DynabookAZ に Armed Linux を インストールしてみた はじめに 情報収集

DynabookAZ に Armed Linux を
インストールしてみた
羽鳥健太郎
[email protected]
はじめに
東芝 Dynabook AZ(通称”あずにゃん”)は、
キーボードのあるノートブックサイズの Android
端末で、クラウドブックのニックネームで2010年
夏に発売されたものの、パームレストにある"本製
(R)
品は Windows OS ではありません”が嫌われ
たかのか、はたまたタッチパネルでなかったことや
Android Market に入れなかったことが嫌われ
たのか、当初 44,700 円ほどの価格が12月には
2万円前後で投げ売りされていました。
東芝では完全になかったことにしたい製品の
ひとつなのかと思いますが、下にありますように人
気がなかったのが不思議なくらいの魅力あるス
ペックになっています。海外では AC100 という名称で販売されており、これをハックしたコン
テンツが数多く発表されています。Ubuntu では、11.10 から正式リリースするということで、
早速 DynabookAZ に Ubuntu 11.10 をインストールしてみました。
液晶サイズ
CPU
メモリ規格
フラッシュメモリ
無線 LAN
Bluetooth
駆動時間
幅 x 高さ x 奥行
詳細スペック
10.1 インチ
解像度
NvidiaTegra250/1GHz
画面
DDR2 PC2-4200
メモリ容量
16 GB eMMC 対応
メディアスロット
IEEE 802.11b/g/n
インタフェース
2.1+EDR 準拠
Web カメラ
7 時間
OS
262x21x189.8 mm
重量
WSVGA (1024x600)
LED バックライト
512MB
SD/SDHC/MMC カード
USB2.0/USB-B/HDMI
130 万画素
Android 2.1(現在 2.2)
0.87 kg
情報収集
“あずにゃん”の情報は、まずは2ちゃんねるで最新情報が入手でき(12/17 現在 Part6 ま
で)、そのまとめ wiki (http://www45.atwiki.jp/dynabookaz/)で全体像を把握すること
ができます。
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しかし、“あずにゃん”の Ubuntu に関する情報は、Ubuntu Wiki の AC100 のページで
す(https://wiki.ubuntu.com/ARM/TEGRA/AC100)。ここには詳細が網羅されており、
こちらを丁寧に読みながら進めていけば、“あずにゃん”の Armed Linux は成功します。ただ
し、2ちゃんねるを横目で眺めるのも忘れないようにします。
インストール
事前準備
“あずにゃん”に Armed Linux をインストールするためには、次のものを用意します。
• Mini-USB ケーブル(A コネクタ-mini-B コネクタ) ← 付属品
• LinuxPC 本体
• USB メモリまたは SD カード(最低容量 1 GB)
• 1〜2時間程度の時間(ダウンロード時間を含む)
LinuxPC 本体は、どんなディストリビューションでもよいの(もちろん Slackware でも)で
すが、Ubuntu または Debian が楽だと思います。LinuxPC 本体から“あずにゃん”に
bootimage を転送するときに、nvflash という nvidia が提供しているツールを用います。こ
れに.deb ファイルが用意されており、nvflash を適切な場所にインストールしてくれます。他の
ディストリビューションは、それを自分で意識しなければなりません。
ダウンロード
インストールのために、以下のファイルをダウンロードします。
Oneiric Installer
Oneiric(Ubuntu 11.10)の リリースディレクトリ
(http://cdimage.ubuntu.com/releases/11.10/release/)から、次の2つのファイルをダ
ウンロードします。
• Bootimage
ubuntu-11.10-preinstalled-desktop-armel+ac100.bootimg
• Preinstalled rootfs ubuntu-11.10-preinstalled-desktop-armel+ac100.tar.gz
ダウンロードに失敗したものをインストールすると、“あずにゃん”が文鎮になりますので、ダ
ウンロードした後は必ず md5sum で照合してください。文鎮といっても、“あずにゃん”は軽い
ので、あまり役に立ちません。
ここで選択のミスをしました。2ちゃんねる情報では、無線 LAN の安定性が悪くて、
Ubuntu 12.04 の alpha 版または Daily Build のほうが場合によっては安定すると
いうので、最初に Daily Build からインストールしました。インストールは、内蔵のフ
ラッシュメモリか、SD カードを選択できるはずなのですが、選択画面を表示すること
なく内蔵のフラッシュメモリにインストールされました。
ここは、まずは OneiricU(Ubuntu 11.10)のインストールをお勧めします。
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nvflash
Bootimage は、nvflash ツールを使って mini-USB ケーブルを介して前述したとおり USB
メモリまたは SD カードに入れた Preinstalled rootfs を“あずにゃん”のブート時に内蔵のフ
ラッシュメモリに展開するために必要です。
Nvidia のページから、以下のファイルをダウンロードします
• Install nvflash using a debian package
http://ac100.grandou.net/nvflash#debian_ubuntu_package
実際には、そこからさらに.deb ファイルのリンク先に飛ばなくてはなりません。最終的に
以下の.deb ファイルをダウンロードしました。
http://share.grandou.net/debian/nvflash/nvflash_20110628-2_all.deb
他のディストリビューションについては、Install nvflash using a debian package の前
に nvflash のインストール方法が記述されているので、そこを参照してください。ここでは、
ホームディレクトリ以下の~/tools ディレクトリに展開するようになっていますが、
Ubuntu/Debian では、nvflash.bin が/usr/lib/nvflash ディレクトリにインストールされる
ので、同様にすればよいでしょう。
インストール
インストールは、次の2つのフェーズでやります。
ブートイメージの展開
① “あずにゃん”のバッテリーをフル充電にするか電源ケーブルを接続します。
② “あずにゃん”をシャットダウンします。
③ mini-usb を“あずにゃん”から LinuxPC 本体に接続します。“あずにゃん”の miniusb ソケットは本体右側の電源コネクタの左隣です。
④ リカバーモードで“あずにゃん”を起動します。CTRL キーと ESC キーを押しながら、電
源ボタンを押します。スクリーンには何も表示されません。
⑤ LinuxPC 本体でターミナルまたは端末(KDE ならばコンソール)を開いて、次のコマン
ドを実行します。
$ nvflash --bl /usr/lib/nvflash/fastboot.bin --download 6
/path/to/ubuntu-11.10-preinstalled-desktop-armel+ac100.bootimg
← 3 行ではなく続けて 1 行のまま
(注) fastboot.bin のパスは自分がダウンロードした ubuntu-11.10-preinstalleddesktop-armel+ac100.bootimg の置き場所によります。適宜変更してください。
⑥ LinuxPC 本体のターミナルで、nvflash の実行が終了して、”success”のメッセージ
が表示されたら、”あずにゃん”の電源ボタンを数秒間押し続けてシャットダウンします。
Preinstalled rootfs のインストール
① ubuntu-11.10-preinstalled-desktop-armel+ac100.tar.gz を USB メモリの最初の
パーティションにコピーします。
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(注) tar.gz ファイルを展開したり、dd コマンドでのコピーは不要です。コピーした後に、
ちゃんとコピーされているか、md5sum で確認しましょう。
② Reboot with the USB メモリを挿入したまま再起動してから、簡単な説明に従って進
めます。すべてが終了したら再起動しますが、それまで 20〜30 分程かかります。.
インストールの注意
• 外部メディアにインストールするときは、Preinstall rootfs を入れていない USB メモリま
たは SD カードが対象となります。その USB メモリまたは SD カードは空にしておいてイ
ンストール前にスロットに挿入しておきます。内蔵 eMMC メモリの mmcblk0 の代わり
に、SD カードの mmcblk1 にインストールされます。僕の場合は、それはできませんでし
たが...。
• ホームディレクトリを暗号化するオプションが用意されていますが、デフォルトでは動きま
せん。暗号化するときは、別途 AC100 の最後にある暗号のガイドに従って作業してくだ
さい。
• デフォルトではヘッドフォンからのみ音が出ます。サスペンド/レジューム後は動作しなく
なります。スピーカーから音を出すときは、別途 AC100 の最後にあるガイドに従って作
業してください。
これで再起動すると、LinuxPC 本体と同じようなログイン画面が表示され、ログインすると
見慣れた Unity2D のデスクトップ環境が使えるようになります。
動かしてみると分かりますが、とってももっさりしています。いくら”あずにゃん”の CPU が
Nvidia Tegra250 2Core 1GHz であっても、メモリは 512MB しかないのでは、Unity2D
を常用するのは厳しいので、次からは常用するためのチューニングをします。
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チューニング
デスクトップの変更
Ubuntu の派生ディストリビューションに、デスクトップが KDE ならば Kubuntu、Xfce ならば
Xubuntu、LXDE ならば Lubuntu があるのは、Ubuntu 使いならば釈迦に説法だと思います。
LXDE は最近流行りの軽量デスクトップで、消費メモリも Unity2D の半分ということらしいの
で、デスクトップを LXDE に変更します。といっても、次のコマンドを実行するだけです。
$
$
$
$
$
sudo
sudo
sudo
sudo
sudo
apt-get
apt-get
apt-get
apt-get
apt-get
update
upgrade
install lubuntu-desktop
purge ubuntu-desktop
autoremove
これで、LXDE がインストールされました。再起動してデスクトップに LXDE を選択すると、
LXDE が起動します。ずいぶん感覚的に軽くなりました。
キーボードの設定
“あずにゃん”のキーボードは、PC のキーボードと若干違います。もっとも困るのは、106 日
本語キーボードに設定したとしても、 | キーや \ キー(または¥キー)が表示されないことです。
これは、~/xmodmaprc に次のようにキーコードを登録します。
$ cat .xmodmaprc
keycode 81 = backslash bar
keycode 84 = backslash underscore
これを起動時に読み込ませるため、~/.profile の最終行を次のようにします。
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$ cat .profile
# ~/.profile: executed by the command interpreter for login shells.
# This file is not read by bash(1), if ~/.bash_profile or
~/.bash_login
# exists.
(snip)
xmodmap ~/.xmodmaprc
また、”あずにゃん”には、ファンクションキーや Del キーが明示的にないようにみえます。こ
れを確認するには xev を利用します。ターミナル上で、xev を入力すると、Event Tester という
ウィンドウが表示され、特定のキーを押して離すというイベントが発生する度に、以下のように、
キーコードが表示されます。
KeyPress event, serial 35, synthetic NO, window 0x6800001,
root 0xb6, subw 0x0, time 58524961, (820,849), root:(823,872),
state 0x0, keycode 119 (keysym 0xffff, Delete), same_screen YES,
XLookupString gives 1 bytes: (7f) ""
XmbLookupString gives 1 bytes: (7f) ""
XFilterEvent returns: False
KeyRelease event, serial 35, synthetic NO, window 0x6800001,
root 0xb6, subw 0x0, time 58525137, (820,849), root:(823,872),
state 0x0, keycode 119 (keysym 0xffff, Delete), same_screen YES,
XLookupString gives 1 bytes: (7f) ""
XFilterEvent returns: False
これによりスペースキーの左にある *キーが Del キーで割り当てられていることが分かりま
す。ファンクションキーも、F10 キーがどこにあるのか調べることができます。
ひとつ注意したいのは、音量を下げるキーの左にあるキーは、マウスをオン/オフするキーな
ので、これを押してしまうとタッチパッドが無効になりポインタが動かなくなります。このときは
慌てず、再度このキーを押せばタッチパッドが有効になります。
フォントの変更
Ubuntu 11.10 は、アンチエイリアスをオンにしたフォントが用意されていますが、エッジが
ぼんやりして個人的に好きではありません。ここは、ビットマップフォントのエッジを効かせた
フォントできめたいところです。
まずは、定番の IPA フォントをインストールします。
$
$
$
$
sudo
sudo
sudo
sudo
apt-get
apt-get
apt-get
apt-get
update
install ttf-ipafont-gothic
install ttf-ipafont-mincho
install ttf-ipafont-uigothic
インストール後に、設定から「ルックアンドフィールを設定します」を選択し、ウィジェット・タ
ブの下にある、デフォルトのフォントを、IPA UI ゴシック 9 に設定します。
アンチエイリアスをオフにするために、/etc/fonts ディレクトリにある fonts.conf を
local.conf としてコピーし、そこに次のように下線部の文字列を挿入します。
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<!-- Turn off antialiasing for fonts in the 9-14 pt. range -->
<match target="font">
<test qual="all" name="size" compare="more">
<int>8</int>
</test>
<test qual="all" name="size" compare="less">
<int>15</int>
</test>
<edit name="antialias" mode="assign">
<bool>false</bool>
</edit>
</match>
最後に、.gtkrc-2.0 にもフォントの設定をして完了です。
$ cat .gtkrc-2.0
gtk-font-name="IPA UIGothic 9"
ビデオドライバの変更
nVidia のビデオドライバを入れることにより、Armd Linux でもフラッシュを見ることがで
きるようになります。まずは/etc/apt/source.list の最下行に、下線部の文字列を挿入します。
$ cat /etc/apt/sources.list
# /etc/apt/sources.list
# deb http://jp.archive.ubuntu.com/ubuntu/ oneiric main restricted
universe multiverse
deb http://ports.ubuntu.com/ubuntu-ports/ oneiric-security main
restricted universe multiverse
# deb http://jp.archive.ubuntu.com/ubuntu/ oneiric main universe
restricted multiverse
# deb http://jp.archive.ubuntu.com/ubuntu/ oneiric multiverse
restricted universe main
deb http://ports.ubuntu.com/ubuntu-ports/ oneiric main universe
restricted multiverse
# deb http://jp.archive.ubuntu.com/ubuntu/ oneiric-updates main
restricted universe multiverse
deb http://people.debian.org/~jak/ac100/ unreleased main non-free
次にドライバをインストールします。
$ sudo apt-key adv --keyserver keyserver.ubuntu.com --recv-keys
AC2A5FFE00823EC2
$ sudo apt-get update
$ sudo apt-get install tegra-libraries=12~alpha.1.0-0ac3
$ sudo apt-get install xserver-xorg-video-tegra=12~alpha.1.0-0ac3
Arm 用のフラッシュのライブラリもついでにインストールしておきましょう。
$ sudo wget -O /usr/lib/mozilla/plugins/libflashplayer.so
http://kotelett.no/ac100/phh/Android2.2/libflashplayer.so
Firefox や Chorome でフラッシュのあるコンテンツに飛ぶと、上部に”The Flash plugin was blocked because it is out of date.”と表示されますが、"Run this time”ボタンで
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対応してください。
おわりに
これで”あずにゃん”が完璧な Armed Linux に生まれ変わったのかというと、まだまだ発
展途上です。たとえば、DropBox はインストールしていないので、クラウド上で他の Linux や
Windows とファイルの共有ができません。Evernote の Java 版である NixNote もインス
トールされていないので、情報共有ということもなかなか難しいです。
それらは今後の課題ということで、使える Mobile Linux 環境を手に入れたという喜びの
ほうが優っていて、さらによくしたいと思っています。冬のボーナス商戦で、UltraBook がひと
つの目玉になっていますが、僕にとっては”あずにゃん”のほうが輝いていて、当分は手放せ
そうにありません。
最後に、小笠原さんをはじめ小江戸らぐのメンバの方々がいなければ、この素晴らしい環境
を手に入れることができませんでした。本当にありがとうございます。
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