組合せの公式(ちょいむず) 松浦將國 2014 年 12 月 24 日 組合せの公式は挙げればきりがないが,筆者の経験でよく見かける少し難しめのものを いくつか紹介しておく. n C0 + n C1 + n C2 + · · · + n Cn = 2n (1) ここに,n は負でない整数.n = 0 のときは明らかだから n ≧ 1 のときを考えれば良い.1 月頃に学習する予定の二項定理でも証明できるが,下記のような文章題に落とし込んでも 証明できる:1 番から n 番の箱にたかだか n 個の同型の玉を分ける場合の数 (· · · ⃝ A ) を考 える.ただし,一つの箱に入れる玉の個数は 0 か 1 とする.このとき,玉の分け方は全部 で 2n 通り. ⃝ 0 箱に入れる玉の総数が 0 個のとき,玉を n 個の箱に分配する方法は n C0 通り. ⃝ 1 箱に入れる玉の総数が 1 個のとき,玉を n 個の箱に分配する方法は n C1 通り. ⃝ 2 箱に入れる玉の総数が 2 個のとき,玉を n 個の箱に分配する方法は n C2 通り. .. . ⃝ n 箱に入れる玉の総数が n 個のとき,玉を n 個の箱に分配する方法は n Cn 通り. ⃝ 0,⃝ 1,⃝ 2 , ··· ,⃝ n はどの異なる二つも両立しない事象だから,⃝ A の場合の数は n C0 + n C1 + n C2 + · · · + n Cn とも表せる.以上より (1) が成立する. 次の公式は大学入試などで良くみられる. n C1 + 2n C2 + · · · + nn Cn = n2n−1 (2) ここで,n は正の整数. (解 1)(2) の左辺を S とおく.ここで r = 1, 2, · · · , n に対して n Cr = n Cn−r (⃝ 教 p.201, 問 14 参照)であるから S = n Cn−1 + 2n Cn−2 + · · · + (n − 1)n C1 + nn C0 = nn C0 + (n − 1)n C1 + · · · + 2n Cn−2 + n Cn−1 . よって, = = = = = 2S S +S {n C1 + 2n C2 + · · · + (n − 1)n Cn−1 + nn Cn } + {nn C0 + (n − 1)n C1 + · · · + 2n Cn−2 + n Cn−1 } nn C0 + {1 + (n − 1)}n C1 + · · · + {(n − 1) + 1}n Cn−1 + nn Cn n(n C0 + n C1 + · · · + n Cn−1 + n Cn ) n2n . ただし,最後の二行で (1) を用いた.よって,S = n2n−1 となり (2) が成立する. (終) (解 2)r = 1, 2, · · · , n に対して r n Cr = r · n! n · (n − 1)! (n − 1)! = r· =n = nn−1 Cr−1 r!(n − r)! r · (r − 1)!(n − r)! (r − 1)!{(n − 1) − (r − 1)}! に注意すると, S = = = nn−1 C0 + nn−1 C1 + nn−1 C2 + · · · + nn−1 Cn−1 n{n−1 C0 + n−1 C1 + n−1 C2 + · · · + n−1 Cn−1 } n2n−1 . 最後の二行で (1) を用いた. (終) 他にも数学的帰納法(1 月か 2 月に学習予定)を利用した証明が考えられるがここでは省 略する.また,興味がある方は下記の問題を考えてみよ. [問題](a) 次の等式を証明せよ (n ≧ 2). 2n C2 + 6n C3 + · · · + n(n − 1)n Cn = n(n − 1)2n−2 (ヒント:(2) の解 2 を参考にせよ.) (b) 次の等式を証明せよ (n ≧ 1). 2 n C1 + 4n C2 + 9n C3 + · · · + nn Cn = n(n + 1)2n−2 (ヒント:r(r − 1) + r = r2 .) (c) 次の等式を証明せよ (n ≧ 3). 6n C3 + 24n C4 + 60n C3 + · · · + n(n − 1)(n − 2)n Cn = n(n − 1)(n − 2)2n−3 (d) 次の等式を証明せよ (n ≧ 1). 3 n C1 + 8n C2 + 27n C3 + · · · + nn Cn = n2 (n + 3)2n−3 (ヒント:r(r − 1)(r − 2) + 3r2 − 2r = r3 .) 次の等式もよく見られる有名な公式である. 2 2 2 2 n C0 +n C1 +n C2 + · · · +n Cn =2n Cn (3) n ≧ 0 のときに成立するが,n = 0 のときは自明なので n ≧ 1 のときを考えれば良い.これ も (1) のときのような文章題にすると楽であろう:1 番から 2n 番の箱にちょうど n 個の 同型の玉を分ける場合の数 (· · · ⃝ B ) を考える.ただし,一つの箱に入れる玉の個数は 0 か 1 とする.このとき,玉の分け方は全部で 2n Cn 通り. ⃝ 0 1 番から n 番の箱に入る玉の総数が 0 個のとき,n + 1 番から 2n 番の箱には n 個の玉が 入る.1 番から n 番の箱での玉の分配の仕方と n + 1 番から 2n 番の箱での玉の分配の仕方 は独立しているから,玉の分配の仕方は n C0 ·n Cn =n C20 通り(n Cr =n Cn−r より). ⃝ 1 1 番から n 番の箱に入る玉の総数が 1 個のとき,⃝ 0 と同様に考えると玉の分配の仕方 は n C1 ·n Cn−1 =n C21 通り. ⃝ 2 1 番から n 番の箱に入る玉の総数が 2 個のとき,⃝ 0 と同様に考えると玉の分配の仕方 は n C2 ·n Cn−2 =n C22 通り. .. . ⃝ n 1 番から n 番の箱に入る玉の総数が n 個のとき,⃝ 0 と同様に考えると玉の分配の仕方 は n Cn ·n C0 =n C2n 通り. ⃝ 0, ⃝ 1, ⃝ 2 , ···, ⃝ n の事象はどの異なる二つも両立しない.したがって,⃝ B の場合の数は 2 2 2 2 n C0 +n C1 +n C2 + · · · +n Cn とも表せて (3) が成立する. (終) (3) でも二項定理を利用した証明があるがここではやらない. 最後に次の公式を紹介しておく. n C0 +n+1 C1 +n+2 C2 + · · · +n+k Ck =n+k+1 Ck (4) ここに n, k は負でない整数であるが,k = 0 のときは自明だから k ≧ 1 のときに証明する. ⃝ 教 p.202, 例題 5(パスカルの三角形の公式)と n C0 =n+1 C0 = 1 を利用する. (4) の左辺 = = = = = (n+1 C0 +n+1 C1 ) +n+2 C2 + · · · +n+k Ck (n+2 C1 +n+2 C2 ) + · · · +n+k Ck ··· n+k Ck−1 +n+k Ck (4) の右辺 よって,(4) は成立. (終) [問題](e) 次の等式を証明せよ: n Cn +n+1 Cn +n+2 Cn + · · · +n+k Cn =n+k+1 Cn+1 . (f) 次のルールで○と×を横一列に並べる. ⃝ イ ○はちょうど 2 個使う. ⃝ ロ ×は 108 個まで使って良い. このような並べ方は全部で何通りあるか(答:221815 通り).
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