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2014/9/2
日本顔学会2013において発表済み
遠目で美人度は増すか?
アイメイクにおける観察距離の効果
Effects of Viewing Distance on Eye Makeup
森川 和則1, 山南 春奈2,
高木 悠多1, 富田 瑛智1, 松下 戦具1
(1大阪大学人間科学研究科,
2資生堂リサーチセンター)
錯視とは目による知覚
が物理的現実と異なる
こと
女性が美しく見える条
件として「夜目、遠目、
笠の内」と昔から言う
化粧は錯視を生じる
これらは全て顔を明瞭
に知覚しにくい条件
仮説: 顔の明瞭な知覚が
困難な条件では化粧によ
る錯視量が増幅される
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2014/9/2
第一段階の研究テーマとして
観察距離が化粧錯視に及ぼす効果を調べる
化粧には宝塚歌劇団の舞台メイクのように遠距離
から見られることを想定したものもある。近くで見ると
大変不自然であるが、離れて見ると自然に見える。
では、普通のレベルの化粧を眼前で見る場合と
数メートル離れてみる場合とで、印象が変わるのか?
実験方法
実験参加者:
大学生32名(女性16名、男性16名)。
視力は0.7以上(5mの距離でランドルト環による
視力測定を行った)。
色覚正常。
標準刺激:
816×1052ピクセルの顔画像(画面上で22×28.4cm)
5レベルのアイラインと4レベルのマスカラの組合わせ
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標準刺激
アイライン
無
上インサイド茶
上茶
上下茶
上下黒
00
0A
0B
0C
0D
A0
AA
AB
AC
AD
B0
BA
BB
BC
BD
C0
CA
CB
CC
CD
マスカラ
無
上のみ
上下
上下+
ツケマ
調整刺激(比較刺激)
・ 標準刺激と同じ大きさ。
・ 調整刺激はメイクなしの目を90%~120% (長さ次元)
に2%ステップで変化させた画像。
・ 標準刺激と調整刺激を参加者に比較させることで、
知覚された目の大きさを測定した。
90%
100%
110%
120%
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2014/9/2
手続き
各参加者は近条件(0.6m)と遠条件(5m)の両方の
観察距離条件に参加した。条件順序は参加者間でカウ
ンターバランスされた。
標準刺激と調整刺激はモニター画面の左右位置(ラ
ンダム)に同時に1.5秒間提示された。参加者はどちら
の顔の目がより大きく見えるかをキー押しで答えた。
測定には上下法を用いた。20刺激系列はランダムに
織り交ぜられ、始値は明らかに標準刺激の目より大きく
あるいは小さく見える範囲からランダムに選ばれた。最
初の折り返しまでは4%ステップで、それ以降は2%ス
テップで変化し、7回の折り返しで終了した。最初を除く
6回の折り返し値の平均を主観的等価点PSEとした。
近条件の結果
マスカラはアイラインを
圧倒する:松下ら
(2013)の結果と一致
近条件
115
知覚された目の大きさ(%)
遠条件の結果
全体的に錯視量が増加。
アイライン効果が顕著に
増加。
110
105
マスカラなし
上のみマスカラ
100
上下マスカラ
上下+ツケマ
95
なし
上イン茶
上茶
上下茶
上下黒
アイライン
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近条件の性差
近条件では
男女差なし
知覚された目の大きさ(%)
120
近条件 マスカラ効果の男女比較
115
110
105
男性
100
女性
95
なし
上のみ
上下
上下+ツケマ
マスカラ
遠条件の性差
男性は遠目
メイクに魅惑
されやすい!
120
知覚された目の大きさ(%)
遠条件では女性の
錯視量はアイメイ
クの濃さに影響さ
れない。
男性の錯視量はア
イメイクの濃さに伴
い著しく増加する。
遠条件 マスカラ効果の男女比較
115
110
105
男性
100
女性
95
なし
上のみ
上下
上下+ツケマ
マスカラ
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2014/9/2
まとめ
化粧を施した場合に、知覚される目の大きさに関して次
のことが判明した:
・ 近距離(0.6m)ではマスカラを使うとアイラインの効果
がなくなる。
・ 遠距離(5m)では近距離より全体的に錯視量が増加
する。
・ 遠距離ではマスカラ+アイラインも有効である (男性
観察者だけ)。
・ 遠距離の男性観察者では化粧錯視量はアイメイクの
濃さとともに増加する。
・ 遠距離の女性観察者の知覚はアイメイクの濃さに
影響されない。
遠距離での錯視量増加の原因考察
・ 視力0.7以上なので光学的ボケではないと考えられる
・ 網膜像が小さくなるため、顔の細部が見分けにくくなり
真の顔と化粧の区別がつきにくい
・ 顔が見えにくい条件では男性は女性を理想化する?
・ 見えにくい条件下でも女性は冷静に化粧顔を知覚する
生物学的?
知覚的順応(化粧慣れによる)?
認知的補正?
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