オフィスビルにおける節電の考え方 ㈱三菱地所設計 高瀬知章 1 オフィスビルにおける節電の考え方 夏のピーク電力は冷房需要が押し上げる → 業務部門(オフィスビル・商業ビル)の節電努力が重要 省エネ・節電は、効果の大きいものから実施 ■ 節電努力の効果が大きい項目 年間の電力消費 内訳 ①空調機の節電(運用改善、温度緩和・・・) ②照明の照度低減(照度低減、間引き・・・ ) ③OA機器の節電(こまめなOFF等) 省エネルギーセンター「オフィス ビルの省エネルギー」より 具体的には公表されている 節電メニューの活用など 夏のピーク時の 電力消費内訳 平均的なオフィスビルにおける 用途別電力消費比率 (出展:資源エネルギー庁推計) 2 節電はユーザーとオーナー一体の取り組みが不可欠 ■ 建物オーナー、建物管理者 • 設備システムが本来の性能で運転されているか。 • 建物・設備の実態把握がされているか。エネルギー消費の“見える化” で目標に沿った管理の実施。 • ビルスペックの見直し。 即効性のある対策の実施 ■ 建物ユーザー(オフィスワーカー) ・必要以上の室内環境を要求していないか。 ( 照度、温湿度設定、設定幅) ・不要な空調、換気、照明、OA機器電力を消費していないか。 個人レベルの意識改革 3 運用改善による節電余地は大きい 運用改善で節電効果が大きいと考えられる項目の例 コイル・チューブ清掃、フィルター清掃 ビルマル運転時の消費電力 (シミュレーション) ビルマルチのデマンド制御・・・・標準で備 わっているが、利用されていない場合が多い サーバールーム風量の見直し・・・・許容温 湿度、室内気流調整で風量削減可能性大 ビルマルとセントラル空調機の併用運転 の改善・・・・ビルマルで所定の温度を保とう し、空調機の能力が発揮できなくなるばかり か、エネルギーの損失となる。設定温度管理 が大切 ※ 2008 ASHRAE Environmental Guidelines for Datacom Equipment,ASHRAE,2008 年 データセンターの標準温湿度条件の例 (ASHRAE(米国暖房冷凍空調学会 )2004・ ・2008) ASHRAE(米国暖房冷凍空調学会)2004 2008) ノーメンテナンスの場合における ビルマルの消費電力増加の例 「冷房運転時の室外機熱交換器の薬品 洗浄効果」 設備と管理、2006年 4 オフィスの照度は750Lxが標準だが・・ これまでは、事務室内の照明は明るいほど質が高いオフィスとされて きた。パソコン中心の業務に変化した現在においては、均一な高照度 は不要であるばかりか、かえって快適性を阻害する可能性もある 丸の内の実験オフィス調査 では、350~450Lxが最も好 まれる照度 <照度削減の試算> 照度が低いと自然光の寄与 率が高くなり、大幅な省エ ネが実現できる。 照度を300lx程度とすると、 60~80%の節電効果。 照度設定と昼光利用による照明電力消費量削減率の試算例 (晴天時、東側) 5 これまで省エネが進まなかった理由は? ■ 情報不足 ・省エネルギー対策の情報や技術がない。 ・建物実態が把握できない。データがない。必要なグラフ表示ができない。 ・他の建物との比較ができない。 ■ クレームの恐れ ・設備の運転方法や設定を変更すると、これまでなかったクレームが発生 する恐れがある。 ・課金制度によっては、サービスの低下と思われる。 ■ 組織的な問題 ・ユーザーとオーナー間の思惑の不一致(省エネメリットの重み)などで、取 り組みが進まない。 ・建物利用者や関係者の理解・協力が得られにくい。 ・手続きが大変。 6 節電に向け、障害を乗り越えて実行へ ■ 節電対策の情報 ・発行・公開されている情報の活用 空気調和・衛生工学会「業務用建築における節電メニューと留意点」 省エネルギーセンター「オフィスビルの省エネルギー」 日本ビルヂング協会「電力需給緊急対策への対応」 ・・・・ ・専門家のコンサル 省エネルギーセンターの省エネルギー診断・・・・ ■ クレーム・不具合の防止 ・照度、温熱環境等の変更による効果を説明し、問題が起これば迅速に 応する。 ■ 組織的な問題 ・実態調査により、現状把握・分析の上、施設利用者に正確に対策内容を 説明し、周知してもらう。 ・効果について、定期的に報告する。 今回の夏季ピーク電力節電は、kWhベースではなくkWベース。リ アルタイムの需給ギャップの情報により、追加的な節電対策の実行が 求められる可能性がある。事前に緊急対応マニュアルの整備が必要。 7
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