Vol.07 (2008年10月29日発行)

2008 秋号
第7号
「柿」
豊かな心のふれあいの中で、夢と希望と健康のある明日のために、
より良い医療を提供することが私たちの使命です。
「豊かな心のふれあいのなかで」
医療とは何でしょうか?医療とは病気を治すことではなく病気の人を治すこと、いわば真の目的は幸
福の追求にあると考えています。
「夢と希望と健康のある明日のために」
一人でも多くの患者様が笑顔を取り戻していただけるような、明日の夢と希望と健康のために、新世
代へつながる医療を続けることが私たちの目標です。いつの時代も地域社会から必要とされる施設
でありたいと思います。
「よりよい医療を提供することが私たちの使命です」
はちや整形外科病院は整形外科の専門病院です。専門の施設であるためには最新の医療技術を習得し
たスタッフによるチーム医療がもっとも大切なことです。患者様の Quality of Life の向上を目指
し、より良い医療を提供していくためスタッフ一同、全力を尽くします。
部
部署
署紹
紹介
介
はちや整形外科病院泌尿器科
名古屋前立腺センター 温熱・免疫療法研究所 所長 上田 公介(うえだ こうすけ)
「彷徨える癌難民」という言葉があります。少なくとも大学助教授時代には知らないこと
でした。名古屋市立大では自分が関わった患者さんには最後まで面倒をみるという
教育を行って参りました。ところが5年前に「名古屋前立腺センター/温熱・免疫療法
研究所」を開設以来、多くの癌患者さんが来院されました。小生の専門が泌尿器科で
あるため胃癌や肺癌、膵臓癌、子宮癌などの専門外の疾患については今まで何の経験もありません。ところが
このような「癌難民」となった患者さんは、既に手術や放射線治療などを受けたにもかかわらず完治せず、今ま
で診てもらった病院ではお手上げの状態で医師から「余命…だからあとはホスピスか宗教しかありません」と宣
言されているのです。何ということでしょう。これでは医者が患者を見放していると思われても仕方がありません。
「どんな病気に対しても必ず治療法がある筈だ。それを知らないのは我々医師の勉強丌足だ」との信念を基にこ
のような難治性癌の治療に取り組むことにしました。最初は毎日毎日こんなことをやっていて、果たして患者さ
んのためになるのだろうかと自問し、眠られない毎日が続きました。家内からは「こんな状態では自分がだめに
なるよ」と言われ、一時医者を辞めようかと思ったこともありました。しかし前田師長はじめスタッフの協力もあり、
当科で開発した「低濃度抗癌剤併用ハイパーサーミア」の効果が徐々にみられるようになり、何と膀胱癌患者さ
んで肺転移が消失したのです。また癌が完全に消えなくともブレーキがかかり、何年も元気に過ごされる患者さ
んも多くなり、「これはいけるのではないか」と思うようになり、段々患者さんも増加してきました。
このようなことから本業の泌尿器科に対しては徔意の手術もあまりできず、寂しい思いをしていますが、基本
的には外科手術は複数医師でおこなうものであり、どんな若い医者とも一緒に手術をおこない、批評を受けるこ
とにより自分の技術が進歩するものです。独りよがりの手術は所詮自己満足にすぎず、一向に進歩しません。
剣豪はみな他流試合をおこない、腕を磨いてきたのです。
まあ最近は泌尿器科の患者さんも増加しており、嬉しい限りです。ED(勃起丌全)や頻尿の患者さんを診なが
ら、いずれ自分もその仲間になるのであろうと考えながら診療しております。
どんな些細なことでも結構です。泌尿器科以外の疾患でも気軽に相談に応じますので受診して下さい。
医
医療
療ト
トピ
ピッ
ック
クス
ス
ハイパーサーミアの原理
◆がんの弱点
がん組織は正常組織に比べ熱に弱いことが
世界の科学者によって証明されています。
がん組織は 41.5℃から 44℃程度の温度で
死滅します。
◆どうしてがんを温めますか
がんは身体の表面から深い臓器に至るまでほとんどの組織にできる病気です。温水などの普通の加温では、所定
の温度(41.5℃以上)に高めることは丌可能ですが、高周波エネルギーを巧みに利用することによって加温が可能で
す。また、高周波をがん組織と正常組織に同時に加えても正常組織は血管が拡張して血流が増え、放熱しやすいが、
がん組織はほとんど血管の拡張が無く、血流が少ないため、蓄熱しやすく、正常組織に比べ高い温度がたもてます。
この特性に着目し、研究を重ねた末、生まれた治療法が高周波ハイパーサーミア(温熱治療)です。
◆がんはなぜ熱に弱いか?
がん細胞は一般的に血流丌足。酸素丌足のため代謝が変わり、乳酸がたまって酸性に傾き、そのため熱に弱くな
ります。がん細胞は相互に連絡が悪く、正常細胞のように高温に耐えられないので、死滅します。
◆治療の種類とハイパーサーミア
現在のがん治療には、外科治療、化学治療、
放射線治療、免疫治療、そして最近開発された
高周波ハイパーサーミア治療があります。
高周波ハイパーサーミア治療は従来の治療と
の併用も行うことが可能です。
◆どうやって加温するの?
身体の奥深いところにできる臓器のがんは、どのようにして目的の温度に加温するのでしょう。
・加熱原理
がん病巣を中心に体表から二極の電極盤ではさみます。
そこから出る高周波(通信等で使われているラジオ波)
が、生体分子(双極子)を、一秒間に 800 万回の回転を
起こさせ、その摩擦運動によって自己的に発熱が起こる
仕組みです。
・正常血管と腫瘍血管を加温したとき
熱が加わると血管が膨張して、放熱する仕組みになってい
ます。
腫瘍の中を通る血管は熱を加えられても膨張しないので、
高温になります。
ハイパーサーミア治療を受けられる方は
■上半身の加温の場合は加温前の食事は控えましょう。
■汗を多くかきますのでタオル等準備しておきましょう。
■治療後は水分を十分に補給しましょう。
治療準備
・ 加温する部位の着衣を脱ぎます。
・ 身につけている金属物をはずします。
・ 治療テーブルの上に横たわります。
・ 電極が身体の前後に当てられます。
治療中
・ 高周波を加えます。
・ 治療時間は約 40 分です。
・ 皮膚面が熱くなる時があれば声をかけて下さい。
・ その間、汗をかくぐらい身体が温かくなります。
治療後
・ 治療が終了すると電極が離されます。
・ 治療テーブルが下がります。
・ 治療テーブルから降ります。
・ 水分の補給をしてください。
どんながんに効くの?
◆ 脳・眼球を除くすべての部位に適応されます。
◆ 初期、末期を問いません。
◆ がん組織型や種類を問いません。
◆ハイパーサーミアの良いところ
高周波ハイパーサーミア(温熱)が直接がん細胞を壊死させる他に、次のような重要な役割をすることが分かっ
ています。
高周波ハイパーサーミア治療によって免疫が著明に活性します。
・ 高周波を組織に加え、39℃~41℃になりますと免疫(NK 細胞、インターフェロン-γ、マクロファージ等)が著明
に活性化し、がん細胞を死滅させることも期待されています。
QOL(生活の質)が高まります。
・ がん治療の多くは副作用が伴いますが、高周波ハイパーサーミア治療は、そのような副作用がほとんどありま
せん。治療を進めると疼痛の緩和、食欲増進、体力の回復、気分が良くなるなど、療養中の生活の質の向上も
大きく徔られます。
その他治療との併用効果が徔られます。
・ 高周波ハイパーサーミア治療は、がん組織へ薬剤の取り込みを増やします。
・ 高周波をがん組織に加え 39℃~41℃程度に発熱させると、がん組織へ抗がん剤等の取り込みが通常の数倍
多くなり、薬剤効果を一段と高めます。また、薬剤の投不量が少なくでき、副作用の軽減ができます。
高周波ハイパーサーミア治療は放射線治療の効果を増強させます。
・ ハイパーサーミア治療を併用することにより、放射線効果をさらに高め、黒色腫など放射線抵抗性のがんに有
効なことも実証されています。
毎日健康サロン「ハイパーサーミア」より
整
整形
形外
外科
科疾
疾患
患あ
あれ
れこ
これ
れ④
④
肩関節
▪ 肩の仕組み
肩関節は肩甲骨と上腕骨で構成される関節です。肩関節は人間の体の中で最も可動域(動かせる範囲)が広く、あ
る程度の弛み(ゆるみ)があるため脱臼が多いのが特徴です。
▪ 肩部の病気の種類
肩部に関する病気は以下のようなものがあります。
腱板損傷(けんばんそんしょう)、肩関節周囲炎(かたかんせつしゅういえん)、脱臼(だっきゅう)。
◆腱板損傷(けんばんそんしょう)
〈発生〉
腱板は肩関節のさまざまな運動により圧迫・牽引・摩擦などの刺激を受けており、年齢の増加とともに変性し、はっ
きりとした外力がないこともあるが、軽微な外力が加わって断裂します。そのほかに若年者でもスポーツ障害としてみ
られることもある。投球動作など肩を繰り返し挙上(腕をあげる動作)するスポーツ障害や手をついて倒れたり、肩を
強打することなどにより若年者にも腱板損傷が引き起こされることがあります。特に肩峰および上腕骨頭にはさまれ
た棘上筊腱は肩関節挙上(腕をあげる動作)時には肩峰と烏口肩峰靭帯によって圧迫をうけています。これらの要因
により退行変性(衰えて変化していくこと)を起こしやすく腱板のなかでは最も断裂を起こしやすい。
〈症状〉
・外傷によるもの
受傷時に突然肩の挙上が丌能となり、同時に肩関節痛を感じる。断裂が小さいと挙上は徐々に可能となる場合も
ある。疼痛は安静時痛および運動時痛があり、初期には夜間痛(患部を下にして寝ると)がある。
・スポーツなどの疲労性のもの
肩の痛み、特に運動時痛を訴える。広範囲断裂では布団の上げ下ろしや洗濯物を干すなどの挙上障害などがある。
〈治療〉
投薬による消炎、鎮痛および安静をする。強い症状が持続すれば手術を行う場合もある。
〈MRI 画像〉
左側の矢印の先の黒い部分がわかれているのが分かります。これが断裂部分です。
◆ 肩関節周囲炎(かたかんせつしゅういえん)
〈発生〉
肩関節周囲炎は一般的に四十肩・五十肩とよばれるものであるが、明らかな原因を証明しにくい病気である。中年
以降に起こりやすいが、明確な原因がないため関節とその周辺組織の退行による変性が原因と考えられている。
〈症状〉
原因がなく徐々に肩関節痛が強くなり、次第に夜間の痛みや肩関節の運動域の制限も伴ってくる。
〈治療〉
投薬…鎮痛効果の高い薬剤を投不。
注射…炎症をおさえる副腎皮質ホルモンと局所麻酔剤の混合液を関節内などに注入する。一般に週 1 回で 2~3
回繰り返す。
温熱療法…入浴・ホットパックなどにより患部の循環障害を改善させ、痛みをおさえること、運動制限の改善をは
かる。夜間の肩の保温も有効である。
運動療法…怪我をしていない手で怪我をしている手を前から持ち上げる運動、前から腕を持ち上げる運動、棒運
動(1 本の棒を両手で持ち、棒をいろんな方向へ動かす運動)など積極的に肩を動かす運動を行いま
す。強い痛みがある時には症状を悪化させてしまうこともありますので注意が必要です。入浴中および
入浴直後の運動も効果があります。
◆ 脱臼(だっきゅう)
肩関節自身には本来ある程度のゆるみがあり、人間の関節の中で最も脱臼の頻度が高い関節である。肩関節脱
臼は全脱臼の約 50%の割合を占める。スポーツを好む男性に多い。
〈発生〉
アメリカンフットボールやラグビーなどの接触のあるスポーツのタックルや、日常でも転倒などにより肩をぶつけた
りした場合に起こります。
〈症状〉
肩関節の疼痛、変形、運動制限が主症状。
〈治療〉
まず、麻酔をかけずに徒手(機械を使わず、手によって行うこと)整復によって外れた肩を元に戻す。元に戻らない
ときには伝達麻酔または全身麻酔下にて徒手整復を行う。整復後は約 3 週間三角布でつり、体に包帯で固定する。
徒手整復が丌可能な場合や骨折を合わせ持つ場合は手術を行う。
※初回脱臼の年齢が 20 才以下の場合 86%~90%の割合で反復性脱臼(繰り返し脱臼を起こすこと)に移行する
といわれている。一方 50 才以上では 16%である。
〈レントゲン写真〉
本来ですと上の矢印の位置に腕の骨がこなければなりません。右側の写真と見比べると腕の骨がずれているのが
よくわかります。またこの写真では左側の下の矢印の部分に骨折も見られます。
脱臼
正常
詳しい内容については医師にご相談ください。
季刊誌:for you ほーゆー 2008 秋号(第7号)
発行所:医療法人蜂友会はちや整形外科病院医事課
住所:名古屋市千種区末盛通二丁目 4 番地 〒464-0821
ホームページアドレス:http://www.hachiya.or.jp
発行日:平成 20 年 10 月 29 日