アジング解剖学 - AAA!Cafe

アジング解剖学
アジング解剖学とは?
アジングは、「アジをルアーで釣る」釣り方である。どうしてハリが沢山あるアジ釣り
の代表格である「サビキ釣り」よりも著者は「アジをルアーで釣るアジング」をやるの
か?その理由も踏まえて、アジングの魅力と奥深さを説明しよう。
一般的にアジ釣りといえば、初心者が思いつくとすればサビキ釣りを思いつくだろう。
お店もそちらをオススメするだろう。だが、持っていくもの、用意するものなんかはアジ
ングの方が圧倒的に手軽である。サビキ釣りは、コマセで放つ強力な匂いと疑似餌となる
サビキをつけて竿を上下に振り、コマセの幕を張り、その中を狂喜乱舞するアジを釣る事
である。無論、このパターンが強力なのは人工的にアジの食性を上げる事に他ならない。
が、この強力であるサビキ釣りでは、釣れないのにルアーの方に釣れてしまう事も実に
に数多く経験してきた。今回は、その理由について医学的な側面から検証していこうとい
うことで「アジング解剖学」という言葉で、この魚に光を照らしたいと思い執筆すること
にした。
アジは、食性がグルメであり、一年を通し基本となる「アミ」の他にも四季を通じ、
「イワシ」や「イカナゴの稚魚」「シラウオ」「ボラの幼魚」「カニ」「ハゼの幼魚」、
「バチ」、「小エビ」、「子イカ」など実に多彩なベイトを捕食している。
上の写真のアジは、アジングで釣れる平均サイズだ。サビキ釣りをしている人からすれ
ばマグレだろうと思われるかもしれない。が、1 年を通じて、このサイズは確実である。
また「数」も狙える釣りであり、1 晩で25~30センチまでを100匹以上釣り上げる
事も可能なのだ。無論、このような釣りではあれアジングで釣れない事も数多く経験して
いる。完全性が求められる事も事実なのだ。
さらに 1 年通じて同じパターンでは釣れないが何かしらの変化を伴うことで途端に釣れ
だすという事も多い。人括りにアジングとはいえ、その釣り方、釣れ方まで多種多様で未
だに一貫性を見出すのは難しいのである。
私がアジの解剖に興味を持ったのは、この魚を調べてきた結果である。考えてみると、
この魚は不思議な部分が多く。例えば、曇り出すと急に釣れたり、ワームを変えると釣れ
たり、中通しのオモリ(キャロ)の重さや、ジグヘッドの重さを変えただけで急に釣れだ
したりもする。
また、アジの嗅覚は優れてはいるためサビキ釣りをしていた頃は、エサをただ丸呑みす
るイメージを持っていたが、それはアジの一面性にすぎず、実際の学習能力は大変優れて
おり、大型アジのアジが小型のアジと違い、サビキにかかりにくい理由は、サビキの嗅い
をアジが覚えているからに他ならない。このような状態を「コマセ酔い」と昔の人間は
言ったが、別にアジが本当に「酔っ払っている」わけではない。
正確に言えば「見切っている」のだ。サビキ釣りするなら昼間を選べとは、サビキを撒
いてよってたかるアジの群れを確認できるばかりか、時間が経つと疑似餌とエサの区別が
分かるようになる。この様子からアジの学習能力について学べるはずだ。
釣れたアジを家に帰り捌(さば)くことで、アジの生態が分かる。アジングで釣れるア
ジは、胃袋から「多彩なベイト」の存在が確認できるのだ。これはサビキでしかアジを
釣った事が無かった頃からすると大変面白かった。サビキでアジを釣っていた頃は、一般
的に下の写真のようにグチャグチャした赤いものが腹一杯だった。
ちなみに左のアジは居付きでリフト&フォール
のアミパターン仕様にしてあるジグヘッドにき
た。ところが、ルアーでアジを釣り上げると、
実に多彩なベイトが胃袋の中に詰まっているの
だ。グロテスクだが、今まで集積した胃袋写真
を少し公開するので見ていただきたい。
第一章 胃袋検査
赤虫?何かは分からないが 2009 年 7 月 26 日に
釣れたアジの胃袋より採取された微生物だ。
中央に見えるのは、ボラの子供だろうか?
2010 年 1 月 17 日に釣れたアジからはこのエサ
の存在が確認できた。
その下の写真も同じように 2010 年 1 月 17 日に
釣れたアジの胃袋から確認できたものである。
今度は、大きなベイトの存在も確認できる。
ちなみに漁港ではこの時期では珍しくサビキ
釣り師達もいた。私がアジをルアーで次々に
釣り上げるものだから、サビキでも釣れるだ
ろうとしていたが全く一匹も釣れなかった。
「水温の低下」と「魚食性」との関係は、
「アジング生理学」のなかで説明を譲るとし
て、サビキで釣れにくくなる極寒期であって
もアジングは裏切らない事が多いこともまた
魅力なのだ。
→の写真は、2009 年 10
月に撮影したもの、シ
ラウオだらけだ。スー
パー等で市販されてい
るチリメンジャコに使
われる料理の食材の一
つと思われる。
右の写真は、2009 年 11 月 15 日に撮影した胃
の中身。4~5匹のイカナゴ稚魚が確認でき
る。
イカナゴは夏に冬眠する変わった魚で、秋か
ら冬にかけて広い範囲を回遊する魚だ。秋に
は大人になった大きなイカナゴに成長する。
イカナゴは砂に潜り、ヘビのようにヒョロ
ヒョロと泳ぐことが得意である。また人間も
よく食べている魚である。
左の写真は、2010 年 1 月 29 日に撮影。
この時期からシーズンインした「アミ
パターン」。潮上~潮下に流すという
ドリフトもこの時期からは必須項目に
なる。
生きた天然アミはコマセのアミと違い、
死んでいないので一定の層を漂い浮遊
している。このため、ルアーも一定層
キープし、流れと同じぐらいの速度で
漂わせながら巻くと「ドン!」と来る。
右の写真は、2010 年 02 月 14 日に撮影
した写真。大型の天然アミが目立ち始
めたの。エビじゃないですよ。シッカ
リとアミ特有の構造を確認してます。
ちなみにこの時は、ストレンジャータ
イプのワームのヒット性が良かった。
どようやら形状も大きく関係してきそ
うだ。
左の写真は 2010 年 4 月 18 日頃撮影した
もの緑色の天然アミが確認できた。アジ
にとってアミパターンがいかに長い期間
かが理解できるだろう。
ちなみにドリフト(潮上~潮下に流す
事)は、一年を通じれば当たり前の釣り
方だが、ベイトの存在を意識すると、よ
り具体的にアジの真実についてイメージ
がつきやすくなる。
胃袋の中身を覗くということは、私にとっては小さな天体観測であった。胃から摘出さ
れる様々な結果から、実際にアジがベイトを捕食する水中の世界をイメージするのだ。ど
んな視点からエサを見つけ、警戒し、捕食に至るか、その一部始終をイメージすると、こ
のようなイメージは釣り人にとって見たいが見ることのできない想像の世界となる。
例えば、アジのベイトがイカナゴであった場合、イカナゴ独特の泳ぎ方はこうだか
ら・・・アジは、イカナゴのこういった姿勢時に捕食体勢に入る。
また、アミを捕食している場合は、水流を一定層漂うように浮遊。アジはそれを
スーっと横切るようにして捕食している・・・など想像するとベイトと捕食パターン
の水中での攻防と釣り人の戦略も重なり、それが吉と出たら身震いした事もある。
サビキ釣りしかこの魚の事を知らなかった頃と比べると、アジングという釣り方を通じ
てアジへの奥深さ、興味を体験できる。最近は、周年を通じ、居付きアジばかりを釣り上
げてきた。ベイトによりパターン変更、天候により釣り方変更を繰り返してきた。
この魚は自然の中で、最適だと思える生き方をチョイスしているだけなのだ。アジング
には不要な先入観を捨て、その日、その場所にあった釣りをして頂ければと思う。
◎第一章の復習ポイント
1:アジのベイトを知る。
アジのベイト(
)
2:アジの偏食性を知る
アジの偏食性とは?
(
)
3:イカナゴの生態を知る
イカナゴの生態とは?(
)
4:アミの生態を知る
アミの生態とは?(
)
第 2 章 アジの骨格と筋
アジは釣り人が進化させてきた魚か?
「アジは釣り人が進化させてきた魚だろうか?」という疑問。この魚は、他の魚種と比
べ圧倒的に「横の口が弱い」。サビキに掛かればボトボトとこぼし、フカセなどの一本釣
りでは、飲み込ませる事に着眼点が置かれている。しかし、飲み込ませる釣りだと、今度
は、ヤスリのようなザラザラした口がラインに触れ、ラインブレイクの危険性もある。
ではアジングではこの問題についてどのように取り組んできたか?
アジングでは「上顎フッキング」。合言葉にまでなったこの言葉。アジの横の
口が弱いのなら、上の口に引っ掛けてしまえば良いという結論に至る。またドラグをユル
ユルにしておくというのもポイントであり、口穴が開いてバラシを防ぐ。アジのサイズも
大きくなればなるほどバレやすくなるので、上の口のなるべく奥(鼻孔より上)にフッキ
ングできるかが勝敗の分かれ目と
いっても過言ではない。
この章では、アジの骨格と筋につ
いて説明をし、そこから釣り人に
求められる要素を説明しよう。
ちなみに左の写真はアジの頭を二
つに割ったもの。写真にある「上
顎鼻骨部」より先にフッキングさ
せることがポイントである。
アジを更に真っ二つにすると上の写真のようになる。食べたエサは胃に
送られる前にこのエラの上を通過していく。エラの白いトゲトゲは、ま
るで鉄格子のようになっている。エラから水を吸収し、不純物まで入っ
た場合はこの白いトゲトゲに挟まって、口の中に入らないようにしてい
る。また捕食中は、エラは閉じており、呼吸は止まる。なぜアジは「吐
き出すまでが早いかといえば」、人間的な視点でみればハリという不純
物があったから・・・となるが、実は「呼吸」をしていないという単純
な答えなのかもしれない。
では、次のページではアジの遊泳について見てみよう。
アジは赤身魚に分類されながらも、実はその多くは白身に近い。赤身となる
身は全体のわずかしか取れない。ただし赤身となる筋がある以上、青魚のよ
うに回遊性はある。秋刀魚やイワシのような赤身魚と比べ、大きな回遊性は
持っていないものの、メバルと比べると回遊範囲は大きい。
アジが美味しいと言われるゆえんも、この赤身と白身が作り出す特有の歯ごたえと味から
出ているのではないかと思っている。
アジの切り身の断面図。体表に近い
部分ほど赤身が多い事が分かる。
水圧に対する抵抗からか中心部分に
赤身が集中するのは面白い。
右の写真は腹身側の断面図だ。大幹に近
い部分に赤身が縞模様のように分布して
いるのが分かる。皮膚表面に赤身が多い
のだが、御存知の通りこの魚は尻尾部分
にも赤身が多い。泳ぎ方や、生態からこ
のような筋肉体系を作り上げたと考える
と余計に興味が湧かないだろうか?
背中側の赤身。腹身と
大きな違いは尻尾部分
の赤身が厚いという事
である。
赤身は全体的に、肋骨
と脊柱を中心に分布し
ている。赤身は力強い
収縮はできないものの
持続的な収縮に優れて
いる。
水中動物の高度な泳ぎ
は人間では実現不可能
な領域にまで達してい
るという研究する魅力
がある。
胸郭部(内臓)
頚椎部(中間水泳)
大幹部境界線
(瞬発水泳)
仙骨椎部
(遊泳水泳)
?(生殖器、肛門)
頚椎が左側。右側が腰椎だ。前に
泳ぎ、上に泳ぎ、下に泳ぎ、左右に
泳ぐというのは魚の基本だ。また、
激流の中で一定層をキープするホバ
リングもしている可能性がある。
頚椎と腰椎の形が違うのもこれら
の泳ぐ速さや向きによって使い分け
ていると想像するとアナタもアジに
ついて少しは面白くならないだろう
か?