グローバル - Japan Macro Advisors

28 Jan
2015
Research Briefing
グローバル
シェールオイル/ガスは中期的な未来も明るい

原油価格は最近急落しているが、シェールオイル/ガスの生産は現在の水準が維持されると弊社は考えている。
平均的には 在来型原油に比べて割高だが、一部のシェールオイルは原油価格が 1 バレル=50 ドルでもまだ利益が
出る。このため世界的に供給源が多角化され、原油市場の競争が激しくなるとみられる。

シェールオイルの生産は、価格低下を受けた調整が伝統的な原油よりも素早くできる一方で、まだ徐々にしか生
産が増えていない可能性がある。コストは前倒しで発生しており、生産者によっては何とか生産性を高めコスト
を削減したり、先物売りでヘッジをかけていたり、あるいは、「資源開発に着手しなければリテンションが認め
られない」リースを使っているかも知れない。どんなタイプの原油でも結局は価格低下の影響を受けるとみられ
るが、来年には原油価格が再び上昇すると弊社は見込んでいる。

IEA(国際エネルギー機関)の予測によると、シェールオイルは、長期的に世界の重要な供給源であり続けるが、
結局は非在来型の液体燃料(カナダのタール・サンドやベネズエラの超重質油)のインパクトが上回る。対照的
にシェールガスは、特に原油の世界市場に比べると価格競争が激しくないため、寄与度が高まり続ける見込みだ。
イントロダクション
2、3 カ月前にシェールオイル/ガスは「革新的な存在
(game changing)」だとみられていた。現在は原油価
格が 1 バレル=50 ドルを下回り、シェールオイル生産者
の多くは強い圧力を受けていると報じられ、業界全体が
立ち行かなくなるという思惑が出ている。弊社もこれ
(強い圧力)は認めるが、結論(業界が立ち行かなくな
る)には賛成できない。
ともに油田が枯渇するにつれ、供給調整が進むだろう。
第 1 歩は掘削活動の縮小で、これはすでに始まっている。
生産の伸びも 2015 年後半には大きく減速するとみられ
る。価格変動に対応して生産量を変更するには、6 カ月
から 1 年がかかる。生産量変更の大半は、現在ではなく
将来の生産量によって行われるからだ。
長期的には、タール・サンドや超重質油の開発を進める
ことがより重要となる可能性がある(特にシェールオイ
ルの生産コストが上昇した場合)。どの代替資源を選ぶ
今後の 6 カ月から 1 年で、需要増加、高コスト/低効率
かは、各資源の需要の伸び、技術進化のペース、環境に
の生産設備閉鎖、新規供給能力増強の遅れがあいまって、
対する懸念によって決まるだろう。
世界的に 1 日当り 100 万-200 万バレルとみられる原油
現在までの歩み
供給過剰が解消すると弊社は見込んでいる。需給バラン
スがひとたび回復すれば、原油価格は再び(おそらく
世界は過去 50 年かそれ以上、在来型原油に頼ってきた。
2016 年に)回復し始めるとみられる。この間にシェール
それは石油ビジネスのなかで「(低い所になった果実の
オイルの生産は、拡大ペースはさらにダウンするが、減
ように)簡単に利益が得られる部分」だった。軽・中質
少することはないだろう。
の在来型原油は、浸透性 (液体が岩層を通過できること)
シェールオイルは、需要があってこそ存在する
シェールオイル生産の少なくとも一部は、現在の需要を
満たすために必要だ。タイトオイルの生産は日量 300-
400 万バレルで、世界的な原油生産過剰は 1 日当たり
100-200 万バレルに過ぎない。コストも考慮すべき要
因だ: シェールオイルは在来型原油よりも割高だが、コ
ストや生産性は油田によって異なり、一部は原油価格が
1 バレル=50 ドルでも依然として利益を出せる。
市場のバランスがとれてくるにつれ、今後の価格動向を
見通すことが可能になる。シェールオイル、在来型原油
が十分で垂直井や水平井に原油が流れ込む貯留岩から、
簡単に産出できる。オフショア・オイルも、伝統型原油
の供給が最近増加している原因であった。
オフショア・オイルの発見があっても、在来型原油の生
産は近年ほとんど増えていない。供給の伸びが弱い結果、
多くの「非在来型原油」で利益が出る価格水準となった。
これによって原油の形が変わり、シェールオイル、ケロ
ゲン・シェール、カナダのタールサンドから取出される
もの、ベネズエラの超重質油、石炭やガスから取出され
る合成油が含まれるようになった。
Economists: Bert Wolfe, Senior Economist e-mail: [email protected]
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ここからシェールオイルが抜け出し、重要なエネルギー
源となった。技術の進歩により非常に浸透性が低い貯留
岩からも産出できるようになった。マルチステージ水圧
破砕や、その他の先端技術を用いた仕上げプロセスがあ
いまって、硬質地層から経済的なコストで原油を取り出
すことが初めて可能になった。
減少するだろう。ただ掘削の効率性が高まり油井当たり
の産出量が増加していることで、そうした(努力が縮小
された)効果は弱まるとみられる。
シェールオイルの生産者が直ちには生産を削減していな
い主な理由は、コストが非常に前倒しで発生しているこ
とだ。費用の大半は、油井の掘削および仕上がり時に発
生する。「仕上がり」は、シェールオイル生産に大変重
要な、マルチステージ破砕プロセスを指す。原油価格に
対する生産の反応が遅い理由は、固定費と変動費の配賦
の他にも何点かある。生産者のなかには、非常に低い原
油価格(でも利益が出る水準)まで何とか生産性を向上
させていたり、原油先物売りでヘッジをかけていたり、
あるいは、生産を行わなければ延長されないリース契約
を結んでいるところがある。また価格上昇を見込み生産
チームを維持しているところもある。
シェールエネルギーの長期見通し
シェールオイルとその他資源の将来
国際エネルギー機関(IEA)のアナリストたちが冷静に
なれば、2014 年の年次見通しは「パスしたい」と考えた
シェールオイルの産出を刺激した価格インセンティブは、
かも知れない。だが彼らも何とか前に進み、旗艦出版物
他の非在来型原油の開発にもつながった。非在来型原油
である世界エネルギー展望の最新版で、シェールオイル
はすべて特別の技術が必要で、産出コストも在来型原油
/ガスの産出コストを評価している。IEA は、米国や世
に比べ高い。こうした高コストは、非在来型原油の大き
界のその他地域でシェールオイルに勢いがある時期は短
な短所である。逆に大きな長所は、原油価格が高くコス
い(数十年)が、シェールガスは大変長い間エネルギー
ト面で効率的であるなら、産出可能な量が大きいことだ。
源になる可能性があると考えている。IEA の分析が正し
原油価格低下に対応する供給調整
ければ、米国でのシェールオイル産出が今後 10 年でピ
ークとなり、その他の国では技術の取込みが緩慢に進む
弊社は以前に、シェールオイルの供給は、在来型原油よ
だけとみられる。
りも速く価格の動きに対応すると見込まれると主張して
いた。これが正しいとしても、調整自体が速く進むとい
世界のエネルギー需要が増加し続けるならば、シェール
うことではない。対応が非常に速く進むのは、(サウジ
ガスの産出は、特に北米では長い間重要なエネルギー源
アラビアなどの)「スイングスイングプロデューサー
になるだろう。北米は世界のシェールオイル産出のうち、
( 生産量を加減できる石油生産国)」に、キャッシュフ
2025 年には 85%、2040 年には 68%を占めるとみられ
ローがまだプラスの油井を閉鎖する意図がある場合だ。
る。IEA は、シェールオイルはピーク時で原油供給の約
10%を占め、その後徐々に後退するとみている。
サウジアラビアはここ数カ月、スイングプロデューサー
として行動しておらず、調整を他国に委ねている。シェ
興味深いことに、長期的には、シェールガスの方が重要
ールオイル生産者の動きはそれほど急速ではなく、それ
だと明らかになる可能性がある。IEA は、シェールガス
は現状では、探査または掘削プログラムの費用を削減す
の産出が、欧州を除くすべての地域で予測対象期間を通
るという個別の決定しだいとなっている。こうした決定
じて増加、2040 年には産出増加全体の 60%を占めると
がひとたび下されると、6 カ月から 1 年経ってから生産
見込んでいる、主な生産国のなかで、中国が最も急速に
へのインパクトが発生する。
産出を伸ばすとみられる。
シェールオイルへのインパクト
現状では、シェールオイルがエネルギー市場に大きなイ
ンパクトを及ぼし、シェールガスよりはるかに目立って
いることは間違いない。2013 年末の時点で、非在来型原
油の生産は 1 日当たり 600 万バレルと世界の原油生産
(IEA 推定で、製油所処理ゲインと再生可能エネルギー
を除き日量 873 万バレル)の 6.9%に達していた。
IEA は慎重で、自らの見通しを予測として過大評価する
ことなく、代わりに供給に関するシナリオを 3 点示して
いる。第 1 のシナリオでは、環境政策が全く実行されな
いと想定している。第 2 のシナリオでは現在検討されて
いる政策が実行される、第 3 のシナリオでは地球温暖化
を抑制する策が実行されるとそれぞれ想定している。
ベーカーヒューズ社の最近のレポートによると、米国で
稼働している掘削リグの数が急速に減少している。稼働
リグ数は、2014 年 10 月の 1,609 がピークだったが、1
月中旬までに 1,421 に減少した。2015 年 1 月 12 日に終
わる週に、米国の油田掘削リグは 61 減少している。こ
のように(産出能力を拡大させる)努力が弱まっている
ことで、産出量は(努力を行った場合に比べて)結局は
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世界の原油生産量(日量百万バレル)
OPEC 加盟国を除く非在来型の原油生産量(日量百万バレル)
World oil output
million barrels of oil per day
120
Unconventionals
NGLs
100
Crude
6.1
Non-OPEC unconventional oil output
19.6
11.2
million barrels of oil per day
14
Other
Tight oil
12
Canadian oil sands
19.5
80
12.5
2.5
10
14.9
0.8
0.4
60
5.6
8
5.3
6
40
68.6
69.3
0.6
73.9
59.6
5.5
4
20
2.9
5.2
2
3
0
1990
2013
2020
2040
Source: IEA WEO 2014
0.2
1.9
1990
2013
0
2020
2040
Source: IEA WEO 2014
出所: IEA の WEO(世界エネルギー展望)2014 年
出所: IEA の WEO(世界エネルギー展望)2014 年
IEA が準備した 3 つのシナリオは全て、2040 年の時点で
もシェールオイルは重要だが、生産はそのときまでに急
減している、と示している。IEA は対照的に、2040 年以
降もシェールガスの勢いは続くとみている。また 2040
年までに、カナダのタールサンドとベネズエラの超重質
油が、非在来型原油の分野でシェールオイルを失墜させ
ると IEA は見込んでいる。しかし弊社にはそう思えない。
削せざるを得なくなる。これによって、原油を増産した
場合の限界コストが上昇する。経験的に言えば、実際の
ところ限界コストは長い間低下し続けているが、それは
技術進化が理由で、過去のペースが続くと見込むことは
できない。IEA は、代表的な技術の進歩は、稼働掘削リ
グ、 複数油井の水圧破砕だと認めている。コスト最適化
で、最も活発にできる部分は達成したということだ。
シェールオイル/ガスの勢いはいつまで続くか
IEA は、シェールオイルを含む「シェールオイル」は大
量に存在するものの、それを地中から競争力のある価格
(コスト)で取り出す技術がないと結論づけている。明
らかなのは、利用可能な在来型原油は十分ではない可能
性があり、その他の非在来型原油(オイルサンドやベネ
ズエラの重質油)も技術は高コストであるということだ。
シェールガス/オイルの勢いの持続性について世界エネ
ルギー展望では、従来型の地質調査、技術の進歩、イン
フラストラクチュア、代替となる石油のコストを前提に
結論を導いていた。このなかで地質は、産出コストに影
響するため最も大きな要因かも知れない。
シェールオイル/ガスの定義は、原岩の多孔性や浸透性
が低いことである。貯留岩の多孔性が低いことから、垂
直掘削は役に立たず、マルチステージ破砕で仕上げられ
たシングル水平油井で、貯留量の非常にわずかな部分を
取り出すことしかできない。元々存在する原油のわずか
を取り出すために、多くの油井を掘削する必要がある。
油井が枯渇すれば、産出量を維持するために新しい油井
を掘削しなくてはならない。
テクノロジー(技術)とジオロジー(地質学)
産出業者が、最も生産性が高い場所を最初に掘削するこ
とは当然だ。ただし、最終的にはいわゆる「スイート・
スポット」を掘り尽くし、生産性が比較的低い場所を掘
IEA もそれらを明確に懸念しており、(在来型の原油や
ガスの生産者が生産能力に十分な投資を行わないなかで)
シェールオイルの基礎技術が発展すれば様相が一変する、
と慎重に付け加えている。しかし示された見通しは、カ
ナダのタールサンドやベネズエラの重質油、イランやイ
ラクの供給回復によって、シェールオイルが必要とする
より低いコストで必要量が供給されるという前提を含ん
でいる。だが弊社は、技術的変化での今後の可能性を見
通すことは、役に立つがものの正確に行うことは極めて
難しいと考える。IEA は予測レポートを作成する目的で、
シェールオイルの経済性向上につながる技術的な変化を、
モデル化したり想定したりしていない。
北米以外のシェールオイルはどうか
シェールオイルの可能性が、北米で限定的であるならば、
世界のそれ以外の地域ではそれよりずっと限定的となる。
インフラストラクチュアが乏しいことで成功の可能性が
小さくなるからだ。地質的には有望な場所でも、技術的
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専門性、先進の掘削装置、接続パイプライン、民間に掘
削権を認める法的枠組みが欠けることが多いだろう。こ
うしたリソース不足で探鉱はストップしないが、規模は
限定的となる可能性がある。
インフラの制約は IEA 以外からも指摘されているが、
IEA は地形上の制約にも触れている。シェールオイルは
在来型原油が以前産出されていた場所で発見される可能
性が高いという。そして広くアクセスが容易で、人口密
集地からあまり近すぎない場所でなくてはならない。極
寒地やジャングルは、近接する道路やパイプラインが不
足しているため適さない。最後に、水が確保できること
も、確実に助けになると同時に恐らく必要だろう。
シェールオイルの産出量見通し(日量百万バレル)
Tight oil output projections
million barrels of oil per day
0.8
0.7
2040
0.6
2025
0.5
0.4
0.3
0.2
0.1
(IEA の)世界エネルギー展望(WEO)では、米国以外
の国では、大規模産出に必要な活動規模をすぐには手に
入れられないと述べている。バッケン・シェールだけで
現在 150 以上、イーグル・フォードでは約 300 のリグが
利用されている。米国以外にそれと同じ数の掘削リグを
持っている国は、(ロシアと中国には可能性があるが、
それを除くと)どこにもない。
0.0
Canad
Russi
Argen
Mexic
China
Austr
Alger
Source: IEA WEO 2014
出所: IEA の WEO(世界エネルギー展望)2014 年
シェールガス、競争の緩さで恩恵を享受しそう
WEO の最新版では、シェールガスとシェールオイルに
関して一貫している点が 1 つある。それは、存在してい
るシェールオイル/ガスに、実際には限りがないという
シェールオイルは、カナダで生産が進められており、ア
ことだ。限界は、そうした資源を競争力のある価格(コ
ルゼンチンでは探査が始まった。メキシコでは成功が見
スト)で取出せるかどうかで決まる。競争が無いか緩い
込まれる。ロシアや中国などは、地質的には有望だが、
状況なら、価格は上昇してシェールオイル/ガスが産出
地上での動きはない。カナダには技術移転が初めて成功、
されることになる。
米国とほぼ同じ条件で産出が行われている。カナダでは
バッケン頁岩層の一部から、2013 年には日量 33 万バレ
WEO では、原油は国際債市場で取引されており、シェ
ルを産出しており、2020 年中頃までに同 70 万バレルに
ールガスは、産出コストが低い他のエネルギー源との競
増加する可能性がある。メキシコも地質的には有望だが、 争に勝てないとみている。
2040 年までにシェールオイルの産出量が日量 40 万バレ
そして、シェールガスは国内市場で取引されることが多
ルを上回るには、石油セクターの改革が必要だ。
く、競合するエネルギー源のコストも高いとしている。
シェールガスは、主な競合資源が(環境対応コスト調整
北米以外では、アルゼンチンのバカムエルタで 2013 年
後の)石炭、輸入 LNG(液化天然ガス)や再生可能エネ
に探査掘削が始まった。IEA は、シェールオイルの生産
ルギーである場合、成長する可能性が非常に高い。競合
量が 2025 年には日量 22.5 万バレル、2040 年には同 40
相手それぞれが高コストならば、価格が上振れる余地が
万バレルに達すると予測している。中国やロシアは、地
大きくなる。
質的には有望だが、その他の条件がシェールオイルには
適さない可能性がある。ロシアのシベリアは、シェール
結論として IEA は、非在来型のガス(主にシェールガス、
オイル産出には気候が厳しすぎるかも知れない。中国は、 コールベッドメタン(CBM)など、割合はずっと低いが
いまのところ天然ガスの産出に焦点を当てている。豪州
石炭ガス化やメタンハイドレートも含む)が、産出量増
も石油・ガス産業が活発で、シェールガス/オイルに興
加のうち 60%近くを占めると考えている。シェールガス
味を示し始めている。探査が始まっており、今後 5 年以
がガス全体の産出に占めるシェアは、現在の 17%から
内に本格的な産出が開始されて、2040 年までに日量 17
2040 年末には 31%に上昇するとみている。
万バレル(IEA 見通し)に達する可能性がある。
また、主なガス産出国のなかで、中国が産出量を最も急
速に伸ばす可能性があるが、世界最大の産出国は引続き
米国だとみられている。
制約があるなかでの探査
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巨大なガス資源が存在する可能性も
結論
こうした見通しは、豊富な供給源なしには成り立たない。
現時点で最有力の推定によると、残存する天然ガスによ
り、2040 年までとそれ以後の長期間で見込まれる世界の
需要の伸びを、余裕をもってカバーできる見込みだ。
2013 年末時点の確認埋蔵量は 216 兆立方メートルで、
現在の産出量の 60 年分以上に等しい。こうした確認埋
蔵量は、技術的に採取可能とみられる 806 兆立方メート
ルに比べるとわずかに過ぎない。また、このように極め
て大きな数字でも、実際に産出可能なガスの量を恐らく
大幅に下回るとられる(中東での調査が行われていない
ため)。またメタンハイドレートなど、比較的見慣れな
い資源も除かれている。
IEA(国際エネルギー機関)の世界エネルギー展望
(WEO)には、反論したくなる部分と心強い部分の両方
がある。心強い部分は、今後長期間にわたる需要を満た
すだけのエネルギーに、アクセス可能だと証明されてい
ることだ。また、良好な環境を保ちながらエネルギーを
選択する方法を説明している点も評価できる。
需要はシェールガス技術に左右されることから、米国で
資源枯渇の兆しが 2030 年後半から見えてくる見込みで
はあるが、北米は引続き非在来型ガスの産出が世界最大
となっている。
しかし在来型のガスは、今後 10 年では豪州や中国、そ
の他にインドやアルゼンチンもバトンを引継ぎ、今より
もずっと世界中に広がっていくだろう。シェールガスと
同じく米国やカナダ以外での産出コストは高いが、中国
やインドなどのガス輸入国では、コストが高い液化天然
ガスの輸入を減少させる強いインセンティブが働く。そ
れに加えて、アルジェリアなど一部の輸出国が、在来型
ガスの産出減少幅拡大を妥当と考える可能性もある。
反論したくなる部分は、世界のエネルギー供給が中東の
一部の国に集中すると想定しているところだ。弊社は、
(原油価格は最近急落しているが)エネルギー多角化の
機会が市場で生まれると考えている。OPEC 加盟各国は、
よりコストが高い競合相手を蹴落とすような価格水準に
満足しないとみられる。
弊社は、資源価格が今後十分に高くなり、競合相手や新
技術が出現すると強く確信している。また様々な形態の
エネルギーの組合せにより、IEA が見込むような(産出
地域の)集中は避けられると見込んでいる。
結局、弊社も 2040 年にどの技術が支配的になっている
かは判らないが、シェールオイルやシェールガスが依然
として一角を占めているとみている。
2040 年までには、非在来型ガスの半分が、米国とカナダ
以外で産出されるようになるだろう。
主な天然ガスの産出可能量と埋蔵量(2013 年末、兆立方メートル)
在来型
entional
東欧/ユーラシア
中東
アジア太平洋
OECD 米州
アフリカ
中南米
OECD 欧州
世界
143
124
43
46
52
31
25
465
タイトガス
11
9
21
11
10
15
4
81
非在来型
シェール
コールベッド
ガス
メタン
15
20
4
53
21
48
7
39
0
40
13
2
211
50
合計
小計
資源量
確認埋蔵量
46
13
95
65
49
55
19
342
189
137
138
111
101
86
45
806
73
81
19
13
17
8
5
216
出所: IEA(国際エネルギー機関)世界エネルギー展望 2014
Economists: Bert Wolfe, Senior Economist e-mail: [email protected]
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