欧州で検出された鳥インフルエンザ A(H5N8)・・・西方への旅? Avian influenza A(H5N8) detected in Europe… a journey to the West? FAO, AGA NEWS, 14 NOVEMBER 2014 (仮訳)鹿児島大学名誉教授 岡本嘉六 ドイツは、1 月以来の韓国で広がっていた A(H5N8)ウイルスと遺伝的に類 似するウイルスによって引き起こされる高病原性鳥インフルエンザの発生を報 告したヨーロッパで最初の国となった。ドイツへの侵入経路は不明であるが、 アジアからヨーロッパまでの長距離は、野鳥が役割を果たしている可能性を示 している。FAO は、全世界における継続的な警戒および家禽と野鳥の間の接触 を防ぐ農場の活動強化の必要性を強調する。 我々は何を知っているか? ドイツ連邦共和国は、2014 年 11 月 6 日に発生を世界獣疫局(OIE)と欧州 連合に公式報告した。ドイツ当局は七面鳥農場におけるその発生を封じ込めた。 政府は、周辺地域における対象を絞った発生動向調査を通して新たな追加症例 を探す一方で、進行中の疫学調査を通して感染源を明らかにしようとしている。 ドイツにおける鳥インフルエンザ参照研究所である Friedrich Loeffler 研究所に よって直ちに発表された遺伝情報は、この H5N8 が中国、韓国および日本で今 年検出されたウイルスと非常に似ていることを示している。 ほぼ同時に中国南部で発生した高病原性鳥インフルエンザ H5N6 ウイルス に似ていること(FAO press release, 22 September 2014 および EMPRES Watch:鳥インフルエザ A( H5N6) の脅威発生)は、この H5N8 が東南アジア で循環している HPAI H5N1 やその他のウイルスを含む様々な再集合に由来す ることを示している。 韓国とドイツの発生データは、H5N8 が鶏や七面鳥に高い死亡率をもたらす ことを示している。その一方で、韓国ウイルスを用いた実験的研究は、アヒル や野生のカモにおいて高度の死亡率との関連を示していない。ただし、野生の カモは大量のウイルスを排出し得る。 野鳥の役割は? このウイルスについては、どのような経路でドイツに見つかったのかを含め、 多くのことを明確にする必要がある。このウイルスが韓国のウイルスと遺伝的 に近く、カモが感染しても死亡しない事実は、ウイルスの長距離拡散およびさ らなる家禽への伝播における野鳥の役割を示唆する。 野鳥は、2005 年以降のアジアからヨーロッパおよびアフリカへの HPAI H5N1 ウイルスの広がりに関連していた。H5N8 に関して、このウイルスが春 のシーズン中に東アジアから中央アジアの渡り鳥の繁殖地に旅をした可能性を 専門家は疑っている。これらの渡り鳥は、より温暖な気象帯へ渡ることでウイ ルスを運んでいる可能性がある。 このことは何を意味するか? ヨーロッパでの H5N8 検出は、鳥インフルエンザウイルスが動物衛生およ び国際的家禽産業に対して依然として世界的な脅威であることを想起させる。 FAO は、農場における最適な生物学的安全対策とともに、世界的な警戒と的を 絞った発生動向調査を呼びかけている。鳥インフルエンザは、生物学的安全対 策が不十分な場合に家禽産業に含まれる一般的な工程を通して感染農場から非 感染農場へきわめて容易に広がる。家禽と野鳥との直接的および間接的な接触 を減らすことは、野鳥によって運ばれる可能性がある様々なのウイルス株に照 らして適切な生物学的安全対策の重要な部分である。 H5N8 を用いた実験感染は、マガモのような野生の水鳥が病気の明白な徴候 を示さず、死亡しないという韓国の知見を証明した。同様に、このウイルスは アヒルに高い死亡率をもたらさない可能性がある。したがって、積極的発生動 向調査は、野生の水鳥と家禽の両方における早期発見のため重要である。 FAO は何を奨励するか? ● アヒルおよび鶏における死亡率の有意な増加、神経学的徴候あるいは飼 料摂取量や産卵率の低下は、直ちに報告して、調査しなければならない。 ● 野鳥、とくに水鳥における原因不明の超過死亡は、全面的に報告し、調 査しなければならない。 ● 家禽は、家禽農場間とともに野鳥との接触を最小限に抑えることを目指 す農場で、適切な標準的生物学的安全対策が実施されている畜舎内で飼 育しなければならない。 ● ハンターは、仕留めた野鳥のあらゆる残渣を適切に廃棄処分しなければ ならない。ハンターは、猟をしている間およびその直後における家禽と の接触を避けなければならない。
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