49号 - 海王丸パーク

決せねばならぬ相互の年令。そこで当人
との会話を再検討してみますとこんな結
末になる要素が既に含まれ、加えて更に
新たな疑問が浮かんできました。第一は
旧海軍への不信。次に、あくまでも想定
ですが、救助の時の手際の模様です。
その時の当人との会話を列挙しますと 、
最初は学校時代の想い出話。次は、度重
なる名古屋への猛爆撃にもほとんどのク
ラスメートが健在との事。それから互い
の現況を紹介。開口一番、夫妻は目下、
日本では伝来の古いイエズス会のクリス
チャンだと話す。入信以来、ただの一度
も日曜礼拝を欠かしたことが無いと自慢。
何事にも中途半端な私と対照の凝り性。
確か彼の母親は鳥羽の海で育ったとか。
そ れ で 早 く か ら ﹁ 俺 は 海 で 生 き る 。﹂ と
公言する快男児だったが、戦後のダメー
ジ に 加 え 、続 く ピ ン チ や ス ラ ン プ に 負 け 、
心の支えを教会の門に求めたという。そ
して﹁神から授かったのがこの妻﹂と紹
介。
﹁間に一女をもうけた﹂と話す。
﹁時におまえは高浜海員から予科練へ行
っ た そ う だ が 本 当 か 。﹂ と 来 る 。﹁ 知 っ て
る筈だが﹂と前置き学校在学中の当時を
話し、音沙汰無しが﹁船会社への出頭間
際 に 入 隊 が 来 た 。﹂と弁明。彼は続けて、
﹁俺は、あれからすぐに乗船。立て続け
に2度もボカ沈を喰らった。1度目は南
シナ海。おそらく最後の頃のシンガポー
ル帰り。その時に一緒にいたボーイ長、
仲間が沈み始めたデッキにやっと出たの
に ま た 居 室 へ 戻 ろ う と す る 。﹁ も う 危 な
い 。 や め ろ 。﹂ と 止 め た の に 、 当 時 は 初
航海の貴重な土産品の白砂糖を取りに行
ったんや。袖まで引いたのに。それが最
後。水に溶けるのに、それとも漂流中は
甘味が必要と考えたのかなあ。2度目は
日本海。忘れもしない、1週間程前にア
メリカ潜水艦が朝鮮海峡から入ったとの
知らせが来てたが、今の北朝鮮の清津港
で 満 州 か ら 日 本 へ の 逆 輸 送 、火砲 、弾薬 、
爆弾から大豆と高りやんなどを積み荷中 、
見慣れぬ形の飛行機が飛び始めて周辺を
爆撃している。それでソ連の参戦を知っ
たわけだ。それでも出港して船団で内地
へ向かう。これからがである、たった2
隻しかない護衛の駆逐艦が速力の遅い我
々を残して、司令部の通達とかで発光信
号を出し、どんどん先に揃って帰国して
いく。つまり﹁各個に最善を尽くして帰
国 せ よ 。﹂ と の 事 。 体 の 良 い 投 げ 出 し で
ある。本当に艦影が見えなくなって間も
なく、待ってましたとばかり敵潜水艦か
らの魚雷攻撃。大きなドカンが来た。爆
薬を積んでいるのでひとたまりも無い。
夢中で通気口をよじ登り外へ。救命艇に
たどり着いたがそれからが大変。飲まず
食 わ ず の 何 日 も 何 日 も の 漂 流 。夜 は 寒 く 、
昼はカンカン照り。次に気付いた時は白
人のいる潜水艦の内部。てっきりロシア
かと思ったらアメリカだった。つまり俺
は船員さん捕虜となったわけだが軍人で
は 無 い よ な あ 。 判 る だ ろ う 。﹂ と 何 度 も
念を押す。なかば自嘲の口振りである。
私共は昔、小国民と言われ、異人への準
備期間としての各種学校教育中に畳み込
まれた戦陣訓﹁生きて虜囚の辱めを受け
ず﹂の死ねとの掟を、身をもって体験し
たのです。そして﹁その時ここに深い穴
傷 を 負 っ た 。﹂ と 、 側 頭 部 の 後 ろ を 私 に
確かめさせるようにして向け、上皮のみ
覆った傷口に指先をへこませて見せたの
のです 。そ の 時 オ ヤ ッ と 思 っ た と 同 時 に 、
﹁もしや救助の際に担ぎ竿で掛けられた
の で は 。﹂ と 密 か に 感 じ た の で す 。 本 人
では﹁意 識 回 復 の 前 の で き ご と ﹂と い う 。
一方的ながら、交戦中の潜水艦を想定す
ると短時間の浮上作業。生存者は手荒な
生死判別の上で狭い艦内通路に収容され
たものと考えられ、手当以外は満足すべ
き状況では無かったと推測されます。そ
の仮定で考えると老艦長の懸念と結び付
く訳です。
そもそも事の始まりは海軍の処置 。﹁今
時、何、肩書き付きの海軍将校の作家﹂
といった考えが彼の胸中を去来したので
しょう。その当人が別のクラスメートに
そ の 後 漏 ら し た と い う 話 で は 、﹁ 収 容 中
に敗戦の日︵8月 日︶も過ぎ、アメリ
カ潜水艦から朝鮮へ俺達は陸揚げされ
た 。﹂ と も 語 っ た そ う で す 。 彼 の 信 仰 は
過去の罪を暖かく許し合うことを説く筈
です。彼は彼なりに最大公約の苦い想い
出 と 共 に 相 殺 。﹁ も う 済 ん だ こ と は 忘 れ
た い 。﹂ と 最 後 に 付 け 加 え た 事 を 思 い 起
こすと同時に、軽薄に自らブラックホー
ルに吸い込まれた自分の愚かさを呪う。
最近になって、別の掃海隊にいたクラス
メ ー ト か ら 、﹁ 名 古 屋 開 港 年 祭 で 新 日
本丸と新海王丸の両船が来た。その海王
丸を背にした写真と交換に、一昨年のシ
ア ト ル 遠 航 中 の 姿 を 送 れ 。﹂ と 言 う 。 面
映い気持ちと共に古希を迎え、彼にこの
わだかまりを解く糸口になってもらえる
よう淡い期待を待つ昨今なのです。
MARU
KAIWO
チョッサーの豆知識
﹃織り姫と彦星﹄
梅雨に入り、毎日うっとうしい天候が
続きますが、7月7日はご存じのとおり
七夕です。県内でもたくさんの七夕祭り
が予定されています。この日は、妻に恋
する彦星が、一年に一度船を飾り立てて
天の川を渡り、恋心を晴らそうとする日
として語りつがれています。七夕伝説は
二千年前、中国に始まり、日本に伝来し
たのは、奈良時代と言われています。
今回は、ロマンチックな伝説の主役で
ある﹁織り姫﹂と﹁彦星﹂についてお話
しします。
織り姫は、こと座の一等星﹁ベガ﹂で
あり、彦星はわし座の一等星﹁アルタイ
ル﹂という星です。これらの星座は夏を
代表する星座であり、この時期では、夜
7時頃にほぼ真東から姿を現し、 時頃
に南中します。また、近くにあるはくち
ょ う 座 の﹁デ ネ ブ ﹂という星が加わると 、
大 き な 二 等 辺 三 角 形 が で き 、﹁ 夏 の 大 三
角形﹂として夜空を飾ります。
これらの星は恒星であり、太陽のよう
に自ら光りを出している星です。大洋航
海中、船位を求めるための天測にもよく
使 わ れ る 星 で す 。︵裏に続く︶
12
ウエルデッキの甲羅干し
﹃戦中派のその後のしこり﹄
404 辻田 豊
戦後もだいぶ過ぎたある朝、購読中の
新聞の一画に﹁少しでも心当たりの人は
ぜ ひ 一 報 を 下 さ い 。﹂ と あ る 。 そ れ は 元
海軍兵学校出身の作家の一人がかつての
敵味方の日米ネービークラブの席上、高
齢である元アメリカ潜水艦長からの言伝 、
﹁神に召される前に是非逢ってみたい 。﹂
そ れ は 、﹁ 昭 和 年 、 日 本 海 の 松 江 北 方
を漂流中のライフボートに瀕死の4人の
日本人船員を救助した。中に1人、頭に
深い傷を負った少年もいたが、皆、今も
健在だろうか 。﹂と語ったという。
実は私にその当時の少年に心当たりが
あったのです。それは、同窓生でしかも
同じ高浜海員養成所出身の機関員のこと 。
連絡しようにも転居先を知らない。よく
よく考えて、本人の状況と因果を含めニ
ュースソースのみ提供という形にしても
らい、万事よろしく裁量を委せて、その
当人と私に共通の近在の知人を紹介し、
ここから新住所を聞き出し、手繰ってみ
ることをアドバイスした。まもなくその
作家から連絡があり、紹介された知人の
応 答 は 、﹁ ひ ど い ガ セ ネ タ 。 そ ん な 話 は
聞 い た こ と も な く 信 用 で き な い 。﹂ と 一
蹴されたと怒っているのである。おそら
く紋切り型の切り出しへの反発であろう 。
心配したとおりになってしまった。その
ことを悔いながらも、仕方なく再び戦後
初めて当人との再会。時の会話をこと細
かに順を追って説明し、当人はたとえ短
期とはいえ捕虜の体験を内密にしてる事
と仲立として紹介した知人は生真面目一
本の右翼の国士。それだけに誠意で当た
れば理解を得られるはずを説明。その後
日成果を作家に問い合わせたところ、押
しても無駄。もちろん当人からも連絡な
し 。﹁ 健 在 ら し い レ ポ ー ト が あ っ た 程 度
とする﹂とのことで済みました。
ところがそれを動機に私のもとに﹁戦
後初のクラス会を開くから出席するよう
に﹂と、当人とその知人との連名で案内
状が来たのである。これは間違いなく吊
し上げを喰う。早速欠席通知を出す。と
にかく今は時間が必要。藪を突っついて
蛇を出したのである。どうせいつかは解
舵輪
20
15
90
ベガの大きさは、太陽の約3倍、地球
からの距離は 光年です。一方、アルタ
イルの大きさは、太陽の約2倍、 光年
の距離にあります。したがって、我々が
見ている星の光は、 年前あるいは、
年前の光となります。それでは、ベガと
アルタイルの距離はどれくらいあるので
しょうか 。実は 、 光年という距離です 。
彦星が織り姫に会うためには、光の速度
で 年かかるということです。こんな科
学的はデータを紹介すると何やら興ざめ
しますが、地球が丸いとも分からない時
代に星空をながめてできたロマン伝説は
今も受け継がれています。
皆さんも七夕の日には、願いを込めて
夜空を見上げられたでしょうか。
お知らせ
﹃リスボン国際博覧会﹄について
28
16
テ ー マ ﹁海洋︲未来への遺産﹂
︵サブテーマ︶
①海に対する知識、海洋資源
②海洋と地球の均衡
③海洋とレジャー
④芸術的インスピレーション
の源としての海
開 催 地 ポルトガル共和国リスボン市
開催期間 1998年9月 日まで
開場時間 朝9時∼深夜3時
日本の主な協力内容
日本館出展
ボートショウ参加
︵航海訓練所練習船﹁青雲丸﹂
︶
︵海上保安庁巡視船﹁こじま ﹂
︶
財団からのお知らせ
日イルミネーションを行っております。
皆様お誘い合わせのうえ、ご来船くださ
い。
④写真コンテストの募集
あなたの撮った作品が海王丸カレンダ
ーになります 。ど ん ど ん ご 応 募 く だ さ い 。
記
◆応募作品
海王丸パーク及び帆船海王
丸を撮影した写真
◆サ イ ズ
四切り以上のカラープリン
ト︵横位置を原則︶
◆締 切 り
平 成 年 月 日︵月︶
当日消印有効
◆問い合わせ及び応募先
〒934︲0023
新湊市海王町 番地
帆船海王丸記念財団
もしくは
富山県カメラ商組合加盟店
◆応募上の注意
・一人何点でも応募できますが、賞は
一人一賞とします。
・応募資格は問いませんが、未発表の
ものに限ります。
・入賞作品の版権は主催者側に属しま
す。
・入賞作品は、ネガを提出していただ
きます。
◆締 切 り
◆募集区分
◆サ イ ズ
◆画
材
記
◆応募作品
帆船海王丸を題材とした絵
画で、7月 日 ︵ 祝 ︶ か ら
8月 日︵月︶までの期間
に描かれた作品
画用紙四切り
クレヨンまたは水彩絵具
⑤絵画コンクールの募集
帆船海王丸の絵画制作を通じて、海と
親しみ、触れ合う機会を提供し、青少年
の海・港・船に関する理解と知識の増進
を図るために行われます。
8
②海王丸フェスティバルについて
7 月 日 ︵ 日 ︶、 日 ︵ 祝 ︶ の 両 日 海
王丸パークにて開催されます。主なイベ
ントは次のとおりです。
7 月 日︵日︶
◆海王丸縦帆ミニ展帆体験
◆オープニングセレモニー
◆各種ボートに体験乗船
◆小型ボート﹁なご﹂による海王丸
一周クルーズ
◆ウェークボードによる﹁海の日﹂
記念、第3回海王丸カップ
◆海王丸乗船記念プレゼント
︵先着
名様︶
◆吹奏楽演奏
◆海王丸船上ミニ運動会
◆星獣戦隊ギンガマンショー
◆ 海 の 日 記 念 ○×クイズ
◆海王丸ロープワーク教室
◆海王丸バウスプリット登り体験
◆小型ボート、ジェットスキー、ウ
ェークボードの展示
◆海王丸イルミネーション
◆海上打ち上げ花火
︵ 日 没 か ら 分程度︶
月 日︵祝︶
◆オープニングセレモニー
◆消防艇﹁やまと﹂及び巡視艇﹁た
ちかぜ﹂の船内一般公開
◆各種ボートに体験乗船
◆ウェークボード等のデモンストレ
ーション
◆海上保安庁のヘリコプターによる
海上展示訓練
◆海洋少年団による手旗信号の模範
演技
◆海王丸乗船記念プレゼント
︵先着
名様︶
◆小型ボート、ジェットスキー、ウ
ェークボードの展示
◆海の日記念 ○×クイズ
◆海王丸イルミネーション
10
8
19
③夜間公開の案内
月 日から 月 日までの間、夜
時まで公開時間を延長します。ただし、
夕方 時から夜 時までは最上甲板のみ
の公開となります。また、同期間中は連
①小学生低学年の部
②小学生高学年の部
③中学生の部
平 成 年9月 日 ︵ 水 ︶
当日必着
◆作品展示 全作品を平成 年 月4日
∼ 月3日の間、海王丸パ
ーク内の緑のパーゴラ中央
休憩室に展示する。
◆問い合わせ及び応募先
〒934︲0023
新湊市海王町 番 地
帆船海王丸記念財団
◆応募上の注意
・一人一点とし、未発表のものに限り
ます。
・応募票を作品の裏側に貼付してくだ
さい。
・入賞作品の版権及び著作権は主催者
側に属します。
・入賞作品は、原則として返還いたし
ません。
展帆データ
10
10
◆5/ ◇ 晴 ◇ 名 ◇ ポ ー ト タ ッ ク ・ 3
ポイントヤード◇海洋講座︵税 関 の 話 ︶
◆月日◇天候◇参加者◇その他
8
◆6/ ◇曇◇ 名◇スターボードタッ
ク・スクエアヤード◇海洋講座︵キャ
ンバスと海︶◇全国高校生クイズ北陸
地区大会
あとがき
前回の展帆では、高校生クイズの関係
で朝早くから夕方遅くまで、本当にご苦
労さまでした。また、クイズの方も多数
の方々に参加していただき、盛り上げ役
としても十分に海王丸ボランティアの存
在をアピールすることができました。あ
りがとうございました。
今年は梅雨らしい鉛色の空が続いて、
太陽の光が恋しい今日この頃です。それ
でも何とか中止にならず展帆できるのは 、
新しく加わった仲間のお力でしょうか。
次回の展帆は、3回目の紺青賞表彰式で
す。いつも海王丸のために、また海王丸
パークを訪れる方々のためにご協力を頂
いている皆様にとりましても是非晴れ舞
台となりますよう祈っております。
ITTY
MARU
KAIWO
11
78
84
31
21
28
なお、詳細についてお知りになりたい
方は市川までご連絡ください。
30
20
16
31
16
15
8
20
5
0
0
5
0
0
9
30
19
20
19
16
①紺青賞表彰式について
7 月 日︵祝︶ 時 分からシェルス
テージにて行います。
今年度の受賞者は次の方々です。
︵敬称略︶
水 野 博之
品田 聖 三
20
31
10
7
7
16
11
︵新潟市︶
︵高岡市︶
以上 2名
6
舵輪
16
9