イギリス著作権法における公益 (Public Interest)概念の変遷史

イギリス著作権法における公益
(Public Interest)概念の変遷史
張 睿暎*
は,「創作は価値あるものであり,創作者を
Ⅰ.はじめに
保護することにより,新しい作品の生産と公
衆への頒布が促進され,その結果,万人の利
複製権中心の現著作権制度において「ユー
ザの権利」という概念は確立していないとい
益になる」という前提の上に立っているとい
える。
える。近代著作権の成立の過程で重視された
「国家の著作権,特許,商標,意匠法によ
のは,著作者の利益ではなく,出版社の利益
り与えられた排他的権利は,それが公益に利
であった。その結果,近代著作権法は複製権
するゆえに認められた権利である 5」という
とその侵害を中心に構成する複製権中心主義
文言からもわかるように,一国の法律は当然,
1
の立場を採っている 。まず著作権者の権利
公益の目的がある時にのみ,少なくとも,公
を規定し,その権利に対する制限や限界を定
益に利するだろうという期待があるときに成
めているため,いわゆる「ユーザの権利」は,
立する。現在,世界 150ヵ国以上が著作権法
それが権利として法律上決められているわけ
を有しており,ベルヌ条約にも 159ヵ国 6 が
ではなく,権利者の権利の制限の結果,反射
加盟しているという事実は,著作権制度が実
的に得られる利益であると考えられている 2。
際に公益に利しているということを裏付けて
そのため,現行著作権法上,「ユーザの権
いるということであろう。
利」を直接論ずることは難しく 3,本稿では,
著作権システムは「権利者の権利保護」と
まず,ユーザの集まりとしての「公衆」を想
「公益の拡大」という二重の目的を有してい
定し,著作権法の改正において,公衆の利益
る。歴史をみると,社会環境の変化や技術の
(公益: public interest)がどのように反映
発展により,既存の著作権法では対応できな
4
されてきたかを考察する 。
い状況になり,その結果,著作権が改正され
著作権に関する最初の重要な立法は,1709
た実例は多い。そしてその改正の際に考慮さ
年のアン女王法と 1787 年の米国憲法であり,
れるのは「著作者の権利の保護」と,「著作
両方とも「公益( public interest)」を明言
物を使用することによる一般公衆の利益(公
している。両方とも文面に,「海賊版に対し
益)」との間のバランスである。
て一定の期間作者を保護することが,学問と
進歩を奨励し,パブリックドメインを保障し,
権利者の権利保護と公益の拡大という二つ
の利益は,衝突することが多く,両者を利益
それゆえに公益( public good)になる」と
衡量するにあたっては,「何がフェアなのか
いう旨を含んでいる。現代の著作権システム
(英米法系)」と,「どのような権利とその例
* 早稲田大学大学院法学研究科博士後期課程,
早稲田大学 21世紀 COE《企業と法創造》研
究所・研究助手
外が要求されるか(大陸法系)」というアプ
ローチがあるといわれている。
356 ―
― 「著作権の概念に関する哲学的・理論的・
実用的観点は国ごとに異なる。なぜなら各国
作品原稿が著者の所有であるとか,出版前
は社会的・経済的要素に影響される固有の法
から著者にはそのような権利が独立して存在
制度を持っているからである 7」とあるよう
していたとかは争われなく,争点は公表(出
に,各国の社会的・経済的な違いのため,著
版)された作品に関してのみ争われた。出版
作権に関しては様々な理論が存在し,著作権
著作物の著作権は法律で決められた期限が経
法と公衆の利益に関係も各国によって異なる。
過すると消滅するのか,もしくは出版著作物
本稿では,著作権制度は権利者のためだけ
には法律とは関係ない永久のコモンロー上の
ではなく,著作物利用者(ユーザ・公衆)の
著作権があり,法律はただ保護期間中に特別
ためのものでもあり,公益(public interest)
な救済を提供するにすぎないのか 13。著作権
と密接に関連しながら発展してきたというこ
の本質に関するこの論争は,著作権は「創作
とを,諸外国,とりわけイギリスの著作権法
行為により生じる譲渡不可能な権利」である
と国際条約の変遷を通じて考察してみたい。
か,「公益( public interest)のため法律に
以下,Gillian Davies の「Copyright and the
より付与された,独占またはコントロールの
public interest」の chapter 4.に依拠し,整
理・解説する 8。
ための制限された権利」であるかというもの
である。ここで既に,著作権に関する「自然
権思想」とともに「公益(public interest ・
Ⅱ.イギリス著作権法改正史における公
益(Public Interest)概念
公衆の利益・公共の利益)」という考え方が
現れているといえる 14。
1769年の Miller v Taylor15 判例で裁判所
( Court of King’s Bench) は , 多 数 意 見 で
1.著作権の本質に関する18世紀の議論
「著者には創作の行為から由来するコモン
近代イギリスに著作権法の嚆矢は 1710年
ロー上の権利があり,その権利はアン女王法
の「アン女王法 9」であり,1842 年著作権法
によっても剥奪されない」としている。しか
( copyright Act of 1842)が成立するまでそ
し こ の 決 定 は 1774年 の Donaldson v
の効力を有した。アン女王法は 1814年に改
Beckett16 判例で貴族院(House of Lords)に
より覆された。判決は「著作権はアン女王法
により慎重に作られた権利であり,そのため
法定財産権として扱われる。アン女王法の効
力により,出版された作品のコモンロー著作
権は失効されるが,出版されていない作品の
コモンロー著作権は残る 17」とした 18。
この2つの判決は,現代の著作権法におい
ても争点になっている,著作者の権利と一般
大衆の利益との間のバランスが問題になった
のである。
10
正 され,更新可能な14 年の保護期間は,出
版時から 28 年,著者がまだ生存している場
合はその寿命までと変更された。このアン女
王法は「文学財産権問題」
,「書籍販売者の戦
争」とも呼ばれる著作権の本質に関する論争
を巻き起こした 11。
アン女王法が発効して 21年目になる 1731
年に,法律発効前にすでに出版されていた本
に対する出版業者の独占権が切れることに
なった。スコットランドなど地方の印刷業者
は古い本の新版を発行し,ロンドンの書籍販
売者はこれを防ごうとイギリスとスコットラ
2.1842年法
ンドの両裁判所に訴えた。書籍販売者は,法
1842年著作権法 19 の成立の際,議会では著
律の保護期間の終了に関係なく,著者は印刷
作権の本質に関してまた激しい議論が行われ
を許諾するコモンロー上の永久の権利を有す
た。特に問題になったのは保護期間で,1837
12
ると主張した 。
年から毎年法案を提出した Talfourd 高等弁
357 ―
― 護士と Macaulay 上院議員が対立した。法案
意なく輸入できるようにするべきであると主
は議論の的になり,公益に関する大きな関心
張した。書籍の価格はとても高く,これは公
を誘発した。結局, Talfourd 高等弁護士が
衆の読書の機会を減らすというのである。植
主張した「死後 60 年」は受け入れられず,
民地再販により市場は拡大されたので,著作
著作権の保護期間は,「著作者の死後7年ま
者に損害は与えないと主張したが,委員会は
で,もしくは公表時から 42 年のうち長い方」
説得されず,植民地再販の輸入には著作者の
20
にすることになった 。 Macaulay 議員は,
同意が必要であると結論を下した 25。
「著作権システムはメリットもデメリットも
あり,利益を最大限にし,不利益は最小限に
4.1911年法
するのが立法者の義務である。独占は悪であ
1909 年,ベルヌ条約ベルリン改正に著作
るが,最小限度の著作者の利益を守る限度の
権法を合わせるための調査のための新しい委
独占は許される。しかし,子孫が著作物から
員会が指名された。委員会はベルリン改正の
利益を得るという事実が作者の創作意欲を刺
内容を条項ごとに分析し,現イギリス著作権
激するとは思わない。また遺族が著作権を誤
法の改正が必要か否かを検討した。
21
用して公衆の利益を害するおそれもある 。」
公益の問題は,ベルリン改正の保護期間
と し て い る 。 1842 年 成 立 し た 著 作 権 法 は
(死後 50年)との関連でまた議論になったが,
1911年法の基礎になったといわれる。
委員会は「提案された保護期間の採用が公益
に反するとは思われない。新しい保護期間は
3.1878年の王立委員会報告書
文学と芸術の発展と進歩に利すると思われ
1875年「国内,植民地,国際著作権」に
る 26」と結論付けている 27。
関する法律を調査するために王立委員会が構
1911 年著作権法 28 は 1908 年ベルリン改正
成された。委員会は 1878 年に報告書 22 を公表
に合致するように,主要な部分が改正された。
し,現著作権法は改正の必要があるとした 23。
まず未公表著作物におけるコモンロー著作権
公益は報告書に何回も出るテーマである。
を廃止し,無方式主義のベルヌ条約に合わせ,
報告書は,保護期間は公表時から起算される
著作権の登録要件も廃止した。また,国際的
べきであるか,著者の死後一定期間まで保護
基準に合わせ保護期間を著作者の死後 50年
されるべきであり,その場合,国家の要求,
に延長した。
公衆の利益,文学の利益の観点から,作家を
国際的な調和のために採用した死後 50年
保護し創作を奨励できるための適切な期間に
の保護期間には,文学・音楽・芸術作品に関
決める必要があるとしている。委員会は例と
して重要な但し書きがあった。公表された文
して,作者の死後 30年まで著作権を保護す
学・音楽・芸術著作物の著作者の死後 25年
るドイツの例を挙げている。
が経過すればいつでも,著作者の相続人に
権利者の独占権はロイヤルティシステムに
10%のロイヤルティを支払えば複製が可能
代替されるべきであるという請願 24 は,廉価
である 29 という強制許諾制度を設けたのであ
な旧版書籍から公衆が得られる利益に関して
る 30。
力説したが,委員会は説得されず,著作権は
最大限早い時期に最大限廉価な書籍を入手
引き続き権利者の専有の権利として扱われる
できる公衆の利益が不安定であるという指摘
べきであると結論した。
は前からあったが,1911 年法律は,公衆に
貿易産業省長官は,公衆が廉価な書籍にア
公表または公演された文学・演劇・音楽の著
クセスできる必要性を論じながら,公衆の利
作者の死後いつでも,著作権者が作品の複
益のためにも,植民地の再販書籍を著者の同
製・再演に同意しない場合,枢密院( Judi-
358 ―
― cial Committee of the Privy Council)に許
諾を求める申請をすることができるという条
項 31 を設けている。
1912年には,音楽著作物を「機械的装置」
により複製する際の法定許諾制度(メカニカ
ル・ライセンス)が導入された。
5.1956年法
1911年法は 1928 年のベルヌ条約ローマ改
正の内容までは合致していたが,1948年の
ブリュッセル改正に合わせるための調査をす
ることになり,1951 年新しい委員会が発足
された。
委 員 会 は 報 告 書 3 2 で ,「 ベ ル ヌ 条 約 ブ
リュッセル改正に合わせて現法律を改正する
必要がある」としながら,「一般大衆の利益
とともに,著者・作曲家・アーティストの利
益も存在する。著作者の創作は本国だけでは
なく,他国でも保護を受けるべきである。知
的財産権の保護は国境に縛られてはならな
い 33」と述べている。
多年間の論点であった永久著作権( perpetual copyright)問題も再び提起されたが,
委員会は「一般公衆は文学,音楽,演劇作品
を複製する多大な利益を持っていて,永久な
著作権を認めることは不可能である 34」と答
申している。
委員会はさらに,「法定許諾制度は書籍が
廉価に大衆に提供されるための決定的な要素
ではない」35 としながら,1911 年法の法定許
諾制度を廃止することを建議した。これに対
して,公益のため政府は委員会の提案を拒絶
すべきであるとの声が高まった。法定許諾制
度は歴史家や学生が過去世代の作品にアクセ
スするためのセーフガードとして考えられた
からである 36。
1956 年 , 1948 年 の ブ リ ュ ッ セ ル 改 正 や
1952 年の万国著作権条約を国内法化した新
しい著作権法が採択され,1911 年法は失効
された。1956年法は 1911 年法の法定許諾制
度を公式的に廃止し,映画・放送の公表後
50年の保護期間を初めて導入した。
6.1977年の Whitford 委員会報告書と政
府白書
技術の発展によりベルヌ条約も変化し,
1967 年のストックホルム改正,1971年のパ
リ改正がなされた。政府は 1973 年, Whitford 判事を議長に新しい委員会を構成し,
1956 年著作権法において改正されるべき点
があるか,あるならそれは何かを調査 37 させ
た。
Whitford 委員会の報告書は 1977 年に発刊
され 38,1956年法の簡素化と,1971年ベルヌ
条約パリ改正と万国著作権条約の国内法化の
ための一連の改正事項を提案している 39。
報告書は,著作権は「‘国家の知的財産権’
と‘商品と役務の自由な移動という EC 法の
理念’という文脈の中で,公衆の利益に利す
るものである」としながら,著作権の経済的
な正当性にも注目した。例えば,コピー機に
よる複製が増えると書籍の循環が少なくなる
ため費用が上がり,費用が上がると複製が増
え,複製が増えると書籍販売が減り,結局出
版は途絶えるという悪循環が起きると,そし
てそれは公益に反するというのである 40。
委員会は保護期間との関係でも公益を考慮
している。「著作者の適切な利益を保護する
のが著作権法の主要な目的である 41」としな
がら,死後 50年の保護期間は,著作権者に
適切な対価を与えていると思われるので,そ
のまま維持されるべきであると結論した。こ
れには政府も同意している 42。
また,特定の著作物に関する永久著作権の
議論に関連して提案された「従来の保護期間
が満了した著作物を受託者に授けて,受託者
は公衆の利益と文化の発展の目的でその著作
物を活用する義務があるという,パブリック
ペイングドメイン(public paying domain)」43
に関しては,保護期間延長や永久著作権議論
は公衆の利益の問題でもあるとしながら,委
員会は考慮の結果,永久著作権とパブリック
359 ―
― ペイングドメインは公衆の利益に利しないと
44
結論づけた 。
形態であり,権利者は何の対価も支払われて
いなく,バランスに欠けているように見え
委員会はまた,非侵害的使用など,著作権
る 53。1986 年白書では,空テープへの賦課制
の例外規定を,公益のためのものとみている。
度は家庭内録音録画問題への最善の解決方法
新聞社などが「公益のため」にする公表は著
であり,政府は著作権者・実演家の利益の公
作権侵害に対する抗弁として認められるべき
衆の利益の間のバランスを考慮したとしてい
であり,フェアディーリング(Fair Dealing)
るが,その後,「これは両者のバランスの問
において,多量の引用,そして場合によって
題であり,この問題に対して我々は消費者の
は全文引用までも認めるべきであると主張し
側に立つことにした」と述べている 54。
ている 45。委員会は,ベルヌ条約9¹条(著
公益は複製権の例外との関係で 1981年の
作権の通常の行使を妨げず,著作権者の正当
政府緑書にも書かれている。「公益により,
な利益を不当に害しない)の一般的例外条項
すべての許諾ない複製が著作権侵害にはなら
としてのフェアディーリングを推薦している。
ない 55」。そして,著作権の例外条項の存在
しかし,政府は「著者の経済的利益を不合理
目的は,「著作物の正当な利用を害しないな
に 侵 害 し な い 」 と い う Whitford の フ ェ ア
がらも,同時に権利者の経済利益を害さない
ディーリングの定義を,「ユーザの自由が大
ためである」としている。
46
きくなる」という理由で採択しなかった 。
Whitford 委員会は,公益に関して,①写
1983 年,総理の要請で,内閣の科学顧問
は,現存の知的財産システムが,国家利益に
真・機械による複写のための法定包括ライセ
適合しているかに関する報告書を公表し,
ンススキーム,フェアディーリングからコ
「イギリスのように,良いアイデアは多いが,
ピー機による複製の除外,図書館の例外,②
国内市場が小さく,技術適用がそんなに成功
録音録画機器の販売や私的録音録画に対する
的でない国では,商品とアイデアのトレード
ロイヤルティシステムと教育目的録音のため
が公益( public good)になる。ゆえに,国
の補助的包括ライセンススキームを提案した
家利益のためには,国際基準の強力な知的財
が,政府は採択しなかった。後者に関して,
産権の保護システムが必要である 56」と天明
政府の政策は変化している。最初は賦課シス
している 57。
テムに関する説得力のある証拠を要求した
7.1988年法とEUの影響
が 47,緑書では,録音録画機器にスキームを
48
導入することを支持し ,1986 年の白書では
ついに,多くの論争を経て,主要な改革を
詳しい立法を提案したが 49,1987 年の法案 50
含む 1988年の「著作・意匠・特許法 58」が立
では除外し,その後の法律通過における議論
法した。1988年法は 1956 年法以来の技術発
では持続的に反対している。この議論で政府
展と 1971 年のベルヌ条約パリ改正に対応す
は,公益( pubic interest)を消費者の利益
るためのものであった 59。
(interests of consumers)としてとらえてい
51
るように思われる 。
1988 年法は時代を先駆けた法律である。
法律通過の議論がなされていた頃,映画・音
たとえば,1985 年の緑書で政府は空テー
楽・コンピューター業界は,当時市場に紹介
プの販売に賦課制度を導入することを提案し
され始めた新しいデジタル複製技術により海
ながら,「公益の要素が強く内包されており,
賊版や規制できない私的複製が増えるのでは
52
消費者が最終的な費用を追うことになる 」
ないかと心配していた。それに対応するため
としている。政府も認めているように,家庭
コピープロテクションシステムが開発される
内録音録画は著作物のもっとも一般的な使用
ようになり,このような時代傾向を支えるた
360 ―
― め,1988 年法は適法に公表されたコピープ
Ⅲ.著作権の制限と公益
ロテクト装置付きの著作物を保護する権利と
救済を導入した。この立法は,同等の条項を
規定している WIPO 著作権条約( WCT)と
公益(public interest)は,立法者が著作
WIPO 実演レコード条約( WPPT)には8年,
欧州情報化社会指令には 13年先立つもので
ある 60。
著作権分野での法律のハーモナイゼーショ
ンを図ろうとする欧州委員会の一連のプログ
ラム 61 の影響で,1988 年法は著作権と著作隣
接権に関する EC 指令を履行するために定期
的に改正されることになる。1990 年からは
「情報化社会における著作権と関連権利の調
和のための EC 指令(情報化社会指令)」に
従うため4回の改正を行った 62。
イギリス法上の著作権( copyright)概念
は欧州連合の中ではマイナーな方で,大陸の
シ ビ ル ロ ー に お け る 作 家 の 権 利 (author ’ s
right)アプローチがイギリス法に影響をもた
らすようになった。しかしこれは,「両者の
差異を除こうとするものではなく」,台頭す
る新しい技術による問題を整えるためのもの
であった 63 と採られている。例えば,貸与権
指令によりイギリスは,以前法では単独著作
者であった製作者に加えて映画監督も著作者
として扱うようになった。映画の保護期間は
製 作 か ら 50 年 間 で は な く , 主 監 督 ・ 脚 本
家・作曲家を含むグループの死後 70年間に
なった 64。同じく,以前法では映画とレコー
ド製作者,コンピュータープログラム著作者
にだけに認められた貸与権がすべての著作者
と実演家に認められるようになった。それま
では著作者は公共貸与権スキーム 65 により既
に利益を得ていたため,貸与権は書籍の貸与
には適用されていなかった。貸与権指令の中
の,著作者の実演家に保障されている報酬権
の譲渡不可能性も,イギリスの「契約に自由
アプローチ」からしてみれば新しい概念で
あった 66。
権保護の様態,法定抗弁(statutory defence)
や法定例外(statutory exemptions)の種類
などを決める際のガイドラインである。「著
作権の保護」と「より大きい公益」の間のバ
ランスをとるのが立法者の義務である 67。
1988 年法における新しい要素は,欧州人
権 宣 言 ( European Convention of Human
Right:ECHR)を国内法化した 1998 年人権法
(Human Right Act 1998)第 10条の「表現の
自由の保障」の影響である。フェアディーリ
ングや公益の抗弁と表現の自由の抗弁の関係
について最近の判例でも述べられている 68。
EC 情報化社会指令 69 は,加盟国が国内法
に適用できるように,許容された例外の種類
と範囲を列挙している。この許容された例外
の適用は強制的ではなく,加盟国はそのリス
トの中から選択することができる。加盟国が
リスト以外の独自的な著作権の例外を追加し
ない限り,指令は著作権の例外を選択するに
あたって強制的なハーモナイゼーションの義
務を賦課してはいない。
これはイギリス法に課題を抱かせた。なぜ
なら指令には,批評・レビュー・現在事件の
報道に対する一般的な例外はあったが,研
究・私的勉学目的のフェアディリングを許容
する一般的な例外条項はなかったからである。
指令に沿うためには 1988 年法は何らかの改
正する必要があった 70。
1.保護期間(Term of Protection)
「著作権者の権利」と「著作物にアクセス
する公衆の利益」との間のバランスの議論で,
著作権の保護期間は中心的な問題である。
1988 年法における著作者の死後 50年間の
保護期間(1909 年法から適用)は,国民の
コンセンサスも得て,ベルヌ条約にも合致し
ている。もちろんこれは任意の基準ではある。
361 ―
― Whitford 報 告 書 で は 写 真 ・ レ コ ー ド ・ 映
画・放送などに,より短い保護期間を適用す
る問題に対しても考察している。これら著作
物は産業的な要素があり,文学・芸術作品よ
り短い保護期間でも十分であるという意見で
あった。報告書は「著作権は創作的能力と関
係なく作品の中に存在しうる 71」としながら,
これら作品の保護期間(公表時から 50 年)
は変わらないと結論付けた。そして「もし保
護期間を変更するためには,国際的な合意の
もとでなければならない 72。」としている 73。
結局,文学・演劇・音楽・芸術作品も,最
近著作者の死後 70年に延長された。下院で
の立法説明会で期間延長の当為性を説明しな
がら総理は,「もし著作権の保護期間を延長
しなかったら,ドイツ(死後 70 年),フラン
ス(音楽に関して死後 70 年),スペイン(死
後 60 年)においてイギリスの著作者の保護
期間が短縮することになる」とした。また,
指令は多数決で採択されるが,ほとんどの加
盟国が保護期間を 70年に調和することを受
け入れた状況で,イギリスも保護期間を延長
しなければならなかったとしている 74。両院
でのこの議論で公益はほとんど言われなかっ
た。たった一人の議員だけが,「保護期間を
20年も延長するのは過度である 75」としてい
る。
保護期間の延長に関しては反対意見もあり,
Laddie 判事は,保護期間延長は「独占権者
への過度な保護 76」であるとし, Parrinder
は「死んだ著作者はすでに十分な保護を受け
た。保護期間延長は著作権者以外にだれに利
益であるか?公衆に利益は考慮されなかっ
た 77」としている 78。
フェアユース( fair use)と類似ではあるが,
同一のものではない 80。
1988年法は 1956 年法と同様,①研究・私
的勉学,②批評・レビュー,③現在事件の報
道の目的でのフェアディーリングを認めてい
る。フェアディーリング抗弁はこの範囲内で
だけに適用される。アメリカのフェアユース
とは異なり,イギリスのフェアディーリング
は一般的に適用されるものではない。しかも,
上記②・③の目的で文学・音楽・芸術作品を
使用する場合は,著作者の身元を十分に認知
させなければならないという条件がある。上
記①の例外は,文学・演劇・音楽・芸術作品
と出版物の活字編集(1988 年法で新設)に
だけ適用され,レコード・映画・放送・ケー
ブル放送には適用されない。
フェアディーリングは,1911 年法以前に
は判例によって認められてきた 81。政府は緑
書で,「この例外は,著作権者の正当な利益
と著作物のユーザの正当な要請の間のバラン
スをとるためにとても重要である 82」と述べ
ている 83。
1988 年法の成立過程において, Whitford
報告書は,「研究・私的勉学」という語句の
範囲を制限し,商業機関がビジネス目的で行
う研究をフェアディーリングから除外すると
いう提案 84 をしている。政府はそれを受け入
れた 85 が,この法案は論争の的になった。産
業界はこの制限をあきらめるように政府を説
得した。商業用研究をフェアディーリングか
ら除外すると,企業に追加費用を発生させ,
英国産業は世界的競争から不利になり,国の
租税収入も減ると産業界は主張した。その後
のデータベース指令の批准により,1988年
法は,商業目的のための研究を目的として
2.侵害に対する法定抗弁:フェアディー
リング(Fair Dealing)
データベースに関していずれかのことを行う
ことは,データベースのフェアディーリング
1911 年法から,著作権侵害における法定
ではないとしている 86。
抗弁が可能になった。その中でもっとも重要
なのがフェアディーリング( fair dealing)
である 79。フェアディーリングはアメリカの
362 ―
― 3.公益抗弁(Public Interest Defence)
年法は,公益を理由に他人の権利(著作権)
公衆の利益というコモンロー上の抗弁は,
を使わせる一般的な権限を裁判所に与えてい
「法律とは別個の,その外側にある抗弁手段
ない。すなわち,公益の抗弁は 1988年法に
で,著作権分野に限定されなく,コモンロー
含まれず,もし存在するとしても他のルート
の一般原則に従う」とされる 87。1988年法は,
で起こるべきである 93」。裁判所はまた,イ
「この部のいずれの規定も,公益その他を根
ギリスはベルヌ条約や欧州指令などに従う義
拠として,著作権の執行を阻止し,又は制限
務があり,一般的な公益の抗弁を認めること
する法律のいずれの規則にも影響しない 88」
は国際義務に違反すると判断している 94。
一方, Ashdown 判例 95 における控訴裁判
としている。
抗弁の範囲は裁判所の判断事項で,これに
所の立場は異なる。新聞社は表現の自由の抗
関しては判例が増えている。1980 年代半ば
弁とともに 1988 年法の公益の抗弁を主張し
に裁判所は,①公衆に興味のあるもの
た。新聞社は,本件は欧州人権宣言(ECHR)
(what is interesting to the public)と,②知
の批准により成立した人権法(Human Right
られるのが公衆の利益になるもの( what it
Act 1998) の 発 効 以 前 に 出 た も の な の で ,
HydePark 事件での原則には縛られないと主
張した。被告は, ECHR 第 10条に添うため
には,すべての事件の判断において,1988
年法により賦課された表現の自由に対する制
限が民主社会に必要であるかどうかが考慮さ
れるべきであると主張した。事実審判事は
Ashdown のサマリージャッジメントを認め
たが,新聞社は控訴した。
控訴裁判所は控訴を却下したが,公益抗弁
の範囲に関して HydePark 事件の多数意見と
は異なる解釈をした。EHCR に関する論争を
考慮して裁判所は,「民主社会において著作
権を保護する必要があり,著作権侵害が財産
の平穏な享受への障害になる時には,表現の
自由に対する制限が正当化される 96」としな
がら,表現の自由も著作権も制限された権利
であると判断した。
裁判所は,公益の抗弁は HydePark 事件で
示されたほど厳しくなく,限定された状況で
は,表現の自由は公益の観点で 1988年法上
の著作権者の権利より優先する場合もあると
した。裁判所は HydePark 事件の少数意見を
支持しながら,「公益が著作権に優先する場
合を類型化したり定義することは難しい」と
しながらも,裁判所には公益の観点で著作権
の行使を拒絶する裁量( discretion)がある
と判断している。しかし,結果的に本件にお
Is In the public interest to be made known)
を区別する必要があると強調し,前者は抗弁
にならなく,後者は抗弁として使われうると
した 89。この原則は 1991 年の判例でも示され
ている。裁判所は「公益の抗弁により,公衆
に知られるのが公衆の利益になる秘密情報の
出版を認めることができる。その情報が公衆
の興味を引くかもしれにという事実だけでは
十分ではない。いったんその情報が公表され
ると,追加的な出版のための追加的な公益の
要件はない 90」としている。
もっと最近は,公益の抗弁が十分考慮され
るようになり,相反する2つの判決が控訴裁
判所で下されている 91。
HydePark 判例 92 で裁判所は公益の抗弁を
制限する判決を下している。被告は問題の写
真の出版を正当化するために,公益の抗弁に
頼っていたが,控訴裁判所の多数意見は次の
ような理由でその主張を退けた。「著作権と
は 1988 年法で規定された知的財産権であり,
人々が著作権者の同意を得なくても行うこと
が可能な行為は法律に詳細に規定されている。
その範囲は,フェアディーリングから教育,
政府機関による使用に及ぶまで多様であり,
条文は著作権の保護と公益の拡張の間の適切
なバランスを取っている。公益が著作権より
重要な場合は詳細に決められており,1988
363 ―
― いて公益の抗弁は成功しなかった。新聞社は
Ashdown の固有な表現を多量に複製したの
で,ECHR10 条によっても正当化されなかっ
たからである。
この判決は,「 ECHR10条により保障され
る表現の自由」と「知的財産立法により付与
された財産権」との相互影響に関して考慮し,
著作権事件に ECHR を適用する傾向を確認
した欧州の裁判所における初めての判決とい
うことで大きな意義がある 97。
Ⅳ.むすびに
以上,イギリスの著作権法における「公益
(pubic interest)」概念の変遷をみた。300 年
近いイギリスの著作権法の改正の歴史におい
て,「公益」という概念は,筆者が当初想定
したように「ユーザの集まりとしての‘公衆’
の利益」としてとらえられた場合もあれば,
「消費者の利益( interests of consumers)」
としてとらえてたり,「国民の利益」,更には
「国家の利益」としてとらえられた場合もあ
る。これは,社会的・経済的な変化に起因す
るものでもあり,国際化により外国との関係
における自国の利益が大事になった結果でも
ある。
更に現在は情報社会化・グローバル化によ
り急速に環境が変わっているので,「ユーザ
個々人の権利」という観点からも考慮する余
地ができたのではないかと考える。今後,諸
外国の著作権法の改正史に関する調査を更に
進めて,「権利者の権利の制限の結果,反射
的に得られる利益」ではない「ユーザの権利」
という概念を研究していきたいと考える。
注
1
半田正夫,『著作権法の研究』9∼ 24頁,
アラン・ラットマン他編・内藤篤訳『1990年
米国著作権法詳解(上)』(1991年・信山社)
1∼5頁,白田秀彰,『コピーライトの史的
展開』1998年・信山社)19頁など。
2 たとえば,私的複製は,著作権者の権利の
364 ―
― およぶ例外として規定されていて,その結果,
ユーザが著作権者の同意なく私的複製をして
も著作権侵害を構成しないのであって,それ
がユーザの権利として決められているからで
はない。
3 音楽 CD のコピーコントロール装置が,私
的複製のための法的権利を侵害すると主張し
ながらヨーロッパ消費者団体が提起した一連
の訴訟がある。ベルギー裁判所は,「ベル
ギー法は私的複製権を認めない,ただ訴えら
れることが免除されるだけである。よって原
告はどんな利益も侵害されたと主張できな
い」としている( T.P.I. de Bruxelles, L’AS-
BL Association Belge des Consommateurs
Test Achats/SE EMI Recorded Music Belgium, Jugement du 25 mai 2004, No
2004/46/A du role des référes, at 2.)
。この判
決では,ユーザの権利はまったく認められて
いない。ユーザが複製可能なものだけに私的
複製の余地があるだけで,権利者がそれを遮
断してしまえばユーザは何もできないのであ
る。一方,フランスでは,高裁で意見が分か
れた。パリ控訴裁判所は,音楽 CD に複製禁
止措置を講じるのは「私的複製に矛盾する」
と 判 決 し た ( Cour d’ Appel de Paris, No.
RG:03/8500, Stéphane P. v. Universal Pictures Video France (Apr. 22, 2005); see
Lawrence J. Speer, Security Features on
DVDs Violate Private Copying Right, Says
French Court,BNA ELEC. COMM. & L.
REP., Apr. 27, 2005, at 441.)。しかしベルサ
イユ控訴裁判所は,音楽 CD に複製禁止措置
を講じるのは「海賊版を防止するためである
の で 正 当 化 さ れ る 」 と 結 論 し た ( Cour d’
Appel de Versailles, No. 03/07172, Francoise
M. v. EMI France (Apr. 15, 2005); see
Lawrence J. Speer, EMI France May Use
Digital Locks on CDs, But Court Orders
Refunds
for
Griping
Users,
BNA
ELEC.COMM. & L. REP., Apr. 27, 2005, at
442.)。ただし,フランス消費者保護法は消
費財に適切なラベルを貼るようにしているた
め,複製禁止措置がされた CD であるラベル
を貼っていなかったとして,消費者がアク
ションを起すことは可能であるとした。この
判例は少なくとも,ユーザの権利に対する考
慮の余地はあると思われる。最近では,
Access right, User’s right, Consumer’s right,
Learning right など,ユーザの権利に関する
議論が活発になっている。例えば,
4 最終的には,集団としての公衆の利益(公
益: public interest)から発展したユーザの
権利についても考えてみたい。
5
Copyright and Design Law, Report of the
Committee to consider the Law on Copyright and Designs, Chairman-The Honourable Mr.Justice Whitford, march 1977,
HMSO, Cmnd 6732,para.84:この報告書につ
いては後述する。
6 2005 年4月現在。( http://www.mext.go.
jp/a_menu/kokusai/kouryu/05093001/003_19.
htm)
7 C.Masouye, Guide to the Berne Convention, WIPO, 1978, para.1.15.
8 Gillian Davies「 Copyright and the public
interest」
(London : Sweet & Maxwell, 2002.)
pp.27-74
9 The Statute of Queen Anne, 1709, Ch.
XIX(Appendix 1). これは議会で成立したイ
ギリスの初めての著作権法であり,検閲条項
のない初めての立法である。
10 Sculpture Copyright Act 1814 (54
Geo.,3.,c.56).
11 Davies, op.cit., p.28.
12 B. Kaplan, An Unhurried View of Copyright, Columbia University Press, 1967, at 12.
Davies, op.cit., p.28.から再引用
13 18世紀中盤のイギリスの判例については,
D. Saunders, Purposes or Principle? Early
Copyright and the Court of Chancery, 1993,
EIPR 452.
14 Davies, op.cit., p.29.
15 Miller v Taylor, 4 BURR. 2301.
16 Donaldson v Beckett, 4 BURR. 2407.
17 K. Garnett, J. Rayner James and G.
Davies, Copinger and Skone James on Copyright, Sweet & Maxwell, 14th ed. 1999,
para.2.16
18 Davies, op.cit., p.29.
19 Copyright Act 1842 (5 &6 Vict., c.45).
20 Davies, op.cit., p.33.
21 Ibid., p.34.
22 Report of the Commissioners of the Copyright Commission, 1878 (C-2036)
23 Davies, op.cit., p.36.
24 これは初めての強制許諾もしくは法定許諾
の提案であるという。
25 Ibid., p.37.
26 Report of the Committee on the Law of
Copyright, 1909, Cmnd 4976, at 16.
27 Davies, op.cit., p.38.
28 Copyright Act 1911 (1 & 2 Geo.5, c.46).
365 ―
― 29
30
31
32
Copyright Act 1911, s.3.
Davies, op.cit., p.39.
Copyright Act 1911, s.3.
Report of the Copyright Committee, October 1952, HMSO, Cmnd 8662.
33 Ibid., at 3 para.3.
34 Ibid., at 7 para.17.
35 Ibid., at 9 para.23.
36 Davies, op.cit., p.40.
37 この際,著作物の貸与に関する考慮は除外
された。実は,著作権法とはまったく別プロ
セ ス で , 1979 年 の 公 衆 貸 与 権 法 ( Public
Lending Right Act 1979)が成立し,それに
より書籍の貸与権が新設された。Ibid., p.42.
38 Report of the Committee to consider the
Law on Copyright and Designs, Chairman,
the Hon. Mr Justice Whitford, Cmnd 6732,
HMSO, March 1977.
39 この報告書は著作権法の議論に大きく寄与
したと評価されたが,政府は 10 年間も間,
これに沿わなかった。政府は緊急な各問題
(たとえば海賊版,ソフトウェア,ケーブル
プログラムなど)にその都度,個別的に対応
し , 一 連 の 諮 問 文 書 ( Reform of the Law
relating to Copyright, Designs and Performer’s Protection, Cmnd 8302, HMSO, July
1981. Intellectual Property Right and Innovation, Cmnd 9117, HMSO, December 1983.
The Recording and Rental of Audio and
Video Copyright Material, Cmnd 9445,
HMSO, February 1985.)を作成している。ま
た 1986年には政府の立法意図を明かした白
書 (White Paper : Intellectual Property and
Innovation, Cmnd 9712 HMSO, 1986.)を発刊
した。Davies, op.cit., p.43.
40 Ibid., p.43.
41 Cmnd 6732, op.cit., para.627.
42 Reform of the Law relating to Copyright,
Designs and Performer’s Protection, Cmnd
8302, HMSO, July 1981. Chap. 12, para.5.
43 Cmnd 6732, op.cit., para.643.
44 Davies, op.cit., p.45.
45 Cmnd 6732, op.cit., para.667.
46 Cmnd 8302, op.cit., Chap. 13, para.4.
47 Cmnd 8302, op.cit., Chap. 13, para.23.
48 The Recording and Rental of Audio and
Video Copyright Material, A Consultative
Document. (Green Paper, February 1985,
HMSO), Cmnd 9445.
49 Intellectual Property and Innovation,
(April 1986, HMSO), Cmnd 9712.
50
Copyright, Designs and Patents Bill
(House of Lords, 1987).
51 Davies, op.cit., p.46.
52 Cmnd 9445, op.cit. s.VII.
53 Ibid.,s.II.
54 Hansard, House of Lords Official Report,
Vol.489, No.34, Thursday, November 12,
1987, at 1532.
55 Cmnd 8302, op.cit., Chap. 3, para.1.
56 Intellectual Property Right and Innovation, December 1983. HMSO, Cmnd 9117,
para.1.8.
57 Davies, op.cit., p.48
58 1988 Copyright, Design and Patents Act,
Chap.48, HMSO.
59 1956年法との差異は,著作権のみならず,
工業デザイン,特許,商標に関する改正も行
い,論理的で明確な用語で内容を整え,衛星
放送やケーブル放送業者と権利者のための保
護も導入した。パリ改正を国内法化するため,
著作者や映画監督のために人格権を導入し,
実演権審判院( Performing Right Tribunal)
を著作権審判院( Copyright Tribunal)に代
替し,集中管理団体に対する権限を強化した。
また,レコードの実演の無断使用に対して実
演家と製作者の民事訴訟権条項を設けた(今
までは刑法によってしか保護されなかった)
。
60 CDPA 1988, s.296; Sony Computer Entertainment v Paul Owen and Others, (2002)
EWHC 45 (CH)も参照; s.296 ; が適用された
近 時 の 判 例 に 対 し て は E.C.D.R. 27参
照.Davies, op.cit., p.49.
61 欧州委員会のプログラムは 1988年欧州委
員会の「著作権と技術の挑戦」という緑書
(Copyright and the Challenge of Technology: Copyright Issue Requiring Immediate
Action, COM.(88) 172 final.)から始まった。
62 コンピュータープログラムの法的保護に関
する指令( Directive 91/250/EEC)は Copyright (Computer Programs) Regulations
1992 (SI 1992/3233, 1993年 1 月 1 日 発 効 )
により履行;著作物の貸与その他の権利に関
する指令( Directive 92/100/EEC)とケーブ
ルと衛星放送に関する著作権・著作隣接権に
関する指令(Directive 93/83/EEC)は両方と
も Copyright and Related Rights Regulations
1996 (SI 1996/2967, 1996年 12月 1 日 発 効 )
により履行;著作権・著作隣接権の保護期間
に 関 す る 指 令 ( Directive 93/98/EEC) は
Duration of Copyright and Rights in Performances Regulations 1995 (SI 1995/3297,
366 ―
― 1996年1月1日発効)により履行( Art.4は
SI 1996/2967により履行);データベースの
保 護 に 関 す る 指 令 ( Directive 96/9/EC) は
Copyright and Rights in Databases Regulations 1997 (SI/3032,1998年1月1日発効)
により履行された。
63 W.R. Cornish, “Recent Change in British
Copyright Law”, (1997) 172 R.I.D.A. 151 at
157.
64 CDPA 1988, s.13B.
65 これは著作権システムではなく,資格のあ
る書籍の著作者が公共図書館に自分の作品を
登録し貸出すると,中央政府から基金をもら
える制度である。Public Lending Right Act,
1979;CDPA 1988, ss.18A & 40A により改正さ
れる。これは Rental Right Directive にそう
も の で あ る 。 J. Griffiths, “Copyright and
Public
Lending
in
the
United
Kingdom”(1997) E.I.P.R. 499も参照。
66 詳しくは A. Mosawi, “Some Implications of
the New Regulations Regarding Rental
Rights”, (1995) 8 ENT.LR 307; R.参 照 。
Davies, op.cit., p.51.
67 下記に述べたもの以外の法定抗弁としては,
芸術レコード映画放送ケーブル作品に付随て
,公共
きに含まれるもの(CDPA 1988, s.31.)
行政(たとえば議会,裁判手続)による使用
,科学,技術的論文の
(CDPA 1988, s.45-50.)
抄録(CDPA 1988, s.60.)
,公衆に展示されて
いる彫刻や建物の写真撮影矢スケッチ
,非営利的同好会での
(CDPA 1988, s.62-65.)
レコードの再生(CDPA 1988, s.67.)
,入場料
をとらない放送ケーブルの上映・公衆実演
(CDPA 1988, s.72.),家庭内使用のためのテ
レ ビ ・ ラ ジ オ の 時 間 差 録 音 録 画 ( CDPA
1988, s.70.)などがある。
68 Newspaper Licensing Agency Ltd. V
Marks and Spencer plc, (2001) R.P.C. 76,
CA; House of Lords decision (2001) E.C.D.R.
28; Ashdown v Telegraph Group Ltd., (2001)
EWCA Civ 1142; (2002) E.C.D.R. 32 at 337.
69 Directive 2001/29/EC of the European Parliament and the Council of May 22, 2001,
(2001) O.J. L167/10.
70 Davies, op.cit., p.54.
71 Cmnd 6732, op.cit., Para.633.
72 Ibid., Para.637.
73 Davies, op.cit., p.55.
74 (1995) 43, No.2, Journal, Copyright Soc.
Of the USA, at 199.
75 Lord Peston, (1995) 43, No.2, Journal,
Copyright Soc. Of the USA, at 230.
H. Laddie, (The Ho. Mr Justice Laddie),
“Copyright: Over-strength, Over-regulated.
Over-rated?”, (1996) EIPR 253.
77 P. Parrinder, “The Dead Hand of European Copyright”, (1993) EIPR 391.
78 Davies, op.cit., p.56.
79 フェアディーリングの範囲に関する近時の
判例は次のようなものがある。 Pro Sieben
Media AG v Carlton UK Television Ltd,
(1999) a WLR 605; Hyde Park Residence
Ltd. V Yelland, (2001) CH. 143.; Ashdown
v Telegraph Group Limited, (2001) EWCA
Civ 1142; (2002) E.C.D.R. 32 at 337
80 G. Dworkin and R.D. Taylor によると,当
初この用語をすでに意味が確立しているフェ
アユースにしようとする試みがあったが,政
府 が 反 対 し た と い う 。 :Dworkin & Taylor,
Blackstone’s Guide to the Copyright,
Designs and Patents Act, 1988, (Blackstone
Press Limited, 1989), p.72.
81 Bradbury v Hotten, (1872) L.R. 8 Ex.1
82 Cmnd 8302, op.cit., Chap.13, para.2.
83 Davies, op.cit., p.57.
84 Cmnd 6732, op.cit., Para. 291.
85 Cmnd 8302, op.cit., Chap.2, para.8.
86 CDPA 1988, s29(5)
87 Davies, op.cit., p.63.
88 CDPA 1988, s.171(3)
89 Lion Laboratories Ltd v Evans, (1985) QB
526
90 Newspaper v News (UK) Ltd, (1991)
F.S.R.37.
91 Davies, op.cit., pp.64-66.
92 Hyde Park Residence v Yelland & others
(2001) Ch.143. こ の 判 例 に 対 す る 評 釈 は ,
R.Burrell, ‘Defending the Public Interest’,
(2000) E.I.P.R. 394を参照。
93 HydePark para. 43.
94 ただ,裁判所は次のような場合には,裁判
所には著作権者の権利を公益という理由で阻
止できる権限があるとした。i)不道徳,中
傷または家庭生活に相容れないもの,Ì)公
共生活,公衆衛生,公衆安全,司法を傷つけ
るもの,Í)2の行為を他人の刺激・奨励す
るもの(HydePark., para.66.)
95 Ashdown v Telegraph Group Limited,
(2001) EWCA Civ 1142; (2002) E.C.D.R. 32
at 337.
96 ECHR, First Protocol, Art.1.
97 Davies, op.cit., p.67.
76
367 ―
―