12 80 列の高画質、高スループットの検査で救急医療や がん診療を担う新病院の診療をサポート 64 列 Aquilion/CXL Edition との 2 台体制で AIDR 3D などを利用した円滑な検査を実施 北海道勤労者医療協会 勤医協中央病院 札幌市東区にある勤医協中央病院は、2013 年 5 月に旧病院から 900m ほどの場所 に移転、新築オープンした。新病院は、病床数 450 床（うち回復期病床 50） 、急性 期・救急医療、がん診療、専門的医療の提供に重点を置き、領域別のセンター化を図 り最新の設備をそろえた。また、全日本民主医療機関連合会（民医連）加盟の病院と して無料・低額診療を提供しているのも特徴だ。放射線科では、リニューアルにあたっ て新たに東芝メディカルシステムズの 80 列ヘリカル CT「Aquilion PRIME/Beyond Edition」を導入し、64 列の「Aquilion/CXL Edition」との 2 台体制での運用となっ た。放射線科の舩山和光主任に Aquilion PRIME/Beyond Edition を用いた検査の 現状と、80 列と 64 列の 2 台体制の CT の運用について取材した。 新病院に Aquilion PRIME/Beyond Edition が導入。 舩山和光主任（中央）と CT 検査担当スタッフ Beyond Edition が発売されたことから、同 ることが大きなメ Aquilion PRIME/Beyond Edition を導入 院 に も 設 置 が 決 ま っ た。 舩 山 主 任 は、 リットです」 Aquilion PRIME/Beyond Edition ではガ 冠 動 脈 CT は 新病院の放射線科では、2 台の CT のほか、 ントリの寸法が一回り小さくなったことで、 主に Aquilion 1 . 5 T MRI、血管撮影装置 2 台（シングルプ 検査室内の設置位置を変更でき、より安全 レーン、バイプレーン）、マンモグラフィ、 な検査が行えるようになったと評価する。 「当 PRIME/Beyond Edition で撮影 核医学、放射線治療装置などが整備されて 初の設計では、操作室から寝台に載った患 しているが、撮 いる。同院では、“救急車を断らない”こと 者さんの姿が直接見えない位置でした。筐 影時間の短縮に をポリシーに ER（救急処置室）を運用し、 体がコンパクトになったことで、ガントリの よって、撮影の 循環器救急疾患に対応する札幌市の ACS 位置をずらして斜めに設置でき、操作室か 成功率が上がり、患者さんにとっても息止 ネットワークに参加するなど、救急医療に ら患者さんを直接見ながら検査ができるレ め時間の短縮、造影剤使用量の減少など 積極的に取り組んでいる。放射線科では、 イアウトに変更できました。検査室内のモ メリットが大きいと、舩山主任は言う。冠 救急撮影に対応すべく、CT 室を ER に隣接 ニタカメラでも確認はできるのですが、自分 動脈 CT の撮影条件で、撮影範囲 160mm させているほか、診療放射線技師 1 名が夜 の眼で確認できることで安全性が大きく向 で比較すると、Aquilion/CXL Edition に比 勤で対応するため、スタッフ全員が CT の基 上しました」 べて Aquilion PRIME/Beyond Edition では 本的な操作が行えるようにトレーニングを 80 列のヘリカル CT が可能にした 「これによって不整 約 2 秒短縮されている。 新病院のオープンと同時に 舩山和光 主任 行っている。 高画質と高スループット 脈を拾う確率が減り、撮影の成功率が上がっ 旧病院では Aquilion 64 とシングルスラ Aquilion PRIME/Beyond Edition は、 ています。また、造影剤の注入時間も 3 秒 イス CT（他社製）を使用してきたが、新築 64 列を超える 80 列のヘリカル CT として開 短くなっており、確実に使用量が減ってい 移転を機にシングル CT を Aquilion PRIME/ 発された初代の性能をそのまま引き継ぎ、 ます」と短縮効果を評価する。 B e y o n d E d i t i o n に リ プ レ イ ス し、 Aquilion 64 を Aquilion/CXL Edition に 新たにガントリから処理装置まで アップグレードした。舩山主任は、新病院 新たなラインナップとして 2013 年 での C T の 体 制 について、「2 0 0 8 年 に Aquilion 64 を導入して、救急や冠動脈 CT 3 月に発売された。64 列の CT と 比較した 80 列の評価について、舩 などを中心に検査を行ってきました。新病 山主任は次のように説明する。 院では、これまでの運用の実績と PACS で 「全体のスピードが速くなってい の画像管理や被ばく管理の共通化など、撮 ることを実感していますが、ビュー 影業務の運用も考慮して同じメーカーの CT レートの向上で 64 列と同等の画質 を導入しました」とねらいを説明する。 であれば 0.35 秒の高速スキャンを、 すべてのハードウエアを見直し、 当初は、初代の Aquilion PRIME が導入 画質を優先させる場合は 0 . 5 秒で される予定だったが、Aquilion PRIME/ 12 INNERVISION (28・12) 2013 の撮影と、臨機応変な対応ができ CT 担当の診療放射線技師は 5 名。ワークステーションに よる画像処理を含めて検査に対応する。 コンパクトなガントリでより安全なレイアウトが可能になった Aquilion PRIME/Beyond Edition Aquilion64 からアップグレードされた Aquilion/CXL Edition。 治療計画用の位置決めビームや CT 透視用のモニタなどをそろえる。 撮影や画像処理速度の短縮が 全体のワークフローを向上 撮影のほか、治療計画用の撮影、肺生検や ます。症例としては閉塞性血栓血管炎であ RFA 治療の術前位置決めなどの CT 透視に るバージャー病の動脈撮影で、DSA ライク 一方で、検査全体のワークフローは、従 利用されている。検査室には透視用モニタや、 な画像を提供できないか検討しています。 来から 64 列で運用されてきたため、大きく 位置決め用のビーム発生装置などが備え付 そのほか、心臓撮影での DSA の置き換えや、 変わってはいないが、80 列での撮影時間の けられている。治療計画用 CT は月間 20 件 CTHA の動脈相の撮影などにも取り組んで 短縮や、スキャン直後から再構成画像を表 程度、CT 透視は月間 1、2 件が行われている。 いくつもりです」と述べる。 示する“InstaView”など Aquilion PRIME/ Beyond Edition がもたらすメリットが、結 同院では、両方の CT で低線量撮影画像 また、部位によって異なるヘリカルピッ 再構成法である AIDR 3 D を使用できるが、 チのスキャンを連続して行える“バリアブル 果として検査業務の効率化につながってい 頭部以外でのすべての検査のプロトコルに ピッチヘリカルスキャン”は、心臓と血管系 ると舩山主任は語る。 の連続撮影時に使用しているが、胸腹部の InstaView 機能を用いることで、ほぼリア Weak あるいは Mild を組み込んで撮影を 行っている。舩山主任は、AIDR 3 D の運 用 について、 「A E C（A u t o E x p o s u r e Control）と AIDR 3 D によって、線量を下 ルタイムで診断画像と同等の画像が見られ げても今までと変わらずに診断が行える画 SD を変えて連続スキャンするというような るメリットは大きいですね」 像が得られます。2 台の CT の両方で同じよ 使い方をしています」と説明する。 2013 年 7 月の検査件数は前年同月と比 うに AIDR 3 D が使えることで、撮影条件を 較すると 200 件程度増えており、80 列導入 そろえて検査が行えますので、術後経過のフォ CT Colonography など 新たな領域へ CT 検査を拡大 による効果が数字として現れている。舩山 ローアップ撮影が多い当院では画像のバラ 新 病 院 のスタートからフル 稼 働 する 主任は、 「検査数の増加は新病院となった ツキがなく助かっています。また、常に低 Aquilion PRIME/Beyond Edition だが、 効 果もあるかと思いますが、 少なくとも 線量での撮影ができることは、患者さんのメ これからの展開について舩山主任は、「ダイ Aquilion PRIME/Beyond Edition の高ス リットにもつながります」と述べる。同院で ナミックヘリカルスキャンへの取り組みを行 ループットによって可能になったことは間 は、AIDR 3 D 導入前の撮影条件に比べて、 違いありません。検査待ち時間が短縮した 25％程度の線量削減になっているという。 う こ と と、 院 内 か ら の 要 望 も あ り C T Colonography にもチャレンジしていきた ことで、診療科からもオーダが出しやすいこ いと考えています」と言う。 ともあるでしょう」と、80 列 CT 導入効果 ダイナミックヘリカルスキャンによる 4D 撮影、血管描出に取り組む を評価している。 Aquilion PRIME/Beyond Edition では、 勤医協中央病院では、CT の検査件数も増 AIDR 3D や PACS での画像管理 など、運用を重視した 2 台体制 高速で往復スキャンを行うことで 4 D 画像 加している。救急医療やがん診療などで中 や血管の連続撮影を可能にするダイナミッ 心的な役割を果たすマルチスライス CT だが、 同院の CT 検査件数は月間で約 1400 件。 クヘリカルスキャン（Dynamic Helical Scan）が可能になっているが、同院では撮 さらなる高スループットと高画質を提供す Edition が 1000 件、Aquilion/CXL Edition が 400 件となっている。2 台の CT の使い分 けは、Aquilion PRIME/Beyond Edition を 影プロトコルなどの検証や適応症例を検討 期待は大きい。 （2013 年 10 月 24 日取材） 優先して検査を設定し、特に心電図同期が ミックヘリカルスキャンについて、 「例えば、急性腹症の撮影では単純 CT を 確認後に撮影方法を変更することがあるので、 そのうち、A q u i l i o n P R I M E / B e y o n d 撮影ではピッチではなく SD を変えた撮影に 使っているという。 「腹部では SD 10 が必要 でも、胸部では線量を落としたいという時に、 新病院での診療がスタートして約半年の る Aquilion PRIME/Beyond Edition への 中で、臨床での撮影はこれから進 める予定だ。舩山主任はダイナ 必 要な心 臓 撮 影、 造 影 撮 影については、 「4 D 情報の取得と同時に、連続 Aquilion PRIME/Beyond Edition で行う。 一方の Aquilion/CXL Edition では、通常の スキャンによって確実に末梢血 管までとらえる撮影を期待してい 公益社団法人 北海道勤労者医療協会 勤医協中央病院 北海道札幌市東区東苗穂 5条1丁目9-1 TEL 011-782-9111 INNERVISION (28・12) 2013 13
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