ストラテジスト紀行 Vol.2 オータム・イン・ニューヨー

Strategy Report
2013/11/11
チーフ・ストラテジスト 広木
隆
ストラテジスト紀行 Vol.2
オータム・イン・ニューヨーク (Autumn in New York)
6 年ぶりに訪れたニューヨークは、まったく変わっていないように思えた。街は相変わらず活気にあふれ、
どこに行っても多くの人で賑わっていた。前回来たのはリーマン危機の前だから、その時の景気の良さ
は半端なものではなかった。まずタクシーがまったくつかまらない。よく白タクを利用したものだった。そ
の点、今回は 6 年前に比べるとまだマシで、時間と場所によってはタクシーが拾えた。それでもつかま
えにくい状況に変わりはないから、徒歩と地下鉄でほとんど移動した。よく歩いたおかげで、日本に帰
って体組成計で測ったら体脂肪が 500 グラム減っていた。
まったく変わっていないという印象は、超エネルギッシュであるという、この街の本質的な部分に対する
ものであり、ご無沙汰していた 6 年の間に無論、変化も多くある。例えば、ハイライン跡地の空中庭園。
6 年前には無かったものである。
ハイライン~トライベッカ
ハイラインは、ロウワー・ウエストサイドで運行されていた高架貨
物線跡を、空中緑道公園として再開発したものだ。主にミートパッ
キング・ディストリクト(MPD)とチェルシーにまたがるエリアである。
ここが一大観光スポットとなったおかげで、MPD の開発も一気に
進んだ。6 年前に来た時は、MPD がちょうど注目され始めていた
(ハイラインからエンパイヤー・ス
テート・ビルディングを望む。レン
ガ造りの建物が残るMPD)
けれど店はまだ疎(まば)らだった。
MPD はミートッパッキングというその名の通り、精肉加工店が多く集まったエリアだった。ダウンタウン
の西端という場所柄、交通の便が悪く、ハイラインの廃止後は一気に荒廃した地域であった。しかし、
10 年くらい前から、精肉工場跡をリノベーションしたブティックやレストランが徐々に建ち始めた。そして
ハイラインの公園化&観光地化で一気に、最先端エリアへと大変身を遂げたのである。今もなお数軒
残る精肉店や古いレンガ造りの建物と、しゃれたショップとのミスマッチ感が、他にはない独特な雰囲
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気を醸し出している。ヒップなクラブの本拠地でもある。
ニューヨーカーの流行りはルーフトップ(屋上)のバーで飲むこと。摩天楼の夜景を酒の肴に一杯飲ると
いうのが心地よい。ウィリアムズバーグのワイス・ホテルのルーフや、ハイラインを跨いで建つスタイリ
ッシュなデザイナーズ・ホテルのスタンダード・ホテルのルーフが大人気だ。今回は同じくハイライン沿
いにあるガンズブール・ホテルのルーフ・トップ・バーへ。オープン以来、パリス・ヒルトンらセレブが連日
のように訪れる。プールサイドからはハドソン川、エンパイア・ステートなどニューヨークの素晴らしい眺
望が楽しめる。「セックス・アンド・ザ・シティ」に登場したホテル、ソーホー・ハウスを見下ろすことができ
るのも、またちょっと、いい感じである。
このプールサイドからの写真に、遠く写っているのが、1 ワー
ルドトレードセンター 。9・11 の跡地、グランド・ゼロに建てられ
ている高層ビルだ。僕が訪れたときには外観はほぼ完成してい
た。あとは周辺の整備を残すのみという感じである。この写真
は、1 ワールドトレードセンターの対面に、43 階建の本社ビル
を構える某投資銀行のオフィスにお邪魔した時に撮影したも
の。1 ワールドトレードセンターの完成はまさにニューヨーク
の復活、米国の復活を象徴するものといえるだろう。
その某投資銀行に勤める友人とランチを食べたのが、ト
ライベッカにある「ロカンダ・ヴェルデ」。ロバート・デ・ニー
ロがオーナーのひとりとして名を連ね、超有名シェフのア
ンドリュー・カルメリーニが腕を振るう、ニューヨークで今
もっとも予約のとれないレストランのひとつだ。このトライ
ベッカというところも、昔は何もないさびれた倉庫街だっ
(ロカンダ・ヴェルデから 1 ワールドトレードセ
ンターを望む)
た。再開発が進み、デニーロのプロデュースによる「トラ
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イベッカ・グリル」や「Nobu」などの有名レストランが軒を連ね、ウォール街から一番近い繁華街となった
のは、ここ 10 年余りのことだ。使途のなくなった倉庫が、しゃれたロフト付アパートやギャラリーへと改
築され、アーティストたちが移り住むようになったのだ。有名レストラン以外は、結構、さびしい場所であ
る。
だから、「Ted Muehling(テッド・ミューリング)」の店もすぐには分か
らなかった。「テッド・ミューリング」はジュエリーやオブジェを扱うト
ライベッカの老舗。「ティファニー」のような大手の有名宝飾店では
ないが、モダンでとてもセンスの良い品が揃っている。ニューヨー
クを代表するブランド<kate spade>を妻のケイトと立ち上げ、現
在は様々なブランディングや広告を手掛けるアンディ・スペードも
若い頃からこの店に通っていた。当時のアンディには、「テッド・ミ
ューリング」の商品は高くておいそれと手が出せるものではなかっ
たが、それでも年に一度は必ずここのジュエリューをケイトにプレ
ゼントすると決めて、一生懸命お金を貯めていたという。僕もアン
ディを見習って妻にテッド・ミューリングのブレスレットを買った。日
頃の罪滅ぼしの気持ちからだ。
NYC ニューヨーク・シティ
変わるもの、変わらないもの。<街>である以上、それらが混在するのは当然である。もうひとつ、ニュ
ーヨークが変わろうと一生懸命努力していることがある。1 年前に米国東部を襲ったハリケーン「サンデ
ィ」からの復興である。ニューヨークでは広範囲で浸水に見舞われ、それに伴い停電も多発し、 ニューヨ
ーク証券取引所が休場に追い込まれるほどの被害となった。現在もまだ復興キャンペーンは続いてい
る。合言葉は「Better Than Before(前よりももっと良く)」。テレビでCMが流れている。このウェブサイト
で動画を観ることができる。
http://www.youtube.com/watch?v=xYdsK1vJh5c&feature=youtu.be
このプロジェクトはニューヨーク州知事、アンドリュー・クオモの肝いりである。ニューヨークといえば全米
最大の都市であるニューヨーク市を誰もが思い浮かべる。だから、ニューヨークは州知事よりも市長の
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ほうが有名である。9・11 の時に辣腕を振るったジュリアーニ氏、われわれマーケットの人間にとって必
須のツールである Bloomberg を創ったブルームバーグ氏などの名前は一度ならず耳にしたことがおあ
りだろう。ところが、クオモ氏の名前はどうだろうか?
当たり前だが、ニューヨーク市はニューヨーク州の一都市であるが、ニューヨーク州の州都はオールバ
ニという市である。オールバニ市はニューヨーク市からハドソン川を 300km(!)ほど北に遡ったところに
ある。300km といったら東京から東名高速を走ったら名古屋くらいまでいく距離だ。これも当たり前だが、
アメリカは広いのである。
で、そのニューヨーク市の新市長が決まった。 5 日投開票のニューヨーク市長選で、民主党の新人、ビ
ル・デブラシオ氏が共和党のジョセフ・ロータ氏を大差で破って当選した。ニューヨークといえばリベラル
な印象があるが、実は民主党市長は 20 年ぶりとなる。ジュリアーニ前市長が 2 期、ブルームバーグ現
市長が 3 期務めた後に久しぶりに登場する民主党市長だ。州知事のクオモ氏も民主党だから、これで
ニューヨークは州、市とも民主党出身者がトップに就くことになる。
民主党の躍進
バージニア州でも知事選が 5 日、投開票され、民主党のテリー・マコーリフ氏が共和党の候補を破って
初当選した。このバージニアの知事選は、来秋に控えた中間選挙の前哨戦として注目されていた。だ
から、オバマ・バイデンの正副大統領も当然応援に駆け付けたが、テレビに流れた映像で大きく取り上
げられたのはクリントン夫妻。特にヒラリーの露出が多かったように思う。
実は今回の出張でアポイントをとっていたファンド・マネージャーのひとりから直前になってアポの変更
を申し入れられた。ヒラリー・クリントンのセミナーに誘われたのだという。アレンジしたのは、例のトライ
ベッカ近くに本社を構える某投資銀行である。
そのファンド・マネージャーに会ったとき、「ヒラリーの講演はどうだった?」と尋ねてみた。印象に残った
のは、日中韓のナショナリズムの高まりに警戒心を表していた点だという。与野党の確執から連邦政
府機関のシャットダウンを招くような事態となったのは米国に対する世界からの信任低下につながると
憂慮を示したとも。そして国内政治のゴタゴタでオバマ大統領がTPP会合に出席しなかったことを痛烈
に批判したそうである。それらはいずれもオバマ氏のウィークポイントである外交問題に関する点であ
る。そのファンド・マネージャーは「ヒラリーは<4 年後>を見据えて始動してきている」と感じたそうだ。
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最近は、オバマ大統領の指導力低下をうかがわせるような事態が相次いでいる。シリア問題ではロシ
アに一本取られた。FRB 議長の人事では、バーナンキ議長の後任に担ぎ出したサマーズ氏について、
身内の民主党から大反対にあった。そして対議会では完全にアウト・オブ・コントロールである。これで
は来年の中間選挙も 1 期目同様に大敗を喫するのではないか、との懸念がつきまとうが、そうはならな
いだろう。オバマ氏は弱いが、民主党は大丈夫。というか、共和党の支持率が低下している。いわば
「敵失」で民主党が勝つというシナリオである。
シャットダウンを招いた議会の混乱で、共和党のティーパーティーに世間の批判が集まっている。バー
ジニア州知事選で敗れた共和党のクチネリ氏はオバマケアを成立直後から厳しく批判。オバマケアの
廃止を掲げるティーパーティーの全面支援を受けてきた人物である。つまり、共和党が弱いというより、
共和党の強硬派・保守派が不人気であるのだ。事実、同じく 5 日に投開票されたニュージャージー州知
事選では共和党で現職のクリス・クリスティー知事が民主党候補を大差で破り、再選されている。クリス
ティー氏は昨年のハリケーン「サンディ」災害対策でオバマ大統領と連携した。共和党内の穏健派とさ
れる人物である。
米国の財政問題について金融市場には民主党・共和党の対立を懸念する見方が依然根強い。米議会
は政府債務の上限引き上げと新年度暫定予算を認める法案を可決した。米国債のデフォルト(債務不
履行)は期限ぎりぎりで回避され、一部閉鎖されていた政府機関の業務も平常通り再開した。しかしそ
れらは暫定的な合意でしかなく問題は先送りされただけだ。
今後の焦点は超党派委員会の財政協議に移る。超党派委が主に審議するのは、2014 会計年度(13
年 10 月~14 年 9 月)予算案。与野党合意では政府機関再開のため 1 月 15 日までしか支出を手当て
できなかったので、残る期間の予算編成を行うのだ。財政赤字削減のための財政計画や、3 月に発動
された歳出強制削減の見直しも協議するのだが難航必至と見られている。また与野党協議のごたごた
で市場が混乱するのではないか?という危惧がマーケットでは喧伝されているが、僕は案外、楽観的
だ。
なぜなら、これだけ民意がはっきりしているのだから。オバマ大統領の信任は低下しているが、民主党
はしっかりしている。共和党でも穏健派は支持される。不興を買っているのはティーパーティーの強硬
派である。今回のニューヨーク市長選とバージニア・ニュージャージー州知事選の結果は、共和党保守
派の影響力を弱める結果になったと思う。政治家は、選挙の結果から目を背けることはできない。さす
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がに共和党だってバカじゃないので、前回シャットダウンにまで突入したような政治的愚行を繰り返すと
は思わないのである。
中間選挙のアノマリー
政治絡みの材料で、それよりも大きな不安がある。それは中間選挙前に株が弱くなるというアノマリー
である。表は 1946 年から米国のダウ平均の四半期リターンを大統領就任からの年別に集計したもの
だ。
米国大統領就任後の四半期ごとの株価パフォーマンス
(NYダウ平均・1946年1Q-2013年3Q)
1Q
1年目
-0.4%
2年目
1.6%
3年目
7.1%
4年目
0.6%
(出所)マネックス証券作成
大統領就任
2Q
1.6%
-1.4%
5.0%
1.3%
3Q
0.3%
-1.4%
1.5%
0.3%
4Q
1.8%
3.5%
7.0%
2.3%
これを見ると、大統領の就任 2 年目の第 2・3 四半期(すなわち中間選挙の直前)が群を抜いてパフォ
ーマンスが悪いことが見てとれる。おそらく、中間選挙を控えて、政治的な不透明感が株式市場の重石
となるためであろう。
もうひとつの有名なアノマリーに「ハロウィーン効果」がある。これは近年有名になっている相場格言
「Sell In May(5 月に売れ)」とセットになっている現象である。株式投資のパフォーマンスを半年ごとに
調べると、11 月-4 月の 6 カ月間のリターンが一番良い。すなわち 10 月末のハロウィーンのころに株を
買うのが投資成果がもっとも上がるタイミングである。11 月末に投資するのが、その次に良い。
グラフ 1:日経平均月末から6ヶ月間のリターン(1970年からの平均)
グラフ 1 は日経平均の 6 カ月リターンを 1970 年から投
資を開始する月別に示したものだ。これは日本株のケ
9%
7%
ースだが、「ハロウィーン効果」というぐらいだから、本
5%
家本元は米国株について言われている現象である。
3%
しかし、ハロウィーンがいまや日本でもすっかり定着し
1%
たように、「ハロウィーン効果」はグローバルに共通す
-1%
るアノマリーだ。(但し、日本でのハロウィーンは単な
-3%
るお祭り騒ぎでしかないし、ハロウィーンはヨーロッパ
(出所)マネックス証券作成
1月
2月
3月
4月
5月
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6月
7月
8月
9月
10月 11月 12月
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ではまったく普及していない。)
その意味では、足元の低調で冴えない日本株の相場は、むしろ絶好の仕込場とも言える。一方で、米
国株については、「中間選挙のアノマリー」=「大統領就任 2 年目の第 2・3 四半期のパフォーマンスが
もっとも悪い」ということを信じるなら、来年も「Sell In May(5 月に売れ)」を意識することが重要だろう。
否、第 2・3 四半期のパフォーマンスがもっとも悪いのだから、むしろ来年は第 1 四半期でいったん手仕
舞うべきかもしれない。「Sell In March(3 月に売れ)」あるいは遅くとも「Sell In April(4 月に売れ)」ぐらい
でちょうどよいかもしれない。
イエレン氏が新 FRB 議長に就任する翌月の来春 3 月には量的緩和縮小が予想されている。そのあた
りで米国株もいったんの天井を打つというのはじゅうぶんありえそうなシナリオではないか。
I’m Home
それにしても 6 年もの間、ニューヨークを訪れていなかったとは我ながらちょっと驚きである。いろんな
事情はあったにせよ、それにしても、しかし、やっぱり、6 年の無沙汰は長過ぎだ。この商売を始めてか
らというもの、幾度となくニューヨークに来ている。そりゃあ、松本大には敵わないにしても (「またニュ
ーヨーク」http://ameblo.jp/monex-oki/entry-11675529863.html ご参照)、僕だって金融の本場、マー
ケットの聖地、ここニューヨークが大好きなのだ。
6 年前の 10 月下旬、今回とまったく同じ季節にニューヨークにいた。自ら立ち上げたヘッジファンドに運
営上の重大な問題が発生した。それをクリアしなければファンドを閉鎖するしかない。そんな危機的な
状態に陥った。藁にもすがる気持ちで単身、ニューヨークに渡ったのだった。
必死だった。外資系運用会社での職を辞して立ち上げたファンドである。こんなところで終っていいは
ずがない。解決策を求めてニューヨークの街中を死にもの狂いに駆け回った。
しかし - 現実はそんなに甘くない。映画や TV ドラマの世界とは違って、残り時間ぎりぎりでの大逆転
劇なんて起きないのである。芳しい結果が得られないまま、ニューヨーク滞在の時間は無情に過ぎてい
った。
そんな失意のニューヨークで、息抜きとなったのがセントラルパークを走ることであった。秋の静謐な空
気が心地よく、辛い現実を一瞬、忘れることができた。だが、それも束の間の現実逃避に過ぎない。僕
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は下を向くことはしなかった。絶望の底に沈んでも顔は前に向けていた。6 年前のあの日、僕はニュー
ヨークに誓ったのだ。今回は夢破れてこの地を去るけれど、いつかきっと、必ずここに戻ってくると。俺
はこんなところで終らない。終ってなるものかと。それが前回のニューヨークでの結末だった。
それから 6 年の月日が経った。僕は再び晩秋のセントラル
パークにいた。夏時間(Daylight Saving Time:デイライト・セ
ービング・タイム)が終わる直前のこの時期、ニューヨーク
の夜明けは遅い。朝 6 時でも真っ暗である。
1時間ほど走り、体温の上昇とともに陽も昇る。イーストリバー方面の空が明るくなり始めるが、高層ビ
ルに遮られて朝日そのものは目にすることは、まだできない。それでも頬に当たる風がもうそれほど冷
たく感じないのは陽が昇ったせいか、体が温まったせいか。あるいは、もっと別の精神的な要因かもし
れない。
やがて - 摩天楼のビル群が朝日に染まって輝き始める。 ニューヨークの朝が、新しい一日が、始ま
るのだ。この光景は 6 年前と同じである。あの日、誓った約束を僕は思い起こしていた。いや、「思い起
こす」というのは正確な表現ではない。なぜなら、忘れたことなど、ただのひと時もなかったからだ。いつ
も、常に、僕の胸のなかにこの誓いはあったからだ。
「俺はここに帰ってきた。約束通り、ニューヨークに、また戻ってきたんだ」
「おかえり」と朝日に染まった摩天楼の声が聞こえた気がした。ニューヨークの街が、優しく僕を迎えてく
れた気がした。僕も摩天楼に答えた。I’m home, ただいま、ニューヨークと。
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