求される SLA、および適宜 SLA コ
ステムの継続的な改善を行う
− SLA 目標の未達成の可能性を BRM に報告し、SLA
ーディネータが行うコミットメントを見越したものでな
を再設定する必要があれば警告を発する
ければななない。META グループの調査によればひとりの
SLA コーディネータは平均的に 8 つの SLA の管理を要求さ
■変更管理チーム:変更管理を実施するグループが不在の
れている。
場合、これを設置し、適切な変更管理プロセスを整備す
る。META グループの調査では 12,000 ユーザのサイト
2006 年までに、世界主要 2000 社の 40% の IT 組織は
アプリケーションとインフラストラクチャの両方の管理を
において一週間に 108 の変更が予期される場合、常時 4
変更管理グループに要求するようになるであろう。これは
名程度の変更管理チームが必要となる
インフラ・サポートやアプリケーション保守に関わるスタ
■エスカレーション・マネージャ:ITIL の問題/インシ
ッフが独自にシステム環境を修正することを抑制するため
デント管理プロセスの効果を適切に享受するには、IT
である。注目すべきことに予期せぬシステム停止の 20% は
組織はエスカレーション・マネージャを任命すべきであ
変更管理の不在により引き起こされているのが事実である。
る。エスカレーション・マネージャは、ベンダ、IT タッフ、
IT 組織は、ITIL 実装戦略に変更管理チームの増員を計画に
ユーザ部門にて調和のとれた人材配置を実施し、現業部
含めるべきである。
門に多大な影響を及ぼす問題を解決する責任を負う。こ
れにより、IT 専門家が効果的に技術問題を扱い、SLA の
問題解決の目標が達成されることで継続的なユーザ満足
新たな役職へ対する詳細は以下のとおりである。
の向上が確保される
■ BRM:META グループの調査では IT 組織の 70% が BRM
ITIL を導入する組織は、コスト削減を目的化すべきで
を起用することなく ITIL の実装に乗り出していると見ら
れる。しかし、これでは IT 組織がユーザ部門との関係
はない。なぜなら ITIL により享受可能な効果とは主に IT
性を構築する能力が限られてくるため、高コスト/低 組織のサービス品質を改善し、継続的にパフォーマンスを
品質から脱却し、高付加価値サービスを提供するという
高める点にあるからである。適宜必要な役職や追加スタッ
目標は実現し得ない。5000 ユーザに対して 3 名の割 フを確保し、予算化することで、ITIL によってユーザ
合で BRM を設けることを推奨する
部門の期待/要求をより適切に管理でき、継続的に現業部
■ SLA コーディネータ:BRM がサービスカタログなどで 門に貢献できるようになる。
IT の価値を啓蒙するといった戦略的な役割を果たす一方
で、SLA コーディネータは例外処理報告を確認する、サ
ービスレベル目標の達成されない関連組織を保護すると
株式会社アイ・ティ・アール/ META グループ いった戦術的な役割を担う。SLA コーディネータの果た
アナリスト 金谷 敏尊
すべき主な役割と責任は以下ととおりである
− SLA 目標と実績のかい離を認識し、IT グループとユ
ーザ部門へ日単位で報告することで日々の SLA のパ
フォーマンスを管理する
− SLA 関連のインシデント(システム性能の悪化、可
用性の低下など)の解決レベルを確保するためサー
ビスデスクと連携する。時間単位で状況を確認する、
適切なベンダーに関与してもらう、ユーザ部門へ告
知するなど必要に応じて適宜グループ・マネージャ
を支援する
7
新会員紹介
東京海上コンピュータサービス株式会社
島田洋之常務取締役にご対応いただきました。東京海上コンピュータサービス(以降 TMC)殿は、東京海上火災殿、 東京
海上日動あんしん生命殿のシステム運用受託を主な業務としている、従業員約 300 名の企業です。
インタビュア:現在の TMC 殿の運用の現状と取り組みについ
てお聞かせ下さい。
島田氏:10 台の MF と千台近いサーバを運用しています。接続
される端末数は 13 万台を超え、1億件近いトランザクションを
毎月処理し、2千万枚の印刷をしています。商品が多様化する損
保業界にとって、システムは、保険料の計算、お客様へのご提案、
契約処理をする上で、必要不可欠なものとなってきています。最
近のシステムは「ビジネスにとっての空気」となってきているの
ではとの認識に立っています。空気は一瞬でも無くてはならない
ものです。「ビジネスの空気」を絶やさないために、システム運
用)」の仕組み等 により構成されています。FFA では、障害
用はとても重要と思っています。
の切り分け・特定に最優先に取り組み、障害発生時の初期動作・
回復が非常に速くなりました。
インタビュア:ITIL の取り組みについてお聞かせ下さい。
島田氏:ITIL を具体的に知ったのは 2003 年です。但し ITIL
インタビュア:障害のナレッジはどう扱われていますか?
の精神がプロセス(フレームワーク)の明確化・整備にあると
島田氏:トラブルが発生すると漏らさずトラブル DB に登録し
いう観点であれば、私どもの取組は 2000 年度に遡るのかなと
ます。トラブル分析は故障樹分析 (FTA) 手法で行い再発防止策
いう感じがします。当時、様々なオープン系システムがものす
を徹底、その登録もしています。トラブル DB の情報は経験の
ごい勢いで開発されて行きました。スピード重視のシステムの
蓄積であり、まさに宝物です。以前は、運用を起因とするトラ
開発は、一方でシステムの運用品質面にいろいろな影響を生じ
ブルを相当数発生させていましたが、現在では利用者に影響を
させました。其の状況の改善を図るべく運用の安定稼働に向け
及ぼすトラブル発生は年間数件程度(!)に削減されてきてお
てプロセスの明確化・整備等徹底的な取組を行いました。
り、トラブル情報は稀少になりつつあります。
インタビュア:システムの安定性を取り戻すために、具体的
インタビュア:現在の課題は、何でしょうか?
にはどのような活動をされたのですか?
島田氏:品質向上・維持に向けてのエネルギーは費やし続け
島田氏:基本に忠実に、まず「品質」
・
「トラブル」の定義・可視化、
る必要があると思っていますが、次はコスト適正化が課題と
そして全員での理解・意識の共有化を図りました。トラブルの
思っています。コストはサービスレベルにより大きく影響を
可視化にあたっては、まず徹底的なトラブル情報の蓄積・分析、
受けます。サービスレベルを意識すること、その明確化を図
そしてお客様への影響度合いを重要度等考慮しながら「お客様
ることが極めて重要と思います。また、燃費の良いシステム
迷惑度」という指標を設定しました。これによりトラブルの全
を作ることも大切です。「開発半年、運用 10 年」というキャ
員の理解の促進、影響度合いに応じた効率的・迅速な対応が実
ッチフレーズの下に、開発時に運用効率面でのレビューをさ
現されたと思っています。同時に全運用プロセスの見直し(特
せてもらうようにしています。運用受け入れ時にも「品質」
に人間系に依存しているプロセスの排除)、マニュアル化を進め
と併せて「コスト」面の評価も行うようにしています。
ました。またマニュアル内容の業務への徹底を人間系だけに依
存すること無くプロセスの中で徹底できるようにチェックシー
インタビュア:it SMF Japan への期待についてお教え下さい。
トやレビュー制度の整備をしていきました。開発サイドの協力
島田氏:運用とは見え辛いもので、今まで標準的な手法が無
も得て、開発されたシステムの安易な受け入れを行わないよう
いのではと思っています。各社それぞれの環境下、独自のや
なルールも明らかにしました。
り方で効率化を進めて来たのでは無いでしょうか。効率化や
サービスレベルに関して現在の自社の状況が妥当なものかど
インタビュア:トラブルが起きたときにはどのような活動を
うかを計る事が出来る評価基準を切望しています。ITIL の共
されていますか?
通フレームワークやベストプラクティスにはそういう客観的
島田氏:トラブル発生要因のつぶし込みを行っても「トラブ
なメジャメントが得られるのではとの期待があります。是非
ルは必ず起こる」という発想で、起きた時に如何に影響度合
とも日本のパワー・ユーザを集約していただき、運用評価基
いを最小化出来るかを念頭に置いています。そのためにトラ
準策定の場として頂ければ良いと考えています。
ブル発生時には、FFA(Fire Fighting Action)というプロセス
を明らかにしてあります。FFA では消火活動と同じように迅
訪問者独り言:IT は必要不可欠な「空気」。長い視点に立った
速な初動確保のための「緊急招集連絡」、
「回復時間目標の設定」
ときに何が本当に大切なことか、IT サービスマネジメントに
と目標時間内で回復ができなかった場合の「回復手順見直し」、
必要な視点の長さを教えていただきました。
リスク管理の一環としての「緊急通報(携帯電話メールを利
8
新会員紹介
ファイザー株式会社
矢坂徹取締役(コーポレート・インフォメーション・テクノロジー(CIT)アジア・パシフィック担当)、鬼塚公博部長(CTI 部 )にご対応い
ただきました。ファイザー殿は世界を代表する製薬会社です。2002 年度の売上は 3 兆 5,000 億円、日本でも 50 年の歴史があり、
2,500 億円ほどの売上があるそうです。目薬のバイシン、咳止めのアネトン、禁煙補助剤のニコレットなどファイザー殿の製品の恩
恵にあやかった方も多いのではないでしょうか?
インタビュア:現在のファイザー殿の運用の現状と取り組み
についてお聞かせ下さい。
鬼塚氏:日本では数百台のサーバを運用しています。UNIX 系
が多く、拠点は本社、横浜のデータ・センタの他、工場や営
業所等に分散しています。エンド・ユーザは 6,000 名程度です。
製薬業界の特色として、特にセールスやマーケティング分野
では国をまたがるスタンダードがなく、どうしても日本独自
の開発が多くなります。
矢坂氏:グローバルでは「フォロー・ザ・サン」コンセプト
にのっとり、3 つの地域に分けてインフラストラクチャの運
いか、という期待がありました。国毎、拠点毎で IT サービス
用を進めています。北米・中米、欧州・中東、そしてアジア・
運用プロセスの成熟度が異なっていたので、結果として ITIL
パシフィックです(矢坂氏はアジア・パシフィックの代表と
の採用は「基準」として大変有益なものとなりました。
のことでした)
。3拠点で運用を連携していくためには、各拠
点でプロセスが同じでないといけない。それがコーポレート・
インタビュア:it SMF Japan への入会の動機についてお教え
インフォメーション・テクノロジー(CIT)の取組み課題です。
下さい。
矢坂氏:日本では、ITIL をこれから勉強していこうとしてい
インタビュア:グローバルな CIT 部門の取り組みを少しお教
ます。そのために it SMF Japan に加盟しました。現在、IT 部
え頂けますか?
門の一人一人のスキル・セットを洗い出し、評価しているとこ
鬼塚氏:グローバルとしての CIT 部門の取り組みにアジアか
ろです。その評価が終わったら、IT スタッフに ITIL の理解を
ら参画しているのですが、この CIT のタスクは、グローバル
促すために、必要に応じて ITIL のトレーニングも組み込んで
のダイレクション・ストラテジ(上位の IT 戦略)の設定とグ
いこうと考えています。
ローバル・インフラにおけるプロセスの標準化です。プロセ
鬼塚氏:ここ 5-10 年でアウトソーシングのレベルが変化し
スとは、変更手順や調達基準の整備を指しています。最近や
ています。以前なら考えられない範囲まで外部委託が可能に
っと戦略が固まり、実行部隊でのドキュメント化までに話が
なってきました。ITIL を導入することで、どこまで外部委託
進んできました。エスカレーション手段など、細かいところ
するのか、何を捨てるのか、何を自分たちで持つのか、自分
を決め始めています。
たちのコアを見極めて、外に出すところを明確にでき、結果
矢坂氏:この作業は実は、各国の成熟度レベルがまちまちで
としてアウトソースがしやすくなるのではないかと思います。
大変。成熟している国は、確立されている手順を変えなけれ
また、用語の統一が図られ、ベンダとのやりとりも楽になる
ばならない、成熟度の低い国は、手順がほとんどないため、
はずです。さらには、責任範囲がはっきりし、日々の判断基
導入が大変。そのバランスが難しい。ITIL はそのような状況
準も明確になると考えられます。現状のアウトソースのレベ
での標準の「ものさし」となっています。
ルでは、アウトソース先であるパートナからの判断をファイ
ザーの社員に求められ、リソースを大きく食われることもし
インタビュア:CIT にて ITIL の活用が始まったのですね。そ
ばしばあります。ITIL 導入で責任分担が明確化し、そのよう
の背景についてもう少しお話をお聞かせ下さい。
な状況が減少するなど、可能性は大きいと期待しています。
矢坂氏:CIT のグローバルにて、世界的なスタンダードを策
定しようとする中、「基準となるものさし」として、2002 年
訪問者独り言:さすがグローバル企業と感じさせるインタ
11 月頃 ITIL を取り入れ始めました。グローバルで ITIL を導
ビューでした。ITIL 導入の前提条件となるマネジメントの
入することになったきっかけの一つが合併です。ご存知のよ
コミットメントが明確で、1 年以上にわたる取組みがなさ
うに、製薬業界はここ数年、合従連衡が激しい。合併の際に
れた現在でも方針にずれがないことに感心しました。it SMF
プロセスのスタンダードがあれば、情報システムの側面では、
Japan としても ITIL の理解を深めるご支援をしていければ
その合併による融合が促進されるのではないか、という意図
と思います。会員の皆様も ITIL を一つの「ものさし」と考
がありました。ITIL を導入することで、プロセスの標準化を
え、組織でじっくり展開していかれては如何でしょうか?
図れば、事業統合にも円滑に取り組めるようになるのではな
9
英国での BS15000 の認定ステップ
From SERVICEtalk
it SMF BS15000 に関する認定制度が 2003 年 7 月に開
要素の一つとして含まれていることが要求されます。した
始されました。この制度に関して様々な質問や興味あるコ
がって、すべてのプロセスには、品質を評価するための評
メントが寄せられています。ここでは、これまでに多く寄
価基準が定義され、測定されます。継続的なレビューや品
せられた質問に対して、簡単な説明を行います。より詳細
質を向上させるアクティビティは、必要不可欠な要素とな
な情報は、it SMF の認定制度に関する Web サイトをご参照
ります。
ください。
www.bs15000certification.com
ITIL と BS15000 との間には、どのような関連性があるの
か?
どのようにして BS15000 は実装されるのか ?
BS15000 は、ITIL に基づいています。また、BS15000
の要件は、現在 ITIL のベストプラクティスを使用している
BS15000 は、IT サービスマネジメントのプロセスに関
人にとっては、非常に理解しやすいものになるでしょう。
連する英国 規格 (British Standard) です。BS15000 の認定
ITIL で規定されている領域には、BS15000 で一層強調され
を申し込むことは、IT 組織の規模や場所に関係なく、一般
ているものもあります。たとえば、サービスレポート作成は、
に認められています。BS15000 の認定を取得したいと考え
BS15000 で独自の目標を定義しています。
ている組織は、BS15000 が定義しているプロセスに準拠し
たプロセスを実装している必要があります。
BS15000 は、あるコンサルタント組織に対して、ベス
トプラクティスとしての助言を与える能力の有無を認定
これらのすべてのプロセスが、BS15000 によって定義
しようとするものではありません。基本的には、ITIL が
されている最小限の機能を提供するように、その組織内に
Foundation や Practitioner、Manager と い っ た レ ベ ル で、
実装されている必要があります。個々のプロセスには目標
個人の IT サービスマネジメント能力を認定するのに対し
があり、プロセスを実装する組織にとって適切なレベルで、
て、BS15000 は、ある組織の IT サービスマネジメント能
この目標を実現することが必要です。
力を認定することを目的としています。
これらのプロセスを実装するためには、組織自身内のリ
ソースを利用することもできれば、BS15000 に準拠したプ
どのようにして認定を取得するのか ?
ロセスの実装経験のある、組織外の専門家を利用すること
もできます。
すべてのプロセスが確立され、組織に対して効果が表れ
BS15000 の認定を取得するためには、あるレベルの品
れば、BS15000 の認定の取得を目指すことができます。最
質と品質管理がすぐれたプロセスを確立するための重要な
初に完了させなければならないことは、認定の対象となる
サービスデリバリ・プロセス
セキュリティ管理
可用性 & サービス継続性管理
サービスレベル管理
サービスの報告
コントロール・プロセス
構成管理
キャパシティ管理
IT サービスの
予算管理&会計
変更管理
リリース・プロセス
リリース管理
解決のプロセス
インシデント管理
問題管理
10
リレーションシップ・プロセス
事業関係管理
サプライヤ管理
適用範囲と付託条項を明確に定義することです。すなわち、
外とするのか
認定の対象プロセスとして含まれるべき組織の範囲を明確
■改善計画の策定: 個々の組織が改善計画を策定する必
にします。たとえば、
IT 組織全体を対象とする場合もあれば、
要があります。一般的に、この改善計画はサービス改善
ある個々のデータセンターやアウトソースしている組織な
計画 / プログラム (SIP) と呼ばれます。この計画には、
どの単体の運用組織を対象とする場合もあります。いずれ
BS15000 監査の予定時期とともに、BS15000 準拠のプ
の場合も、BS15000 で規定しているすべてのプロセスを含
ロセスを実現するために必要となるすべての作業項目の
む必要があります。個別の単体プロセスや、全プロセスの
詳細を記述する必要があります
うちのいくつかのプロセス(たとえば、サービスデスクの
■改善計画の実装:改善計画が合意されたら、実際の運用
問題解決のプロセス)だけの認定を取得するというような
に適用される必要があります。改善計画には、通常の
選択肢はありません。最初の認定監査は、すべてのプロセ
チェック・ポイントが含まれます。チェック・ポイント
スをレビューし、評価します。
では、目標の達成状況を確認し、不十分な場合には、対
応策を検討し、実施する必要があります。また、改善計
正式な全体の認定取得を試みる前に、BS15000 プロセ
スに関して事前に社内や社外のレビューや評価を受けるこ
画には、BS15000 準拠のすべてのプロセスに対する社内
とをお勧めします。このようなレビューや評価は以下のよ
のレビューや評価を定期的に実施することも含まれます
うに実施することができます。
■外部によるレビューや評価:プロセスの成熟度を客観的
に評価するために、外部組織によるレビューや評価を実
■ BS15000 セルフアセスメント・ワークブックを利用して、
施することも、非常に有効な手段です。プロジェクトが
社内で実施する
数年に及ぶような長期の場合には、外部による評価も数
■ BS15000 評価サービスを提供する組織を利用し、社外
回実施することになる場合もあります
リソースにより実施する ( 註:これらの評価サービスを
■監査の準備:BS15000 の認定監査に十分な程度のプロセ
提供する組織は、it SMF Registered Certification Bodies
スが整備できた段階では、BS15000 の認定監査に対する
とは別の組織です。利益の衝突を回避するために、認定
準備が必要となります。ここでは、以下の項目を実施し
を行う組織は、認定取得のためのコンサルタント業務を
ます
行うことを禁止されています。)
−適用範囲と付託条項が適切であることの確認
− BS15000 監査コーディネーターの任命
その後に、BS15000 認定を取得するための監査の申請
−主要な人員や実際にプロセスを実行するスタッフの
書を、it SMF Registered Certification Bodies (RCBs) に提出
状況:準備状況、監査インタビューへの参加スケジ
します。RCB において、適用範囲と付託条項が確認され、
ュール、監査として期待されている内容の理解
認定のための監査が開始されます。認定監査としては、以
−プロセスに関するすべての文書の状況:最新版であ
下の作業が行われます。
り、必要なときに参照できるか
−監査官のための部屋や作業場所の確保
■日付や期間の定義
■監査契約:申請書を it SMF Registered Certification Bodies
■申請組織による BS15000 監査文書の収集
(RCBs) に提出します。監査官が契約の条項や条件を検討
■監査官による申請組織への訪問、主要なスタッフや実際
し、最適な RCB 組織が決定されます
にプロセスを実行するスタッフとのインタビュー
■監査:通常、監査はオンサイトで実施され、主要な人員
■監査官が収集した情報の分析やレビュー
や実際にプロセスを実行するスタッフとの数回に渡るイ
■監査官による BS15000 レポートの作成と提出
ンタビューが行われます。監査官は、すべてのサービス
■認定される場合には、BS15000 準拠組織としての認定書
マネジメントに関する文書やプロセス、ツールにアクセ
の発行
スできる必要があります
■監査が終了すると、すべての組織に対して、監査報告書
が提出されます。認定条件を満足した組織には itS MF ロ
どのようにして BS15000 監査の準備をすればよいのか ?
ゴの入った BS15000 認定書が渡されます
■認定条件を満足しなかった組織に対しては、認定に必要
BS15000 認定を取得したいと希望する組織は、まず活
動計画(アクションプラン)を作成する必要があります。
であるが、今回は不十分であった領域に関する詳細な報
主なマイルストーンは、以下の通りです。
告書が渡されます
■適用範囲と付託条項の定義 : 組織のどの領域を BS15000
監査の計画や準備に時間をかけた組織は、監査を通し
認定の対象として含ませるのか、また、どの領域は対象
ても得るものが多いはずです。監査に対して、申請組織の
11
関連する窓口は一本化することが望ましい形態です。この
■プロセスの成果物が、監査官がレビューするために利用
窓口にあたるコーディネーターが、組織間の調整役として、
できること
作業をします。このコーディネーターは、監査関連の作業
■監査官が利用するためやインタビューのための部屋や作
の調整に関する責任だけでなく、作業の計画や準備につい
業場所が確保されていること
ても責任ある立場であることが望ましい形態といえます。
■インタビューのスケジュールが合意されていること
監査のコーディネーターは、監査のための準備作業とし
■スケジュールにしたがって、すべての主要なプロセスの
て、以下のすべてのアクティビティが完了していることを
人員が参加できること
確認する必要があります。
■監査官がすべての IT サービスマネジメントシステムやデ
ータにアクセスできること。
■監査の適用範囲と付託条項が適切であること
■内部または外部のレビューや評価により明確化されたす
(著者: Ian Whyte it SMF Certification Committee
べての不足部分が、監査に先立って改善されていること
副議長
■すべてのプロセスの文書が、レビューに利用可能であり、
Bishops Beech Ltd.
監査官に提出されていること
SERVICEtalk 2004 年 10 月号より)
ITIL とビジネス・プロセス・リエンジニアリング
海外事例
こんにちは、バフ・スコットです。私は米国ミネソタ州
のウッドベリーにあるフォーティス社でビジネス・プロセ
ス・リエンジニアリング(以下 BPR)の仕事を担当してい
ます。
我が社は米国フォーティスのための共有サービスを提
供する組織部門で、従業員は約320名です。おおよそ
270名が IT スタッフで、ほかに人事管理、法務、財務要
員などがいます。我々はこの2年間 IT プロセスのリエンジ
ニアリングに取り組んできました。このたび it SMF Japan
から依頼を受け、ITIL の導入に関し、マイケルハマー博士
えば、ITIL プロセスを導入するために ITIL は以下の点を推
から教えを受けた BPR の概念をどのように使ったかについ
奨しています。
ての文章を書くことになりました。
マイケルハマー博士は BPR の創生者のひとりと考えら
1.プロジェクトマネージャを指名する
れています。事実、彼はこのトピックでたくさんの著作が
2.役割を文書化し明示する
あり、BPR をどのように実行するかについての研修課程も
開発しています。私と私のチームはこの研修課程に出席し、
「プロセス・マスタリ」の認定資格をとりました。
3.周知させるためのイベントを企画する
4.プロジェクトの範囲を定義する
5.成果物を定義する
ハマーのリエンジニアリングの概念は典型的にはビジネ
6.現状を理解する
スプロセスに適用されますが、我々はこれが IT プロセスに
7.新しいプロセスを計画し、設計する
もよくあてはまることを理解しました。
8.プロセスを導入する
ITIL の目標は BPR の目標に似ています。ITIL の目指す
9.導入後のレビューを実施する
ものは、ビジネス目標によりよい結果がもたらされるよう
プロセスを改善すること、全体コストの削減、品質とサー
ハマーの「プロセス・リエンジニアリングのためのプロ
ビスの改善などです。ITIL を記述した本は IT サービスを改
善するために「何」をするべきかについては役に立ちます。
しかし、
「どのように行うか」については書かれていません。
それぞれの企業は独自に手法を開発する必要があります。
この点こそハマーのリエンジニアリングの概念が役立った
セス」と上記は類似しています。
Mobilization ―プロセス・オーナの指名、プロセス定義の
文書化、プロセス・リエンジニアリング作業の範囲を定義、
成果物の定義と新プロセスの評価指標の定義、 周知イベン
ところです。
トの企画
ハマーの概念と ITIL には多くの類似点があります。例
12
Diagnosis ―現行プロセスの理解
我々はハマーのクラスからリエンジニアリングや ITIL
Redesign ―新しい設計の生成とテスト
プロセスを導入するときに役立つ有益な情報を得ることが
Transition ―情報交換の場をもうける、プロセスの最初の
出来ました。ハマーはプロセスを再設計する際に使うプロ
バージョンを導入する
セス・ガイドラインを提供してくれます。我々は ITIL プロ
セスを設計するにあたり、このガイドラインを大々的に活
フォーティス社では上記の4ステップを元に、次の9ス
用しました。以下にそのガイドラインを示します。
テップを作成することに決めました。
Mobilization ―ハマーと同じ、設計チームを指名し、ミー
1.お客様にも我々にも利益がある場合は作業をお客様に
テイングをセットする
行っていただく(例:空港でのセルフ・チェックイン)
Diagnosis ―現行プロセスの理解
2.我々にもお客様にも利益がある場合は作業をお客様か
Conceptual design ―新しい設計を記述する
ら我々に移し変える ( つまりは固定観念で判断せず、
Detailed design ―個別のステップを定義し、人間系、活用
どちらにより多くメリットがあるかで柔軟に対処すべ
技術、必要なツールを明確にする
きということである)
Build ―プロセスと人間系、活用技術、ツールを関連
3.お互いの影響や依存関係の量を最小化する
ずける
4.現行の段取り ( ステップ ) にこだわらず、全体を見渡し
Test ―テスト環境で新しいプロセスを実行してみる
て大胆に再構成、再編成する
Implement ―ユーザむけのトレーニングを実施、新しいプ
5.作業を迅速に進めるには素早い意思決定が望ましいが、
ロセスの展開(パイロット実施後前面展開)
柔軟なプロセスを設計するためには十分時間をかけて
Measurement ―効果をみるためにプロセスを測定評価する
意思決定するのが望ましい
Post-Implementation Review ―プロセスがうまく稼動して
6.中央集中型構造と分散型構造を組み合わせる
いるかどうか
7.作業は実行するのに最も適した場所で行うようにする
8.無用な干渉や繰り返しを避けるためタスクは統合し、
我々の手法は表のように ITIL に対応付けることが出来
圧縮する
ます。↓
9.多様な専門家を取りまとめていく役割を設ける
ITIL
フォーティス社の手法
目標をどこに設定するか?
現状はどこか?
目標の達成をどうやって知るか?
Mobilization
Diagnosis
Conceptual Design
Detailed Design
Build
Test
Implement
Measure
そのレベルで妥当かどうかをどうやって確
Post-Implementation Review
どのようにして目標を達成するのか?
認するか?
↓ ITIL もハマーも共に新しいプロセスを導入しようとする
10.状況に見合った適正な量の作業を実施する
時に直面するかもしれない問題について言及しています。
11.代替案の範囲を減らす。但し、単純化のため正確性
が犠牲になる場合がある
それらの問題とは
12.代替案の範囲を広げる
1.マネジメントのコミットメント、リソース、資金、外
注スタッフ、 期間の不足
我々は ITIL の考え方をベースに、ハマーのアイデアで補完
2.変化することへの抵抗
することにより、米国フォーテイス社の IT プロセスを設計・
3.過度に野心的な目標
再構築しています。
4.実現するには時間がかかりすぎる成果物と利益
皆様の ITIL 導入とプロセス・リエンジニアリングが成功さ
れることを切望します。
ハマーと ITIL は共にこれらの問題を克服する方法を提
示しています。ハマーは、成功するためにまず必要なのは
注: この記事の内容は筆者の見解であり、明示的にも暗
マネジメントのコミットメントだと言っています。ITIL も
示的にも it SMF の意図を表すものではありません。
正に同じことを言っています。二番目に重要なことは、組
織のカルチャをプロセス指向へ変えていくことです。ITIL
とハマーはこの点についても同じ考えです。
13
it SMF 国際役員会参加報告
2003 年 11 月 14・15 日の 2 日間の日程で、カ
ナダのモントリオールヒルトンホテルにて it SMF 国
際役員会が開かれました。私は富田理事長の急用の
ために代理で参加を致しました。世界から 15 カ国
の代表者参加があり、朝の 9 時から夕刻まで各国
の参加者の活発な議論が行われました。
国際役員会は英国の it SMF インターナショナル
の CEO であるの Aidan 氏を初めとした各国の幹部
が参集をし、現在年に一度の割合で国際役員会が開
かれています。
付けて行く方向で検討する、2007 年までには
今回のいくつもの重要課題が議論・報告をされ
ISO 化を目指しているとのことです
ました。詳しくは限られたスペースの中で書ききれ
ませんが主な議題・報告としては以下のようなもの
以上の議題以外にも議論があり、その中で
がありました。
ポルトガルやルーマニアでの it SMF 設立が承認さ
れました。今後の可能性としてはイタリア・ブラ
1.it SMF としての基本理念・基本活動規約。主な
ジル・シンガポール・中国・韓国など多くの支部
内容としてはビジョン・ミッションに始まり、
設立の話が来ているとのことです(各国の it SMF
組織体制や国際委員会の役割と活動内容・メン
に関する情報は、it SMF Japan の Web サイトを
バーシップの基本的な取り決めなど、今後のフ
ご覧下さい)。
ォーラムの基本的な骨子が議論され一部は承
全体としては、急速に組織がグローバルに
認、一部は担当を決めて議論を続けることで承
拡大・展開を始めたことにより、新しいルール作り
認をされました
や運用方法の確立そして活動資金の調達など、課
2.上記の議論の中で組織については特に多くの時
間が費やされ、国際執行役員会の組織化を決定、
委員長以外に4つの担当の役員が決定されまし
題は年々山積みとなっているようです。現状の問
題は、過渡的に組織の急拡大が起こった結果であ
ることも事実でしょう。国際役員会のその重要性
た。担当としては支部・会員、コミニケーショ
は今後ますます増していくのではないでしょうか。
ン、マーケティング、出版であります
以上誠に簡単ではありますが、国際役員会の出
3.資格制度については各国共に資格者数は伸び
席報告でした。
ており、いくつかの新しい言語での試験、日本
などが 2004 年度に計画をされています。米国
では独自の試験認証機関の立ち上げを検討中で、
英国英語ではない米語の認証試験を始めようと
it SMF Japan 副理事長
検討中であることが発表されました
西野 弘
4.BS15000 の組織認証についてはまだ英国でも
認証取得は出てきていないが、今後の活動目標
として ISO 化に向けて検討していく旨報告があ
り、最低 7 カ国以上の賛同と協力を今後取り
14
イベント
第 1 回セミナの開催
2003 年 11 月 21 日 ( 金 ) に第 1 回セミナを東京グリーンパレスにて開催いたしました。当日は定員 200 名を大きく上
回る方々に来場いただき、ITIL に対する関心の高さを改めて感じさせられました。来場された方々からは多数のご意見・ご
要望をいただております。これらご意見・ご要望は、次回のセミナーより反映させていきたいと考えておりますので、ご期
待ください。
セミナープログラム
13:00-13:15
13:15-14:05
主催者ご挨拶 基調講演: it SMF と ITIL
14:20-15:10
∼イティルとアイテル∼
ITIL とコールセンターのベンチマーク
15:10-16:00
it SMF Japan 富田理事長
NTT コミュニケーションズ(株)
大沢 彰氏
(株)プロシード
ツールを活用したサービス管理の実践
畑中 伸介 氏
第一生命情報システム ( 株 ) とITILの導入 中野 光孝 氏
資料は itSMF Japan の会員専用ページからダウンロードできます。
今後のイベントの予定
2004 年 2 月 第 2 回セミナ
2004 年7月 第 1 回 it SMF Japan コンファレンス
分科会
it SMF Japan は、2003 年 12 月に3つの分科会を立ち上げました。it SMF Japan 第1回カンファレンス (2004 年7月に
開催予定です ) において活動成果を報告する予定ですのでご期待ください。もし分科会の活動に関してご意見、ご要望がご
ざいましたら、it SMF Japan 出版担当宛てに ([email protected]) メールにてご連絡ください。よろしくお願いいた
分科会に参画されている会員の皆様 ( アイウエオ順 ):
事例研究分科会: 伊藤忠テクノサイエンス、FFC、NTT コミュニケーションズ、キーウェアソリューションズ、ク
リエイティブソリューション、サイクス、シーエーシー、新日鉄ソリューションズ、東芝ソリュー
ション、日本情報通信、日本電気、日本ヒューレット・パッカード、BMC ソフトウェア、富士通、
富士通エフ・アイ・ピー、富士通サポート&サービス、マイクロソフト
サービスデスク分科会: 伊藤忠テクノサイエンス、FFC、エム・プランニング、キーウェアソリューションズ、クリエイ
ティブソリューション、コーポレイトソフトウェア、CSK、トランスコスモス、BMC ソフトウェ
ア、富士通エフ・アイ・ピー、富士通中部システムズ、プロシード
セキュリティ分科会: アドバンテスト情報システム、アマシャムバイオサイエンス、伊藤忠テクノサイエンス、NTT
コミュニケーションズ、キーウェアソリューションズ、クリエイティブソリューション、コン
ピュータ・アソシエイツ、情報セキュリティ研究所、新日鉄ソリューションズ、セブン・ワイ
ズ、東芝ソリューション、日本ヒューレット・パッカード、日立電子サービス、船井総合研究所、
プロシード
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書籍
サービスサポート日本語版販売開始のご案内
このたび、it SMF Japan ではサービスサポート (Service Support) の日本語版の販売を 12 月 22 日より開始いたしました。
サービスサポートは、IT サービスマネジメントのベストプラクティスである ITIL(IT Infrastructure Library) の中核的な位置
づけにある書籍です。発行部数が限られておりますので、購入を予定されている方はお早めに it SMF Japan 事務局にお申し
込みください。
サービスサポート
ベスト プラクティス
サービスデリバリ
n サービスデスク
サービスサポート
サービスデリバリ
ベスト プラクティス
n サービスレベル管理
n インシデント管理
nIT サービス財務管理
n 問題管理
n キャパシティ管理
n 構成管理
nIT サービス継続性管理
n 変更管理
n 可用性管理
n リリース管理
(2004 年 2 月販売開始予定)
IT サービスマネジメント(ポケットガイド)
: 主な修正点のお知らせ
ポケットガイド 2.1.a から 2.1.b への改版にともなう主要な変更点は以下のとおりです。バージョン
はページ1P 上、書籍タイトルの下に記述してありますので、ご確認下さい。
2.1.a での場所
p2、l4
2.1.a での記述
2.1.b での記述
IT サービスマネジメントにおけるベストプ IT サービスマネジメントのベストプラクテ
ラクティスを、分野ごとに詳細に記述して ィスの章で詳細に述べている IT インフラス
いる IT インフラストラクチャ・ライブラ
トラクチャ・ライブラリ(IT Infrastructure
リ(IT Infrastructure Library:ITIL)一式
Library:ITIL)一式を補完する出版物です。
p11、箇条書き 5 つ目
を補完する出版物です。
ユーザの保持とユーザ満足を助成
ユーザの維持と満足に努めること
p12、l4
p12、図 5、下箱中、3 箇所
設置
設定
外部のサービス・サポート、コンタクト・ 外部のサービスサポート、契約サポート、内
p17、下から l4
p21、図 9 タイトル
p32、図 13、真ん中、変更マ
サポート、社内のサービス・サポート
対比
適合プロセス
切り戻し計画の実装
部のサービスサポート
照合
照会プロセス
切り戻し計画の実施
ネージャの箱中
p47、真ん中箇条書き 3 つ目
p53、図 20、箱上
p53、図 20、インプット箱中
p59、上級マネジメント内
p59、中間マネジメント内
p70、タイトル
資金の説明
インプット、アウトプット
適用スケジュール
IT サービス継続の管理
IT サービス継続分析
ガイダンス
資金の計上
入力、出力
運用スケジュール
IT サービス継続性の管理
IT サービス継続性分析
情報
16
編集後記
季刊誌として 3 ヶ月毎に発行してまいります本ニュースレターは、it SMF Japan の活動を会員の皆様にご理解していた
だくだけでなく、国内外の企業における ITIL の導入、運用経験等を含む ITIL 関連情報を会員の皆様相互に共有していただ
くための媒体としての役割も担っております。この度、2 社の会員企業を訪問する機会がありました。立ち上げ間もない
団体にも関わらず、先進的かつ先導的な会員の方々にご賛同いただいていることを実感いたしました。「創刊によせて」で
Aidan 氏が述べているように、委員会業務・記事の執筆等の活動に会員の皆様が積極的に参画することで始めて大きな成
果が得られます。今後のニュースレター編集活動に会員の皆様が参画くださいますことをお願い申し上げます。 ( 八木 )
■ご意見: 本ニュースレターへのご意見・ご要望は、it SMF Japan 版担当宛てにメール
にてお送りください。
メールアドレス:[email protected]
■寄稿: IT サービスマネジメント導入、運営に経験を他の会員の皆様とシェアしてい
ただける方を募集しております。ご協力いただける方は、it SMF Japan 出版担当宛てに
メールにてご連絡ください。
メールアドレス:[email protected]
■広告: 本ニュースレターは皆様の広告料で制作されています。広告掲載に興味をお持
ちの方は it SMF Japan 事務局にご連絡ください。
■ it SMF Japan ニュースレター No.1
2004 年 1 月号 発行月: 1 月、4 月、7 月、10 月
編集人: 水野 康彦(it SMF Japan 出版担当理事) 編集取りまとめ: 八木 隆 ( 日立製作所 ) 編集に協力いただいた方々(敬称略、アイウエオ順): 笠間 芳治 ( ニフティ )、河内 賢一(日本アイ・ビー・エム)、鬼頭 公博 ( ファイザー )、
工藤 秀夫(日本アイ・ビー・エム)、倉谷 俊一(日本アイ・ビー・エム)、小塩 理恵子
(日本アイ・ビー・エム)、小山 條二 ( 富士通 )、品田 京子(日本アイ・ビー・エム)
、
島田 洋之 ( 東京海上コンピュータサービス )、永田 誠(日本アイ・ビー・エム)
、
萩野 美穂 ( 日立製作所 )、Marcilla Rahim( 日本アイ・ビー・エム )、宮本 良麿(日本アイ・
ビー・エム)
、矢坂 徹 ( ファイザー )
■発行所:it SMF Japan
東京都港区六本木 6 丁目 10 番 1 号六本木ヒルズ森タワー 34 階私書箱 30 号
電話 (03)5786-7525 Fax (03)5786-7523
URL: www.itsmf-japan.org
■ ITIL® は英国政府機関の OGC(Office of Government Commerce) の英国およびその他 の国における商標または登録商標です。
■その他記載の会社名、製品名は、それぞれの会社の商標もしくは登録商標です。
■本誌掲載記事の無断転載を禁じます。
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