化粧品の動物実験は世界の流れです (pdfファイル) - All

2002.10.6 Ver. 1.3
STOP ANIMAL TEST! CAMPAIGN 資料
化粧品の動物実験禁止は
世界の流れです
©PETA
現在、日本全体で動物実験に使用される動物たちの数は、年間2,000万頭にも及ぶと言われてい
ます。実際には、その全貌は明らかではありませんが、多くの人たちが、その実態を知ったとき、
これほどまでに動物たちに苦痛と犠牲を強いなければ人間は生きていけないのだろうか?という疑
問を持つようになって来ました。
その中でも特に、
生きていくための必需品ではない化粧品においても動物実験がなされているこ
とに対する批判が高まり、
「残酷さのない美しさを!」を合言葉に、欧米では特に大きな消費者運
動が展開されてきました。現在、化粧品の動物実験に対する法的な禁止をかかげる国もあり、動物
実験にかわる代替法の研究も普及しています。また、現在EUで合意されている通り、動物実験を
して開発された化粧品のEU内販売禁止が2005年に実現すれば、
日本の化粧品メーカーも追随しな
いわけにはいかなくなると予想されています。
私たち「STOP ANIMAL TEST! CAMPAIGN」は、動物実験の実態 を人々に伝え 、動物たちの犠
牲と苦しみをなくしていくために集まった、有志の個人のネットワークです。その第一歩として、
「動物の愛護及び管理に関する法律」の見直しを3年後に控える今、日本でも化粧品に関する動物
実験の禁止を、同法に含めることを訴えます。
STOP ANIMAL TEST! CAMPAIGN 実行委員会
http://arcj.info/10index.htm
〒162-0823 東京都新宿区神楽河岸1−1
東京ボランティア・市民活動センター メールボックスNo. 65
電 話:03-3770-0539 Eメール:[email protected]
STOP ANIMAL TEST! CAMPAIGN 資料
1.消費者運動
■化粧品のための動物実験を知って
従来、
新規物質開発や承認許可のために毎年おびただしい数の動物が使用されていること、
またそれ
らの動物たちの苦痛について、
化粧品メーカーは語ってはきませんでした。
知らされていないことへの
怒りをこめ、動物権利団体などが写真等を使った衝撃的なキャンペーンを行ってきました。たとえば、
ターゲットになったのはこのような試験です。
(2)皮膚刺激試験
(1)眼刺激性試験(ドレイズテスト)
一次刺激試験にはウサギ、
モルモット等を通常
1940 年代に開発。ウサギの体を固定し、片眼
の結膜嚢内に注射器を用いて試験物質を投与、
片方の眼球はそのままにしておく。
試薬を入れ
1回に3匹以上使用。
背中の毛を剃り、
試験液を
1回塗布し、その 30分、60分、24時間、48時間、
られた方の眼球は次第に傷み、
やがてはつぶれ
てしまうが、1時間、24時間、48時間、72時間
72時間後に、
肉眼で炎症や損傷の状態を調べる。
炎症や損傷の状態を4段階に分けて採点、
殺して
ごとに肉眼で両目を比較観察することでデータ
を得る。
涙を流さないため試験液が流れ出ない、
病理標本を作成する。連続皮膚刺激試験には1日
1回、
2週間にわたって反復して試験液を塗布、
苦痛を感じても声を出して鳴かないなどの理由
からウサギが用いられるといわれている。
肉眼で観察した後、
同じく病理標本を作成する 。
©PETA
©PETA
(3)単回投与毒性試験 (旧名:急性毒性試験)
1927年開発。
ラット、
ウサギなどを用いる。
絶食させた動物に試験物質を投与し、
その内の半数が死ぬ
致死量
(LD50)
を調べ、
投与後は2週間症状を観察する。
試験物質の致死量がわかるまで繰り返し行われる。
投与物質によっては出血、
吐血、
激痛などを伴い、
のた打ち回って死んでいく場合もある。ただし、
死因が
何かということは調べないなどの問題点から、
すでに過去の技術であるとの批判がある。
■ 「Cruelty-Free」
のスローガンとともに -- 消費者運動の高まり
ほんとうに安全なものには動物実験は必要ない、
また、既に使用できる原材料と調合方法が多く存在
するにもかかわらず、
さらなる動物実験を続けることは許されないという考えのもと、
動物実験を行う
企業から化粧品を購入するのを拒否しようという運動が展開されてきました。
「ボディショップ」
をはじめとして、
動物実験をしていないことを セールスポイントとし、
ラベルにも
動物実験していないことを明示するメーカーが出現、
海外では1990年前後以降、
有名ブランドである化
粧品会社が続々と動物実験を今後しないことを掲げてきました。
1
STOP ANIMAL TEST! CAMPAIGN 資料
日本でも、
複数の動物実験反対団体が化粧品メーカー各社に聞き取り調査をした結果を公表していま
す。また、個人の消費者の間でも、企業に動物実験をしないことを求める地道な運動が続いています。
■動物実験されていない化粧品とは
製品開発の際に、
自社において動物実験をしていないだけでなく、
原材料会社においても動物実験が
なされていないこと、他社へ動物実験の委託をしていないこと、などが条件となります。世界共通基準
としてCCIC(Coalition for Consumer Information on Cosmetics)が認定する、「動物福祉を配慮する
企業基準」が存在します。
http://www.leapingbunny.org/
飛び跳ねウサギと星のマークが目印
■動物実験していない、
もしくは中止したメーカーの例 (各社ホームページより)
数多くのメーカーが、
動物実験をしていないこと、
もしくは中止したことをアピールしていますが、
こ
れらはその一例です。
ザ・ボディショップ
ラヴェーラ
http://www.the-body-shop.co.jp/top.html
http://www.lavera-jp.com/
Q) ザ・ボディショップでは化粧品の動物実験に反対し
Q.原料から完成品、輸入、販売にいたる全
ていますが、
どのように商品の安全性を確認するのです
か?
過程において動物実験は行われていません
か。
また他機関に動物実験を委託していませ
A) 動物を犠牲にしなくても、
商品の安全性は確認でき
ます。動物を使わない試験方法があることをご存じで
んか。
しょうか。
残酷な動物実験に対する批判が世界的に高ま
るにつれ、動物実験に代わる試験方法「代替法」が、盛
A.
全ての段階で動物実験は一切行われてい
ませんのでご安心下さい。
んに研究開発されています。
代替法は、
倫理的にも優れ
ていることに加え、
動物実験に比べて科学的にも信頼性
が高く、
また研究にかかるコストも削減できるなど多く
の利点があります 。
日本ではいまだに 、
大手化粧品メー
カーをはじめ多くのメーカーが、
動物実験を行っていま
す。
新規原料を使って化粧品をつくる場合は、
動物実験
による安全性のデータを提出するよう、
厚生省が求めて
いますが、
日本ですでに許可されている化粧品の原料は
約3,000種類にものぼります。
これらの原料を使ったり、
あるいは代替法による安全性試験を行うことで、
日本で
も動物実験をせずに化粧品を開発・製造することは十分
可能です。
つまり、
化粧品メーカーは、
今すぐにでも、
動
物実験を止めることができるのです。
エイボン・プロダクツ
http://www.avon.co.jp/Order/
動物実験全面廃止・環境汚染考慮。
エイボンは、
動物保護の精神から業界に先がけて動物
実験を廃止しました。また資源保護のため、
動物由来の
成分は極力使わないよう努めています。
2
ミス・アプリコット
「ミス・アプリコット」では、これまで人
間が使ったことのない新成分より、
長く市場
に出回り多くの人間が使用してきて特に問題
の起きていない成分の方が安全性は高いとい
う判断に立ち、
ポジティブリストの原料のみ
を使用することにより、
「動物実験」
をせずに
厚生省の許可を得ています。
また製品開発に
おいては、
製品自体のテスト
(製品を極端な
高温、
低温の環境にさらしたり、
数カ月間の
時間経過において成分の変質がないかどうか
等を調べます)、
スタッフによるパッチテス
ト、
インビトロの刺激性テスト等の試験を行
い、
原料ばかりでなく、
成分がブレンドされ
た場合の安全性にも留意しています。
(パンフレット「動物実験Q&A」より)
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2.代替法の進歩
日本では行政・企業の理解が浅く、検討されない傾向にある動物実験代替法ですが、近年大きく発展
をとげた分野であるといえます。
フ レ イ ム 1 9 6 9 年、イギリス に設 立 されたFRAME( Fund for the Replacement of Animals in Medical
Experiments)、1981年、アメリカのジョンズホプキンズ大学に開設された代替法センター等をはじめと
して、
代替法普及のための研究資金援助がその推進力となっており、
また海外においては企業が代替法
開発のために大学へ助成金を出していることも注目されます。
■ドレイズテストの場合
1979年、ヘンリー・スピラが 400もの動物保護団体をこの問題に集結させ、反対運動を展開しました。
驚いた各企業が、代替法を検討した結果、まず、ドレイズテストに使われる6匹を3匹以下に減らす方
法が提案され、結果に統計的差がないことがわかり、FDA(食品医薬品局)とEPA(環境保護局)が
これを認めました。
次に鶏胎児のしょう尿膜や、
食肉にされた牛の目を用いる方法が提案されました。
ウ
サギを使うより、犠牲となる動物が少ないという観点でした。そして、現在ではアイテックスなどの全
く動物を使用しない技術へと進展を続けています。
■代替法の例
(1)アイテックス
(2)FRAME(フレイム)法(培養細胞毒性試験法)
1986 年、アメリカで開発。ソラマメから抽
出したタンパク質でできた試験試薬に、
試験
1988年、FRAMEによって開発された毒性試験の代替
法。培養細胞に試験物質を加え、24時間後、たんぱく
物質を入れる。
毒性の刺激が強いほど溶液が
濁る。
アメリカのFDAによって、
有効性確認
質に着色する性質の試験液試薬を加える。
試験物質の
毒性が低いほど強く着色され鮮明な青色となり、
色彩
済みの代替法。
の変化によって毒性の強弱が判定できる。
その他にもスキンテックス(皮膚刺激試験の代替法)、HET-CAMテスト(ドレーズテストの代替法)、NR
法(毒性試験の代替法)など、その数は数百に及ぶと言われ、現在でも増え続けています。
また代替法検証のための機関、ECVAM(European Centre for the Validation of Alternative Methods)
も設立さ れ、皮膚腐食性試験に 関しては EPISKIN 法と RAT SKIN TRANSCUTANEOUS ELECTRICAL
RESISTANCE (TER) 法が 1998 年、光毒性試験に関しては 3T3 NRU PT法が 1998 年、科学的に確立さ
れた代替試験法として認められています。
■代替法の利点
アイテックスの試験結果はコンピューターによって数値化されるため、
ウサギの眼球を目視で観察す
る従来の実験方法よりはるかに信頼性が高いといわれています。
また、
実験環境の条件を統一すること
が動物を使用する場合より容易であり、
寿命の短い小動物ではできなかった10年以上にも及ぶ継続的な
試験が可能などの利点も挙げられています。
また、人間に有害な物質が製品内に含まれていたにもかかわらず、動物実験では確認できず、代替法
では確認できたという例もあり、
動物と人間との間の生物学的差異を埋めていくためにも非動物実験試
験の必要性は増しています。
3
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3.海外での法的禁止の流れ
市民運動の高まりを受け、
1990年代後半から、
EU各国では化粧品の動物実験について法的規制を設
ける国が増えています。
■オランダ
1997 年5月、「動物実験法(The Dutch experiments on animals act)」によって、化粧品の新製品開
発、既存の製品の動物実験を禁止。
条文(英訳版)
Section 10d.
No animal experiment shall be conducted for the purpose of developing new or testing existing
cosmetics covered by rules based on the Commodities Act.
■ドイツ
1998 年5月、「動物保護法 (Tierschutzgesetz 1998 (German Animal Protection Act 1998)」により、タ
バコ、洗剤とともに、化粧品開発のための動物実験を原則禁止。
「原則」ではありますが、改正後現在ま
で1件もそれらの実験は許可されておらず、
実質上の禁止と言えます。
条文(英訳版)
Section V, Article 7
5) In principle, experiments on animals to develop tobacco products, detergents and cosmetics shall be
prohibited. The Federal Ministry shall be empowered, with the consent of the Bundesrat, by ordinance
to stipulate exemptions in the case of cosmetics in agreement with the Federal Ministry of Health,
wherever necessary to
1. avoid specific health hazards and wherever there is no other way of obtaining the new findings
required or
2. implement legal instruments of the European Community.
■イギリス
1998 年 11 月、化粧品の安全性関連の法律(The Cosmetic Products (Safety) Regulations)によって、
化粧品の原料から完成品にいたるまですべての動物実験を禁止。
最後まで動物実験廃止に反対していた
化粧品メーカーが、
消費者の抗議の高まりによって動物実験のライセンスを返上、
自主的に廃止せざる
を得なくなった経過があります。
条文
Particular requirements
(3) No person shall supply a cosmetic product which contains any ingredients or combinations of
ingredients which are tested on animals where such testing takes place after 1st January 1998 and is
undertaken in order that the cosmetic product may satisfy any requirements of these Regulations.
(4) Any reference to testing on animals in the labelling, putting up for sale or advertising of a cosmetic
product must state clearly whether the tests carried out involved the cosmetic product itself or its
ingredients.
(5) No person shall supply any cosmetic product in respect of which the requirements of paragraph
(4) above are not satisfied.
4
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■オーストリア
1999 年7月、
「動物保護法」によって化粧品の動物実験が禁止になりました。
■スイス
成分に関してではないですが、
化粧品の完成品に関して動物実験が禁止されています。
■EUの動き
EU議会は 1993 年6月、段階的な化粧品における動物実験廃止を合意しています(Council Directive
76/768/EEC)。しかし、有効な代替法が確立されていないとするEU委員会や、自由貿易障害を主張す
るWTOの猛烈な反対を受け、
動物実験の禁止は幾度も延期されてきました。
今年6月のEU議会の最終決定では、2004年 12月 31日をもってEU内における化粧品の動物実験の
禁止、および動物実験された化粧品の販売禁止を実施することが決まっており、それまでは、商品ラベ
ルに動物実験実施の有無を表示していくという合意までこぎつけています。
今後正式に条約化への運びとなれば、
さらに各国での化粧品の動物実験禁止へ向けた法整備が必要と
なっていくはずです。
■日本の場合
化粧品の開発には新規物質を使う場合でも、
原則企業責任において安全性を確認すればよいことになっ
ており、動物実験が義務付けられているわけではありません。EUでの法規制の動きを受け、EU向け
輸出に対応した商品開発が必要になってくるのが、
今後必至の流れになると予測されています。
昨年薬事法が改正され、
化粧品に関しては全成分表示を行い、
従来種別ごとに市販前の承認許可を得
る必要があったものを原則廃止とし、
配合禁止成分及び配合制限成分のリストによって規制する方式に
移行しました。リストには、
「防腐剤、紫外線吸収剤及びタール剤色素」以外の成分の配合の禁止・配合
の制限を定めたネガティブリストと、
「防腐剤、
紫外線吸収剤およびタール色素」
の配合の制限を定めた
ポジティブリストがあり、化粧品基準の規定に違反しない成分については、新規成分を含め、メーカー
の自己責任において配合できることとなりました。
ただし、このポジティブリストに、新しく成分を収監する場合、もしくはこの制限配合量を超えて配
合する場合は、
収監または改正の要望書を厚生労働省へ提出しなくてはならず、
この要望書に添付する
書類には、安全性に関する資料として、単回投与毒性、反復投与毒性、生殖発生毒性、皮膚一時刺激性、
連続皮膚刺激性、感作性、光毒性、眼刺激性、遺伝毒性等の資料の添付が求められており、動物実験が
義務付けられています。
しかし薬事法改正後、
このポジティブリスト収監および改正という申請は数件しかなかったといいま
す。開発する上で、認可に必要な動物実験だけがなされているわけではありませんが、日本においても
化粧品の動物実験禁止は実現可能であることを示唆する数字です。
また、
日本にはオランダ等の動物実験法にあたる法律はなく、
動物たちを守る観点からも、
「動物の愛
護及び管理に関する法律」での規制が妥当だと思われます。同法は現在、改正後5年後に見直しとの内
容が含まれていますが、
EUでの動物実験禁止の時期とその時期が近いため、
海外との足並みをそろえ
る絶好のタイミングとなっています。
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