嚥下機能評価と摂食指導への取り組み −NSTによるチームアプローチ−

嚥下機能評価と摂食指導への取り組み
−NST によるチームアプローチ−
介護老人保健施設 ほのぼの苑
リハビリテーション科 奥山香里
はじめに
当苑では平成17年2月にNST(Nutrition
support team:栄養サポートチーム)を立ち
上げ、経口摂取を目的としたチームアプ
ローチを開始した。今回、その活動内容
と成果について報告する。
目次
1.当苑のNST活動概要
2.嚥下造影検査(VF)について
3.症例紹介(2例)
4.嚥下造影検査の実績と結果
5.おわりに
当苑のNST 活動概要
【メンバー構成】
医師
1名
看護師
2名
介護職員
3名
管理栄養士 1名
歯科衛生士 1名
薬剤師
1名
言語聴覚士 1名
【活動状況】
月1回ミーティングを
開催
【経口摂取の流れ】
評価(スクリーニング検査、
フードテスト)
NSTミーティング
嚥下造影検査(VF)
摂食訓練・指導
おやつ/食事摂取
再
検
討
摂食・嚥下
フードテスト
スクリーニング検査
【評価項目】
・意識障害の有無
・認知機能
・呼吸および発声機能
・口腔機能
・嚥下機能(改訂水飲み
テストを実施)
【検査方法】
・ティースプーン1杯程度の
ゼリーを摂食させる
【評価項目】
・食べ物に対する反応
・むせの有無
・呼吸状態の変化
NSTミーティング検討内容と
メンバーの役割
<検討内容>
1・経口摂取
・経管栄養者・嚥下障害者のスクリーニング検査および
フードテスト結果報告(ST)
・VF対象者の決定・検査実施計画立案(医師)
・経口摂取移行者についての再検討(看護・介護)
2.栄養管理 (管理栄養士)
・栄養アセスメント報告と低栄養者への対応検討
3.その他
・口腔ケア(歯科衛生士)
・薬剤の工夫(薬剤師)
・食欲不振者への対応検討(看護・介護)
情報交換・確認
⇒ 今後の方針を決定
嚥下造影検査(VF)
月1回、南秋田整形外科にて実施
実施人数は月1∼2名
【検査目的】
・口腔、咽頭、食道の動き、構造の異常
食塊の動きを評価する
【実施方法】
・造影剤を加えた模擬食品を、食品形態や摂取量を
変え段階的に摂食させる
模擬食品による評価
栄養科に依頼し検査当日までに作成。
食事形態
模擬食品
ゼリー食
嚥下ゼラチンゼリー
きざみ食
寒天ゼリー
とろみ食
嚥下ヨーグルト
常食
嚥下クッキー
水分
40%希釈バリウム水
嚥下ゼラチンゼリー
寒天ゼリー
症例1(77歳、女性)
【診断名】 脳梗塞後遺症、 RA、ASO
【入苑 】 平成17年5月
【入苑時所見】 介護度4 ADL:全介助 経鼻経管栄養
MT自己抜去防止のためミトン手袋使用
本人より「何か食べたい」との訴えあり。
【摂食・嚥下スクリーニング検査結果】
・舌下神経麻痺による舌の運動障害およびRAによる開口障害
・水飲みテスト 1∼3cc 異常なし
【フードテスト結果】
・摂取意欲高く、むせなし。しかし、摂取後口腔内残渣あり。
症例1 VF所見
症例1 VF後の経過
【VF所見】
#1.水分の嚥下は可能だが、摂取量に注意が必要。
#2.ゼリー摂取可能。
#3.きざみ寒天では口腔および咽頭に残留が見られるが、
空嚥下で除去可能で摂取可能。
⇒全粥、きざみ食、水分(とろみなし)での食事摂取可能と判断
【結果】
・VF後、NGチューブ抜去し3食経口摂取開始となる。
症例2 (87歳、男性)
【診断名】 多発性脳梗塞、貧血、慢性腎不全、肺気腫
【入苑 】 平成17年5月
【入苑時所見】 介護度5 ADL全介助 PETGによる経管栄養
PTEGの自己抜去があり、ミトン手袋使用。
家族より「何か食べさせたい」との希望あり。
【摂食・嚥下スクリーニング結果】
・舌、口唇、下顎の運動制限および口腔内乾燥
・認知症による反応の鈍さ、従命の不十分さ
【フードテスト】
・摂取意欲低下。
・むせはないが、口腔内残渣も多く複数回嚥下が見られた。
症例2 VF所見
症例2 VF後の経過
【VF所見】
#1.口腔の運動がほとんどなく、口腔内に残留する
#2.意識的に嚥下するのではなく反射的に嚥下している
#3.嚥下反射が不十分で咽頭残留が著明
⇒誤嚥の可能性が高く、経口摂取不可と判断
【結果】
・ゼリー摂取中止となる。
・検査に立ち会った家族に医師が説明し、経口摂取の危険性
について納得を得られた。
VF実績
期間
平成17年2月∼同年10月
実施人数 15名(男性 7名、女性 8名)
対象者の内訳
嚥下障害の原因
栄養方法
経管栄養
一部経口摂取
完全経口摂取
人数
7
4
4
食事意欲
2名
4名
嚥下機能と
認知の重複
障害
9名
嚥下機能低下
VF後の経過
経口摂取移行
6名
経過観察
6名
中止/変更
3名
嚥下機能低下
4
4
1
嚥下機能低下
+認知障害
食事意欲
0
2
2
2
0
0
おわりに
平成17年10月より「栄養マネジメント加算」
「経口移行加算」が追加され、経口摂取への取
り組みは老健施設の役割として社会的に位置
づけられた⇒老健施設におけるNST活動は
必須
NSTの活動を苑内全体の活動として各職種
の職員一人一人が果たすべき役割を自覚し
活動していく事が必要