速度正帰還によって発生する自励振動を 利用した生体表面の粘弾性特性のオンライン測定 滋賀県立大学大学院 三﨑 務 速度正帰還によって発生する 自励振動を用いて生体表面の硬さを in-vivo (無侵襲)かつ オンラインで測定 硬さを動剛性(k , c)として測定 測定条件に依存 接触子の形状 押付け荷重 縦弾性係数 粘性材料定数 Eel Evis 材料定数 研究背景・目的 粘弾性測定装置は既に開発・販売されているが・・・ ・生体表面の一部を切り取る必要がある ・測定に時間を要する ・非接触式(X線,超音波)の粘弾性測定では, 人体内部に悪影響を与える 本研究の手法を用いて,以下の事を目指す. ・瞬時に測定できる(オンライン測定) ・生体を傷つけることなく測定できる(in-vivo測定) 触診医療への利用 生体工学の分野における基礎データの収集 測定装置の構成 DSP controller Controller Power amplifier Velocity Indenter LDV Laser Doppler Vibrometer Human body Voigt model VCM 接触子およびVCM可動部(質量) m k + 生体の粘弾性(ばね,ダンパ) 1自由度の 機械振動系 c 動剛性測定原理 速度正帰還によって発生する自励振動を利用して測定 KV x& 運動方程式 m k m&x& + (c − KV ) x& + kx = 0 KV :可変速度フィードバックゲイン 不安定(自励振動) c − KV < 0 安定限界(持続振動) 安定(アクティブ制振) c − KV > 0 c 速度振幅一定制御 1 fn c − KV = 0 x v sin ω n t 共振周波数から k = (2π ⋅ f n ) 2 ⋅ m 可変速度FBゲイン KV から c = KV 縦弾性係数の導出 R1′ P Indenter 接触子 主曲率: R2 , R2′ R1 測定 対象 R2 human body ⎛ 2 1 1 ⎞⎤ ⋅ ⎜⎜ + + ⎟⎟⎥ ⎝ R1 R2 R2′ ⎠⎥⎦ dx 1 = dP k ≤ R2′ ) Hertzの接触理論 1 3 荷重Pで微分 Hookeの法則 P = kx ⇔ 2 縦弾性係数: Eel 本研究におけるHertzの接触理論式 α ⎡ 9 P 2 ⎛ 1 −ν 2 ⎞ ⎟⎟ x = ⎢ 2 ⋅ ⎜⎜ 2 ⎢ π ⎝ Eel ⎠ ⎣ (R ポアソン比:ν R2′ 2 主曲率: R1 ,R1′ (R1 = R1′) 縦弾性係数 粘性材料定数の導出 弾性‐粘弾性対応原理により, Eel ↔ 3Q1Q2 2 P1Q2 + Q1 P2 P1Q2 − Q1 P2 ν↔ 2 P1Q2 + Q1 P2 P1 ,Q1 :形状変化 の演算子 P2 ,Q2 :体積変化 の演算子 <演算子の決定> ・Voigt model Eel Evis P1 = 1 , Q1 = + s 1 +ν 1 +ν ・ 体積変化は無視(非圧縮) P2 = 0 , Q2 = 1 Hertzの接触理論 (弾性論) 対応原理 線形粘弾性論へ 拡張 ラプラス逆変換 粘性材料定数 動剛性・材料定数 弾性論 粘弾性論 弾性‐粘弾性 対応原理 f σ = = Eε A ばね定数 粘性減衰係数 縦弾性係数 粘性材料定数 f σ = = Eel ε + Evis ε& A k = AP c = BP ( 1 3 ( A ,B は定数) 1 3 ) 3 ⎞2 3 1 −ν 2 ⎛ α Eel = ⎜ ⎟ π ⎝3⎠ Evis 2 ⎞3 ⎛ 1 ⎞⎤ 2 3 ⎡1 ⎛ 2 1 1 ⎟⎟⎥ ⋅ k 2 + ⎢ ⎜⎜ + ⎢⎣ P ⎝ R1 R2 R2 ' ⎠⎥⎦ 1 ⎞⎤ 3 1 2α ⎞ ⎡ 1 ⎛ 2 1 1 ⎛ 9 ⎟⎟⎥ ⋅ Eel 3 ⋅ c =⎜ + ⎟ ⎜ ⎟ ⎢ ⎜⎜ + ⎝ 4π ⎠ ⎝ 9 ⎠ ⎢⎣ P ⎝ R1 R2 R2 ' ⎠⎥⎦ 腕・足の動剛性と粘弾性 押付け荷重を変化させた場合 Forearm 1500 k,c ∝ 粘弾性 (Eel , Evis ) const Calf ×104 10 Calf Forearm Eel [N/m2] k [N/m] 2000 動剛性 (k, c ) 1000 500 8 6 4 2 0 Calf Forearm 200 Evis [Ns/m2] c [N/(m/s)] 0 5 4 3 2 1 0 0 1 P3 0.2 0.4 0.6 0.8 Preload [N] 1 1.2 150 100 50 0 0 0.2 0.4 0.6 0.8 Preload [N] 1 1.2 外部刺激を与えた場合の生体表面の粘弾性変化 外部刺激(水分変化・温度変化)を 生体表面に与えた場合,生体表面の 粘弾性硬さが変化することが考えられる 外部刺激 Ⅰ.スプレー型の化粧水 (水分補給を目的としたもの) Ⅱ.コールドスプレー 外部刺激により,瞬時に変化する粘弾性変化が オンラインに測定できることを確認する 化粧水による粘弾性の短時間変化 Eel [N/m2] 4 x 10 ▼▼ 3 2 縦弾性係数に変化は 見られない 1 0 -20 Evis [Ns/m2] Spray 4 120 100 80 60 40 20 0 -20 -10 0 10 20 30 40 50 60 50 60 粘性材料定数が 時間とともに増加 -10 0 10 20 30 Time [s] 40 化粧水による粘弾性の長時間変化 Eel [N/m2] 4 ×10 x 104▼ Spray 4 3 2 0 -10 Evis [Ns/m2] 縦弾性係数は ゆるやかに変化 1 120 100 80 60 40 20 0 -10 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 外部刺激前よりも 3割程度大きくなる 粘性材料定数は 急激に変化 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 Time [min] コールドスプレーによる生体表面の粘弾性変化 Spray Evis [Ns/m2] Eel [N/m2] 4 x 10 6 5 4 3 2 1 0 0 5 150 125 100 75 50 25 0 0 ▼ 10 ▼ 15 20 25 30 35 40 45 50 一時的に 粘弾性硬さが増加 5 10 15 20 25 30 Time [s] 35 40 45 50 まとめ 速度正帰還によって発生する自励振動を利用して, 生体表面の粘弾性硬さの時間変化を測定した. ・ 測定部位の違いにより,測定される粘弾性硬さが 異なることを示した. ・ 生体表面に外部刺激を加えた場合の粘弾性硬さの 時間変化(短時間~長時間)をオンラインで測定できる.
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