情動反応と自律神経系 - GMOとくとくbb

情動反応と自律神経系
やまけん
キャノンの緊急反応
図は渡辺由貴子・渡辺覚
「図説雑学:ストレス」より
身体の制御系統
„
„
動物性機能(神経‐筋系、感覚系等)
植物性機能(呼吸‐循環系、消化系等)
自律神経系:交感神経系と副交感神経系
内分泌系:ホルモンによる体液性調節
免疫系:白血球(好中球、単球、リンパ球)
NK細胞、抗体
マクロファージとヘルパーT細胞
(AIDSで有名になりました)
脳の構造と機能
„
„
„
„
脳幹(基本的生命維持機構)
大脳辺縁系(情動に関与?)
大脳新皮質(人間に特徴的ではあるが)
感覚-運動系(動物も共通:具体的思考)
言語-行動系(前頭連合野:理性的思考)
しかし「旧い」脳も実は新しい!
単なる積み上げではなく連絡を保ちながら発
達・進化してきた
旧い脳というけれど・・
運動に関わる小脳では
イルカの小脳(胴体の巧
みな動きに対応)と人間
の小脳の機能の違い
(進化の過程の産物)
„
情動(喜怒哀楽)、本能、自律機能に関係す
る大脳辺縁系(帯状回:意欲、扁桃体:快・
不快、海馬:記憶)
は感覚系とつながっている
„
自律神経、内分泌機能、体温、食欲、性欲等
をコントロールする視床下部‐脳下垂体(わ
ずか0.5㌘の「分泌性大脳」:成長ホルモ
ン・性腺刺激ホルモン・ACTH)
情動は実は「理性的」・・?
„
„
„
情動の発生
⇒ 大脳辺縁系と視床下部、視床下部‐脳下垂体系、
そして・・
前頭連合野
⇒ 新皮質の30%、思考・学習、推論、意欲、感情
コントロール
脳の進化と階層構造
大脳新皮質‐大脳辺縁系‐脳幹・脊髄の相互作用
(コラム:柱)(矛盾があるのが病的?)
運動情報の流れ図(Brooks,V.B.:1986)
BG Coudate:大脳基底核・尾状核 BG Putamen:被核
LIMBIC CX:辺縁皮質 ASSOC CX:連合皮質 MOTOR CX:運動皮質
Lateral Cb:外側小脳 Interm Cb:内側小脳 H:海馬
脳内物質の働き
„
„
„
セロトニンの増加と「抑うつ効果」
①アドレナリン(怒り)
②ノルアドレナリン(恐れ・驚き)
③ドーパミン(喜び・快楽)
β‐エンドルフィンと「ランニング中毒」
自己生産性モルフィネ様物質(鎮痛作用)
運動の継続意識の生理学的背景か・・?
指摘される運動の生物学的効果
ヴォルフのガチョウを使った実験
→ 4ヶ月の運動制限と多量の食餌摂取
„ 心臓付近への脂肪沈着/心筋の脂肪浸潤/心
膜層での出血/30%のガチョウで冠状動脈
疾患と肝硬変/胃腸炎、肺炎に罹患しやすい
„ 人間では「運動不足病」と命名されている
(クラウスとラーブ:1961年)
„
運動の生理心理的効果は・・
„
どうやら他のストレスとは異なるようで・・
①体温増加説:短期的鎮痛効果
②内分泌説:ステロイドホルモンの蓄積と抗ス
トレス性の獲得
③筋活動電位低減説:筋活動のレベルを下げ緊
張や痛みを低下させる
④神経伝達強化説:アドレナリン、ノルアドレ
ナリン、ドーパミンなどのセロトニンを増加
させ抑うつ効果をもたらす
⑤モルフィネ様物質説:β-エンドルフィンに
よる鎮痛作用
⑥自律神経系の興奮による情動、快感への関与
⑦運動による快感中枢刺激説:大脳辺縁系の報
酬系を刺激する
自律神経系のバランス
交感神経
①驚愕・恐怖 ☆☆☆
②不安・緊張
☆☆
③平安・休息
−
④失望・抑うつ −
副交感神経
−
☆☆
☆
−
筒井未春(1989年)より
アンバランスな ② と ④ ?
適度な身体運動はストレスを軽減
„
„
„
脳波の二つの成分(Hzは一秒間の振動数)
α波成分:8∼13Hzの脳波成分
安静、冥想、リラックス
β波成分:14∼30Hzの脳波成分
緊張、意識集中
アロマセラピーや音楽聴取でもα波増加
α波バイオフィードバック療法
α波を「気持ちのいい音」に変換しコント
ロール
山崎研究室での実験・・
„
早稲田大学の実験では・・
30%強度の軽い運動で脳のα波の左右差が
減少する(右脳と左脳の極端な分化はストレ
ス)
70%強度の運動ではだめらしいが・・
„
軽い自転車こぎ運動の実施で脳波のα波成分
の増加(リラックス効果)と左右差の減少
ただし持久的能力が高いと強い運動でも効果がみられる
心拍数の「ゆらぎ」ということ
„
„
„
心拍は1拍毎に「ゆらぎ」がある
60bpmでも1.05秒や0.95秒に
自律神経系の二つの作用
交感神経系:緊急反応で心拍数上昇(遅い)
副交感神経系:お休みモードで心拍数低下
(速い)
心筋梗塞、重症糖尿病や高齢で心拍数のゆら
ぎが減少する(心臓の反応性が低下?)
神経支配がない場合には
„
内因性心拍数に収斂(上昇)する
20歳で107拍/分
30歳で101拍/分
50歳で 90拍/分
70歳で 78拍/分
„
健常者では安静時には恒常的に心臓迷走神経
が作動している
過度の安静(ベッドレスト)によるカテコー
ルアミン耐性の低下も?
„
運動実施の影響
„
„
運動選手の心拍変動のパワースペクトルで、副
交感神経系の活動を反映するHF成分が運動選手
群の方が高く、安静時の副交感神経活動レベル
が亢進して入ることを指摘(山崎 元、スポーツ
心臓と心拍の変化、竹宮隆・石河利寛編:運動
適応の科学、杏林書院、pp.103-104、
1988)
運動群のほうが、運動により上昇したLF/HF比
(交感神経系の反応)の回復が早い(早野、
1996)
一昨年の実験では・・
„
運動が強くなると・・
心拍数が高くなってゆらぎがなくなる
そこから運動が軽くなると・・
心拍数が減りながら「ゆらぎ」がもどる
ということは、ひょっとして・・
一定の運動経過ではないほうがよい・・?
„
LSD(ゆっくり長く走る)効果の根拠?
„
„
高速フーリエ変換で
周波数解析(スペクトル解析)で
„
筋電図(筋活動)では
持久性活動(ST系:45Hz以下)
瞬発性活動(FT系:80Hz以上)
„
脳波では
安静・リラックス(α波:8∼13Hz)
意識集中・緊張 (β波:14Hz以上)
平均心拍数ではわからないこと
後半多少上昇しているようだが・・
平均心拍数150拍/分
1km 6分の10Km走だが・・
自律神経系活動による影響の評価では
„
血圧反射性の影響:0.04-0.15Hz(LF帯域)
交感神経系活動と副交感神経系活動を反映
„
呼吸反射性の影響:0.15-0.40Hz(HF帯域)
副交感神経系活動を反映
„
LF/HF比(%)
交感神経系活動を反映
60
心拍数はほぼ150拍/分
(2.5Hz)
50
40
30
LF (0.04 - 0.15 Hz)
HF (0.15 - 0.40 Hz)
LF/HF ratio
20
10
時間経過(分)
50
-6
0
10
-2
0
20
-3
0
30
-4
0
40
-5
0
0
010
ms2
時間経過(分)
0-10
10-20
20-30
30-40
40-50
50-60
LF (0.04 - 0.15 Hz:ms2)
0.96
0.79
0.48
0.28
2.27
4.21
HF (0.15 - 0.40 Hz::ms2)
3.94
2.41
2.16
2.2
4.37
7.04
LF/HF ratio (%)
24.5
32.8
22.5
13
51.9
59.6
実際には全区間で変動している
「運動強度」の評価から
「心拍ゆらぎ」の評価へ
5600m走で400m×2周ごとにペースを変化させると・・
sub.A
60
140
50
120
100
80
30
%
ms2
40
60
20
40
10
20
0
0
110' 100' 90' 100' 110' 100' 90'
図3−2−1
LF
HF
LF/HF ratio
ややパフォーマンスの低い選手では・・
HF成分の絶対値が低い(ゆらぎの余裕がない?)
180
160
140
120
100
80
60
40
20
0
20
18
16
14
12
10
8
6
4
2
0
110' 100' 90' 100' 110' 100' 90'
図3−2−6
%
ms2
sub.F
LF
HF
LF/HF tario
Defense-arousal system
Sympathetic nervous system zone
Parasympathetic nervous zone
(Hilton, SM. 1982)
ということは・・
FFT(高速フーリエ変換)を行うと・・
„ 自律神経系の状況が分析できる?
„ 例えば・・
その運動は交感神経系優位か副交感神経系優位か・・
その運動はリラックス効果があったか・・
その運動の継続で持久性(≠持久力)は改善するか?
その運動の継続で自律神経への好ましい効果はあるか?
その運動の継続で情動反応は改善されたか?
などがある程度推定できる!