夢への第一歩(PDF:626KB)

夢への第一歩
三好丘中学校 三年
宮 原 友
たい人もいれば、あまり冒険したくない人もいるだろう。それを探
りながら、一人一人に心を込めて技術を注ぐ。仕事をしていて一番
嬉しいのは、「お客様がお帰りになる時の笑顔と再来店して頂いた
時だ」と楽しそうに教えて下さった。自分の技術や能力が誰かのた
めに役立っているという貢献心や、それを喜んでもらえた時の幸福
感が仕事の土台ややりがいになっているのだと感じた。私も将来、
としているのか、私は知らない。他に例を挙げるなら、担任の先生
し、父が働く会社の名前は知っていても、父が日々誰と何を作ろう
る。朝早くから夜遅くまで、私達家族のために働いている。しか
当にやりたい事って何だろう。小さい頃は、ケーキ屋さんや学校の
本当にやりたい事が仕事になればいいなと私も思う。でも、私の本
て、本当にやりたい事を見つけて下さい」とアドバイスを頂いた。
あっという間に迎えた最終日。「やりたい事に、どんどん挑戦し
そんな貢献心や幸福感にあふれる仕事につきたいと思う。
だ。英語の教諭・三年二組担任・剣道部顧問という事は知っている
先生になりたかった。でも、いつからか、自分が何をやりたいの
仕事とは何か。それを考える上で、最も身近な存在として父がい
が、それ以外は知らない。父や先生は、何が楽しくて、何が辛く
いった特技もない。そんな私に何が出来るのか。例えば、もし私が
か、何に向いているのか判らなくなってきた。私のような中学生は
おいて、たった三日間という限られた時間ではあったが、私は、仕
医者になるといったら、周りの反応はどうだろう。その成績では無
て、何に迷いながら、何を大切にして仕事をしているのか。今ま
事について、初めて真剣に考える機会を得た。普段決して見る事の
理でしょと笑われそうだ。何より当の本人である自分が、医学部に
決して少なくないと思う。勉強も運動神経も人並みで普通。これと
出来ない慌ただしい開店前やお客様一人一人によって変化する生の
受かる気がしない。いや違う。人に笑われたり、失敗するのが嫌
で、そんな事に関心もなかった。しかし、二年生の職場体験学習に
接客。単にお金を稼ぐための手段では説明出来ない、仕事に対する
で、言葉にしたり、挑戦したくない自分がいる。今、学力が足りな
何よりもお客様をよく観察されていた事が印象に残っている。お客
ていた。仕事柄、特に流行に敏感で、常に技術の向上に努力され、
顔・お店の清掃・色々な下準備など、心遣いは細部にまで向けられ
客様の御要望通り、ただ美しく仕上げるだけではなく、挨拶・笑
私が、お世話になったネイルサロンの店長さん。その仕事は、お
店員さんはいいな、自分の本当にやりたい事が仕事になっていてと
れでは無難な事ばかりにしか手をつけられなくなるのではないか。
を望む故、私の意欲や士気は、どんどん低下している。しかし、こ
自分がいる。失敗したくない自分。出来もしないのに完全である事
者にだって何にだってなれるはずなのに、その一歩を踏み出せない
いなら、その自分をしっかり認め、そこから必死に努力すれば、医
なま
強い思いを間近で感じた三日間であった。
様一人一人、顔・性格・生活スタイルも違っている。個性的になり
思う。では、店長さんは、何の迷いもなく、いきなり天職に出会え
たのだろうか。そんなはずはない。そうであったのなら、あのアド
バイスは出てこないと思う。きっとご自身も苦しみ悩み続けたから
こそのアドバイスだったと私は考えた。店長さんも父も先生も一足
飛びに夢にたどりついたはずがない。きっと悩んで大人になったは
ず。皆すました顔で大人をやっているけれど、必死にもがいた中学
時代があったのかもと想像すると少し安心する。私も三人に負けな
い様に必死にもがきたいと思う。やりたい事に出会うのは、簡単な
事ではないだろう。でも私もいつか誰にも負けない自分だけの大好
きを必ず手に入れたい。百発百中の成功なんて有り得ないのだか
ら、失敗を恐れず挑戦し続ける自分でいたい。挑戦。店長さんのア
ドバイスは、偶然にも丘中の校訓と同じであった。今回の職場体験
学習を通して校訓に込められた強い思いを再認識した。どうすれ
ば、本当にやりたい事に出会えるのか、まだ判らないが、今はた
だ、目の前にある勉強・部活を手抜きせず、毎日全力で取り組みた
い。どんな時でも、自分の可能性を信じ、ためらわず、一歩を踏み
出し続ける自分でいたい。そうして積み重ねていく毎日の一歩一歩
のその道の先に、必ず自分の未来が見えてくると信じて。
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