昨年ーー月中旬 西日本新聞に九州大手企業の社員 の自殺記事が載っ

「憂夢気分」が日常生酒に
昨年11月中旬 西日本新聞に九州大手企業の社員
があります。これらは普通、原因が解決したり、解
の自殺記事が載った。内容は概ね次のようなものだ
決しなくとも気分転換をしたり、時間が過ぎること
った。
などで自然に解決します。ところが、原因が解決し
2004年、九州大手企業の男性社員(30歳)が当時、
うつ病になり自殺した。過酷な長時間勤務などが原
ても気分が回復せず、強い憂鬱間が長く続いて普段
どおりの生活を送るのが難しくなったり、思い当た
因として遺族が同社の責任を問い、損害賠償などを
る原因が無いのにそのような状態に陥るのが【うつ病】
求めた訴訟で、福岡地裁は原告の主張を全面的に認め、
です。
その企業に約1億円の損害賠償金の支払いを命じた。」
【うつ病】には気持ちの落ち込み、憂鬱な気分な
「男性は1998年4月入社、福岡で現場監督業務を
どの症状と共に、意欲が出ない、考えがまとまらな
担当、自殺する約1年前から大手ゼネコンの下請け
いなど、うつ病に特徴的な心の症状(精神症状)が
のビル新築工事の現場担当となり、毎月123∼176時
見られます。また、多くの方に眠れない、疲れやす
間の時間外勤務を強いられ、会社からの支援も充分
いといった体の症状(身体症状)が見られます。
受けられなかったため、うつ病になり自宅のマンショ
ンから飛び降り自殺をした。」
このような新聞記事をたまたま読んだことで今回
と次回の2回にわたり【うつ病】について取り上げ
【うつ病】は脳の中の神経伝達がうまくいかなく
なるなどの機能の異常によって起きる病気であり、「気
の持ちよう」や「心の弱さ」などで起こるものでは
ものではありません。
ることにしました。
2.うつ病のタイプ
1.うつ病とは
【家庭の医学】によると【うつ病】と言う言葉は
広く世間に認識されるようになりましたが、実際に
治療に結びついている割合はまだ少ないようです。
うつ病は気分障害(気分のコントロールができず、
日常生活に支障をきたす病気)の一つである。
気分障害は大きく二つに分かれ、①うつだけが続
く「うつ病性障害」と(∋躁状態とうつ状態を繰り返
精神科に加え、神経科、心療内科、メンタルクリ
す「双極性障害」があります。うつ病性障害は症状
ニックなど、より敷居が低く気軽に訪れられる医療
の程度や症状が持続する期間によって ィ.大うつ病
機関が増えたとはいえ、まだ身近とはいえない。今
性障害と ロ.気分変調性障害に分けられる。
まで楽しめていたことが楽しめない、何をしてもだ
大うつ病性障害は、一般にうつ病と呼ばれている
るい、人と会いたくない、イライラして人や物に当
もので、気分障害の中で最も多く見られます。気分
たったりする。・・・そんな自分が情けなくて落ち
変調性障害は、抑うつ症状は軽いものの、長く続く
込んだり、理由も無く涙が出たり・・・そのような
特徴があります。躁極性障害は、一般には躁うつ病
経験はありませんか?
と呼ばれています。抑うつ状態と明るく活発に行動
責任感が強くて頭も良く、自分自身のハードルを
高く設定してしまう頑張り屋さんに発病しやすいの
も特徴です。
人は誰でも、生活の中の出来事をきっかけに気持
ちが落ち込んだり、要鬱な気分になったりすること
する躁状態を繰り返すものです。
また、抑うつ状態がありながらも、うつ病の典型
的な症状がみられる「非定型うつ病」と呼ばれる若
者も増えています。
3.うつ病患者の実態
ストレスの多い現代社会で、うつ病は年々増加し
ています。最近の調査によると、日本人の15人に1
人が一生のうち一度はうつ病にかかるという結果が
出ています。
更に、最近では10代から30代の若い世代を中心に
前述の「非定形型うつ病」が目立つようになりました。
うつ病は、もはや珍しい病気ではなく、誰もがか
うつ病になりやすい性格には次のような人があげ
られます。
①生真面目な性格の人∼凡帳面、仕事熱心、凝り性、
責任感が強い、徹底する、限界まで頑張る、正直、
対人関係を大事にする人
(診社交的な反面気弱な人∼社交的、親切、好人物、
善良、明朗活発、静か、気弱、他人優先、寂しがり屋、
反省的
かる可能性のある病気です。しかし、実際に病院、
診療所などに訪れ、治療を行っている人はわずかだ
6.きっかけとなるストレス?
といわれています。
うつ病になるきっかけとなるストレスの多くは「環
また、うつ病になると他の身体的症状が同時に出
境の変化」です。
るため、自分がうつ病であると気づかず、うつ病を
①仕事を持つ人に多いストレス∼事業不振、失敗、
専門とする診療(精神科、診療内科、神経科、メン
異動、昇進、退職、単身赴任、リストラ、不本意な
タルクリニック)を受けていない人が多いというこ
仕事など
とです。
②女性に多いストレス∼妊娠、子育て、更年期障害、
セクハラなど
4.うつ病はなぜ起こるのか?
③その他のストレス∼大切な人との離別、離婚、別居、
多くはうつ病になりやすい性格や体質を持ってい
病気、事故、多重ローン、結婚、独立、問題解決な
る人が何らかのストレスを受けることにより発病し
ます。また、環境的な要因によるストレスによって
起こることもあります。
ど
人間の脳の中には、「神経伝達物質」と呼ばれる
物質があり、無数の神経細胞に情報を伝達する働き
いずれにも共通することは、脳神経の情報を伝達
があります。ストレスがたまり心身が疲れた状態が
する物質が減るなど脳の機能に異常が生じていると
続くと神経伝達物質の量や神経細胞の働き、脳の血
いうことです。
流などに変化が起きます。
うつ病のときは、気分や思考、意欲などをつかさ
5.うつ病になりやすい性賃?
どる「セロトニン」「ノルアドレナリン」の量が減
うつ病になりやすい性質には「生まれながらに持
っていることがわかっています。
った性質」と「性格や考え方による性質」があると
考えられています。
また、言語、運動、神経活動を担っている脳の前
頭葉という部分を中心に血流の代謝が低下している
「生まれながらの性質」についてはまだ十分解明
ことも分かってきました。その他、身体に何らかの
されていませんので、「性格や考え方の性質」につ
病気を持っているとその病気が原因でうつ病になる
いて紹介します。ただし、そのような性格を持って
こともあります。
いるからといって、必ずうつ病になるということは
つづきは次回38号にて紹介します。
ありません。
※出典・日豪庭の医学・西日本新聞ほか