3) 結果と経過の等価的重要性 サービスは活動であるため

流通科学大学卒業論文
崔ゼミ
ホテル産業の研究とマーケティングについて
39990109
井上
麻衣
平成 14 年 12 月 19 日
-目次-
1.
ホテル産業の成り立ち
・ホテルとは何か
・ホテルの分類
2.
日本のホテル産業の移り変わり
・時代の移り変わりにおけるホテル建設ブーム
・ニーズの変化とホテル機能の変化
・外資系ホテルの参入
3.
ホテル産業の特徴
・ホテルの産業構造
・サービス業の特性
4.
さまざまな集客プラン
・他社との差別化
5.
シティホテルのマーケティング
・ホテルにおけるマーケティングの考え方
・データベース・マーケティングについて
・リレーションシップ・マーケティングの発想
6.
まとめ
1.ホテル産業の成り立ち
ホテルとは何か
今日、余暇がわれわれの間に普及し、その過ごし方もさまざまではあるが、例えば旅行
に出ればたいていの場合は旅館やホテルに宿泊すると思われる。「旅行に出てホテルをと
る」と一口に言っても超高級ホテルから、ビジネス・ホテル、リゾート・ホテル、さらに
はカプセル・ホテルに至り幅広い種類のホテルをわれわれは選択することができる。また、
都市ホテルにおいては、結婚式の式場選びの際にも数多い式場の中で、その選択肢の一つ
としてあげられ、食事をとるにあたっても町のレストランではなく、
「ホテルのレストラン
で」と選択されることもあると思う。このように、今日の都市ホテルは旅行者たちだけの
ものではなくなり、都市の部分システムとも言える諸機能を要求されている。
これから、この数あるホテルの中でも、さまざまな目的で利用されているホテル産業に
ついて、またそのマーケティングについて発表したいと思う。
まず初めに、関連法規をもとにホテルとは何かということを紹介する。
ホテルの概念は、主として「旅館業法」、「国際観光整備法」の二つの法律によって、そ
の機能や商品内容などが定められている。
「旅館業法」によると、宿泊施設には、ホテル、旅館、簡易宿泊所、下宿の四種類があ
ると規定されている。そのうちホテルは洋式構造および施設を持つ宿泊施設で床面積九平
方メートル以上ある客室を十室以上備え、宿泊料を受けて人を宿泊させる営業を行うもの、
とされている。また、ドアが完全に施錠でき、寝具は洋式でほかの客室・廊下との境は壁
作りであることも要件とされている。これに対し旅館は、和式構造による床面積七平方メ
ートル以上の客室が五室以上あることが必要とされ、ホテルのような施錠や壁による仕切
りは必要とされていない。こうしたことを総合して、一定水準以上の洋式施設を備えたも
のをホテル、同じく、一定水準以上の和式施設を備えたものを旅館とし、個室が無いなど、
これらの水準を満たしていない施設が簡易宿泊所、ということになる。
さらに、産業分類によれば、宿泊または宿泊と食事を提供する事業所(中分類七五に旅館
その他の宿泊所)として記載されており、小分類七五一に旅館、ホテル、観光ホテル、宿屋、
温泉旅館、割烹旅館、国民宿舎、民宿、モーテルが、主として短期間宿泊または宿泊と食
事を一般公衆に提供する営利的な事業所と記されている。
観光基本法による宿泊施設は、ホテル、旅館、国民宿舎、国民休暇村、ユースホステル
等であるが、民宿、ペンション、国民保養センター、官公庁、労働組合、民間企業の経営
する寮、会館など、数多い宿泊施設が存在している。
一方、「国際観光ホテル整備法」は、外国人観光客に対する接遇向上を目的に、昭和二十
四年に制定されたもので、外国人客を迎えるにふさわしい、一定水準以上のホテル・旅館
を登録の対象として、それぞれ「政府登録国際観光ホテル」、「政府登録国際観光旅館」の
名称の使用を許可している。
この「国際観光ホテル整備法」によると、ホテルとしての主要な条件は、①客室数が六
大都市で三十室以上、その他の都市で十室以上であること
含んで十三平方メートル以上であること
二分の一以上であること
②洋式客室はバス・トイレを
③バス・トイレを設置する客室が、全客室数の
④客室収容人員に応じたロビー等、共用施設があること
等が
定められている。
しかし、旅館業法には呼称に関する制限規定はなく、ホテルの名称の使用については自
由になっているのが現状だ。このことが、ホテルの名を用いる宿泊施設が旅館であったり、
モーテルであったりして、利用者に混乱を与える原因ともなっている。
ホテルの分類
一般的にホテルは、「営業形態」、
「立地条件」
、「利用目的」の三つの基準によって分類さ
れている。「営業形態」による区分は、トランジェント(短期滞在向)、レジデンシャル(長
期滞在向)、リゾートなどである。「立地条件」による区分は、シティホテル(都市)、サバ
ーバン(郊外)、ロードサイド、ターミナル、リゾートなどに分けられる。また、「利用目
的」による区分は、コンベンション(会議用)
、団体用から、ハイウェイ、ビジネス、迎賓
館などに区分することができる。
しかし、市場が拡大して、ホテルの利用が日常化した今日では、顧客サイドの利用動機
も多様化して、TPO でホテルを選択するようになり、利用目的による区分は、計画サイド
からの分類としては考えられるが、ユーザーサイドからは意味がなくなりつつある。
例えば、京都を例にとってみると、京都は政令指定都市で、わが国有数の大都市であり、
立地から見れば、当然都市ホテルということになる。しかしその反面、京都は観光のメッ
カであり、観光旅行の一環として利用されることも多々ある。その意味では、京都のホテ
ルはリゾート・ホテルとしても位置づけることができる。つまり、同じホテルでもとらえ
かたによっては、都市ホテルにも、リゾート・ホテルにもなってしまうということだ。
しかも、ホテルは可変空間であり、利用する人の目的によって姿が変わってくる。そう
した意味でも、ホテルを単純に、また固定的に定義づけることは実態に合わなくなってき
つつある。さらに、最近ホテル市場の細分化が進み、レディースホテル、ヤングイン、コ
ンドミニアム、ユーロテルなどといった新しいホテル形態が次々と登場しているが、こう
した傾向がホテルの明確な位置づけをますます困難にしている。
そこで、前述のほかに、近頃では「機能構成」による区分が考えられるようになってき
た。例えば、宿泊主体の単機能なビジネス・ホテルから、宿泊機能、飲食機能、宴集会機
能に加え付帯施設を持つ多機能な大型ホテル、さらには情報や文化的な機能を備えたコミ
ュニティーセンターともいえる複合多機能ホテルまで、いろいろな区分ができる。
しかし、実際のホテルは「営業形態」、「立地条件」、「利用目的」、「機能構成」のいずれ
かが重複して該当するので、区分は容易ではない。ホテルの機能についても、従来は、高
級=高料金=多機能ホテルであり、大衆ホテル=低料金=軽装備単機能ホテルといった表
現が可能だったが、今日では、単機能で高級なビジネス・ホテルも存在するし、多機能で
低料金のホテルもある。
これらをふまえて以下のように区分する。
<都市>
シティ・ホテル〔都市ホテル〕
→トランジェントホテル〔短期滞在向ホテル〕
・メトロポリタン・ホテル〔高級ホテル〕
・コマーシャル・ホテル〔中級ホテル〕
-ダウンタウン・ホテル〔都心ホテル〕
サバーバン・ホテル〔郊外ホテル〕
ターミナル・ホテル〔交通の基点・終点のホテル〕
ステーション・ホテル〔鉄道の駅前などのホテル〕
エアポート・ホテル〔空港ホテル〕
シーポート・ホテル〔港のホテル〕
-会館ホテル〔公共企業体経営ホテル〕
・コンヴェンション・ホテル〔会議用ホテル〕
・ビジネス・ホテル・ホテル〔和製英語・日本式商用者ホテル〕
・モーテル〔自動車旅行者向ホテル〕
・イン〔小規模ホテル〕
・寮・厚生寮〔会社・官公庁の宿舎〕
都市旅館
→観光旅館/商用旅館/割烹旅館/団体旅館/同伴旅館/修学旅行用旅館/簡易宿泊所
<観光地>
リゾート・ホテル
→観光ホテル〔保養・休養・レジャー用ホテル〕
・山のホテル
・湖畔ホテル
・海浜ホテル
・温泉ホテル
→トラフィックホテル
・モーテル
・ハイウェイ・ホテル〔自動車旅行者用ホテル〕
・イン〔小規模ホテル〕
→スポーツホテル
・ゴルフ・ハウス〔ゴルフ場ホテル〕
・スキー・ロッジ〔スキー客用宿舎〕
・モビレージ〔自動車旅行者のための施設と宿舎〕
・キャンプ・ハンガロー〔キャンプ用小屋〕
・ヨッテル〔ヨットハーバーに作られたホテル〕
・ボーテル〔ボート碇泊施設のあるホテル〕
→ユーロテル〔欧州の分譲式ホテル〕
コンドミニアム〔米国の分譲式ホテル〕
観光地旅館
→観光旅館/温泉旅館/湯治宿/国民宿舎/国民休暇村/国民保養センター/ユース・ホステル
民宿/宿坊/青年の家/厚生寮・保養所
2.日本のホテル産業の移り変わり
時代の変化におけるホテル建設ブーム
わが国のホテルの歴史は、江戸時代、オランダ人を対象とした宿泊施設に始まる。しか
し、当時はあくまで外国人専用の特別施設で、少数ながらも本格的な洋式ホテルが誕生す
るのは明治初期のことになる。
明治六年、八十二室と小規模ながらも、わが国最初の洋式ホテル、日光金谷ホテルが誕
生する。その後、軽井沢、日光、箱根などの避暑地を中心に旅館を洋風に改造したホテル
が生まれたが、利用者のほとんどは開国に伴って来日した外国人で、まだまだ外国人向け
の避暑地のホテル、という性格が強くあった。
その後、明治二十三年に、わが国ではじめての本格的な都市型ホテルとして誕生したの
が帝国ホテルだ。当時の明治政府は、文明開化の名の下に、外国からの先進文明の吸収に
必死になっていた。そこで、外国との対等な付き合いをするためにも、外国からの賓客を
迎えるにふさわしい施設として本格的な高級都市ホテルの建設が必要とされる状況にあっ
た。帝国ホテルはこうした背景の下誕生した。
大正時代に入ると、産業界からの投資が活発化し、大正六年~七年にかけ、軽井沢ホテ
ル、松島パークホテルなどのリゾートホテルが、全国的な広がりをもって建設されること
になる。その後、昭和五年に、国際観光局が設置されたことなどを契機に外国人観光客誘
を目的として、新大阪ホテル、琵琶湖ホテル、札幌ホテル、雲仙観光ホテル、富士ビュー
ホテル、名古屋観光ホテル、赤倉観光ホテルなどが相次いで建設された。しかし、当時の
ホテルは国内ビジネスマンにターゲットをあてた新橋第一ホテルを除き、ごく一部の限ら
れた階層のためのもので、ホテルがひとつの産業として成り立つほどの規模はまだ持ち合
わせてはなかったといえる。
昭和に入ってからも、旅館に比べて、ホテルの数は少なく、外国人接遇のための迎賓館
以来、オーナーのステイタスシンボルとして作られた戦前のホテルは企業経営と呼べない
ものが多くあった。企業としてまた産業といえる規模に近づいたのは昭和三十年代後半の
高度成長時代を迎えてからである。
戦後のホテル史は経済成長と国家イベントが背景にあったといえる。昭和二十五年に政
府登録ホテルの指定が開始され、二十七年には主要ホテルが米軍の接収から解除されて初
めて、戦後のホテル自由営業が再スタートした。
ホテル産業の急成長は、一般に“ホテルブーム”と呼ばれている。またこのブームは、
背景や流れから三つの期間に分けることができ、それぞれ、第一次ホテルブーム、第二次
ホテルブーム、第三次ホテルブームと呼ばれている。ただし、五十七年を境に、大都市で
大型ホテルの建設ラッシュが活発になっていることから、この時期を「第四次ホテルブー
ム」とする考え方もある。
・第一次ホテルブーム
第一次ホテルブームというのは、昭和三十年代半ばから三十九年にピークを迎える時期
を指す。三十四年の IOC 総会で三十九年の東京オリンピック開催が決議されると、これを
契機に、オリンピック需要を見込んで、ホテルの新増設の動きが活発化する。また、融資
の面でもホテルが主要事業整備対象とされたことなども加わり、ホテル建設はこの時期に
急速に加速していく。
わが国の主要なホテルの多くはこの時期に建設されている。オリンピック開催の本拠地
東京では、三十五年に銀座東急ホテルが開業したのに続き、パレスホテル、ホテルオーク
ラ、東京ヒルトン、羽田東急ホテル、ホテルニューオータニ、東京プリンスホテルなどが
続々オープンしている。また、大阪でも天王寺都ホテル、ロイヤルホテル、新阪急ホテル
などがいっせいに開業している。
この結果、三十五年から四十年までの五年間にホテルの収容能力は一挙に約二・五倍に
増加し、四十年のホテル件数は二百五十八件、二万四千六百十九室となった。また、この
頃から地方都市にビジネスホテルの建設が始められている。その他の施設としては、国民
宿舎、民宿などが、三十年代後半に増加している。旅館は、ホテルよりも早く、二十年代
後半から順調に伸びていたが、この時代は修学旅行生がその需要の一部を支えていた。三
十年代後半からは団体旅行時代といわれているが、大型団体旅館やヘルスセンターが各地
に建てられている。
この第一次ブームの結果、ホテルの大型化が急速に進展するとともに、機械化が推進さ
れ、事務の合理化が達成された。そして、これまで中小企業中心だったホテル業界に、東
急電鉄系の東急ホテル、西部電鉄系のプリンスホテル、阪急系の新阪急ホテル、近鉄系の
都ホテルなど、大手私鉄が相次いで参入、ホテルは産業としても急速に拡大していった。
・第二次ホテルブーム
昭和四十四年から五十年にかけてが第二次ホテルブームである。第二次ホテルブームの
きっかけとなったのが四十五年に大阪で開催された万国博覧会だ。大阪の東洋ホテル、ホ
テルプラザ、千里阪急ホテルなどがこの時期に開業している。他にも、万国関連で解説さ
れた中小規模のホテルは数多くある。また、東京でも、ホテルの客室稼働率が極めて高水
準だったのを背景に、四十五年には帝国ホテルが現本館をオープンしたほか、京王プラザ
ホテル、ホテルパシフィック、銀座第一ホテルなども開業している。しかも、万国博覧会
に続き、四十七年に札幌オリンピックが開催されたことから、札幌でも札幌国際ホテル、
札幌プリンスホテルが設立された。そのうえ、五十七年には、沖縄海洋博も開催され、四
十八年に沖縄グランドキャッスルホテル、パシフィックホテル沖縄など数多くのホテルが
誕生している。四十八年の石油ショック時に一時的に建設が減少したが、まもなく回復し
て以来、ホテルの建設は順調に進んでいった。
第二次ホテルブームでは、第一次ホテルブームの大型化が一段と進んでいるのが特徴と
いえる。千室規模の大型ホテルが多く出現し、中でもニューオータニはタワー増設で二千
室を超えるまでに大型化している。また、フロントや営業管理業務のコンピューター化、
オンラインシステムの導入など、技術革新の進展も事務処理面からの大型化をバックアッ
プした。
第二次ブームの最大の特色は、ホテル利用の大衆化が一段と進み、ホテルが地方都市に
まで波及し、これによってホテルチェーン化が促進されたことにある。しかし一方では、
都市旅館と都市ホテルの競合問題を起こす要因も含んでいた。
また、第二次ブームでは私鉄系に加え航空会社もホテル業界に進出している。
・第三次ホテルブーム
昭和五十二年以降今日に至るホテルブームは第三次ホテルブームと呼ばれている。
(昭和
五十年代後半とする考え方もある)
。このブームは第一次、第二次のブームとは違い、ホテ
ル建設を促進する国家的イベントもなく、積極的に需要が拡大する要因が不在名なままで
ブームが展開されたことが特色だ。
ホテル利用の日常化に伴い、地方都市を対象にいっそうきめ細かい出展が図られた。こ
れまでホテル立地に必要な人口は二十万人から三十万人といわれていたが、現在では五万
人規模に満たない都市にまでチェーンホテルが進出するようになっている。
・第四次ホテルブーム
昭和五十年代後半を第三次ホテルブームと区切ったとき、それ以降現在に至るまでを第
四次ホテルブームと呼ぶ。
現在のホテル建設の状況は、もはや第何期と区切れるような顕著な事例を挙げることは
できないが、経済の安定成長のもとで都市中心部のホテルが立ち並ぶと、都市周辺部に、
さらに周辺都市へと建設の流れが移行している。さらにこの勢いは衰えを見せず、昭和六
十年代に入ると都市開発やリゾート開発計画の核施設として、ホテル建設は続き平成の今
日に及んでも、年間二万室以上の参入を記録している。
ニーズの変化とホテル機能の変化
これまでに述べたとおり、草創期のわが国のホテルは、ごく限られた人々の利用する一
種のステイタス・シンボルともいえる位置づけにあった。しかし、第二次大戦後、ホテル
は少しずつ庶民の中に溶け込んでいき、いわゆる“ホテル・ブーム”を招くまでになって
いる。
昭和三十年代から四十年代まではモノの時代であり、豪華なシャンデリアとカーペット、
さらに内装のグレードとハードウェアのレベルアップで市場対応が可能であった。昭和五
十年代は高度成長が高まり、モノバナレ時代に移行した。工業化の成功によって経済の高
度成長を達した国民は、欲しいモノの充足が一巡して、モノから心へと求めるものが移り
変わっている。
このような、国民のホテルに対するニーズの変化をまとめると次のようになる。
顧客
社内接待用などの団体客中心から、ファミリー・カップル客へ、そして今日では
高齢・単身者の個人客へと移り変わっている。
目的
楽しみなどを目的とする週末観光から、休息を求めたリラクゼーションへ、さら
には、滞在を目的とするリフレッシュへと変わってきている。
要望
眠ることより居ること、といった豪華さが求められる時代から、機能的な遮光・
遮音性を求め始めるようになり、その後、寝心地のよさが望まれるようになって
きた。安眠というホテルの基本的な機能の価値が求められる時代へと移り変わっ
た。
このような市場ニーズの変化に従ってホテルも施設(モノ)機能構成の充実から、ソフト(
無形の付加価値)面の充実に焦点を移す営業政策へと転換を始めている。
市場の多様化に伴ってホテルの機能もますます多様化しており、さまざまなホテルが市
場で稼動しているが、宿泊業の基本的な機能は次のものであった。
① 宿泊機能[寝る・休む]
② 飲食機能[食べる]
③ 集会機能[集う・語る]
宿泊の歴史から見れば、これらは基本的な生理的欲求の充足を目的としたものであり、
ベッド、食物、集う場所という「モノの機能」が主体をなすものであった。
しかし、今日のホテルでは、泊まることは生命、財産の保全と休息といった古来の目的
から、旅行目的やその他の目的を達成するための手段となっている。食事よりも楽しく語
り合うという欲求充足の構成条件の一部となっている。集会機能も、より高次元な社会、
経済、政治活動に関する欲求や、個別の心理的欲求に対応するものになっている。
在来のホテルは、前述した基本的機能を補うものとして、補助的な付帯施設(娯楽室、読
書室、プール、テニスコート、売店など)を備えていた。今日ではこれらのサービスが独立
した機能として存在を主張するものとなっている。
また、これらの付帯施設も備えてあるという「モノ機能」が優先していたが、今日では
モノとしての施設グレードだけでなく、使い方、使わせ方のソフトウェアの均質が、商品
価値を生むものとなっている。現代社会がモノの充足を経て、心、精神的欲求充足の時代
に移行したためであるが、このような時代の流れに対応して、今日のホテルには新しいサ
ービス機能として次のものが定着するようになった。
④ 文化サービス機能 [教養・芸術・工芸・学習など知的向上欲求に資するもの]
⑤ スポーツ、レジャー機能 [楽しむ・鍛える・遊ぶ・リクリエートなどの欲求に資するも
の]
⑥ 商業サービス機能 [最寄り品・買回り品のショッピング・ファッション・生活情報の収
集]
⑦ 健康管理サービス機能 [健康医療・カウンセリング・ヘルスジム・理美容などの欲求に
資するもの]
⑧ ビジネスサービス機能 [商談・会議や展示催事・ビジネス情報交換・ビジネス活動補助
サービスなどに対応するもの]
これらの新しい諸機能は、いずれも都市生活に必要な社会的機能であり、これらのどれ
もが同一の所で、自由に選択されることの利便性は大きい。都市の大型多機能ホテルに、
これらの機能が装備されるようになったことが、プラザ化とかコミュニティセンター化と
いわれる原因であるが、ホテルが都市における市民権を確保した証といえる。
外資系ホテルの参入
日本に外資系ホテルが初めて参入したのは、昭和三十八年、東京ヒルトンホテルを開業
したヒルトンインターナショナルだ。当時の国内ホテル業界は業界団体を通じて、これに
に強力な運動を展開した。
その後、約三十年を経て、ヒルトンをはじめ多くの外資系ホテルがわが国ホテル市場へ、
資本支出を伴った形の本格的な参入を果たしています。それまで長い間外資系ホテルの空
白地帯であったわが国において東京、大阪、名古屋などの大都市を中心に資本支出を伴う
形で外資系ホテルの参入が行われている。また、東京の郊外にある東京ディズニーランド
隣接地では外資系主導型でホテル競争が繰り広げられている。
こうした中で、わが国で現在ホテル運営を行っている海外ホテル企業は、ヒルトンイン
ターナショナル、ホリデイ・イン、シェラトン、ラマダ、ハイアット・インターナショナ
ル、フォーシーズンズ・ホテル、リッツ・カールトンなどがある。
3.ホテル産業の特徴
ホテルの産業構造
ホテルは装置産業といわれ、初期段階での投資負担がとても大きな仕組みになっている。
装置産業とは、建物があり、そこへお客様がくるという産業構造のことだ。資本集約型産
業ともいわれている。ホテルは投資額の80%以上が、建物、設備として固定化する。ま
た、装置産業であるため、その設計によって、売上限界、客層、利益性向まで決まってし
まう。
さらに、立地条件が経営を左右するとまで言われるほど、立地のよさが営業収入に大き
く影響を与える。儲かるホテルの条件は一に立地、二に立地、三にも立地といわれるほど
に、立地選定は重要だ。
また、労働集約型でもあり、専門職、技能職が多数必要なので、ビジネスホテルを除き
人材の確保に困難さがあるのが特徴だ。
そして、その特性として、ホテルの商品価値を大きく四つに分けると次のようになる。
1)
物質的な面
・施設の使用機能
建物、設備等の性能が問題となるが、単なる使用のほかに、
空調の温湿度、給湯温度の選択幅までが商品価値の対象となる。
・商品に付帯して提供されるもの
・飲食(料理、飲料)の提供
消耗品の材質と備え付けの範囲
これらはモノの機能として、泊まる、休む、食べる
という価値を提供している。
2)
人間の行為による面
・人的サービス
調理作業から清掃作業にいたるまで、人間の行為によって付加価
値を作ること。労働集約産業としてのホテル業では、主要な価値を構成する役務であ
る。人的サービスについて重要な個とは属人的な資格条件とともに、これらの役務の
提供が、いかに「正しく」
「所定の時間に」
「タイミングよく」なされていたかが問題
になる。商品の価値が時間品質として評価される特徴がある。接客サービスについて
は、顧客に、いかに好感を与えるかが作業遂行要件の中で大きなウェイトを占める。
さらに、従業員の知識、情報の範囲や質も商品価値としての評価を受ける。
3)
機能的な面
・情報サービスの提供
顧客の求める必要な情報の提供。顧客が満足してホテルを
使えるようにCATV等を活用して、有益な最新の情報を提供するコンサルティング
機能まで含めたモノに関係の少ない無形の便益サービスだ。これらは、直接人間の行
為によらず、機能システム対人へのサービスである。顧客ニーズの多様化の中で、人
対人サービスの品質管理は、ますます複雑になっていくので、機能に置き換えられる
ものは急速に機能化していくと考えられる。ホテルの社会的機能を云々される今日、
これらのサービスは、安全、防犯までを含めて、ホテル産業の社会的貢献を示すもの
となる。
4)
感覚的な面-精神的な満足度の充足
・商品価値の完成
精神的満足度は1)、2)、3)の項目が完全に提供されたときに
完成する。いわば組み合わせの総合結果に基づいて商品が完成することになる。また
この結果が、ホテルのグレードを決める要件となる。ホテルの提供する商品の特殊性
は、対人サービスのウェイトが高い点と、顧客の精神的満足感という抽象的な側面に
ある。顧客はホテルの利用を通して実現される満足感を求めていることを認識しなけ
ればならない。
サービス業の特性
サービスとは、個人や組織を対象とする価値生産的な活動のことである。価値生産的と
いうのは、サービス活動が、個人や組織に何か価値がある結果をもたらすからだ。個人や
組織にとって何らかの便益(ベネフィット)をもたらす活動そのものが、市場取引の対象と
となるときにサービス(商品)と呼ぶことができる。
次に、モノ製品にはないサービス商品の特徴を述べる。
1)
無形性
サービスは活動なので形を持たない。しかし、この特徴のために、財とし
てのサービスは物質の場合よりも多くの制約条件をかかえることになる。まず、作り
置き、つまり在庫を持つことができない。次に、サービス商品を生産場所から他の場
所へ移動することができないということも意味して。このほか、サービスが無形性の
活動であるから生じる特徴として、一過性(一回ごとであって、まったく同一の繰り返
しはできないこと)、不可逆性(起こったことを元に戻せないこと)、認識の困難性(それ
と認識しがたいこと)、バラツキ性(サービスの品質がその度ごとに異なること)などを
あげることができる。
2)
生産と消費の同時性
これは、サービスは活動であるので、対人サービスの場合に
は、活動の対象つまり顧客は、活動の行われるその場に同時に存在しなければならな
いということである。活動の受けてである顧客が存在しなければ、生産側にとっては
同じ活動であってもサービスとはいえない。
3)
結果と経過の等価的重要性
サービスは活動であるために、対人サービスでは活動
の経過を顧客が体験することになる。つまり、顧客は、サービス活動の結果だけでな
くプロセスも体験しなければならない。サービスがもたらす結果は、結果と過程の両
方からもたらされる。
)
顧客との共同生産
対人サービスは顧客を対象とする活動であることから、実際の
サービス活動は、顧客とサービス提供者との相互作用の形をとる。このことはモノの
生産に比べて顧客がより積極的な役割を担わなければならないことを意味している。
サービスは、こうしたモノ製品がもたない特徴を有するためにモノ製品の製造の場合
とは異なる生産・販売の仕組みを必要とする。このことは、サービスが全体の商品の
大部分であろうと、一部分であろうと同じことである。
4.さまざまな集客プラン
他社との差別化
最初に述べたように、ホテルは立地よってその種類も変わってき、また利用する顧客に
よってもその性質が変わってくる。これらを上手く利用して、各ホテルはさまざまなプラ
ンを打ち出している。次に記載するのはその一部である。
《神戸ベイシェラトン ホテルアンドタワーズ》
ノーブルメンズセミナー
http://www.sheraton-kobe.co.jp
男性の教養、内面等を磨くセミナー。講師は女性
費用は3回\30,000(セミナー、食事代込み)
記念日プラン
デラックスダブルルームの宿泊、ディナー、朝食付
ケーキ、花、カクテルのサービスもある。
費用は一人\23,500
《新神戸オリエンタルホテル》
http://www.oriental.co.jp
「ヴェルサイユ展」鑑賞券付
一泊朝食付¥10,000~
宿泊プラン
2食付¥15,000~
阪神淡路大震災記念「 人と防災センター」視察プラン
このプランは 8 名以上の団体客のみのプランだ。「人と防災センター」の入場
券と宿泊(1 泊朝食付)をセットで、費用は、平日・休日¥8,000~
休前日
¥11,500~
ふゆの出張応援キャンペーン
1 泊宿泊のみ¥9,000~
朝食付¥10,000~
《神戸ポートピアホテル》
エグゼクティブフロア
シングルルーム限定
http://www.portpia.co.jp
25~28階の高層階にエグゼクティブフロアというものを設
けている。このフロアはほかの客室に比べて客室がゆったりとしており、フロアには専用
ラウンジがある。また、フロントまで行かなくても専用ラウンジでのチェックイン・チェ
ックアウトが可能となっている。またクラブラウンジでは、無料の飲食サービスもある。
ヒーリングルーム
「休息」と「安眠」をコンセプトにした部屋で、風水にもとづくカ
ラーセラピーやアロマテラピーなどが施された部屋がある。
また、当ホテルでは大小合わせて35もある宴会場を利用して、クッキングや、コーディ
ネイト、ダンス、絵画などの文化教室も開かれている。
《メリケンパークオリエンタルホテル》
レディース アフタヌーン
http://www.meriken-oh.co.jp
通常 15:00 チェックインを 13:00 に早め、バルコニーでのア
フタヌーンティーをルームサービスしてもらえるプラン。
¥11,000~
レディース アロマ
アロマテラピーやボディートリートメントサービスをして
もらえるプラン。
《ホテルオークラ神戸》
¥14,000~
http://www.kobe.hotelokura.co.jp
スタイリッシュビジネスプラン
インターネット回線を導入した「ブロードバンドフロ
ア」での宿泊で、ノートパソコンを持参していれば常
時接続が可能。
カップルステイプラン
朝食はルームサービスで、シャンパンといちごがサービスされ
る。また、16階以上の高層階での宿泊となる。
《大阪新阪急ホテル》
http://hotel.newhankyu.co.jp
らくらくミッドナイトプラン
深夜0時~午前9時までのステイで料金は\6,000
予約は当日の 23:00~
《ウェスティンホテル淡路》
イングランド ウェディング
http://www.westjn-awaji.com
イングランド代表チームにちなんだ婚礼プラン。代表チー
ムが宿泊した同フロアでの宿泊をセットにしたプラン。
このように、神戸を中心に、七つのホテルの例をあげてみても、それぞれ個性的で、そ
のホテルの特徴や、コンセプトを生かしたプランで販売活動を行っている。神戸ポート
ピアホテルでは、ワンランク上の上質のくつろぎやゆとりをもとにしたフロアを用意し、
シティホテルとしての性質と、リゾートホテルとしての性質を上手く引き出している。
また、ハーバーランドにあるため、若いカップルや女性客をターゲットとしたメリケン
パークオリエンタルホテルのプランや、立地上カップルもターゲットとしているけれども、
シティホテルゆえに、ビジネス客向けのプランもあるホテルオークラなど、この狭い神戸
の中にあるホテルだけに、ほかのホテルとの差別化ははっきりとしている。
5.シティホテルのマーケティング
ホテルにおけるマーケティングの考え方
西欧文化の模倣段階から、現代日本の文化風土に適合するさまざまなタイプのホテルが
作られる時代に変化してくると、売る側の理論から買う側の理論へと、発想の転換が迫ら
れることになる。とくに、近年ホテル市場参入の増加と、海外旅行経験者の拡大は、市場
(利用者)サイドのニーズを高度化させ、ホテルに対する評価能力を向上させている。し
たがって、ホテルマネジメントも自主的な個性を打ち出す必要に迫られ、ホテル多様化の
時代を向かえている。
国際化の進展する中でホテルの保存する施設空間は、二十四時間稼動する都市空間であ
り、情報発信基地としての役割を担うものであると同時に、さまざまなイベントの舞台装
置としても、ほかの都市施設のもたない優れた条件を持っている。都市文化を高めるため
の働きを、ホテルという施設空間のハードとソフトを駆使して試行錯誤するなかで、付加
価値を生むものと、生まないものを発見することができるものと考えられている。社会に
有用なサービスを提供することを通じて、事業を繁栄させる道を探すことが、マーケット
インの立場であるといわれている。
昨今のホテルは商品力を高めて市場の評価を得るために、次のような特徴づくりに留意
するようになっている。
・ホテル特性の明確化
形、規模、機能性、新技術(ニューメディア等)、デザイン、サ
ービス品質、芸術性、文化性、安全性などで差異を表現しているか
・ホテル利用客のメリット顕在化
利用動機に結びつく特性があり、それを市場に十分
説得できるか
・情報サービスの品質に差異を示す
・価格の差別化
その価格が対象客層に強い動機付けとなるか
・エージェントに対する説得力
・企業ブランドと差別化戦略の一致
また、ホテルのマーケティングは、ホテルの商品特性を前提にして考えなければならな
い。ホテルの商品価値は、流通業における「モノ」としての商品価値とは基本的な違いを
もっている。
ホテルの商品は事前に内容を確かめることができない。来店して利用することによって
初めて評価が可能となる。商品価値の構成要素は、モノ機能(有形財‥建築、設備、料理
など)、人的サービス機能(無形財‥役務、知識、技能)と、情報サービス機能(無形財‥
ビジネス情報、文化、経済、生活、娯楽、防災、防犯、衛生)の三つである。これらの機
能が複合されて総合的な商品価値を形成するとともに、諸要素の品質レベルを一定水準に
保つマネジメントが存在しなければならない。しかし、ソフトの部分は、生産ラインに乗
せられるものではなく、接客の店頭で人対人サービスによって、付加価値を発生させると
ころが特徴である。
ホテルの商品は移動できないものであるので、企業イメージを向上させることと、顕在
客のリピーター化に関するビジネス活動に主力を置かざるを得ない。別の言い方をすると、
ホテルのセールス活動は情報提供活動と顧客の組織化戦略の展開が基本活動となる。市場
が成熟すると、企業のレベルでも、顧客満足の質的向上や、社会的貢献の方向に進むこと
になる。このような状況のもとでは、企業の市場情報収集力が必要条件である。AMA(ア
メリカマーケティング協会)はマーケティングリサーチを、企業のマーケティング活動の
一部として位置付けられるものとして、つぎのように定義している。
「商品及びサービスのマーケティングに関する諸問題についての資料を組織的に収集し、
記録し分析することである」したがって、ホテルのマーケティングリサーチは、顧客ニー
ズを原点として施設、人的サービス、料理などの商品、情報、システム、価格などから生
まれる付加価値を、最大に高めるための総合的な企業活動である、と定義することができ
る。
データベース・マーケティングについて
今日、価格は顧客が商品を選ぶときに、もっとも大きな影響を与える要素である。しか
し、今日の企業は顧客のロイヤルティを構築し、離反を減らすための方法を探っているた
め、市場シェアを維持・増加させるための大幅な値下げは必ずしも求められない。
このようなマーケティングの中心となるのが、データベース・マーケティングである。
その考え方とは次のようなものである。企業は、自社のデータベースの中に、マーケティ
ング戦略の成功のカギがあることを認識し、メリットになると思われる各顧客の情報をで
きるだけ多く収集する。これらの情報へのアクセス権は接客や商品企画、サービスあるい
はマーケティング・プログラムに関わる全ての部門に提供される。私は、ホテルにかぎら
ず、サービス業のマーケティングを行うにはデータベース・マーケティングは必要不可欠
なのではないかと思い、データベース・マーケティングについてのことを次に記載するこ
とにした。
データベースは以下の事柄をサポートするのに用いられる。
・いきとどいた顧客サービスを提供すること
・個々の嗜好にあわせた製品とサービスを創造すること
・個別化されたマーケティング・プログラムを開発すること
・顧客一人一人と対話を行うこと
・優良顧客を紹介プログラムにリストアップすること
・顧客を収益性と嗜好によって分類し、自社の利益を支えるように顧客に特別な配慮を
行うこと
・新しい見込み客へのマーケティング・プログラムを効果的に改善すること
など、他にもたくさんあるだろう。
一九六〇年から九〇年にかけて、多くのなじみのある製品が大量生産によって供給され
た。サプライヤーは大多数の人々が何を欲しているのかを知り、非の打ち所のない製品を
安価に生産し、印刷媒体やテレビで大々的に宣伝した。そして、すべてがうまく機能した
のである。こうしてマス・マーケティングは、過剰な競争、低価格、多様な製品を生み出
し、その効果は肯定された。より良い製品をより安価に供給して、消費者の実質的な所得
を増大させたのだ。
しかし、小売店、仲買人、販売代理店、病院、保険会社そして他のサービス会社は、マ
ス・マーケティングの成功によってあまりに巨大化したため、顧客と接し、その意見を聞
くということができなくなってしまった。彼らは何十万、何百万という顧客データを蓄積
し、操り、そこから情報を引き出す手法を必要とした。かつて、店主たちは、顧客に関す
る情報を頭で直感的に収集し、処理して、必要な情報を抽出することができた。今日のデ
ータベース・マーケティングは、その同じ成果をコンピューター技術を用いて提供する。
データベース・マーケティングの簡潔な定義は次のとおりである。
顧客や見込み客に関するデータを収集し、コンピューター化されたリレーショナル・デ
ータベースによって管理することで、顧客により良いサービスを提供し、長期的な関係構
築を実現すること。データベースをうまく使えば、顧客のロイヤルティ構築、顧客の離反
率の低下、顧客満足と販売の増加に効果をもたらす。データベースは、我々が顧客および
見込み客を選定するのに用いられる。そして正しい顧客に適正なタイミングで、ふさわし
いメッセージを送ることができるようになる。その結果、マーケティング投資に対するレ
スポンス率を増大させ、注文ごとのコストを軽減させ、ビジネスを軌道に乗せ、利益を増
大させる。
次に、実際データベース・マーケティングを行うにあたって、必要になってくる顧客のプ
ロファイリング」について記述する。一人一人の顧客を似たような嗜好や購買活動を持つ
グループに分類し、各各の求めているものを提供するのである。この顧客プロファイルに
よって、少なくとも対話の糸口がつかめるようになる。
顧客プロファイルを製作するにあたって、以下の5つの手法が用いられる。
[手法1]商品購買パターンによるプロファイリング
顧客が買っている商品、購買の頻度、購買日などを観察し、この分析をグルーピ
ングの手段に使う方法。
[手法2]デモグラフィクスによるプロファイリング
購買金額、レスポンス率、顧客維持期間といった行動と、デモグラフィクスとい
われる、収入、年齢、子供の有無、家屋の種類と資産価値、民族、性別、既婚か
未婚か、などその他何百種という要素からなる、判別や測定が可能で、記録する
ことのできる顧客のさまざまな属性との二つの変数の比較を行うこと。
[手法3]クラスターコードによるプロファイリング
デモグラフィクスをブロック単位から、似たようなライフスタイルを持つ人々の
クラスターにグループ化して分類する。ここからプロファイリングが行われる。
[手法4]ライフスタイルによるプロファイリング
顧客の属性に加え、趣味や関心ごともデータに加味する。
[手法5]ジオグラフィクスやマッピングによるプロファイリング
ジオグラフィクス、いわゆる地理情報を用いたデータベース分析のこと。
データベース・マーケティングは、コストを抑えてより多くの製品やサービスを販売し、
収益を増大させるためだけのものではない。もちろんそれは成果の一つかも知れないが、
まず、データベース・マーケティングは、顧客情報を管理する一つのツールである。その
情報はさまざまな方法で、「既存顧客の維持率」と「新規顧客の開拓率」を増大させるのに
用いられる。これこそが戦略の核心である。データベースは、必要な生の顧客情報と、戦
略評価に不可欠な測定装置の両方を提供する。
顧客の視点から見れば、データベース・マーケティングは顧客が満足し、個人として認
識してもらい、サービス、親しみ、そして情報を与えてくれる手段である。そのリターン
として顧客はロイヤルティの向上、離反率の低下、販売増といったかたちで報いてくれる。
真の顧客満足こそ、データベース・マーケティングの成功の目標であり、証でもある。
リレーションシップ・マーケティングの発想
リレーションシップ・マーケティング(RM) とは、企業が顧客との間に長期的な関係を結
び、企業と顧客の双方がその関係からメリットが得られるように工夫するマーケティング
のアプローチである。それは一回ごとのサービス・エンカウンター(真実の瞬間)の質を重視
する立場から、企業と顧客との連続する「関係の質」を重視する立場への転換であり、そ
の関係において、顧客への長期的な価値を提供することを目標とする。一回ごとの取引で
はなく、過去の取引内容が将来の取引へ好ましい影響を与え、連続していくときに関係性
が生まれる。このリレーションシップ・マーケティングもサービス業にとって重要な役割
を担っている。
RM は、サービス・プロフィットチェーンが、顧客価値の増大による顧客ロイヤリティの
向上、その結果としてのリピート購入の実現、という流れで暗黙的に前提としていた、企
業と顧客の長期的取引関係を明示的にハッキリと正面にすえる。また、RM では企業からの
一方的なサービス提供ではなく、顧客との双方向の相互作用が重視される点も、ほかのア
プローチとは異なっている。
RM が重視されるようになった理由には、第一に大量生産を前提とするマス・マーケティ
ングの行き詰まりが強く意識され始めたことがある。顧客ニーズが多様化・高度化して、
高い選択肢と独自の価値判断をする顧客たちは、新しい商品やサービスを購入する際に、
自分なりの生活シーンにおける商品の位置づけとアソートメント(組み合わせ)を重視す
る。他人が持っているから自分も、という時代は去りつつあるのだ。マーケッターは、顧
客が個々に持っているニーズを敏感に把握しながら、そのニーズを自分でハッキリとは具
体化できないでいる顧客に対して、新しい提案をしていかなければならない。そこで、顧
客ニーズの方向と行く先を学習しながら提案をし続けるために、効率の良い試行錯誤の方
法が求められることになる。
第二点としては、マス・マーケティングのなかで生み出される新製品の市場へのインパ
クトが低下したことがある。また、商品のライフサイクルが短命化し、新製品の開発コス
トが増大して企業の負担となっている。
こうした市場環境の変化とリピーター重視の新しい発想が、顧客との関係性重視へと方
向転換をうながしたのだ。
リレーションシップ・マーケティングは、顧客との対話から始まる。顧客や見込み客に
話しかけることで、相手からの応答を引き出すことができる。そして顧客と情報や意見を
交換し、ニーズを聞き出し、友情を築き上げることができるようになる。アンケートなど
の調査は、まず顧客との対話を始める最適な手段である。
アンケート調査は、外部データや統計的なモデリングを使うよりも、より個人的な顧客
情報を知ることができる。ほとんどの人は意見や要望を聞かれるのが好きなものだし、特
にその意見に誰かが耳を傾けてれる場合はなおさらである。特にこの後者のポイントが、
アンケート調査では重要なのである。
リレーションシップ・マーケティングの効果を顧客サイドと企業サイドの視点から述べ
てみる。
まず、顧客にとってのメリットについて、顧客は、特定のサービス提供者と長期的な関
係を持つことによって、何か価値が生じる見込みがある場合にだけ、その関係を続ける。
顧客が関係性を維持する代表的な三つの理由を挙げる。
1、探索行動の節約
われわれは商品を購入しようとする場合、より良い商品やサービスを求めて探索活動
を行う。この場合、顧客は適切なサービス提供者を決定するために強いストレスを感
じることが多い。特定の企業との関係を保つことは、こうした選択のための労力やス
トレスから顧客を解放してくれる。
2、個人的コンサルトの獲得
充分な知識や経験を持っていない、さまざまな種類の製品やサービスの商品について、
能力に信頼が置ける相談相手を持つことは、個人の生活の質を高めるための「社会的な
サポートシステム」の役割を果たしてくれる。
3、自分の意思の反映
サービス提供者に積極的に自分の意思を伝えることで、サービス内容の生産に「自ら
参画し、コーディネイトすることで、顧客自信にフィットした自分流の情報、商品サ
ービスを手に入れる」という側面も重要である。
次に、企業にとっては、以下のような効果を生じる。
1、固定客の確保による販売の増加
2、マーケティング・コストの削減
宣伝やプロモーション費用が下がり、顧客に対するオペレーション上の初期投資額が
減少する。
3、口コミ効果
4、従業員ロイヤリティの向上
顧客との継続的な関係が築ければ、従業員は満足した顧客から良いフィートバックが
返るという好循環に入り、従業員の満足感とロイヤリティも向上することができる。
5、顧客の生涯価値
企業との関係性を築いた顧客は、引き続き商品を購入してくれるので、その一人の顧
客が企業にもたらす全体的な価値は大きなものになる、これを顧客の生涯価値と呼ぶ。
6、顧客からの学習
顧客に密着し、顧客と共にそのニーズの充足方法を考えることで、新たなビジネスチ
ャンスのヒントをつかむことができる。
先ほどから、データベース・マーケティングとリレーションシップ・マーケティングに
ついて述べてきたが、大事なことは、データベース・マーケティングを市場調査と混同し
ないことである。市場調査担当者は実際のところ、顧客や事業自体の成功を気にかけたり
しない。その関心は真実の追究にある。そこでは、市場に関する正確な報告だけが吟味さ
れる。一方、先ほどの二つのマーケティングは、顧客との関係を構築することで、利益を
生み出す方法を見つけることが目的なのである。
6.まとめ
日本のホテルの歴史はまだまだ浅い。しかし、時代の変化に伴いホテルのありかたも次々
と変化していった。そして今日、ホテルは建設ラッシュによって供給過剰状態にあり、各
ホテルはそれぞれの個性を生かし、生き残りを図ろうとしている。また、デフレ時代の影
響で、格安ホテルの進出や、既存のホテルでもセットなどでお得なプランなどを提供して
価格面で消費者にアピールしているところも少なくはない。しかし、本来ホテルの持つイ
メージというものは、豪華さや、高級感また、清潔感といったものであった。そして、ホ
テルを利用する顧客もその非日常的な空間に魅力を感じているのではないかと思う。伝統
のあるホテルや、高級ホテルという名の下存在するホテルはこの本来のスタイルを保ち続
けることが可能であると思うし、またそれがそのホテルの個性であるとも考えられるが、
格安ホテルと高級ホテルの中間に位置している数多くのホテルは、立地などの個性以外に
決め手となるポイントが必要となってくる。今後このままデフレ経済が続くようであれば、
ホテルは高級ホテルと格安ホテルの二極化が進むと思われる。
二極化が進む中で、そのハザマにあるホテルは、これからは地元にどれだけ密着してい
けるかが重要なのではないかと思う。旅行者が利用することは当然なのだが、それに加え
て、日本のホテルは、レストランなどの飲食部門やウェディングなどの宴会部門での売り
上げが、宿泊部門の売り上げと肩を並べていることに注目したい。これは、地元の顧客が
いかにホテルを利用しているかを示す割合だと私は考える。
今までハード面のことばかり述べてきたが、実際、非日常を体験したいという願望は、
ホテルの高級そうな見た目だけではなく、そこで繰り出されるあらゆるサービスに対して
も及んでいると思う。立地や価格も重要だが、それは最高のサービスがあってこその話で
ある。最終的にホテルが差別化を図るなら、サービスで他社と勝負に挑むべきであると考
える。どれだけ豪華なホテルでも、サービスが悪ければ、その価格に対して疑問を感じる
であろう。身近なホテルであってもサービスがよければ、通い続けることができると思う
し、それが顧客満足といえるのだと思う。
その最高のサービスを提供しているのがわれわれと同じヒトであるということに、私は
大変興味をそそられる。ヒトがヒトに対してサービスを提供し、そのことによって高級感
を味わえたり、優越感に浸れたりすることができるのなら、それはある意味催眠のような
ものではないのだろうかと思うときがある。形あるモノではなく、ヒトが作り出す見えな
いモノに対して、感動を感じることができることが、すばらしいと思う。
最後に、話がだいぶそれてしまったが、この一種の文化ともいえるホテルのこれからの
発展を願い、私の卒業論文を締めくくらせていただきたい。
参考文献
アーサー・ヒューズ著「顧客生涯価値のデータベース・マーケティング」
近藤隆雄著「サービス・マーケティング」
作古貞義著「ホテル運営管理論」
作古貞義著「ホテル事業論」
鈴木宏著「ホテル」
ホテル化戦略研究会編「21世紀のホテル産業像」