close

Enter

Log in using OpenID

CO2削減に貢献する ITシステムの環境負荷評価手法

embedDownload
CO2削減に貢献する
ITシステムの環境負荷評価手法
要
高橋 郁夫*
多々良 智子*
北上 眞二**
大野 次彦*
田中
基寛***
旨
低炭素社会の実現に向け、経済産業省は2008年3月に策定
本手法は、ITシステム毎の開発・運用といったライフ
したCool Earth-エネルギー革新技術計画中でも重点的に取
サイクル全体にわたる環境負荷を定量化するもので、実際
り組むべきエネルギー革新技術のひとつにグリーンITを指
には、人・物の移動、物の消費、IT機器の利用などの7
定している。グリーンITとは、「IT自身の省エネ」および
つの環境影響要因をステージ毎に分析し、評価・改善に取
「ITを活用した社会の省エネ」のことで、この両輪でエネ
り組み、ライフサイクル全体で環境負荷の低減を図るもの
ルギー消費の削減、温室効果ガスの削減を目指すものであ
である。これにより、ITシステム導入前後での環境貢献
る。
度評価(CO2排出削減量)とライフサイクル全体での環
三菱電機インフォメーションシステムズ㈱では、三菱電
境影響度評価(CO2排出量)が可能となり、その効果の
機グループと連携して、グリーンITなどの環境負荷低減
「見える化」を行うことができる。本手法を継続的に活用
への取り組みを進めている。その一環として、ITシステ
し環境に配慮したITシステムの開発やお客様に提供する
ムのCO2排出量を定量的に評価する「ITシステムの環
ITシステムの環境負荷低減をさらに進めることで、地球
境負荷評価手法」を開発し、お客様に提供するITシステ
温暖化防止とともにお客様の環境経営や企業価値向上に貢
ムのCO2排出削減を推進している。
献したいと考える。
ITシステムの環境負荷評価手法
ITシステムの環境負荷評価手法(LCA)は、機器製品とは異なり、導入システム毎に調達、設計・開発・製造、設置、運用・廃棄といった9つのラ
イフサイクルステージから構成される。そのステージ毎に環境影響要因を分析し、評価、改善を行い、ライフサイクル全体で環境負荷低減を図る必要
がある。 LCA : Life Cycle Assessment
*三菱電機インフォメーションシステムズ㈱
**三菱電機㈱情報技術総合研究所
***三菱電機㈱環境推進本部
受注
1.まえがき
①調達
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第4次評価報告
H/W製造
②設計・開発・製造
⑨廃棄・リサイクル
③出荷
書(2007年4月)により、地球温暖化は科学データ群によ
りオーソライズされた。先進国中心に各国政府は温暖化ガ
ス排出量削減(世界で2050年までに半減)目標を定める動
④流通
きに入り、日本政府は2008年7月「低炭素社会づくり行動
⑤設置
計画」を閣議決定した。
⑧回収
IT分野での環境負荷削減-特に地球温暖化防止への貢
⑥立ち上げ
献-については他の製品・産業分野に比べて具体化が遅れ
⑦運用
ていたが、2007年8月の米国環境保護庁(EPA)発表の米国
図1 ITシステムのライフサイクル
内データセンタ消費電力の調査をきかっけに、「グリーン
IT」概念が浮上し、近年現実的社会的取組みとなってきた
一方で、ライフサイクル全体からみると、その設計・開
ところである。グリーンITとは、「IT自身の省エネ」およ
発・製造や運用、廃棄などのライフサイクル各ステージに
び「ITを活用した社会の省エネ」のことで、この両輪でエ
於いてCO2を排出しており、環境に影響を与えている。
ネルギー消費の削減、温室効果ガスの削減を目指すものと
従って、ITシステムのLCAでは、運用ステージに於け
考えられている。経済産業省はグリーンITイニシアティブ
るCO2排出削減量(環境貢献度)と、ライフサイクル各
を2007年12月に発表、わが国では2025年に2006年比で情報
ステージのCO2排出量(環境影響度)を区別して評価す
量200倍(情報爆発)、消費電力5倍になると推計、2008年3
ることが望ましい。ここでは、前者を「ITシステム環境
月に策定したCool Earth-エネルギー革新技術計画中でも
貢献度評価」、後者を「ITシステム環境影響度評価」と
重点的に取り組むべきエネルギー革新技術のひとつに指定
呼ぶ。
した。
CO2排出量
(kg-CO2)
2.ITシステムのLCA
環境貢献度評価
(貢献度の見える化)
各活動
CO2排出量
(kg-CO2)
廃棄・リサイクル
回収
X
運用
ライフサイクルアセスメント(LCA)とは、製品の設計時
立ち上げ
に、その製品が環境に対して及ぼす負荷をライフサイクル
Y
およびそのマネジメントにつなげることを志向するもので
ある。日本では社団法人産業環境管理協会内の日本環境効
流通
出荷
-資源の採掘から資材・製品の運搬、使用、そしてその製
品の廃棄まで-にわたって評価し、環境負荷を減らす設計
環境影響度の
継続的な改善活動
設計・開発
・製造
新システム導入前
新システム導入後
調達
CO2削減量= X - Y (kg-CO2)
CO2削減率= Y/X ×100 (%)
率フォーラムにて、2006年3月に「情報通信技術(ICT)の
環境影響度評価
(影響度の見える化)
図2 ITシステムの環境貢献度評価と環境影響度評価
環境効率評価ガイドライン」が編纂された。これをもとに
3.1 ITシステム環境貢献度評価
各社それぞれの評価基準を定め、LCA評価および環境効率
ITシステム環境貢献度評価は、導入するITシステム毎
算出に努めている。しかしまだ方法論が確立したとはいえ
に、その環境貢献度(CO2排出削減量)を明確化すること
ず、現在でも同フォーラム内で研究会が引き続き行われて
が目的である。ITシステムのライフサイクル上では、運
いる。三菱電機グループでもこうした動きに参加しながら
用ステージに着目した評価と位置づけられる。
ITシステムの環境負荷を評価し低炭素社会実現への貢献
ITシステム環境貢献度評価では、ITシステム導入前と
度合い等を説明する手法を構築した。
導入後の運用ステージ(業務)の「活動」の「活動量」を
3.評価手法
調査し、各活動の「環境負荷原単位」を元に、各活動及び
全体の環境負荷(CO2排出量)を定量化することによっ
ITシステムのライフサイクルは、機器製品とは異なり、
て、環境貢献度(CO2排出削減量、CO2排出削減率)
導入システム毎に設計や開発、システム構築を伴い、図1
を明確化する。ここで、エネルギー効率のよいIT機器に
に示すように、9つのステージから構成される[1]。一般に
入れ替えることも環境貢献と考えられることから、IT機
ITシステムの導入は、運用ステージに於ける業務効率/
器の使用やネットワークインフラ利用も評価対象に含め
生産性の改善、人や物の移動及び物の消費の削減を目的と
る。
することが多く、結果的にCO2排出量削減に貢献してい
ITシステム環境貢献度評価における活動・活動量・環境
る。
負荷原単位の例を表1に示す。環境負荷原単位は、その対
4.1システムの概要
象毎に、公的機関等で公表されている値を採用することを
「複合機による出力の統合管理」システムは、課毎に購入
原則とするが、それがない場合は、根拠を明確にした上で
管理していたプリンタ、FAX、スキャナ機器を社員証の
独自の環境負荷原単位を定めている。
認証機能付複合機に集約化することで、紙媒体のセキュリ
ティ強化を図るとともに、紙使用量の削減、機器統合によ
活動
活動量
環境負荷原単位
対象(例)
人の執務
平均人員数
一人・年当たりの電力使用量から換算され
るCO2排出量
オフィススペース
(m2)
人の移動
1年間に移動する
人数、移動距離
一人・距離(km)当たりの移動手段毎の
CO2排出量
鉄道、航空機、
乗用車、バス
物の保管
保管倉庫の面積
面積(m2)・年当たりの倉庫維持に必要とな
る電力使用量から換算されるCO2排出量
倉庫スペース
物の移動
1年間に移動する
物の重量、輸送距離
重量(t)・距離(km)当たりの移動手段毎の
CO2排出量
トラック、鉄道、
航空機、船
物の消費
1年間に消費する紙、
CD、DVD等の枚数
媒体1枚当たりの生産・破棄に係わるCO2
排出量
紙、情報媒体
(DVD、CD)
IT機器の利用
サーバの台数、
稼動時間
サーバ1台・年当たりの電力使用量から換
算されるCO2排出量
サーバ、PC、プリン
タ、ディスプレイ
ネットワーク
インフラ利用
ネットワーク使用時間、 1Mbyteのデータを転送する際にネットワー
ク機器の電力使用量(按分)
データ転送量 等
インターネット
表1 ITシステム環境貢献度/影響度評価の指標
る消費電力や保守コストの削減を目的としたシステムであ
る。
4.2「複合機による出力の統合管理」の環境負荷評価
(1)評価の目的
今回の評価は、「複合機による出力の統合管理」システ
ムの全社展開前に一部門にて実施した試行データをもと
にシステムの環境影響度評価を行い、システム導入前と
導入後で環境貢献度評価を行うことを目的とした。
(2)機能単位
活動毎のCO2排出量、及び、ITシステムの環境貢献度
本評価の機能単位(対象範囲)は、社内の一部門(200名)
(CO2排出削減量)は、以下の式で計算される。
の紙出力(プリント、コピー、FAX)とその手段を対
象とした。運用期間は、環境影響度評価は5年間、環境
●活動毎CO2排出量=
[活動毎環境負荷原単位]×[活動量]
●ITシステムの環境貢献度(CO2排出削減量)=
Σ[新システム導入前の活動毎CO2排出量]
貢献度評価は1年間とした。
(3)システム境界
「複合機による出力の統合管理」システム導入前と導入
後のシステムの概要を図3に示す。
-Σ[新システム導入後の活動毎CO2排出量]
ITシステム環境貢献度評価のイメージを図2の左側に示
す。
システム
導入前
システム
導入後
印刷ジョブ
3.2 ITシステム環境影響度評価
ITシステム環境影響度評価では、ITシステムのライフ
ローカルプリンタ
28台
コピーカード
ローカルプリンタ
10台
社員証
印刷ジョブ
新複合機
旧複合機
ローカル
スキャナ
サイクルステージ(図1)毎の「活動」の「活動量」を調査
ローカル
スキャナ
AD連携 各業務PC
①印刷ジョブ
各業務PC
し、各活動の「環境負荷原単位」を元に、各ステージの環
2台
4台
境負荷(CO2排出量)を定量化する。ITシステム環境
ローカルFAX
3台
プリントサーバー(二重系)
2台
ログ収集PC
影響度評価における活動・活動量・環境負荷原単位は、環
1台
②認証
境影響度評価と同じ指標(表1)を採用する。
ITシステム環境影響度は、以下の式で計算される。
社内LAN
ログ収集PC
1台
課毎にプリンタ、スキャナ、FAXを所有
紙出力の管理が不可能
[ライフサイクルステージ]
社内AD
図 3. システムの概要
ITシステムの環境影響度=
∑{ 環境負荷原単位×活動量(使用量) }
社内LAN
必要な場所の複合機にて社員証で認証し、
印刷やスキャンニングする事が可能
①システム導入前
a.課毎にプリンタ、FAX、スキャナを購入、管理を
ITシステム環境影響度評価のイメージを、図2の右側に
していた為、社内における保守コストの把握が困難
示す。このように、ITシステム環境影響度評価では、I
であった。
Tシステムのライフサイクルステージ毎に環境影響度を見
える化した上で、それぞれのステージでの環境影響度の改
b.印刷出力やスキャナ入力が課毎又はフロア毎に限定
されていた。
善に取り組み、ライフサイクル全体にわたる環境影響度の
②システム導入後
継続的な改善を図ることが重要である。
a.全社レベルで保守コスト及び紙出力が把握できるた
め、紙出力や保守コストの削減につながった。
4.適用評価
以下に社内にて試行した「複合機による出力の統合管
理」システムの適用評価を示す。
b.どの複合機からでも印刷出力やスキャナ入力が可能
となった。
c.認証機能により紙媒体のセキュリティが向上した。
環境影響度評価におけるライフサイクルステージ評価対
象・活動の関係を表2に示す。尚、環境貢献度評価は運用
量が8.0%削減できる見込みである。主な削減効果は、
ステージのみを評価対象とする。
紙使用量と各機器の保守コストの削減と、各課管理のプ
ステージ
-:評価対象外]
調達
設計・
開発・
製造
出荷
流通
設置
立ち
上げ
運用
回収
廃棄・
リサイ
クル
人の執務
-
-
-
-
○
○
○
-
-
物の保管
-
-
-
-
-
-
○
-
-
人の移動
-
-
-
-
○
○
○
-
-
物の移動
-
-
-
○
-
-
○
○
○
活動
物の消費
○
○
-
-
-
○
○
-
リンタ及びFAX設置スペースの削減である。今後、シ
ステム設定の最適化や個人認証による紙使用量の抑制効
果により更なるCO2削減効果が期待できる。
活動【kg-CO2】
導入前
導入後
人の執務
1978.4
1254.6
物の保管
931.7
397.2
人の移動
251.7
100.7
物の移動
15.2
13.5
物の消費
2714.2
2559.1
IT機器の利用
2849.2
3717.3
0.0
0.0
-
IT機器の
利用
-
-
-
-
-
○
○
-
-
ネットワークインフラ
の利用
-
-
-
-
-
-
-
-
-
ネットワークインフラの利用
表 2. ライフサイクルステージと評価対象・活動の関係
今回、設計・開発・製造ステージは、市販ソフトウェア使
1年間あたりの
CO2排出量
【kg-CO2】
8.0% 削減
10000
8740.4
8042.4
7500
5000
試行 環境貢献度
(CO2排出削減量)
698.0 [kg-CO2]
0
導入前
用した為、環境負荷が販売本数で按分され、無視できるほ
2500
8740.4 8042.4
CO₂ 排出量(kg-CO₂/年)
[凡例 ○:評価対象、
導入後
図 4. 本システムの環境貢献度
ど小さいと判断し、評価対象外とした。又、「ネットワー
②環境影響度評価結果
クインフラの利用」は社内インフラのみ使用のため評価対
図5に「複合機による出力の統合管理」システムの環境
象外とした。
影響度評価の結果を示す。
表3に各ライフサイクルステージにおける評価対象とおも
50000.0
各ステージの環境影響度
(想定:運用期間5年間)
①調達
ライフサイクル
ステージ
②設計・開発
システム導入前
システム導入後
6762.2
③出荷
273.6
④流通
16.5
調達
―
各機器製造負荷
プリンタ 10台、プリントサーバ 2台、
複合機 4台、ログ収集PC 1台
設計・開発
・製造
―
-
出荷
―
梱包材 ダンボール 144kg
⑦運用 (5年間)
流通
―
各機器輸送 4トントラック 距離50km
⑧回収
設置
―
作業要員 移動 社用車 距離50km
作業 48hr・人
⑨廃棄 ・ リサイクル
立ち上げ
―
作業要員 移動 社用車 距離50km
作業 174hr・人
合計
⑤設置
⑥立上げ
40000.0
0.0
9.7
30000.0
その他ステージ
全体の0.7%
20000.0
33.8
40211.9
15.0
4.2
47326.9
CO2排出量(kg-CO2)
な活動量を示す。
47326.9
⑦運用ステージ
全体の85%
10000.0
①調達ステージ
全体の14.3%
0.0
1
運用
人の
執務
保守員作業 128hr・人・年
各機器設置オフィス内スペース 26.48㎡
保守員作業 72hr・人・年
各機器設置オフィス内スペース 16.4㎡
物の
保管
予備トナー/ドラムカートリッジ、プリント用紙保管
20.08㎡
予備トナー/ドラムカートリッジ、プリント用紙保管
8.56㎡
運用期間5年間とした場合、全CO2排出量の85%
人の
移動
保守員移動 3000km・人・年
保守員移動 1200km・人・年
物の
移動
トナー/ドラムカートリッジ、プリント用紙購入
74.2km・t・年
トナー/ドラムカートリッジ、プリント用紙購入
65.86km・t・年
が運用ステージとなり、残り15%は調達ステージとそ
物の
消費
プリント用紙(A4) 672000枚・年
トナー/ドラムカートリッジ枚数より按分
プリント用紙(A4) 633600枚・年
トナー/ドラムカートリッジ枚数より按分
IT機器
消費電力 プリンタ 28台、複合機 2台
の
FAX 3台、ログ収集PC 1台
利用
消費電力 プリンタ 10台、プリントサーバ 2台
複合機 4台、ログ収集PC 1台
回収
―
各機器輸送 回収 4トントラック 距離50km
廃棄リサイクル
―
リサイクル率 プリンタ70%、複合機95%、
サーバ95%で想定
表 3. 各ライフサイクルステージの評価対象と主な活動量
(4)結果
①環境貢献度評価結果
図4(図中左)に「複合機による出力の統合管理」シス
テムに導入前と導入後の運用ステージにおける各活動の
一年間のCO2排出量を示す。
尚、活動の「IT機器の利用」で導入前後にてCO2排
出量が増加している。これは試行に使用したプリントサ
図 5. 本システムの環境影響度
の他のステージとなる。今後の改善の余地としては、調
達ステージにおいて製造時の環境負荷の少ない機器の選
定等が挙げられる。運用ステージの改善に関しては、環
境貢献度評価で述べたとおりである。
5.むすび
今回開発したITシステムのLCA概要、ITシステム環境
負荷評価手法の適用評価について述べた。本手法により、
環境に配慮したITシステムの開発、ならびにお客様が導
入されるITシステムのCO2削減効果の見える化が可能
となった。今後、この手法を活用したITシステム、ソリ
ューションやサービスの提供を通じて地球温暖化防止、お
客様の環境負荷低減に貢献していく所存である。
ーバが事業所内全体展開時の機器(試行規模に対してオ
ーバースペック)をであった為である。
図4(図中右)に「複合機による出力の統合管理」シス
テムの環境貢献度を示す。今回の評価では、「複合機に
よる出力の統合管理」システム導入により、CO2排出
参 考 文 献
[1] 松野泰也、近藤康之 編著:「IT社会を環境で測る-
グリーンIT」(社)産業環境管理協会(2007年)
Author
Document
Category
Uncategorized
Views
2
File Size
389 KB
Tags
1/--pages
Report inappropriate content