夕暮れの音楽室 彼の生き方・私の生き方

夕暮れの音楽室
白山ふるさと文学賞
第五回 白山市ジュニア文芸賞 受賞作品
【島清部門】
中高校生作文の部 最優秀賞
彼の生き方・私の生き方
い とう
り な
鳥越中学校二年 伊藤 梨奈
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事を優先させたり、後回しにすることが多い。つまり努力をすることが
嫌なことや出来ない事があったらすぐ投げ出したり、好きな事や出来る
この言葉は、フィンセント・ファン・ゴッホの名言である。私はいつも
めに。
」
景を描いたものである。画面はオワーズ川の岸辺での風景である。川面
ンヌが一八七四年の第一回印象派展に出品した「首吊りの家」はこの風
で、セザンヌ・ピサロ・ルノワール・モリゾ・シスレーらが訪れ、セザ
舟遊びや魚釣りができていたそうだ。印象派の画家たちも縁の深い場所
ル=シュル=オワーズは、
この時代に市民がよく休日に訪れる行楽地で、
画像」よりも好きな作品だ。
パリの北西約三十キロメートルのオーヴェー
あまり得意でない性格なのだと自分で思う。人間、努力が大好きだとい
には茶・青・緑・水色など色鮮やかなボートが並び、左上奥に張られた
「私はいつも、まだ自分ができないことをする。そのやり方を学ぶた
う人は世の中にそういないと思う。自分でも嫌な事や出来ないことを克
重ねて色をぬっているのが分かる。風は画面の左から吹いているのだろ
白い帆も見える。岸には白いワンピースの女性がつり竿を持って魚つり
私は先日、大阪市立美術館へ行き「デトロイト美術展大西洋を渡った
うか葉がほとんど画面の右になびいている。なぜかこの絵を見ると、ど
服しようとする努力は大切だと思うがそうなかなか行動へ移すには難し
ヨーロッパの名画たち」
という美術展へ母と行った。
ゴッホはもちろん、
こかなつかしく思えた。行ったことの無い町なのになぜだろう。心がや
をしている。その後ろに青い服の男性が立ち、船にはもう一人白いワン
モネ・ルノワール・セザンヌ・マティス・ピカソなどの巨匠たちを中心
すらぎおちつく感じがする。
ふと思えば私の頭の中にドビュッシーの
「前
い。しかし私はゴッホのこの言葉を聞いて、なんだかすごく心が動かさ
とした美術展だった。私は幼いころから絵画教室にかよっていて、ゴッ
奏曲~(ベルガマスク組曲)~」がくり返し流れていた。この絵を見る
ピースを着た女性がすわっている。とても美しい絵である。岸辺にある
ホは特に好きだったのでこの美術展へ来た。印象派・ポスト印象派・二
度に頭からはなれないくらい流れた。自分の生まれ故郷のように感じ、
れたのだ。出来ないことを克服する努力はやり方を学ぶ事へつながるこ
十世紀のドイツ絵画・二十世紀のフランス絵画の四つの分野に分かれて
今 す ぐ に で も こ の 絵 の 中 に 入 っ て 舟 遊 び を や っ て み た い 気 分 だ っ た。
沢山の木々を緑を中心とした色合いで葉の一枚一枚、色が異なっていて
いた。どの作品もすばらしいものばかりだったが、やはりゴッホの描く
ゴッホはこの絵を描いてしばらくした一八九〇年七月二十九日、自らの
となのだと。
絵画は私の中で一番印象に残っている。「自画像」
と「オワーズ川の岸辺、
知っている人は少ないと思うがゴッホは、アスペルガーという精神障
体にピストルの弾を撃ち込み、それがもとで三十七年という短い生涯を
るところが実に特徴的だった。力強く強烈な色彩と激しい筆のあとが彼
害を持っていた。それが原因で自分の耳を切ったり、最後には自殺をし
オーヴェールにて」の二点がかざられていた。
「自画像」の方は表藁帽子
独自の表現方法だが、彼にとって色彩は単なる対象の物や光や影を描写
たりと聞いておどろくようなことをしていたのだ。だけど障害と戦いな
閉じてしまった。彼の絵には独特の表現力・個性が感じられる。個性を
するだけのものでは無く、彼の内面の感情を表出する手段だったのだと
がらも数々のすばらしい絵を描き続けたのはすごいことだと思った。障
をかぶり、青い画家用のスモックを着た自らの姿を描いている。だが実
私は感じた。この「自画像」で彼は私をきびしいような又はさみしいよ
害を持っているのに、あえて自分の出来ない事にチャレンジしてやり方
大切にして絵として表すことはすばらしいことだと思った。
うな眼差しで見つめているように思えてどんどん絵の中に吸いこまれて
を学ぶと言っていた彼はすごくカッコイイと思うし尊敬する。考えてみ
際鏡で映したまま描かれている訳でなく、目の位置をずらして描いてい
いきそうになった。
「オワーズ川の岸辺、オーヴェールにて」の方は、
「自
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れば、今の私を彼に見られたらすごくはずかしくなる。嫌な事や出来な
い事を投げ出している私はなさけないしカッコ悪い。だから彼のように
チャレンジしてみて少しでもやり方を学んでいきたい。時間はかかるか
もしれないが少しずつ努力することを大切にしたい。美術展へ行って彼
の絵を見て勇気と感動をもらえた。彼の生き方から自分のこれからの生
き方が学べたと思う。
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彼の生き方・私の生き方