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日本建築学会大会学術講演梗概集 (関東) 2015 年 9 月 9319
宇都宮市の中心市街地における連担空地の構成
地方都市における空地の構成に関する研究 (3)
正会員 ○福沢 潤哉 *
同
安森 亮雄 **
同
中村 周 *
連担空地 形状 隣接建物 中心市街地 地方都市
1. 序 地方都市の中心市街地では、近年、空地が増加し
2.2 街路面と建物面からみた連担空地の分節 分析例
文 1,2)
ている。これまで筆者らは既報
において、栃木県宇都宮 (図 2)の連担空地は、3 箇所で街路に面し建物の連続による
市の中心市街地を対象として空地の街区構成と履歴について
町並みが断片化されている。また、空地に接する建物面には
報告した。そこでは、複数の空地の連担に特徴がみられたこと
複数の角がみられ、ひだ状の平面形状になっている。このよ
から、本研究では連担空地の構成について検討する。空地は
うに、連担空地の形状は、街路面と、建物面の頂点による分
連担することで複雑な形状をしており、また、様々な高さの
節から、複雑さを捉えることができる。そこでまず、街路面
建物や、開口部、庭などに面し、これらは町並みの不連続性や、 の数を検討した結果(表 2)
、2 箇所で街路に面するものが多
建物の立地環境という点で、現代の新たな都市環境であると考
くみられた。次に、建物面の頂点数を検討した結果(表 3)
、
えられる。そこで本研究では、空地の形状と隣接する建物につ
少ないものは 2 頂点、多いものは 4 頂点が多く、最大で 20
いて検討し、
連担空地の構成を明らかにすることを目的とする。 頂点までみられた。
2. 連担空地の形状
2.3 連担空地の形状パタン 前節までで得られた街路面
2.1 対象地域と連担空地の概要 本研究では、宇都宮市中
数と、頂点数の組合せから連担空地の形状パタンを整理し、
心市街地の中でも特に中心部である二荒山神社と宇都宮城址
空地の連担数を合わせて検討した(表 4)
。その結果、1 箇所
公園間の旧市街地を対象地域とする(図 1)
。この中で空地が
で街路に面し、建物面の頂点が少なく、連担数も少ない単純
注 1)
多くを占める街区の 36 連担空地を資料とした 。それらにつ
な形状(A)から、3 箇所以上で街路に面し、建物面の頂点が
いて連担する空地の数を検討したところ、2 連担と 3 連担が多
多く、連担数も多い複雑な形状(E)までの 5 つのパタンに
く、最大で 9 連担がみられた(表 1)
。
分類することができた。
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Composition of Continued Vacant Lots in the Center of Local City
Composition of Urban Voids in Local City(3)
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FUKUZAWA Junya
YASUMORI Akio
NAKAMURA Shu
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3.建物面の要素 連担空地は、分析例(図 2)のように、
低層の建物や、
ピロティ、
開口部、
バルコニー、
庭等に面しており、
これらの建物面の要素について検討した。
まず、隣接する建物の高さの組合せについて検討したところ
(表 5)
、低層のみと、低層と中層の混在が多くみられた。次に、
注 2)
空地に面する建物の規模
を検討したところ(表 6)
、高層や
大きな壁面などの大規模な建物と、空地に単独で面する小規模
な建物といった特徴的な建物がみられた。
次に、ピロティや庭が隣接することで、空地が隣地に空間的
な拡張性をもつと捉えられることから、これらの要素を検討し
た(表 7)
。ピロティが隣接する空地は約 8 割が該当し、空地側
に界壁があるものと、ないものがあり、庭が隣接する空地は過
半が該当した。
また、空地と建物の連続性を形成する要素である開口部とバ
ルコニーについて検討した(表 8)
。開口部とバルコニーが隣接
する空地は、それぞれ約 7 割に該当した。
4.連担空地の構成 2 章で検討した連担空地の形状パタン
ごとに、3 章で検討した建物面の要素の組合せが共通する構成
として、5 つの類型が得られた(表 9)
。また、空地が隣接建物
の駐車場として利用されるといった空地と建物の用途上の関連
と、主要な街路が面する方位を併せて検討した。1 箇所で街路
に面し、建物面の頂点が少ない単純な形状の連担空地(A)は、
大規模の建物とピロティに面し、建物高さが混在する傾向がみ
られる(①)
。1 箇所で街路に面し、
建物面の頂点が多い形状(B)
では、低層の建物の界壁があるピロティと庭が面し、主要な街
路が北に面する傾向がみられる(②)
。これは、大通り等の南に
面する表側の街路沿いに空地が出現することで、建物の裏側が
表れたものであると考えられる。2 箇所で街路に面し、建物面
の頂点が少ない形状(C)では、建物高さが混在し、大規模な
建物があり、空地が隣接する建物の駐車場として利用されてい
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。このような大規模の建物と低層の建物
に挟まれた裏側の空地は、隣接する建物に利用される傾向があ
る。2 箇所で街路に面し、建物面の頂点が多い形状(D)では、
多くのピロティや、開口部、バルコニーが面し、低層の建物に
囲まれる傾向がみられる(④)
。ピロティは私的な駐車場として
面している。3 箇所以上で街路に面し、建物面の頂点が多い複
雑な形状(E)では、低層の単独建物があり、南面の開口部や、
バルコニー、庭に面する傾向がみられた(⑤)
。これは、複雑な
形状の空地によって建物面が細分化され、庭や開口部等が空地
を介して表れたものであると考えられる。
以上の類型を共通する性格で整理すると(図 3)
、分節の少な
い単純な形状で空地に大規模な建物が隣接する構成
(①,③)
と、
分節が多く複雑な形状で、ピロティや庭による空地の拡張性や、
開口部やバルコニーによる空地と建物の連続性をもつ構成(④ ,
⑤)の 2 つの傾向として捉えることができる。
5.結 地方都市の中心市街地における連担空地の構成につい
て、 まず、 空地の形状を検討した結果、 街路面と建物面の分節
から平面形状の特徴を捉えられることを明らかにした。 また、 空地
の形状に応じた建物面の要素の組合せから、 分節の少ない単純
な形状の空地には、 大規模な建物が隣接し、 分節の多い複雑な
形状の空地には、 ピロティや庭があることで空地が拡張するものや、
開口部やバルコニーによって空地と建物が連続するといった連担空
地の構成と特徴を明らかにした。
文 1)松浦達也、安森亮雄、中村周:宇都宮市中心市街地における空地 の街区構成 - 地方都市における空地の構成に関する研究(1)-、
日本建築学会大会学術講演梗概集(F-2)
、p165-166、2013
文 2)中村周、安森亮雄、松浦達也:宇都宮市中心市街地における空地
の構成の履歴 - 地方都市における空地の構成に関する研究(2)-、
日本建築学会大会学術講演梗概集(F-2)
、p167-168、2013
注 1) 対象地域の 140 街区のうち、空地が 30%以上占める 40 街区の 36 街
区を資料とした。
注 2) 大規模建物は高層あるいは空地の周長の 1/5 を占める壁面を持つ
ものとした。
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* 宇都宮大学大学院工学研究科 大学院生
** 宇都宮大学大学院工学研究科 准教授 博士(工学)
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* Graduate Student, Graduate School of Eng, Utsunomiya University
** Assoc. Prof., Dr.Eng., Graduate School of Eng, Utsunomiya University
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