ビジネス・コミュニケーション・スキル診断(BCSA) 活用の手引き この度はビジネス・コミュニケーション・スキル診断(以下、BCSA)の ID をお買い求めいただき、誠に有難うご ざいました。この「活用の手引き」は、BCSA の主旨・目的を理解し、自ら意識してスキルの向上を試みるための 一助として、ご提供するものです。 =BCSA の目的= 「どの職種においても、社会人として業務を進めるうえで必要な、仕事上の軸となるコミュニケーションスキル」を チェックします。 =「ビジネス・コミュニケーション・スキル」の定義= 仕事の成果を上げる、事業目的の達成に貢献するという目的を持った個人が、仕事上のコミュニケーションを 行う目的や狙った着地に近づくために必要なスキル、と定義します。 =仕事上のコミュニケーションはスキルである= 仕事上のコミュニケーションは、「事業目的の達成に貢献する、自身の仕事の成果を上げる」という目的にたっ て行われており、その目的がないプライベートとは誰もが棲み分けをしています。つまり、仕事上のコミュニケー ションは上記目的にたつ場合に使われるスキルがあり、それを理解し意識することにより、一定のパフォーマン スにつながります。いいかえますと、仕事上のコミュニケーションは、「得手不得手がある」や「性格による」と捉 え苦手意識を持つ方でも、スキルを理解し意識して活用することができれば、仕事上のコミュニケーションスキ ルを伸ばす、変えることができると考えることができます。 数多あるコミュニケーションに関する教育を見てみますと、仕事上のコミュニケーションにおける一連の流れを 理解できるメニューが少ないことに気がつきます。例えば、「マナー教 交渉力研修 マナー教育 SEのための・・・ 果にはつながりません。相手のニーズを把握し、予め内容を組み立て ロジカルシンキング研修 営業のための・・ 育」にしても名刺の渡し方やお辞儀の角度だけでは、自身の仕事の成 コーチング研修 アクティブリスニング研修 マネージャーのための・・ ておき、失礼のない身なりで、信頼いただけるための情報を発信しなが ら、相手に分かりやすい構成で話を進め、臨機応変にやり取りを対応し、 終了後も今後のコミュニケーションに繋がるフィードバックを行う。この 一連の行動があって、初めて自身の成果につながるものであり、マナ ーはその一部分です。従いまして、仕事上のコミュニケーションにおけ る一連の流れや、そこで重要なスキルを理解しなければ、部分的に最適化を行っても効果はわずかです。 まずは、あらゆる業務に共通する一連の流れを理解し、そこで求められる重要なスキルを身に付け、その上で 様々なスキルに深みを持つプロセスが健全であると考えます。 BCSAは、仕事上のコミュニケーションにおいて、あらゆる業務に共通する、一連の流れで求められる重要なス キル、「軸」となるスキルを定義しています。その上で、「考え方」と「実践」に分け、BCSAで「考え方」を問えるよ う、診断問題を開発しました。 BCSAのスキル定義及び診断問題は、学識者や著名人ではなく、事務、セールス、エンジニア、コールセンタ ーなどの様々な業務現場従事者により定義されています。また、ベータテストの実施により、それぞれの診断問 題に対し、現場でより信頼できる、満足を与える行動を最適解とする根拠を得ています。 Copyright 2009, CompTIA. All rights reserved. -1- =仕事上のコミュニケーションに対する、体系的な理解のススメ= 仕事上のコミュニケーションに対する考え方の多くは、今までの経験、成功及び失敗体験が基になっています。 では、その今持つ考え方は、どのスキルに関連するものなのでしょうか。そのスキルは、相手に対しどのような 効果があるのでしょうか。そもそも、一連のコミュニケーションの流れで使われるスキルは何でしょうか。 今後意識してスキルを活用するためにも、BCSAの受験結果には関係なく、4ページ以降のBCSAスキル定義、 特にテキストやハンドブックでより詳しくスキルの意味や活用ケースをご覧いただくことをお奨めします。 【BCSAで分かること】 仕事上のコミュニケーションの考え方に対する理解度を把握するだけでなく、普段気にされずにいるスキルの 構成要素と利用具合が分かります。 【BCSA受験後について】 BCSAの受験結果に関係なく、体系的な仕事上のコミュニケーションスキルの理解に、テキストやハンドブック をお役立て下さい。スキルの効果や具体例を基に、今後のコミュニケーションにおいて、体験や勘ではなく、 理論的にコミュニケーションを組み立て、活用する意識ができます。具体的には、「今日の商談は、まず《共感 性》の《質問の活用》で「相手に気づきを促すような質問」を使って、相手のニーズを把握しよう。」など、意識し てコミュニケーションを組み立て、その場に応じたスキルを活用する意識ができます。 BCSA活用ハンドブック (B5版82ページ 税込1,260円 ※CompTIAメンバー価格有) 第1章 BCSA診断結果を生かすために 第2章 信頼性を生み出す3つのスキル 第3章 共感性を生み出す4つのスキル 第4章 理論性を生み出す2つのスキル 資料編 チェックシート 詳細、ご注文はこちら (BCSAホームページからもご案内しております) http://www.icedu.co.jp/human/handbook.html Copyright 2009, CompTIA. All rights reserved. -2- =仕事上のコミュニケーションスキルの3要素= 仕事上のコミュニケーションを考えた場合、最終的には、自分が提供するサービスでお客様に満足を与える、 お客様に商品を販売する、自分の提案で相手の問題を解決する、計画しているプロジェクトを進行させる、とい うように、自分が望む方向を提示し、相手から合意を得て、満足を与えていかなければなりません。 そこで必要な要素として −自分が、相手が持つ「この人は信頼できそうだ」と感じる情報を把握し、相手に発信しているか(=信頼性) −自分が、相手が「この人は理解してくれている」と感じる情報を、相手に発信・受信しているか(=共感性) −自分が、相手から合意を得るための戦略を組んでいるか(=理論性) が挙げられます。 ■信頼性 話を聞いてみよう、もしくは話をしてみようと相手が思うために、共通してコミュニケーションシーンを左右するも のを理解し、普段から心がけるべきもの。 「エチケット」・・・身だしなみ、マナー、配慮、常識など 「準備」・・・物理的準備、内容に関する精通など 「言語」・・・言葉遣い、ワーディング、敬語など 「非言語」・・・動作、表情、話し方、抑揚、間など ■共感性 実際のやりとり(聞く、質問する、話す、またその雰囲気作り)の開始から終了 までに、相手の状況を判断しながら、予め筋道を立てていたストーリーを調整 しつつ、相手と自分との心理的距離感を縮める力。相手の不安を取り除いた り、その場で話の内容を調整、強化したりする行動を含みます。 ■理論性 相手から自分の話したい内容や提案で納得を得るために、ストーリーに関しての「計画」「実施」「評価」「改善」 の小さな PDCA サイクルを回す力。相手に合わせた一定のストーリーを事前にたてておく、また計画し(事前の 戦略)、やりとりの最中や終了後に相手からの評価を感じ取り、自己評価によって今後の改善につなげる力。 これら 3 つの要素を仕事上のコミュニケーションの流れにあてはめますと、 「相手のニーズを把握し、予め内容を組み立て(=理論性)、相手の信頼を得る情報を発信し(=信頼性)、相 手に分かりやすい構成で話を進め、臨機応変にやり取りを対応し、相手の満足度を高める(=共感性)。その 後も今後のコミュニケーションに繋がるフィードバックを自身で行う(=理論性)。」 となります。このようなコミュニケーションは、要した時間やケース、業務に関わらず行われています。この流れ が「軸」としてあり、様々なケースや事情に応じて、スキルの活用度合を自分で変えています。 Copyright 2009, CompTIA. All rights reserved. -3- =BCSA スキル定義= Ⅰ 信頼性 Ⅰ.1 物理的環境の整備 お客様先に訪問する場合・お客様または社内からの訪問者を受け入れる場合などに、コミュニケーションの進 行に必要な準備を行い、コミュニケーションの間も必要に応じて環境を管理する。 Ⅰ.1.1 お客様先などに訪問する場合の準備を行う Ⅰ.1.2 Ⅰ.1.3 ■ 日時・場所、経路・入館方法などを確認する。 ■ 必要な設備・備品などの事前確認、または準備を行う。 ■ 必要な設備・備品などが使用できない際の対応策を準備する。 ■ 必要な資料を準備する。 お客様または社内からの訪問者を受け入れる場合の準備を行う。 ■ 相手の状況と要望を確認する(時間、人数、施設、備品など)。 ■ 目的・人数に応じた施設を予約し、レイアウトを決定する。 ■ 相手の到着前に、設備・備品・案内・資料等の準備を終える。 ■ 相手が迷わず到着できるように配慮する。 ■ 利用施設の規則を守り、終了後は施設・設備・案内等を標準の状態に戻す。 お客様または社内からの訪問者を受け入れる場合、コミュニケーション中の環境を管理する ■ 相手との適切な距離を保つ。(座る位置、立つ場所など) ■ 換気・室温・照明・機器の音量などを快適な状態に保つ。 ■ 外部の騒音、停電など、不測の事態に対処する。 Ⅰ.2 信頼の獲得と維持 好ましい印象を与え、信頼を得られる言動をし、相手からの信頼を維持する。 Ⅰ.2.1 好ましい印象を与える ■ 服装や身だしなみを整え、明るく豊かな表情を心がける。 ■ 正しい言葉づかい、適切な用語の使用を心がける。 ■ 社会人としての常識、マナー、場面(相手・状況)にふさわしいエチケットを守る。 Ⅰ.2.2 信頼を得られる言動をする ■ 内容に精通していることを示す。 ■ 前向きに取り組む姿勢を示す。 ■ 全ての相手に等しく気を配る。 ■ 約束事を守り、ミスや間違いを認める。 Ⅰ.2.3 相手からの信頼を維持する ■ 相手の発言を否定せず、肯定的に受け止める。 ■ 感情的な発言や不適切なユーモアを控える。 ■ 信頼が失われそうな場合、原因を把握し、回復に努める。 ■ 回復が不可能になりそうな場合、適切な関係者に報告する。 Copyright 2009, CompTIA. All rights reserved. -4- Ⅰ.3 言語・非言語の効果的使用 音声、アイ・コンタクト、ジェスチャー、動き、メディアを効果的に使用して、相手の興味を引きつける工夫をす る。 Ⅰ.3.1 音声を効果的に使用する ■ 相手に聞きやすい音量で、明瞭に話す。 ■ 話し方に変化を持たせ、重要ポイントを明確にする。(スピード、抑揚、間など) ■ 状況に応じて、話し方を調整する。(トーンなど) Ⅰ.3.2 アイ・コンタクト、ジェスチャー、動きなどを効果的に使用する ■ すべての相手とアイ・コンタクトをとる。 ■ 相手のニーズにあわせてアイ・コンタクトの量を調整する。 ■ ジェスチャー・動きなどを効果的に使用する。 Ⅰ.3.3 必要に応じて、メディアを効果的に使用する ■ 配布資料、ホワイトボード、プロジェクタなどを効果的に使用する。 Copyright 2009, CompTIA. All rights reserved. -5- Ⅱ 共感性 Ⅱ.1 心理的環境の管理 コミュニケーションの開始時に心理的環境を向上させ、コミュニケーション中の雰囲気の悪化を最小限に押さえ る。 Ⅱ.1.1 コミュニケーションの開始時に、心理的環境を向上させる ■ 相手にリラックスしてもらい、参加や貢献を促す雰囲気を作る。 ■ コミュニケーションの目的と目標を確認する。 ■ 目的と目標に対する相手の期待や要望を確認する。 Ⅱ.1.2 コミュニケーションを円滑に進行する ■ コミュニケーションの方法を提案し、合意を得る。(説明、質問、質疑など) ■ 進行状況を把握し、円滑に進行するために必要な役割を果たす。 ■ 必要に応じてコミュニケーションの方法を変更する。 Ⅱ.1.3 コミュニケーション中の雰囲気の悪化を最小限に押さえる ■ 約束の時間内に、コミュニケーションを終える。 ■ 進行状況に応じて、時間配分を調整する。 ■ 問題のある相手への対応を慎重に行う。 Ⅱ.2 表現方法の調整 相手が理解しやすい構成で、相手にあわせた表現を使用し、逸話や比喩を効果的に使用する。 Ⅱ.2.1 相手が理解しやすい構成で話す ■ 相手が理解しやすい順序で話す。 ■ 重要なポイントや話の転換を明確にして話す。 Ⅱ.2.2 相手に合わせた表現を工夫する ■ 相手に身近な具体例を用いる。(相手の経験、知識、立場、キャリアなどにあわせる) ■ 理解度に応じて表現方法を変えたり、繰り返したりする。 Ⅱ.2.3 必要に応じて、逸話や比喩を効果的に使用する ■ 重要ポイントを印象づけることを目的として使用する。 Ⅱ.3 質問の活用 質問の目的、種類、方法を使い分け、適切に質問を投げかけ、必要に応じて質問内容を繰り返し、言い換え る。 Ⅱ.3.1 質問の目的、種類、方法を使い分ける ■ 目的を明確にする。(参加を促す、気づきを促す、理解度を確認するなど) ■ 質問の種類を、適切に使い分ける。(クローズド質問、オープン質問) ■ 質問の方法を、適切に使い分ける。(全体質問、指名質問、修辞的質問、反対質問など) Ⅱ.3.2 適切に質問を投げかける Copyright 2009, CompTIA. All rights reserved. -6- ■ 内容に関連した質問をする。 ■ 分かりやすく、回答しやすい質問をする。 ■ 回答するのに十分な時間をとる。 ■ 相手を攻撃するような質問をしない。 Ⅱ.3.3 相手の回答を尊重し、柔軟な対応をする ■ 相手の回答に対する自分の理解を確認する。 ■ 必要に応じて、適切な回答を得るための質問を工夫する(表現方法を変えて、再度質問す るなど)。 Ⅱ.4 相手からのメッセージへの対応 コミュニケーション中は、常にアクティブ・リスニング(積極的傾聴)を行い、質問に的確に回答するだけでなく、 非言語メッセージにも対応する。 Ⅱ.4.1 アクティブ・リスニングを行う ■ 相手の発言を聞いていることを示す。(アイ・コンタクト、うなずき、メモなど) ■ 相手の発言を言い換え、理解を示す。(繰り返し、言い換え、要点をまとめる) ■ 相手の発言の核となる部分を捉え、不明な部分は質問する。 ■ 相手が感情的になっている場合、内容のみに焦点を合わせてやり取りする。 Ⅱ.4.2 質問に的確に回答する ■ 質問の内容を確認し、的確な回答をする。 ■ すぐに回答できない場合は、回答の時期と手段を伝える。 Ⅱ.4.3 非言語メッセージに対応する ■ 相手のアイ・コンタクト、表情、しぐさなどから、非言語メッセージを受け取る。 ■ 理解度や満足度の低下を示すメッセージに、タイムリーに対応する。 ■ 理解度や満足度の向上につながる対応をする。(質問をする、補足説明をするなど) Copyright 2009, CompTIA. All rights reserved. -7- Ⅲ 理論性 Ⅲ.1 コミュニケーションの準備 コミュニケーションの目標を明確にし、進め方を検討し、必要な資料と機材を準備する。 Ⅲ.1.1 コミュニケーションの目標を明確にする ■ コミュニケーションの目的を確認する。 ■ 相手の特徴と、相手からの要望を確認する。 ■ コミュニケーションに使用できる時間を確認、または調整する。 ■ 今回のコミュニケーションで、達成すべき目標を設定する。 Ⅲ.1.2 コミュニケーションの進め方を検討する ■ 達成すべき目標に合わせて、内容を取捨選択する。 ■ 相手の受容意欲の向上を検討する。(相手のメリットを明らかにする) ■ 内容にあわせたコミュニケーションの方法を検討する。(説明する、意見を聞く、質問する、 討議するなど) ■ コミュニケーションの時間配分を検討する。 Ⅲ.1.3 必要な資料、機器を準備する ■ 既存の資料の調整や、新規資料の作成を行う。 ■ 相手が理解しづらい部分への対応を準備する。(補足説明、予想される質問など) ■ 必要な機器を確認し、操作方法を習得しておく。 Ⅲ.2 コミュニケーションの評価 コミュニケーション中に相手の理解度と満足度を確認し、コミュニケーション後に目標に対する達成度を評価し、 ビジネス・コミュニケーション・スキル向上のための改善点を明らかにする。 Ⅲ.2.1 コミュニケーション中に、相手の理解度と満足度を確認する ■ 相手の言語・非言語メッセージから、理解度と満足度を把握する。 ■ 新しいトピックに移る前や、終了時に、相手の理解度と満足度を確認する。 Ⅲ.2.2 コミュニケーション後に、目標に対する達成度を評価する ■ コミュニケーションの目標に対する達成度を評価する。 ■ 必要に応じて、記録・報告する。 Ⅲ.2.3 ビジネス・コミュニケーション・スキル向上のための改善点を明らかにする。 ■ 相手からの信頼を得て、それを維持することができたかを自己評価する。 ■ 相手と円滑にやり取りを行うことができたかを自己評価する。 ■ 目標設定、進め方、資料、機材が適切であったかを自己評価する。 ■ ビジネス・コミュニケーション・スキル向上のための改善点を検討する。 Copyright 2009, CompTIA. All rights reserved. -8-
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