239 立体映像の観察時における輻輳性融合立体視限界 輻輳性融合立体

基礎論文
TVRSJ Vol.7 No.2, 2002
立体映像の
立体映像の観察時における
観察時における輻輳性融合立体視限界
における輻輳性融合立体視限界 VFSL の分布
長田 昌次郎 *
Distributions of "Vergence Fusional Stereoscopic Limit (VFSL)" of Disparity in a
Stereoscopic Display
NAGATA, Shojiro
Abstract: The "Vergence Fusional Stereoscopic Limits (VFSLs)" of crossed and uncrossed
binocular disparities in a stereoscopic display were measured to get the distributions of the VFSLs
in a group of young subjects (392 subjects, aged 18-40 years, mean 21.4, S.D. 3.9) using a new
autostereoscopic display and measuring system. Cumulative frequency ratios of model log normal
distributions fitted to the data showed percentiles as follows: median 3.05, 84% percentile (-S.D.)
2.04 deg arc for uncrossed disparity; median -3.34, 84% percentile -1.84 deg arc for crossed
disparity. Factors such as eye position (phoria) that might underlie individual differences, and also
the relation with visual stress are discussed. These distribution data will be useful for designing
stereoscopic images for comfortable viewing.
Keywords: stereoscopic display, binocular disparity, vergence fusional stereoscopic limit,
VFSL, distribution, comfortable viewing
1 輻 輳 性 融 合 立 体 視 限 界 と個 人 差
三 次 元 空 間 内 の対 象 を中 心 視 し、輻 輳 を固
定 した状 態 で見 るとき、左 右 眼 像 間 に横 ずれ
(相 対 両 眼 視 差 、以 後 単 に両 眼 視 差 という
Relative binocular parallax /disparity)があって
も、パナム領 域 (Panum’s area,中 心 窩 で約 30
視 角 秒 ) 1) と呼 ばれる範 囲 で、左 右 眼 像 を単 一 視
し,立 体 視 ができる。この機 能 は網 膜 性 融 合
(retinal /sensory fusion)と呼 ばれる。両 眼 視 差
がその範 囲 を越 えると、二 重 視 になり、立 体 視 が
困 難 になる。そこで、輻 輳 運 動 が発 生 し、再 び単
一 視 するようになる。これは輻 輳 性 融 合
(vergence/motor fusion)と呼 ばれる。両 眼 視 差
が大 きくなり過 ぎると、左 右 眼 に二 平 面 像 を投 影
する立 体 映 像 2) においては、実 空 間 視 と異 なり、
融 合 せずに立 体 視 ができなくなる。この単 一 視
可 能 な最 大 の両 眼 視 差 を輻 輳 性 融 合 限 界
(Vergence fusional limit/ Relative fusional
vergence)と呼 ぶ。本 論 文 では立 体 視 の可 否 判
断 も加 えた最 大 の両 眼 視 差 を輻 輳 性 融 合 立 体
視 限 界 (Vergence fusional stereoscopic limit,
VFSL)と呼 ぶ。これは立 体 視 力 (奥 行 き感 度 ) 3 ) と
同 様 に重 要 な立 体 視 能 力 である。 立 体 映 像 の
再 生 位 置 (両 眼 視 差 )は当 然 この VFSL 以 下 に
収 める必 要 がある。そのため融 合 限 界 への画 像
条 件 、特 に画 面 サイズ 4) 、異 なる両 眼 視 差 の周
囲 像 との相 互 作 用 5) 等 による影 響 が調 べられて
きた。さらに、その性 質 から仮 説 「融 合 限 界 の大
きい条 件 ほど視 覚 負 担 が少 なくなる」 5) が立 てら
れた。これは例 え同 じ両 眼 視 差 でも、VFSL に対
――――――――――――――――――――
*InterVision(NPO), [email protected]
して余 裕 がなければ、その視 覚 負 担 はより大 きい
ことを意 味 する。特 に多 くの聴 視 者 が観 察 する放
送 では視 覚 衛 生 (Visual Hygiene/Quality of
Visual Life)面 から快 適 で健 康 的 な立 体 映 像 の
設 計 ・観 察 条 件 の基 準 を与 えるために、VFSL の
分 布 が求 められていた。本 論 は新 たな広 視 野 高
精 細 度 眼 がね不 要 立 体 映 像 表 示 装 置 を基 に多
人 数 VFSL 測 定 システムを開 発 し、392 名 におけ
る分 布 を得 た。この分 布 の適 合 対 数 正 規 分 布 モ
デルは Percentile 値 uncross Median 3.05, 84%
2.04 deg arc, cross Median -3.34,84% -1.84
deg arc である。個 人 差 の要 因 と疲 労 に関 する検
討 を行 い、上 記 の数 値 は、自 然 な見 えの立 体 映
像 の設 計 基 準 に適 用 できると考 えられた。
2 融 合 輻 輳 限 界 と輻 輳 性 融 合 立 体 視 限 界
輻 輳 運 動 自 体 は直 接 には両 眼 の眼 球 運 動 、
ないしは両 眼 無 対 応 像 (nonius image)の目 測 法
でもって測 定 しなければならない。輻 輳 は単 眼 の
注 視 像 へ追 随 運 動 がそれぞれ独 立 に働 いて起
こることはなく、両 眼 反 共 役 で生 じる。その起 因
から持 続 性 あるいは緊 張 性 (tonic)、融 像 性
(fusional)、調 節 性 (accommodative)と近 接 性
(proximal)の4成 分 があり、融 像 性 は両 眼 視 差 を
契 機 として起 こり、予 測 や指 標 の選 択 が強 く影
響 するなど、融 像 性 運 動 のみを分 離 し、かつそ
の限 界 を測 定 することは難 しい 6 ) とされている。そ
のため、融 合 単 一 視 の機 能 ではなく、輻 輳 の契
機 となる刺 激 に対 しての視 差 性 輻 輳 (disparity
vergence)として議 論 されている 7 ) 。通 常 の輻 輳
は立 体 視 と対 応 する。しかし、立 体 視 がなくても
輻 輳 が生 じることがある 8 ) ので、立 体 視 の判 断
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日 本 バーチャルリアリティ学 会 論 文 誌 Vol.7,No.2,2002
自 体 も必 要 である。
融 合 輻 輳 限 界 を、眼 球 運 動 の直 接 測 定 でな
く、左 右 眼 像 が両 眼 中 心 窩 に投 影 する両 視 線
の輻 輳 があると見 なし、融 合 単 一 視 の判 断 でも
って測 定 されることがある。融 合 状 態 から対 象 の
両 眼 視 差 を次 第 に増 加 させ、追 従 視 しながら、
輻 輳 で調 節 が壊 れ 、ボ ケ始 める調 節 破 断 (blur)、
そ し て融 合 単 一 視 が破 断 する融 合 破 断 (break)、
逆 に、二 重 視 状 態 から次 第 に減 少 させて融 合 視
できる再 融 合 (recovery)の3つの判 断 の測 定 値
がある。一 方 、VFSL は先 に述 べたように輻 輳 状
態 で融 合 視 し、さらに立 体 視 する能 力 を最 大 両
眼 視 差 で表 現 したものである。また、両 眼 視 差 を
急 峻 に立 ち上 げるので先 の recovery 判 断 に近
い。ほとんどの場 合 、VFSL は融 合 単 一 視 の最
大 両 眼 視 差 と同 じであるが、融 合 単 一 視 しても
立 体 視 が出 来 ないことがあり、融 合 単 一 視 のみ
の最 大 値 より低 くなる場 合 がある。また、同 じ単
一 像 に見 える片 眼 抑 制 性 の場 合 にも、立 体 視
判 断 の応 答 で確 認 できる。
これまで報 告 されている融 合 輻 輳 限 界 9,10 ) と本
VFSL との違 いは、1つには先 に説 明 したように
見 え方 の判 断 に違 いがある。この他 に、テスト図
像 の両 眼 視 差 の分 布 条 件 が異 なる。前 者 はプリ
ズム等 で視 野 をずらして、全 面 に渡 ってテスト図
像 の両 眼 視 差 を変 えるのに対 して、後 者 では、
実 際 の立 体 映 像 に模 した条 件 、即 ち、図 1のよう
に、観 察 視 野 の一 部 、画 枠 等 で囲 まれたテスト
図 像 の一 部 測 定 対 象 像 の両 眼 視 差 を変 化 させ
る。融 合 限 界 は周 囲 像 ・画 枠 の作 用 などに影 響
されること 5) が明 らかにされている。また、時 間 的
にも融 合 機 能 は強 い履 歴 特 性 をもっているため、
一 度 融 合 した立 体 像 に追 従 視 しながら、両 眼 視
差 を増 加 させる場 合 と、立 体 像 がある奥 行 きに
急 に位 置 する場 合 では異 なる。
これらを考 慮 し、高 解 像 度 、広 視 野 、高 輝 度
の新 たな眼 がね不 要 立 体 映 像 表 示 装 置 11) 、お
よび一 回 の測 定 でも測 定 精 度 ・信 頼 性 のある多
人 数 測 定 に適 するように VFSL の人 口 分 布 測 定
システム 12) 開 発 し、VFSL を測 定 した 13) 。
本 VFSL については、既に全測定データの一部を基
に報告 14)がなされている。しかし、測定値の定義、さらに、
その分布特徴量のデータ解析等に幾つかの問題がある。
本論文ではその点についても指摘する。
3 測定方法
3 . 1 立 体 映 像 表 示 装 置 と テスト図
テスト 図 像
測 定 に用 いた立 体 映 像 表 示 装置は図 1に示
す目 がね不 要 20”LCD 立 体 映 像 表 示 装 置 で、
視 野 が縦 40cm・横 32cm (FOV 30 deg arc,
H1054/2 x V1280 pixel)、明 室 観 察 可 能 な輝 度 (白
像 130 cd/m 2 )、cross-talk は視 認 出 来 なかった
(他 眼 像 から漏 れる像 の輝 度 /正 規 像 の輝 度 =
0.017 以 下 )。画 面 を視 距 離 0.6m で観 察 する。
融 合 限 界 は視 距 離 には大 きく影 響 しない 5 ,1 5 ) の
で、両 眼 視 差 の範 囲 がほぼ等 しくとれる視 距 離
60cm とした。テスト図 像 は図 2のように、一 般 立
体 映 像 を模 して、また、周 囲 との相 対 的 割 合 と
中 心 窩 の大 きさを考 慮 した大 きさにして、両 眼 視
差 0の周 囲 像 を配 した円 図 像 (径 3 deg arc)を用
いた。円 図 像 には、単 眼 視 では奥 行 き・凹 凸 が
認 められず、輻 輳 性 融 合 の立 体 視 による画 面 か
らの前 後 奥 行 き判 定 と、網 膜 性 融 合 の立 体 視 に
よる円 図 像 自 体 の凹 凸 形 状 判 定 とを同 じ図 像 で
兼 ねられる円 錐 図 像 を作 成 した。後 者 の判 定 で、
必 要 に応 じて立 体 視 の確 認 が出 来 る。ランダム
ドット立 体 像 は輻 輳 時 の両 眼 視 差 情 報 帰 還 の
無 く、一 般 テレビ映 像 と条 件 が異 なるため、融 合
視 機 構 の検 討 のための一 部 の測 定 を除 き、本 論
では円 図 像 を用 いた。
円 図 像 の両 眼 視 差 (最 小 値 3.58 min arc)と
立 体 映 像 の再 現 距 離 はそれぞれ次 式 で計 算 さ
れる。両 眼 視 差 (rad) = tan-1(画 面 上 左 右 像 ず
れ/視 距 離 )(1)、 再 現 距 離 = 1/(1/視 距 離 -両
眼 視 差 /瞳 孔 間 隔 )(2)。
図1VFSL 測定の様子
Fig.1A photo showing
VFSL
measurement
set-up using a 20”
autostereoscopic display
(FOV 30deg in width at
60cm)(a stereo-picture
is synthesized).
3.2 提 示 法 ・ 測 定 値 の定 義
テスト図 像 の両 眼 視 差 はつぎのように変 える。
被 験 者 毎 、測 定 の始 めに、低 目 の値 で立 体 視
の前 後 判 断 が出 来 ることを確 認 し、その値 を仮
の最 大 値 とする。仮 の最 大 値 から、減 少 を含 む
一 定 範 囲 内 で無 作 為 に振 らしながら漸 次 増 加 さ
せる(変 形 系 列 測 定 法 )。仮 の最 大 値 以 下 で応
答 に誤 答 があれば、仮 の最 大 値 を減 らす。その
交 差 ・非 交 差 性 (スクリーンからの前 後 位 置 )の
順 序 も無 作 為 に選 択 される。振 る範 囲 は測 定 精
度 と測 定 回 数 を考 慮 して決 めた。無 作 為 乱 数 の
初 期 値 は順 序 効 果 を打 ち消 すために、被 験 者
毎 に変 える。測 定 毎 、新 たな両 眼 視 差 を提 示 す
る前 に一 度 両 眼 視 差 を0にする。非 交 差 、交 差
性 それぞれで、誤 答 の応 答 が3回 続 いた時 、直
前 の仮 の最 大 値 を VFSL とする。片 方 の VFSL
が決 まっても、両 方 の VFSL が決 まるまで、両 方
の両 眼 視 差 を提 示 し、測 定 を繰 り返 す。両 眼 視
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長 田 :立 体 映 像 観 察 時 における輻 輳 性 融 合 立 体 視 限 界 VFSL の分 布
差 は特 定 離 散 値 でなく、最 小 両 眼 視 差 から充 分
に連 続 と見 なせる値 をとった。
被 験 者 の課 題 はまず、テスト図 像 が二 重 像 、単
一 像 何 れに見 えるかを判 断 し、前 者 なら、二 重
像 の応 答 を、後 者 なら、さらに前 後 位 置 何 れに
見 えるか、あるいは不 明 かの三 択 で応 答 する。
応 答 は画 面 上 のカーソルで行 う。前 後 位 置 の判
断 が正 しい応 答 を正 解 とし、二 重 像 視 と不 明 を
誤 答 と扱 う。提 示 する両 眼 視 差 の変 化 は時 間 で
打 ち切 らないが、3 秒 以 上 5 秒 までで判 断 をする
ように反 応 ボタンの色 で督 促 した。初 めて見 る絵
柄 の立 体 映 像 を観 察 可 能 になる観 察 開 始 後 の
所 要 時 間 が9-77歳 において、およそ 1 秒 未 満
から 15 秒 と年 齢 に応 じて長 くなる報 告 1 6 ) がある
が、変 わらない絵 柄 であることから充 分 と考 える。
測 定 の精 度 (accuracy)は測 定 シミュレーション
によって、眼 科 視 力 での精 度 (ISO:±10%) 1 7 ) と応
答 の変 化 に対 する堅 固 性 を得 ていることを確 認
した(誤 差 率 Mean 3.5%±3%)。
図2テスト図像左右映像中心部(実際は無作為色彩配
色像)
Fig. 2 The central part of the VFSL test pattern
stereogram consisting of a cone target (diameter 3 cm; nearer
than screen in crossed view and father in uncrossed) and 4
judgment icons with a finger icon on a response button.
Judgment icons from left to right: farther than the screen;
nearer; perceived as single image but depth
indistinguishable; and double image. The finger points to
the “nearer” response button (The actual images
are colorized randomly).
3.3 測 定 手 続 き
被 験 者 は一 定 の視 力 ・眼 位 等 に矯 正 せず、
その人 がテレビを観 察 する時 の生 活 視 力
(daily-life vision)下 で行 い、測 定 前 に生 体 ・人
間 対 象 実 験 に関 するヘルシンキ宣 言 に基 づい
た説 明 と同 意 を得 て行 った。被 験 者 に、“寄 り目
“など意 識 的 な目 の動 きを排 して、自 然 な観 察 で
の判 断 を要 請 した。観 察 時 の眼 位 を眼 科
Maddox 眼 位 法 と同 様 に両 眼 無 対 応 のテスト図
像 を表 示 して測 定 した。Maddox 眼 位 法 と比 較 し
て、画 枠 などの影 響 で画 面 位 置 に引 き寄 せられ
る傾 向 がある。他 の両 眼 視 機 能 を測 定 後 、VFSL
の測 定 を行 った。その試 行 回 数 は 1 回 (あるいは
一 部 比 較 検 討 のための 2 回 )である。
4 被 験 者 と人 数
被 験 者 は、日 常 生 活 に支 障 のない両 眼 視 機
能 を持 つ範 囲 で、青 年 層 と高 齢 者 の2つの年 齢
層 から自 発 的 参 加 を得 た。個 人 差 の考 察 には、
個 人 属 性 を一 様 にして調 べることが望 ましい。本
論 は年 齢 層 18-40歳 の青 年 層 に区 切 って論
ずる。この 18 歳 頃 で瞳 孔 間 隔 の成 長 が飽 和 し
始 める 18) 。被 験 者 は人 数 392 名 、平 均 21.4±
3.9 歳 であった。男 女 の分 布 には偏 りはなかった
(233 名/159 名,χ 2 =2.3,4, p>0.05)。
母 集 団 分 布 の推 定 で信 頼 に足 る必 要 標 本 数
19)
(被 験 者 数 )は正 規 分 布 が保 証 されず、母 分
散 が未 知 の場 合 、標 本 平 均 95%の信 頼 区 間 片
幅 と標 準 偏 差 との比 を 0.1 とすると、標 本 数 n の
とき、自 由 度 n-1、危 険 水 準 100-95%のt分 布
関 数 より、0.1>t(n-1,0.05)/√(n-1)を満 たすn
の最 小 数 412として得 られる。さらに、設 計 基 準
に重 要 な低 い範 囲 の分 布 の様 子 を表 す母 分 散
の推 定 では同 様 にχ 2 分 布 関 数 を用 いて、標 本
分 散 の信 頼 区 間 幅 が標 準 偏 差 の 0.25 以 下 にす
るにはおよそ 400 名 を要 するとして実 験 計 画 が
立 てられ,測 定 を行 った。文献 14 のデータはその一
部(18-67歳高齢層まで301名)を尚早に一括して解析、
報告している。
5 測 定 結 果 輻 輳 性 融 合 立 体 視 限 界 の人 口
分 布 と 対 数 正 規 分 布 モデル
測 定 された VFSL の頻 度 分 布 を図 3に示 す。
VFSL 両 眼 視 差 を横 軸 に、棒 グラフで被 験 者 の
分 布 数 (縦 右 軸 )を、折 線 で出 現 した各 VFSL に
対 する融 合 立 体 視 可 能 な被 験 者 の累 積 頻 度 比
(縦 左 軸 )を示 す。 図 中 表 は各 Percentiles、お
よび平 均 値 と分 散 値 である。主 な VFSL の
Percentiles と平 均 値 は Uncross 0% (Max)13.9,
Median50% 2.98, 80%2.20, Mean3.34 S.D1.53,
Cross 0%(Max) -27.6, Median50% -3.20, 80%
-2.15, Mean -4.72 S.D4.44 deg arc であった。
この分 布 は試 行 毎 (要 因 a)の個 人 内 変 動 等 に
よるのではなく、個 人 間 変 動 (個 人 差 、要 因 b)に
因 ることは、同 一 被 験 者 134 名 の 2 回 の測 定 デ
ータを分 散 分 析 法 の検 定 で試 行 要 因 により有 意
な変 化 =効 果 が認 められないこと、および試 行
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日 本 バーチャルリアリティ学 会 論 文 誌 Vol.7,No.2,2002
毎 の分 布 間 に有 意 差 (Wilcoxon test)が認 めら
れないことから確 かめられた(ANOVA uncross
Fa(1,133) = 0.32 p>0.05, Fb(133,133) = 9.3
p<0.01, cross Fa(1,133) = 0.40 p>0.05,
Fb(133,133) = 10.1 p<0.01, 及 び Wilcoxon test
uncross z = 0.186, p>0.05, cross z = 0.104,
p>0.05)。試 行 間 の相 関 係 数 は uncross 0.81,
cross 0.82, Spearman rank p<0.01 であった。分
布 は高 い値 に広 がり、非 対 称 であるため、中 央
値 は平 均 値 より低 い。この場 合 、累 積 頻 度 比 は
稀 に起 こる分 布 端 の値 で大 きく変 動 する平 均 値
に対 して、変 動 を吸 収 し、信 頼 性 を増 す。図 3の
分 布 は非 正 規 分 布 であることから、VFSL を対 数
変 換 した図 4で正 規 分 布 モデルを考 える。横 軸
に VFSL(deg arc、対 数 軸 )を示 す。
Uncrossed
VFSL Binocular disparity deg arc
Frequency
Cumulative Frequency of enable subjects ratio %
00% 13.9
25% 3.93
50% 2.98
60% 2.80
70% 2.50
75% 2.38
80% 2.20
Mean 3.34±1.53
80% -2.15
75% -2.38
70% -2.50
60% -2.86
50% -3.20
25% -5.01
00% -27.6
Mean -4.72±4.44
Crossed
図3 融合立体視限界 VFSL の頻度分布 右縦軸:棒グラフの被験者頻度 左縦軸:折線グラフの出現した各 VFSL に
対する融合立体視可能者の累積頻度分布
Fig.3 Block histograms: Distributions of frequency (subject number) on right-vertical axis of the vergence fusional
stereoscopic limits (VFSL) of relative binocular disparity (deg. arc) on horizontal axis measured for young group with 392
subjects (18-40years,21.4±3.9). Lines: Cumulative frequency ratio on left-vertical axis. The tables show the percentiles.
縦 右 軸 に図 3とおなじ被 験 者 の頻 度 を、縦 左 軸
(正 規 確 率 紙 軸 )に折 線 で示 す出 現 した各 VFS
L に対 する融 合 立 体 視 可 能 者 の累 積 度 数 比 を
表 す。これを基 に中 央 値 に近 い程 重 み付 けた 20)
最 小 自 乗 誤 差 の直 線 を得 る。これが対 数 正 規
分 布 モデルで、測 定 値 に良 く適 合 する。これより
Percentiles uncross Median 3.05, 84%(-S.D)
2.04, cross Median -3.34, 84% (-S.D) -1.84 deg
arc を得 た。
6 考察
6.1 被験者集団と
被験者集団と分布の
分布の特徴量の
特徴量の検討
本 研 究 の主 たる目 的 は VFSL 分 布 の測 定 を
通 じて,一 般 的 な映 像 提 示 における快 適 な観 察
条 件 として推 奨 できる両 眼 視 差 を求 めることであ
った。測 定 から,被 験 者 の 80%が融 合 可 能 な両
眼 視 差 は,非 交 差 2.20 度 ,交 差 2.15 度 であっ
た(Model: uncrossed 50% 3.05, 84% 2.04,
crossed 50% -3.34, 84% -1.84 deg)。映 像 提 示
の推 奨 両 眼 視 差 を小 さくするほど融 合 可 能 な被
験 者 が増 加 するが,そればかりを追 及 すると,立
体 映 像 としての迫 力 (再 生 位 置 )が低 減 する。そ
こで 84%以 上 の人 が融 合 可 能 な両 眼 視 差 を多
人 数 の分 布 から決 定 する意 義 は大 きい。測 定 デ
ータの一 部 での報 告 文 献 14 では、まず、測 定 値
を「単 一 視 可 能 な両 眼 視 差 の範 囲 」と定 義 して
いる。これが不 正 確 であることは既 に述 べた。そ
して、結 論 で分 布 の特 徴 量 を「図 8と表 附 より、
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長 田 :立 体 映 像 観 察 時 における輻 輳 性 融 合 立 体 視 限 界 VFSL の分 布
両 眼 視 差 の変 化 が1度 程 度 に収 まるようにすれ
ば、ほとんど(約 87%)の観 察 者 は二 重 像 にならず
に融 合 して観 察 できる、また 2 度 程 度 あると約 半
数 は二 重 像 を知 覚 することを示 す」と述 べている。
本 研 究 結 果 とは約 1 度 の差 異 がある。上 記 の差
異 を具 体 的 に考 えると、図 3で、例 えば中 央 値 に
両 眼 視 差 1度 の違 いが生 じれば、立 体 視 可 能 な
観 察 者 数 では4割 弱 の違 いがあり、再 生 距 離
(式 2、瞳 孔 間 隔 64mm)から求 めたスクリーン視
距 離 0.6m後 方 の奥 行 き距 離 では両 眼 視 差 1
度 から2度 は12cmから29cm、3度 で58cmに、
視 距 離 1.2mであれば、58cmから2.3m、さら
に65mと大 幅 な違 いが生 じる。視 距 離 1.2mの
手 前 では、それぞれ 0.9m, 0.7m, 0.6m と違 いが
ある。
このように、設 計 基 準 に活 用 しようとする分 布
測 定 としては致 命 的 な欠 陥 になる。被 験 者 集 団
の偏 り、あるいは測 定 システム自 体 の信 頼 性 、延
いては、立 体 映 像 の設 計 基 準 としての分 布 の測
定 結 果 に対 する有 効 性 に疑 義 を生 じさせる。そ
こで、文 献 14 の累 積 頻 度 比 (文 献 付 表 の積 相
対 度 数 )を吟 味 すると、両 眼 視 差 の下 限 0 度 (か
ら 1 度 未 満 )の級 区 分 では非 交 差 、交 差 ともに
0.0033、1 度 級 区 分 は同 じく 0.1296、2 度 級 区 分
は非 交 差 0.4884,交 差 0.4718、3 度 級 区 分 は
非 交 差 0.7641,交 差 0.6645 である。1 度 級 区 分
の累 積 頻 度 比 が意 味 することは、統 計 上 87%
(1.0-0.1296)の観 察 者 が 2.0 度 未 満 は
Uncrossed
VFSL disparity log deg arc
Frequency
Cumutative frequency ratio in normal
distribution paper axis
50% 3.05
84% 2.04
84% -1.84
50% -3.34
Crossed
図4 青 年 層 の融 合 立 体 視 限 界 VFSL の分 布 と対 数 正 規 分 布 モデル 右 縦 軸 :被 験 者 頻 度 (棒 表
示 )、左 縦 軸 :各 VFSL に対 する融 合 立 体 視 可 能 者 の累 積 度 数 比 (正 規 確 率 紙 ,折 線 )、対 数 正 規 分
布 モデル(中 央 値 に近 い程 重 み付 けた最 小 自 乗 誤 差 の直 線 、中 央 値 が最 頻 密 度 値 )に良 く適 合 す
る。図 中 数 値 は Percentile 値
Fig. 4 Block histograms: distributions of frequency on right-vertical axis of individual vergence
fusional stereoscopic limits (VFSL) of disparity (deg arc) for young group with 392 subjects. Lines:
cumulative frequency ratio on sigmoid left-vertical axis (on which normal distributions appear as
straight line) with fitted model normal distributions. The values in the figure show the percentiles.
融 合 立 体 視 可 能 なことを示 している。提 示 した
両 眼 視 差 は連 続 値 であることから、2.0 度 で87%
の観 察 者 が可 能 であると言 える。また同 様 に、
50%の観 察 者 が可 能 な値 は 3.0 度 級 区 分 内 に
おいて、即 ち 3.0 度 を少 し超 す値 であることを示
している。これらは本 論 の測 定 結 果 (対 数 正 規
分 布 モデル)の値 と一 致 する。文 献 14 の誤 謬 は、
前 述 した VFSL の測 定 法 の不 十 分 な理 解 の上
に、初 歩 的 統 計 学 上 の扱 い 20) から逸 脱 して拙 速
に処 理 したことによる。その結 論 、例 えば「1 度 程
度 であれば、追 随 できるということは、視 覚 系 が1
度 程 度 の両 眼 視 差 変 化 を検 出 する能 力 を持 つ
ことを示 す」などからもそれが言 える。その 1 度 に
近 い眼 の焦 点 深 度 (±0.2D =±0.8 deg arc)と
融 合 限 界 との関 係 も論 ぜられている 2 1) 。
以 上 から、被 験 者 集 団 内 の部 分 集 団 にも係
わらず、全 集 団 と同 じ分 布 の結 果 が得 られたこと
は、本 測 定 システム が安 定 して堅 固 であるこ とと、
243
日 本 バーチャルリアリティ学 会 論 文 誌 Vol.7,No.2,2002
被 験 者 集 団 内 には偏 りがなかったことを示 して
いる。
6 . 2 VFSL と 立 体 映 像 観 察 の 経 験 との関
との 関 係
経 験 群 と非 経 験 群 との分 布 間 には非 交 差 性 で
有 意 差 は認 められず、交 差 性 で経 験 群 の平 均
が非 経 験 群 のそれより高 い有 意 差 が認 められた
(Mann-Whitney test, uncross z=0.856, p>0.05,
cross z=2.78, p<0.01)。経 験 の有 無 について、
経 験 のある場 合 は多 くが左 右 分 離 式 立 体 映 像
ではなく、自 由 視 で輻 輳 を働 かせて得 る立 体 像
(Single Image Stereogram)の場 合 を指 し、試み
たが立体視が出来なかった人は”経 験 がない”と答 え
ている。これから、VFSL が低 い被 験 者 はそのよう
な経 験 がし難 かったと言 うことが出 来 る。文 献 14
は「交 差 視 差 で立 体 視 の観 察 経 験 が有 効 に働
いている。非 交 差 視 差 で訓 練 の余 地 が少 ない」
と述 べているが、先 の有 意 差 から直 ちに経 験 ・訓
練 との因 果 関 係 を述 べることは疑 問 である。訓 練
の効 果 については、十 分 考 えられるが、別 途 の
方 法 でないと結 論 づけられない。交 差 、非 交 差
性 の違 いは前 者 が筋 肉 の収 縮 で、後 者 はその
停 止 という性 質 が強 い(現 在 は積 極 的 開 散 運 動
があるとの説 もある)ことから一 考 を要 する。
6 . 3 視 覚 負 荷 ( 疲 労 ) との関
との 関 係
べている。これから先 の予 測 が確 認 される。融 像
幅 の変 化 と疲 労 自 体 の測 定 結 果 との「同 様 な傾
向 」、例 えば、「立 体 画 像 の方 が平 面 画 像 より疲
労 の度 合 いが大 きいとした被 験 者 が 5 名 、同 程
度 が 6 名 、少 ないが 1 名 」のアンケート結 果 は融
像 幅 の変 化 と同 様 に大 きな分 散 (個 人 差 )を示 し
ており、これと先 の融 像 幅 の低 下 との相 関 関 係
が明 示 されたならば、先 の予 測 をより明 白 にする
可 能 性 があった。
6.4 個 人 差 の 要 因 の 検 討
VFSL の個 人 差 の要 因 を既 に述 べたこと以 外
に検 討 する。まず、Uncross と cross の間 には有
意 な相 関 は認 めらなかった(r=-0.074, Spearman
r=-0.085)。これは交差性 VFSL が大きい被験者が必ず
しも非 交 差 性 でも大 きくならないことを意 味 し、開
散 、輻 輳 それぞれの運 動 で独 立 に VFSL が規 定
されている可 能 性 を示 す。観 察 時 の眼 位 と
VFSL(361 名 )との関 係 には、弱 い相 関 で眼 位 に
沿 って偏 移 する傾 向 があり、特 に強 い外 斜 位 の
場 合 には非 交 差 性 の VFSL は高 くならなかった
(uncross r=0.245, Spearman r=0.18, cross
r=0.095, S. r=0.14)。一 方 、眼 位 が低 いときでも
全 域 に渡 って分 散 することから、他 の要 因 として、
例 えば、輻 輳 を起 こすときに生 じる両 眼 視 差 変
化 の帰 還 情 報 、及 び周 囲 像 の視 差 からの抑 制
性 の働 き 5)などの個 人 差 が考 えられる。また、こ
の青 年 層 内 で年 齢 との相 関 は認 められなかった
(立 体 映 像 観 察 経 験 者 238 名 、uncross
r=-0.086, Spearman r=-0.045, cross r=-0.095,
Spearman r=-0.11, 非 経 験 者 154 名 uncross
r=0.063, S. r=0.0031, cross r=0.055, S.r=
Accommodation(Diopter)
先 に述 べたように、融 合 限 界 と立 体 映 像 の視
覚 負 荷 との仮 説 5)から予 測 された疲 労 との関
係 を検 討 する。融 合 限 界 である「融 像 幅 」の変
化 を立 体 画 像 観 視 の前 後 で調 べた報 告 22)が
ある。その結 果 (文 献 中 図 4と変 化 比 を示 す図
6)を見 ると、融 像 幅 が低 い裸 眼 立 体 視 不 能 群
2.50
は観 察 後 の低 下 が見 られるが、融 像 幅 の高 い
Median.50% 3deg
可 能 者 群 ではほとんど変 化 が読 み取 れない。し
84% 2deg
2.00
かし、文 献 22では図 4の「分 散 分 析 法
(ANOVA)の結 果 、融 像 に(観 視 前 後 の)時 刻
60cm
の主 効 果 が認 められた。裸 眼 立 体 視 の可 否 に
1.50
U.C
よって融 像 幅 の変 化 の度 合 いに有 意 差 が認 め
50%
られない。」と述 べられている。ここで、分 散 分 析
1.00
U.C
法 を裸 眼 立 体 視 可 能 群 の分 散 が不 能 群 のそ
80%
D-line
れより著 しく大 きく偏 る二 群 に適 用 することは不
0.50
適 当 である 20)。裸 眼 立 体 視 可 否 の選 別 自 体
C 50%
にも検 討 を要 する。これから推 測 するに、裸 眼
0.00
立 体 視 の可 否 ではなく、同 程 度 の分 散 でもって、
C 80%
-0.50 0.00 0.50 1.00 1.50 2.00 2.50
融 像 幅 が高 い被 験 者 群 と低 い被 験 者 群 に振 り
分 けてみると、もっと明 瞭 な結 果 、即 ち低 融 合
限 界 群 には融 像 幅 の低 下 が明 白 に認 められ、
Vegence 1/D(m)
一 方 、高 融 合 限 界 群 は融 像 幅 低 下 が少 ないか、
図 5 輻 輳 性 融 合 立 体 視 限 界 から得 た輻 輳 ―
あるいは認 められない可 能 性 が高 い。
調節応答特性
同 報 告 はさらに、「(主 観 疲 労 )アンケート結 果
Fig.5 Vergence - Accommodation responses
と、今 回 確 認 された立 体 画 像 観 視 直 後 の有 意 な
driven from VSFLs(IP:0.64m)
融 像 幅 の減 少 は同 様 な傾 向 を示 している」と述
244
長 田 :立 体 映 像 観 察 時 における輻 輳 性 融 合 立 体 視 限 界 VFSL の分 布
-0.012、いずれも p>0.05)。その他 の立 体 視 力
(RANDOT Test, Mean 7.1/10±2.7, uncrossed
r=-0.06, crossed r=0.04)、瞳 孔 間 隔 (Mean
61mm±0.31, uncrossed r=0.05, crossed
r=0.06)、あるいは、調 節 変 化 によって輻 輳 変 化
が引 き起 こされる連 結 の強 さ AC/A(Mean 3.3±
1.5 prism Diop/Diop uncrossed r=-0.3, crossed
r=-0.09)との間 に相 関 は認 められなかった(いず
れも p>0.05)。融 合 性 輻 輳 が困 難 になる理 由 が
調 節 ・輻 輳 矛 盾 であるならば、AC/Aに影 響 され
ると予 測 された。
6 . 5 融 合 輻 輳 限 界 との比
との 比 較
VFSL は融 合 輻 輳 限 界 800 名 の Morgan データ
あるいは 8-12 歳 206 名 の Rouse データ 1 0 ) と
比 較 して低 い(Morgan V.D. 40cm recovery limit
uncross Mean 7.5±2.9, cross -6.3±4.0, blur
limit uncross Mean 7.5±2.3, cross -9.7±2.9,
Rouse recovery uncross 5.3±2.6, cross -6.4
±3.8, blur uncross 9.6±3.4, cross -12.7±4.0
in deg arc, ここで Disparity (deg. arc) = Prism
Diopter x 0.573)の換 算 。この違 いは先 に述 べた
よう に、テ スト 図 像 の提 示 条 件 や判 断 基 準 の違
いによると考 える。
輻 輳 と調 節 作 用 との関 係 は輻 輳 ・ 調 節 の連 結
度 を示 す AC/A, ないしは CA/C、あるいは、調
節 距 離 を一 定 にしたとき、どこまで輻 輳 が可 能 か
を示 す―調 節 応 答 特 性 がある。これを本 論 の
VFSL から求 め、図 5に表 す。両 眼 視 の場 合 の焦
点 深 度 に相 当 する blur limit が一 つの目 安 であ
る。輻 輳 調 節 一 致 条 件 (Donders’ line)を挟 んで
blur limit の 1/3 中 央 を眼 位 補 正 の目 標 とする
Percival の快 適 視 域 則 23) を、先 の融 合 輻 輳 限
界 の デ ー タ に 適 用 す る と 、 お よ そ Morgan
uncross 1.8, cross –4.0, Rouse uncross 2.2,
cross –5.3 deg arc を得 る。これは非 対 称 性 分 布
の平 均 値 であることを考 慮 すると本 論 の VFSL と
かなり近 い値 であると言 える。他 のデータに調 節 、
輻 輳 の不 整 合 限 界 として、スクリーン距 離 0.635
m で+/-0.75D(2.7 deg arc)のデータ 24) もある。
これらの結 果 、並 びに、本 測 定 値 が、“寄 り目 “な
ど意 識 的 な目 の動 きを排 し て、自 然 な観 察 での
判 断 の測 定 値 で あるこ と から 、 見 やす い立 体 映
像 の設 計 基 準 に適 用 できると考 える。ただし、測
定 条 件 と前 後 運 動 像 への立 体 視 の能 力 2 5 ) から
頻 繁 に 前 後 運 動 す る映 像 に つ いて は 、こ れ よ り
低 い値 を考 慮 する必 要 があろう。
頭 部 搭 載 型 HMDの接 眼 立 体 映 像 ではスクリ
ーン像 面 調 節 位 置 からスクリーン像 面 輻 輳 位 置
へ、スクリ ーン像 面 輻 輳 位 置 から 各 立 体 映 像 の
再 生 位 置 への2つの両 眼 視 差 があり、前 者 が融
合 輻 輳 限 界 での測 定 条 件 に似 ており、後 者 が
本 測 定 条 件 に近 い。
9)
7 まとめ
立 体 映 像 の設 計 基 準 とするために、新 たな広
視 野 高 精 細 度 眼 がね不 要 立 体 映 像 表 示 装 置 、
および多 人 数 測 定 に適 するように VFSL の人 口
分布測定システムを開発し、1 8 - 4 0 歳 の 青 年 層
(392 名 、平 均 21.4±3.9 歳 )の輻 輳 性 融 合 立 体
視 限 界 VFSL の測 定 を行 い、uncross Mean 3.34
S.D 1.53, cross Mean -4.72 S.D 4.44 deg arc
の分 布 を得 た。この測 定 分 布 に良 く適 合 する対
数 正 規 分 布 モ デ ル は Percentiles uncross
Median 3.05, 84%(-S.D) 2.04, cross Median
-3.34, 84%(-S.D) -1.84 deg arc であった。測 定
結 果 の分 布 特 徴 量 と、この同 じ測 定 データの一
部 を用 いて、先 に報 告 された分 布 特 徴 量 とが著
しく異 なったが、そのデータ解 析 の検 討 結 果 、先
の報 告 に誤 謬 があることを指 摘 し、改 めて本 測
定 の信 頼 性 を確 保 した。
両 眼 視 差 は“ 過 ぎ た る は な お 及 ば ざ る が 如 し ”
で適 切 な範 囲 の設 計 が重 要 である。個 人 差 の要
因 と疲 労 に関 する検 討 を行 い、上 記 の数 値 は、
自 然 な見 え の立 体 映 像 の設 計 基 準 に適 用 でき
ると考 える。
今 後 は、被 験 者 の幅 を高 齢 層 、児 童 層 に広 げ
て年 齢 による影 響 を検 討 する必 要 がある。さらに、
融 合 限 界 近 辺 の輻 輳 測 定 のために、本 測 定 シ
ステムに両 眼 瞳 孔 像 による輻 輳 運 動 測 定 を加 え
た測 定 システムを開 発 した 2 6 ) 。
謝辞
本 研 究 は前 所 属 の NHK 放 送 技 術 研 究 所 で実
施 さ れ たもので、多 くの方 々にお世 話 になりまし
た。北 里 大 学 、文 化 女 子 大 学 、日 本 福 祉 大 学 、
鈴 鹿 医 療 科 学 大 学 には測 定 の場 と被 験 者 の準
備 を頂 いた。上 記 大 学 、並 びに放 送 技 術 研 究
所 に来 所 された被 験 者 の皆 さ んに感 謝 し ます。
各 ご専 門 の立 場 から助 言 と測 定 に協 力 を頂 いた
視 覚 神 経 生 理 学 の北 里 大 学 医 療 衛 生 学 部 岩
井 教 授 、公 衆 衛 生 学 の名 古 屋 大 学 医 学 部 宮 尾
教 授 、Ophthalmology の日 本 福 祉 大 学 (当 時 )鵜
飼 教 授 と鈴 鹿 医 療 科 学 大 学 奥 山 教 授 、人 間 工
学 の NASA Dr. Steve Ellis 室 長 、また文 化 女 子
大 学 香 川 教 授 に深 く感 謝 の意 を表 します。企 画
を理 解 して頂 き、激 励 された熊 田 部 長 (当 時 )を
始 めとする所 属 上 司 、測 定 作 業 の一 部 に協 力
頂 いた江 本 職 員 、被 験 者 で協 力 頂 いた前 同 僚
職 員 に厚 く感 謝 します。
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246
(2001 年 8 月 27 日 受 付 )
[著 者 紹 介 ]
長 田 昌 次 郎 (正 会 員 )
1965東 京 電 機 大 学 卒 1960―2
001/12間 NHK 技 術 研 究 所 にて
TV 新 画 像 システムと視 覚 情 報 処 理
過 程 の 研 究 に 従 事 、 現 在
InterVision ( NPO 共 同 主 宰 ) に て
人 間 情 報 ・視 覚 効 果 ,3Ddisplay 等
に関 し調 査 研 究 と支 援 ・交 流