皮膚がん・ホクロのがん -早く見つけてきれいに治しましょう

第 649 回健康教育講座
「皮膚がん・ホクロのがん」∼早く見つけてきれいに治しましょう∼
開催日 平成18年6月12日(月)
講
師 社会保険中京病院皮膚科部長
名古屋大学医学部臨床教授
臼
井 俊
和
早期発見・早期治療の大切さ
“がん”
(悪性腫瘍)は、早期発見・早期治療が最も大切で、早期に発見すれば完治する
ことも決して不可能ではありません。しかしながら、胃がん、肺がん、子宮がんなどに代
表される体内のがん(内臓のがん)は、画像検査(X 線、CT、MRI など)、超音波検査、血
液検査(腫瘍マーカーなど)といった時間とお金のかかる検査を行わなければ、一般的に
は簡単に発見することはできません。
皮膚の場合は“眼で見ることができる”ので、経験のある皮膚科の専門医が診察(視診)
すれば、皮膚がんの疑いが強いかどうか判断できる場合も多いので、早期発見することが
最も容易な“がん”といえます。最近では、ダーモスコピーによる検査が健康保険でも認
められましたので、さらにはっきりと鑑別できるようになってきています。
最終的には病理組織診断が重要です
眼でみる(視診)ことによって皮膚がんかどうかはかなり判別できるものの、
“がん”と
最終的に診断(確定診断)するためには、病理組織検査が不可欠です。生検や手術を行っ
て腫瘍の組織検査を行ってはじめて、悪性のもの(がん)かそうでないかがはっきりとし
ますので、必ず病理組織検査を行うことが必要です(病理検査結果が出るまでには数日∼1、
2 週間かかります)。
皮膚がんの種類
皮膚にできるがんには多くの種類があります。代表的なものを示します。
・基底細胞癌
最も多い皮膚がんで、顔などの露出部にできやすい。転移することは極めて稀で、
完全に切除すれば根治できる。
・扁平上皮癌(有棘細胞癌)
リンパ節へ転移することもあるので、手術後に化学療法(抗がん剤)の併用も必
要。
・悪性黒色腫(ホクロのがん)
最も悪性度の高いがんで、再発・転移しやすいので注意が必要。部分生検は転移
を誘発しやすいので禁忌。小さいうちに切除すれば完治する。
・ボーエン癌(ボーエン病)
表皮内がんで、湿疹などと間違われていることもときにある。
・乳房外パジェット病
陰部や腋窩にできる皮膚の腺癌。
・日光角化症
日光に長い間当たった皮膚にできてくる、いわゆる前癌状態。
皮膚がんの治療法
最も確実で基本的な治療法は手術です。正常皮膚の部分も含めて完全に切除すれば、ほ
とんどの場合完治してしまいます。がんの種類によっては化学療法、インターフェロン療
法、放射線療法を併用することもあります。
手術方法は皮膚がんの大きさや進行度、できている場所、年齢や性別、がんの種類によ
って決められます。
手術方法
単純切除術(縫縮術)、広範切除術、有茎皮弁術、植皮術、冷凍凝固術
皮膚がんの誘因、原因
原因が不明の場合もありますが、皮膚がんの原因として代表的なものは次のものです。
・日光(紫外線)
・慢性刺激
・瘢痕(キズ跡)
・ある種のアザ
・ヒ素などの化学物質
日光は皮膚がんの一番の原因 ∼皮膚がんは予防が大切∼
歳を重ねるとともに、若い頃から日光に当たってきた顔、手背などの露光部には、いろ
いろな病変(シミ、シワ、イボなど)が生じてきます。しばしば皮膚がんもできてきます。
皮膚がんを防ぐためには、若い頃から紫外線対策をしておくことが大切です。
・サンスクリーン(日焼け止めクリーム)
・長袖、帽子
※日に当たらなくてもビタミンD、骨の成長は大丈夫?
バランスのよい食事を摂っていれば心配ありません(食べ物からビタミンDは補給で
きます)
。
どのような場合に皮膚がんが疑われるのでしょうか?
シミ、ホクロ、イボ、デキモノ、タコなどと思っているものの中にも、時々皮膚がんは
混じっています。
・最近急に大きくなってきた。
・ジクジクとして出血するようになった。
・周囲に色がにじみ出して来た。
・痛みや痒みを感じるようになった。
・色の濃いところ、薄いところが混ざってきた。
<してはいけないこと>
・自分で削ったり、ほじったりすること。
・軽石などでゴシゴシとこすること。
・お線香などで焼いてしまうこと。
・安易にレーザーで焼いたりしないこと。
・吸い出しや自家療法でいつまでも治療しないこと。
皮膚がんは早く見つければきれいに治るので、心配な時は皮膚科の専門医にぜひ相談して
みましょう。
愛知県医師会
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