デジタルの変革が可能なネットワークとデータセンターに: 将来性を考えた

EXECUTIVE BRIEF
デジタルの変革が可能なネットワークとデータセンターに:
将来性を考えたプラットフォームを構築するための 5 つの検討事項
Sponsored by: ジュニパーネットワークス
Chris Barnard
August 2015
はじめに
現在我々は、20~25 年ごとに起きる変革の真っ只中にいる。その変革は、IDC が「第 3 のプラッ
トフォーム」と呼ぶ、クラウド、モビリティ、ソーシャル技術、そしてビッグデータで形成され
る世界の上で起きる爆発的な価値の創造によって特徴付けられる。こうした力は、顧客の期待に
応える一部の企業をリーダーに押し上げるが、そうでない企業は淘汰の危機に直面するであろう。
ビジネスを進めるペースは絶え間なく速度を上げ、企業は顧客とシームレスにつながることを求
められる。また、意思決定においてリアルタイムデータ分析を活用し、従業員の生産性を働く場
所に関わらず向上させる能力が必要になる。こうした動きは、IT 部門には新しい、強化されたサ
ービスの提供をいっそう強く求める一方で、ほとんどの顧客は依然として予算上の課題に直面し、
「少ないリソースで多くを実現する」方法を見付けなければならない。
次の時代に成功を収めるため、企業は顧客データにすばやく対応してビジネスを加速させる必要
がある。技術の俊敏性が鍵になるのである。これによって、企業は IT 主導の取り組みを通じて、
新たなビジネス機会を追うことができる。記憶に留めておくべき鍵となる考慮すべき事柄は以下
の通りである。
1.
現在は「デジタル時代」である。競合他社より優位に立つためには時代を受け入れること
である。これは、IT 部門と業務部門(LOB:Line Of Business)のリーダーがこれまで以上
に緊密に協力しなければならないことを意味する。
2.
俊敏性が重要である。第 2 のプラットフォームの IT 戦略では、デジタル時代に成功を収
めることはない。2 つのチームを作ることを検討すべきである。一つのチームが従来型の
機器と第 2 のプラットフォームのネットワークインストラクチャを担当し、もう一つのチ
ームは、第 3 のプラットフォームをベースにした変革を手掛けるべきである。
3.
上記を達成するには、インフラストラクチャは、ビジネス環境の変化に反応できるように
オープンかつ順応性がなければならない。つまり、デジタル時代に応じた俊敏な IT 環境
を作らなければならないのである。
4.
自動化とオーケストレーションに基づいたサービスの実現は、運用効率を左右する。
ビジネスが IT そのものになったことを考えると、セキュアなコネクティビティとリスク管理を戦
略全体にしっかりと浸透させる必要がある。
概況
1. デジタル時代を受け入れる
第 3 のプラットフォームは、ICT 市場の成長の新しい核になっている。IDC のワールドワイド IT
支出額予測によると、ワールドワイドの IT 支出額全体である 3 兆 8,000 億ドルの 30%を第 3 のプ
ラットフォームが占め、IT 支出額の成長分のほぼ 100%を第 3 のプラットフォームが担っている。
これは、ICT 活用のまったく新しい方法である。第 2 のプラットフォームの従来型クライアント
August 2015, IDC #IDCEB04X_RH
サーバーアーキテクチャと従来型ネットワークを置き去りにして、クラウド、モビリティ、ビッ
グデータ、そしてソーシャル技術を活用するのである。そしてそれは、あらゆる産業を変革し、
拡大し、破壊する多くの新しいソリューションとサービスを導く。イノベーションは、拡張性、
速度、低コストのすべての点で新しい特徴を帯びている。また、バリューチェーンの大規模な再
構成が進んでいる。IT のこうした動向は、IT 部門の従来の境界を越える方法であり、第 3 のプラ
ットフォームの革新段階の最も劇的な局面になるであろう。最終目標は、まさに地球上のあらゆ
る産業の改革、それも継続的な変革である。事実、IDC では、第 3 のプラットフォームが単なる
技術革新のプラットフォームではなく、ビジネス革新のプラットフォームとして急速に浸透しつ
つあると確信している。ネットワークは、モビリティ、クラウド、ソーシャル技術、ビッグデー
タと結び付いているため、このプロセスで重要な役割を果たす。
消費者に目を向けると、ジェネレーション Y(1980 年代生まれ)の影響が見られる。こうしたミ
レニアルズは、モビリティ、クラウド、ビッグデータ、ソーシャルメディアで形作られた世界で
成長してきた。彼らは、ジェネレーション X やベビーブーマーなどの旧世代も取り込み、企業と
影響し合いながらテクノロジーの先頭集団に位置付けられている。消費者が新製品を手に入れる
主要な手順に、根本的な違いはない。新しい製品やサービスを見付け、他の選択肢も探し、正し
い選択肢を選び、発注して受注し、そしてそれを繰り返すという手順に関しては、依然として論
点になるであろう。しかしながら、モバイルが当たり前で、複数のチャネルで構成されたような
世界は、気短なコンシューマーが進める手順に影響を与えているのである。このオムニチャネル
の世界には、Web サイト、モバイル、電子メール、Web 検索、ソーシャルメディアだけでなく、
コンビニエンスストアやコンタクトセンターも含まれる。これらはすべて、デジタル変革の課題
の重要な構成要素である。そして、課題は、変革のスコープだけでなく、変革のスピードにもあ
ることを指摘することは重要である。まさに成功するための競争である。そこでは最も俊敏な企
業が、自社を現在の体制からデジタル企業に変えることに成功するのである。
また、顧客とのインタラクションの質が意味するものと、それがビジネスの課題とどのように関
連するかを考えるまったく新しい方法も必要である。今日のネットワークに接続されたデジタル
世界では、IT インフラストラクチャに関わる品質の問題は、ビジネスの問題と同義である。場合
によっては、組織の存在さえ危うくなる。ソーシャルメディアはもちろん従来型メディアは、ト
レーディングでの問題から医療事情におよぶソフトウェアの欠陥などの出来事をしばしば取り上
げる。これはすべての組織に関連するが、本質的に、IT 企業である組織にとってはなおさらであ
る。Uber 社はタクシーを保有せず、Airbnb 社はホテルの客室を保有しない。このようなビジネス
は、強力で俊敏な IT インフラストラクチャに 100%依存する。その他の卓越した例として、e ビジ
ネスの Zulily 社を挙げる。米国シアトルに本社がある Zulily 社は、370 万人以上の顧客を持ち、
6,000 種類以上の製品を提供している。この企業の売上は 11 億ドルに達する。同社のインフラスト
ラクチャとネットワークの品質に関する問題は、ただちにビジネス上の問題につながるであろう。
デジタル時代では、ICT がさらにいっそう重要になる。Nasdaq のロバート グレイフェルド CEO
は、「Nasdaq のシステム、そして業界のシステムは、より高いレベルの堅牢性を獲得しなければ
ならない」と述べている。
第 2 のプラットフォームの時代においては、CIO はしばしば複雑で高度に
カスタマイズされたオンプレミスのソリューションを構築する「最高イン
フラストラクチャ責任者(Chief Infrastructure Officer)」であった。IT は組
織にとってコストとみなされ、CIO の重要なタスクの一つは IT 組織の利
益を守ることであった。第 3 のプラットフォームにおいては、企業は IT
がビジネスであること、そしてビジネスが IT であることを理解している。
これは、CIO の役割が変わらなければならないことを意味するに留まらな
い。営業やマーケティングのトップのような経営幹部や LOB のリーダー
も、IT 関連の決定に自分たちの意見を取り入れることを求めたり、IT 部
門に相談することなく決定を行ったりすることが増えることを意味する。
このように、シャドーIT として知られる状況が作り出され、IT 部門にと
っては、セキュリティの問題やその他の頭痛の種が生じるのである。
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第 3 のプラット
フォームにおい
ては、企業は IT
がビジネスであ
ること、そして
ビジネスが IT で
あることを理解
している。
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LOB のリーダーの影響が強くなっていることは、IDC の「EMEA Enterprise Communications Survey, 2015」
にも表れている。このレポートには、欧州、中東、アフリカ(EMEA:Europe, the Middle East and
Africa)17 か国の中堅中小企業および大企業のネットワークを担当する 1,569 人の幹部(IT または
テレコミュニケーション/ネットワーク部門のディレクター、マネージャー、副社長など)の優
先順位と戦略的な意思に関する貴重な洞察が掲載されている。本調査結果では、LOB と IT 部門の
連携が現実のものになっていることが示されている。かつては CIO とネットワークマネージャー
のみが IT 予算を管理したが、ネットワークの意思決定プロセスに関わるその他の利害関係者が増
えている傾向が、EMEA 全体で見られる。IT 部門のみで予算を管理していると回答した企業は、
わずか 34%であった。一方で、IT 部門が LOB の意見を取り入れて意思決定を行っている企業は
23%、その逆のケースは 22%であった。また、LOB が IT に関する決定を下しているケースは
21%となった(Figure 1 参照)。この傾向は、他の地域で行われた調査でも同様であった。
FIGURE 1
第 3 のプラットフォームのトレンド:予算管理
今後 1~3 年間の新規プロジェクトにおいて、IT 部門と LOB の間で予算管理をどのように分担しま
すか?
予算管理(平均%)
IT部門のみで行う

ビジネスとITの連携が現実のものに
なった。かつては、CIOとネットワー
クマネージャーのみが予算の配分を
管理していた。しかし現在では、ネ
ットワークの意思決定プロセスに関
わるその他の利害関係者が増える傾
向が見られる。

LOBのリーダーは、予算管理と配分に
影響力を強めつつある。

ベンダーはユースケースを説明する
だけでなく、ネットワークのオーナ
ー以外に存在する幅広い利害関係者
に、ネットワーク投資のビジネス、
技術、および財務上のメリットを明
確に表すことが必要になっている。
LOB
のみで行う
(21%)
(34%)
IT部門の意見を
取り入れつつ
LOBが行う
(22%)
LOBの意見を
取り入れつつ
IT部門が行う
(23%)
Source: IDC EMEA Enterprise Communications Survey, 2015(n = 1,468、全回答者の一部)
これは、CIO がより包括的な責務を負い、社内と社外のソリューションを活用する「最高統合責
任者(Chief Integration Officer)」または「最高開発責任者(Chief Development Officer)」以上のも
のになることを意味する。鍵は、技術提供者からソリューション提供者に変わることで、新しい
アプローチと実行を受け入れるプロセスにある。第 3 のプラットフォームの台頭によって、ネッ
トワークマネージャーとネットワークチームの役割は、ネットワーク接続を「切れないようにす
る」ことから、LOB の戦略と売上創出における真のパートナーになることに変わった。これは、
産業分野や地域に関係なく当てはまる。こうした傾向は、ネットワークのエンドポイントの増加
と合わせて、ネットワークの稼働時間と可用性への要求を強める結果になっている。しかしなが
ら、新しい流れには、仮想化とクラウドによって IT チームの役割と責任があいまいにする要素も
含まれている。インフラストラクチャ運用に対するアプローチにおいて、より多くの共同作業が
必要になり始めているためである。たとえば、IDC が米国の IT 幹部 426 人に対して行った SDN
(Software-Defined Networking)に関する調査では、23%の企業で、イノベーションを推進する目
的でネットワークとサーバーのプロフェッショナルの間でコラボレーションが増加したことが示
されている。
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2. 俊敏性は不可欠
第 3 のプラットフォームは、増大するモビリティとクラウドアプリケーションのワークロードを
サポートできる、ネットワークへの新しいアプローチを必要とする。クラウドとモビリティはど
ちらも巨大なグローバル市場である。2015 年のスマートフォンの売上は 4,120 億ドルに達し、スマ
ートモバイルデバイスの成長の大半、成長の 84%を占めるとみている。同様に、パブリック IT ク
ラウドサービスも大幅に成長し、2015 年には 700 億ドル近くに達すると予測している。2018 年に
は 1,260 億ドルになり、その多くは Software as a Service になると見込んでいる(パブリッククラウ
ド支出額の 70%超)。クラウドサービスに、それを可能にするすべてのハードウェア、ソフトウ
ェア、サービスを加えた「より大きなクラウド市場」では、2015 年には 1,180 億ドル市場になり、
2018 年には 2,000 億ドル以上に成長するとみている。
クラウドを見ると、世界中でかなり同様な状況が表れていることが分かる。あらゆる種類のクラ
ウド(パブリック、プライベート、ハイブリッド)の採用が増えており、段階的で、完了までに
時間を要するにもかかわらず、ほとんどのアプリケーション/ワークロードが、社内からクラウ
ドに移行しようとしている。たとえば、IDC の最新調査「China Cloud Survey(5 つの産業分野におけ
る 500 人の技術リーダーに対する調査)」では、クラウドに移行している最も一般的なワークロ
ードはアプリケーション開発/テストであった(パブリッククラウドユーザーの 41%、プライベ
ートクラウドユーザーの 43%)。そして、ユニファイドコミュニケーションと電子メールがそれ
に続いている。2014 年~2016 年の間にクラウドの利用の増加に着目すると、中国のビジネスリー
ダーは、クラウドセキュリティ、アナリティクス、アプリケーションデプロイメントのクラウド
利用の増加を見込んでおり、ここでもクラウドへの移行によるビジネスの俊敏性への関心が根底
にある。
俊敏性の課題は複合的である。パブリッククラウドのみならず企業データセンターに配備される
さまざまなワークロードは、エンドユーザーに達するまで多様なネットワーク(MPLS、ブロード
バンドインターネットなど)を利用するからである。成功は、DevOps のコンセプトを大いに活用
するプロセス変革アプローチから始まる。リアルタイム環境における継続的改善は、長期の単一
の IT プロジェクトというよりはむしろ、達成基準になるのである。IDC の SDN に関する調査で
は、直接的に DevOps についての質問も取り上げ、DevOps モデルに向けて IT 部門を再構築する計
画があるかどうかをたずねた。その目的は、SDN の採用と運営上の変化への着手の間に存在する
関係性を把握することであった。IT 部門の再構築を計画していない企業はわずか 28.5%で、49%
の企業は SDN 導入の結果として IT 部門の再構築を計画している。多くの企業にとって、2 つのチ
ームを作ることは意味のあることであろう。一つのチームは、従来型の機器と第 2 のプラットフ
ォームのネットワークインストラクチャを担当し、もう一つのチームは第 3 のプラットフォーム
の技術をベースにした変革を手掛けるべきである。
この状況では、アプリケーションベースのポリシー、自動化、プログラ
マビリティ、ネットワーク仮想化/オーバーレイ、オーケストレーショ
ンなどの次世代ネットワーク技術は、俊敏性の向上に役立つ。企業の顧
客にとって、これは、第 2 のプラットフォーム側ではないネットワーク
ベンダーが提供する製品から、包括的なソリューションを組み立てるこ
とを意味することになる。一つの分野は SDN であり、ネットワークの俊
敏性を推進する手段になり得る。IDC の「EMEA Enterprise Communications
Survey」の結果を見ると、EMEA の企業の 3 分の 1 以上が、すでに SDN の
ベネフィットを実感している。ドイツは、SDN の導入の第 1 の波におい
て主役を演じ、さらに、フランスが主導的な立場で、40%の企業が近い
将来にデータセンターに SDN を導入する計画を持っている。
一つの分野は
SDN であり、ネ
ットワークの俊敏
性を推進する手段
になり得る。
企業は、SDN アーキテクチャによるアプローチへの移行が、現在と将来のネットワーク投資に影
響することを理解し、より重要なこととして、俊敏なビジネスと IT の要件に、ネットワーク投資
を適切に合致させる必要がある。企業はすでに、仮想化、クラウド、モビリティ、ビッグデータ、
さらに IoT(Internet of Things)も積極的に導入し始めているため、基礎をなすネットワークアー
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キテクチャは、あらゆる新たな技術に対する取り組みをサポートするように念入りに吟味され、
最適化される必要がある。SDN サービスの契約は、ネットワーク機能の新しいアーキテクチャ的
アプローチへの移行を、戦略的に優先順位付けできるように設計されるであろう。ネットワーク
と業務のリスクを軽減し、強化された俊敏性を活用するためには、ビジネスとそのプロセスの影
響を理解することが不可欠である。
3. オープンでセキュアなネットワークが成功への鍵
IT の第 3 のプラットフォームに関する IDC のビジョンが主流になるにつれて、クライアントサー
バーアーキテクチャと初期の Web を特徴とする時代に成長したネットワークベンダーは、新たな
ビジネスクリティカルなアプリケーションのワークロードにおける要件を満たすために、対応と
進化を迫られている。重要な開発の一つが、セキュリティを重視しながら、ネットワーク標準と
オープンソースへの取り組みを採用することである。これは、IDC の「EMEA Enterprise
Communications Survey」でも明らかである。インフラストラクチャへの投資は重要な投資分野として
認識され(31%)、セキュリティやクラウド、データ分析よりも重要視されていることが分かる
(Figure 2 参照)。
第 3 のプラットフォームの環境では、企業は、相互運用性の確保とベンダー独自技術によるベン
ダーロックインからの回避に有利な、標準ベースのネットワークプロジェクトを支持する。オー
プンソースベースのネットワークは、勢いを増し、ますます普及を続ける。OpenContrail、
OpenStack の Neutron、Open vSwitch、OpenDaylight、ONOS、Open Compute Project、新しい Open
Network Virtualization(ONV)プロジェクトのいずれであっても、オープンソースネットワークは、
業界で急成長している勢力と言える。
一方、一部のベンダーは、競争優位と差別化が可能な分野で、自社の製品戦略と開発努力に注力
できるという理由で、オープンソースネットワークを好む。そのようなベンダーは、オープンソ
ースプロジェクト関連の他の製品やサービスを含めた統合ソリューションを提供することもでき
る。オープンソース戦略を採用するネットワークベンダーは、しばしば、アプリケーションポリ
シー、アプリケーション指向アナリティクス、強力な自動化、管理ソフトウェア、セキュリティ、
データプレーンアクセラレーションなどの分野で、付加価値や差別化を目指す。
セキュリティの観点からすると、オープンスタンダードには、可用性と継続性のサポートに関す
るメリットがあるだけでなく、エンドユーザーの選択肢が最大限に広がるという利点もある(ベ
ンダー独自仕様によるロックインがない)。セキュリティベースのオープンスタンダードは、企
業にとってより適切なソリューションがあれば他のベンダーに円滑に移行できるため、ベンダー
間の競争を促進する。
4. 自動化とオーケストレーションによる運用効率の向上
企業がクラウドサービスを導入した結果、サーバー仮想化の採用と直接的に連動してワークロー
ドがより大きく変動するようになり、データセンターに新しいタイプの環境が生まれた。トラフ
ィックパターンも、モバイルユーザー数の増加に加えて、データセンター内のアプリケーション
間の通信の増大に伴って変化している。これらのすべての傾向によって、新しい環境では従来の
静的なネットワークが不適切であることが明らかになっている。過去数年間、SDN が業界の注目
を集めてきた。SDN は、コントロールとデータプレーンを分離するというネットワークに対する
アプローチである。それによって、自動化されたプロビジョニング、プログラムによる管理、ネ
ットワークリソースのアプリケーション指向管理と可視化、そしてクラウドオーケストレーショ
ンシステムとの円滑な統合を実現する。IT 部門は進化するビジネスのニーズに対応するという課
題を抱えながら、クラウド、モビリティ、データアナリティクス、ソーシャルビジネスの領域に
跨ってそれを実行している。仮想化と、最近ではネットワーク仮想化と SDN が、ネットワークの
導入方法の主軸となる方向にシフトしている。この状況下では、拡張性とパフォーマンスの点か
ら自動化を切り離して考えることはできない。
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データセンターで実行されるアプリケーションやワークロードが、ビジネスクリティカルな業務
の中核にある。これらのワークロードを実行するネットワークは、最適な SLA による(理論上の)
ピーク効率で実行するような特定の構成で編成される。データセンターのスパインスイッチによ
って、物理的/論理的拡張性、さらにアプリケーション要件の増大に対応する性能とポート密度
を備えたクラウドデータセンターが実現されるが、自動化とオーケストレーションによる差別化
を試みるネットワークベンダーも見られる。性能、拡張性、密度は依然として重要であるが、ま
すます増えるソフトウェアによって実現される質的な機能セットが重要になるであろう。顧客は
ワークロードと投資をハイブリッドクラウドにますますシフトし、新しい要件にうまく合致する
アーキテクチャと運用モデルを求めるため、質的機能セットは持続可能な差別化と価値をもたら
す。
ソフトウェアベースの機能、特に自動化、プログラマビリティ、オーケストレーション関連の機
能は、クラウドと第 3 のプラットフォームのワークロードの継続的増加の中で、ネットワークを
分断させ、そして再形成する。ハードウェアベースの差別化は依然として可能であるが、ソフト
ウェアベースの価値が、クラウドデータセンターを構築する顧客に対応する能力には絶対に不可
欠となるであろう。
FIGURE 2
技術とサービスの重要な取り組みトップ 5
あなたの組織は、今後 1~3 年間に以下の分野にどの程度積極的に投資しますか?
40%
31%
30%
28%
26%
26%
20%
13%
15%
14%
14%
12%
0%
既存のインフラストラクチャの
WAN/ネットワークの
データのバックアップと
アップグレードまたは
セキュリティの向上
リカバリー能力の向上
クラウドサービス
高度なデータアナリティクス/
ビッグデータ
ネットワーク帯域の増強
まったく投資しない
少しだけ投資する
適度に投資する
かなり投資する
大規模/本格的に投資する

データの重要性が増すにつれて、組織はネットワークの保護とセキュリティにますます取り組むようになる。
クラウドサービスの採用、先進的なデータアナリティクスのみならず、確かなネットワークパフォーマンスと
セキュリティも、今後1~3年間に投資する重要な取り組みのトップ5に挙げられている。

WANを介したビデオ配信やソーシャルネットワーキング、M2Mなどの特定のサービスやアプリケーションについ
ての優先度は、重要な要素として定義されているが、その順位は明らかに低い。
Source:
IDC EMEA Enterprise Communications Survey, 2015(n = 1,569、全回答者)
.
5. セキュアな接続とリスク管理が戦略全体に浸透する必要性
第 3 のプラットフォームでは、データは複数のクラウド間をファイアウォールの外側で移動する
であろう。これは、データのセキュリティ、アクセス管理、コンプライアンスに関する課題を引
き起こす。ますます高度になる脅威によって、クラウドベースの運用とオンプレミスの運用が分
断され、データの損失にさえつながる可能性がある。また、第 3 のプラットフォームによって、
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より多くの変数が導入されるため、ビジネスの復旧およびバックアップ計画がより複雑になる。
IDC にとって「第 3 のプラットフォームに最適化されたセキュリティ」は、セキュリティが必要
なシステムと情報の規模の大きさと拡大する範囲に適応した技術とサービスを意味する。2015 年
においては、脅威の対策で後手に回らないようにするために、ビッグデータのフィードとアナリ
ティクスの利用を広げるだけでなく、端末(モバイルデバイス)とコア(クラウドに保管されて
いるデータ)のセキュリティを確保することも開発において重要であることが分かるであろう。
このような傾向は、ポイントソリューションではなく、アプローチの不可欠な要素としてのセキ
ュリティを有した俊敏性のあるネットワークインフラストラクチャを求める。企業がリアルタイ
ムの脅威を可視化し、タイムリーにデータ分析に基づいて行動することが極めて重要である。
これにはさまざまな脅威に対応する首尾一貫としたセキュリティのアプローチが必要である。そ
してこれは、集中管理によって運用管理上の負担を軽減する。
世界中の企業はこの点を理解していると思われ、セキュリティ戦略を静的な第 2 のプラットフォ
ームのアプローチから一変させている。IDC Japan の「2015 年 国内マネージド ICT およびネット
ワークサービスの利用に関する企業ユーザー調査」(8 つの産業分野の技術リーダー562 人に対す
る調査)では、ネットワーク管理の最も重要な問題はセキュリティとガバナンスであり、回答者
の 18%が強調していることが示されている。これは、公共(40%)と金融(30%)で顕著である。
この傾向は、他の地域で行われた調査でも同様である。たとえば、現在クラウドを利用していな
い欧州の組織においても、調査回答者の 55%がセキュリティに対する懸念を主な理由として強調
している。
まとめ
第 3 のプラットフォームは、すべての産業を変革し、拡大し、破壊する新しいソリューションと
サービスを導く。イノベーションは、拡張性、速度、低コストのすべての点で新しい特徴を帯び
ている。大規模なビジネスの変革が進行している。最終目標は、まさに地球上のあらゆる産業の
改革、それも継続的な変革である。ネットワークは、第 3 のプラットフォームの主要な要素であ
るモビリティ、クラウド、ソーシャル技術、ビッグデータと結び付いているため、このプロセス
で重要な役割を果たす。今後数年間で、企業がビジネスの運営を合理化し、新しいビジネスのア
イディアと収益源を開拓できるようにするために、ネットワークはより効果的かつより効率的に
ならなければならない。
第 3 のプラットフォームの台頭によって、ネットワークマネージャーとネットワークチームの役
割は、ネットワーク接続を「切れないようにする」ことから、LOB の戦略と売上創出における真
のパートナーになることに変わった。これは、産業分野や地域に関係なく当てはまる。こうした
傾向は、ネットワークのエンドポイントの増加と合わせて、ネットワークの稼働時間と可用性へ
の要求を強める結果になっている 。
第 3 のプラットフォームは、増大するモビリティとクラウドアプリケーションのワークロードを
サポートできる、ネットワークへの新しいアプローチを必要とする。第 3 のプラットフォームの
環境では、企業は、相互運用性の確保とベンダー独自技術によるベンダーロックインからの回避
に有利な、標準ベースのネットワークプロジェクトを支持する。
成功は、DevOps のコンセプトを大いに活用するプロセス変革アプローチから始まる。リアルタイ
ム環境における継続的改善は、長期の単一の IT プロジェクトというよりはむしろ、達成基準にな
るのである。多くの企業にとって、2 つのチームを作ることは意味のあることであろう。一つのチ
ームは、従来型の機器と第 2 のプラットフォームのネットワークインストラクチャを担当し、も
う一つのチームは第 3 のプラットフォームの技術をベースにした変革を手掛けるべきである。
IT 部門は進化するビジネスのニーズに対応するという課題を抱えながら、クラウド、モビリティ、
データアナリティクス、ソーシャルビジネスの領域に跨ってそれを実行している。仮想化、最近
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ではネットワーク仮想化と SDN が、ネットワークの導入方法の主軸となる方向にシフトしている。
この状況下では、拡張性とパフォーマンスの点から自動化を切り離して考えることはできない。
企業は顧客のニーズを積極的に取り入れ、自動化とプログラマビリティを通じて、ネットワーク
の可用性、性能、信頼性、拡張性、セキュリティを最適化するソリューションを探し求めるべき
である。
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IDC 社 概要
International Data Corporation(IDC)は、IT および通信分野に関する調査・分析、アドバイザリー
サービス、イベントを提供するグローバル企業です。50 年にわたり、IDC は、世界中の企業経営
者、IT 専門家、機関投資家に、テクノロジー導入や経営戦略策定などの意思決定を行う上で不可
欠な、客観的な情報やコンサルティングを提供してきました。
現在、110 か国以上を対象として、1,100 人を超えるアナリストが、世界規模、地域別、国別での
市場動向の調査・分析および市場予測を行っています。
IDC は世界をリードするテクノロジーメディア(出版)、調査会社、イベントを擁する IDG(イ
ンターナショナル・データ・グループ)の系列会社です。
IDC U.K.
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