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7
茨城県震ケ浦及び北浦産淡水魚の肝吸虫
METACERCARIA の感染について υ
鈴 木 了 司 2】
(国立予防衛生研究所寄生虫部)
ABSTRACT: A surveywascondu
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茨城県震ケ浦, 北浦周辺は,肝吸虫の浸淫地と
1
936
)は湖周辺住民
して知られており ,井 出 (
及び豚,野犬を調査してその感染状況を報告す
ると共に各種淡水魚から肝吸虫 metacercaria
を見出している。
戦後 ,磯 田 (
1
9
5
2)
,稲垣 (
1
9
5
4
)
,多田 (
1
9
5
6
)
等がそれぞれ霞ヶ浦l
及び北浦産の淡水魚より肝
吸虫 metacercaria を 認 め て い る 。 また ,掘
(
1
9
6
5)はこの地方の住民の検便を行なってその
約3,
3%に肝吸虫感染者を見出したが,淡水魚か
らは肝吸虫 metacercariaが認められなかった
としている。
著者はわが国の風土病の ー としての肝吸虫の
感染状況を本邦各地で調査してきているが , こ
の地方の淡水魚における 肝吸虫 metacercana
の感染が稲垣 (
1
9
5
4)の報告にみられように減少
していることは推定されるとしても,果して堀
(
1
9
6
5) の成績に示される如く全く認められなく
なったものか否かを再検討する必要があると考
え,本調査を行なった。
調査材料 及 び 方 法
調査材料 淡水魚は震ケ浦東岸の玉造町及び
麻生町周辺と北浦西岸の水原町周辺で採集され
たものを用いた。
調査方法 すべての魚は 一匹づっ鱗及び 鰭 を
はがして検査した後,その筋肉を少量づっとっ
て二枚のスライドグラスにはさんで解剖顕微鏡
下でしらベた。 metacercaria の同定は解剖 顕
微鏡下において可能であったが,疑わしい場合
には強拡大にして確認 した。
成 績
霞ヶ浦麻生町附 近において採集された 1
0
1尾
.
の淡水魚の内 , 肝吸虫が検出されたものは , 5
v
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s(ヒガ イ)2
0尾中 3尾(それぞれ 1,4,
1匹感染)と ,A. l
a
nc
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α(
ヤリタナコ')1
6尾
)
。
中 1尾 (1匹感染)のみであった(第 1表
霞ヶ浦玉造 町 周 辺 で 得 ら れ た 4
3尾 及 び 北 浦
5尾の淡水魚からは,
水原町周辺で得られた 5
肝吸虫 metacercariaを認めることは出来なか
っf
こ。
考 察
今 回の 調 査 に よ り , 震ヶ浦麻生町周辺産 5,
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sでは肝吸虫 metacercaria がー尾
2
匹 ,A.l
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a では 0
.
1匹の寄生が
当り 0.
認 め ら れ た が ,他の淡水魚には全く見出されな
かった。
井 出(19
36)は ,1
9
3
3年から 1
9
3
6年に至る調
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udorasboraρ
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α(
1
5
3尾調査)で 1尾
査で Ps
3
0
.7匹
, 5
. varieg
α
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us(
9尾調査)で 1尾
平均 1
平均 1
93.
0匹を見出し,その他 Ac
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s,
Ps
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udorasboraρ
αrva,Hemibarbusb
arbus等
から ,それぞれ肝吸虫 metacercariaを得てい
る。 この内 ,著者が調査 した麻生町周辺にお い
て採集された魚についての 一尾当りの肝吸虫平
均感染数を求めると ,
P parva(モツゴ)
C
.carassius(フナ)
H. o
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s(ワカサギ)
A
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. (タナ ゴ
)
乞
1
1
2
.
1匹
7.
4匹
1
9
.
5匹
8.
9匹
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)
*井出の記載にはタナゴとのみあるので学名は不明である。
本調査は文部省科学研究費の補助によ った。ここに記して謝意を表する 。
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.
第 2表
霞ヶ浦, 北浦産におけ る淡水魚の肝吸虫 m
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aの感染状況
地
種
名
名
横川吸虫
感染魚数
市上
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つ臼 1 A 1 A
となり,著者の成績に較べて著 し く高い 。
1
9
5
4)の報告によると ,霞ヶ浦産
また ,稲 垣 (
Pραrvα5尾にはその感染 は認めら れず ,北浦
産 P.ρ
αrva13尾 で は 1尾 (虫数 平均1.8匹),
同じく S.
var
i
egatus5尾では 1尾(平均 1
8.
4匹)
から肝吸虫 me
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a
c
e
r
c
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a を見 出し ており ,井
出(
1
9
3
6)の報告に比しでかなりの減少が認めら
れているが ,著 者 の 成 績 よ り は 寄 生 数 は 多 い 。
更に堀 (
1
9
6
5)
キによると ,北浦産 Pρα rv
α,
R.ocellatus,P tytus など 1
1種 1
3
8尾の魚類
から肝吸虫 metacercanaが見 出 され得なかっ
たとしている 。
こ れ ら の こ と か ら ,霞ヶ浦 ,北浦産淡水魚 寄
生の肝吸虫 m
etacercariaが過去に比して著 し
く減少していることを示すが ,全 く 絶 滅 し た 訳
ではないと考える 。
稲垣 (
1
9
5
4) は こ の よ う な 肝吸 虫 metacer
c
a
r
i
a の感染の減少 について , アメリカカザリ
ガ ニ が 第一 中間宿主たるマメタニシを捕食する
ためで、あろうと述べている。 しかし,アメリカ
ザリガニのマメタニシ捕食のみでは霞ヶ浦 , 北
司自ム司自
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肝吸 虫
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検査魚数
Oのノ“
霞ヶ浦麻生町
霞ヶ 浦玉造 a
o
21
浦地 方の肝吸虫 m
etacercariaの減少の充分な
説明とはならない 。
etacer
著者は今回 , 淡水魚感染の肝吸虫 m
c
a
r
i
a の減少の原因に関しての調査は特に行な
っていないが , かような原因の解 明は他地区の
肝 吸虫症 c
o
n
t
r
o
lのの手がかりともなりうるの
で,将 来 ,検討すべき問題であろう 。
1
9
5
8)
,横 )
1
1,(
1
9
6
3)
,堀 (
1
9
6
5)
なお, 小宮
, (
は霞ヶ浦産 S.
microdonから横川吸虫 metacer
c
a
r
i
a を多数検出したことた報告しているが,
今 回 の 調 査 に お い て も 震 ケ 浦 産 G elongatus,
S.microdon,H
. olidus,北浦 産 G.elongatus,
T taczanowskii,H. moritrix から横川 l
汲虫
metacercaria を見 出 し た こ と を 付記 し て お
く。
要
約
茨城 県霞ヶ浦及び北 浦地方における淡水魚の
肝吸虫 metacercanaの調査の結果 ,S.v
ariegatus及び A.l
a
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c
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a に極めて 少数の寄生
*堀 (
1
9
6
5)の調査では肝吸虫 m
e
t
a
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c
a
r
i
aの寄生が今まで全く報告されていない魚(シラウオ ,ハゼ).報告
されてはいるがその寄生数が少ない魚(コイ,フナ,オイカワその他)について主としてしらべていること
に留意す る必要がある 。
2
2
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9
67
び 群 馬 県 板 倉 地 方 に お け る 寄 生 吸 虫 類 の疫学的
4(
2
)
,1
5
41
6
1
.
研究.寄生虫学雑誌, 1
3
) 稲垣元博 (
1
95
4): アメリカザリガニ分布前後に
された。
笠度に就て.寄生虫学
於ける肝吸虫被褒幼虫の浸 i
雑 誌 ,2(
3,4
)
,2
0
92
1
5
.
謝 辞
4) 磯田政恵 (
1
9
52
): 肝臓ヂストマ症 (
C
l
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n
o
r
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h
i
as
i
s)に関する実験的研究 1第二 中間 宿主イ ジモロ
稿を終るに 当り ,御指導,御校閲をいただいた小宮
コ(
Ps
eud
o
r
a
s
b
o1'a 戸a1'
va)の体内における被褒セ
義孝所長,石崎達部長に深く感謝の意を表する 。
ノレカリアの 分布並びに 家兎感染試験. 日本獣医学
本研究の材料の入手に 当っ て は 東 京 都 市 場 衛生検
雑 誌 ,1
4(
2
)
,1
0
51
12
.
査所波辺久男係長に種ノマな御便宜を計 っ て い た だ い
5
) 小宮義孝 ・伊藤二郎 ・1
1
1本 茂 (
1
9
5
8)・ 日正ケ浦
た。 また資源科学研究所中村守純博士に淡水魚の同
地方の シラウオ に寄生する横川吸 虫の研究.寄生
定 を御願いした 。 ここに厚 く御干しを申し上げる 。
1
)
,7
-1
1
.
虫学雑誌, 7(
6) 横 川宗雄 ・佐野基人 ・大倉俊彦 ・稲坂好信 ・田谷
文 献
1
96
3): 腸 管寄生吸虫類に関する研 究 (
3
)
利光 (
浮滋法及び A
Msm法による横川 吸虫卵の検 出法
1
) 井出潔 (
1
9
3
6): 茨城 県下 ニ於 ケノレ肝臓 「デスト
の比較及び北霞浦麻生町の横川吸 虫について. 寄
4
8
7)
,6
0
86
1
9,
マ」ノ分布ニ就テ 細菌学雑誌, (
2(
2
)
,1
6
81
7
3
生虫学雑誌, 1
2
) 堀栄太 郎 (
1
9
6
5)・ 茨城県霞ヶ浦 ・北浦周辺およ
が 認 め ら れ た の み で, 過 去 の こ の 地 方 の 成 績 に
比して著しい減少を示してい る ことが明らかに